2006年3月10日(金) 【初恋のメイポールダンス】

      初恋のメイポールダンス遠くなりにけり

 中学時代の恩師、というより、附中の歴史そのものようなY先生が亡くなられ、本日はご葬儀でした。

 なにしろ何十年にも渡る附中の卒業生にとって、一度に青春時代にフラッシュバックされるほどに、Y先生は特別な響きがあります。特に、「女子」にとっては、おそらくこれ以上インパクトのある先生には、生涯出会うことはないと思われます。

 なぜか、お名前が、「みどり」なのに、いつも赤い服を着ておられたダンスの先生は、校舎ぐらいに附属学園の日常風景で、私は、10年以上それに馴染んでおりました。しかし、中学になり、ダンス教室に向かう女子には、そこはかとない緊張感が漂い、そこで、ただならぬことが行われているのは、男子も想像に難くありませんでした。

 肥満児ということで、先生の記憶にも残っており、私にとっては、特に伴侶の心配をして下さった優しい先生なのですが・・・。


 さて、ベールに包まれた謎が一気に明らかになるのが、体育祭の大トリをとる附中名物「メイポールダンス」!!『波』のメロディーに乗って、真ん中のポールを支柱に、一人一人がそれに繋がったテープ(リボン)を持っているのですが、複雑に踊りながら、ポールに、幾何学的な紅白のリボンを編み上げていくという、それはそれは物凄いダンスです。
 する生徒も、指導の先生も立派!!

 これがどれほど難しいものなのか、ダンスを体験していないのでよくわかりませんが、おそらく、そういうことはおかまいなしに、あるいは、Y先生の思いとは多分大きく外れて、当時の「男子」ときたら、そのメイポールダンスの輪の中の「彼にとって特別の女子」を見ていたに違いありません。

 かわいい笑顔のその女子の、いつもとまた違う、真剣な表情に、口をあんぐりと開けて見とれていたに違いないのです。あるいは、好きな子の3人前で、逆回転するフォークダンス以上のときめきがあったかもしれません。祭の終わりの切なさも相俟って、少し、センチにもなりながら。

 そしていつのまにやら、ポールには、リボンが美しく編まれています。あぁ、去年と同じように今年も、あの子とは、口がきけていないなぁ・・・・・初恋というのは、実にそういうものなのだ。


 そして、多くの「男子」が、いくつになっても、『波』を聞くと、条件反射的に、メイポールダンスが思い浮かび、初恋の女子の顔を忘れても、鮮やかに、真っ赤な服のY先生の何とも言えない笑顔が頭の中に弾けるのです。

 Y先生がおられるというだけで、あるいは、思い出話に登場されるだけで、思い出すだけで、あの頃と母校と繋がることができます。それが、いわゆる教え子が、何十年にもわたっているのが素晴らしいことなのです。世代を結ぶ力があられました。それが素晴らしい先生だったことのなによりの証です。


 お通夜と今日は、Y先生のご遺影から、頭の中に『波』が流れてきました。いつもと逆です。
 長い闘病生活とご主人の献身的な介護というご労苦があったのに、都合の良い思い出しか持っていないことを本当に申し訳なく思います。

 Y先生がいて下さって本当に良かったです。限りない感謝をもって心からご冥福をお祈りいたします。中学時代を思い出すたびに、必ず、メイポールダンスとY先生を思い出します。


 もし、どこかの時代に戻ることができるなら、やはり、私は、14歳の頃を選ぶと思います。家業もなくなりさんざんでしたが、それでも、夕焼け、友達、帰り道・・・・やはり、あの頃を選ぶでしょう。

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