2002年7月17日(水) 【起業家が育たぬ理由】 | ||
今日、明日と第3回自由民主党中国ブロック県議会議員研修会が、岡山で開催されています。中国地方から、約90人の県議会議員が集い、それぞれの分科会(私は、生活環境保健福祉部会)に分かれ、各地の抱える課題について、かなり真剣に議論しました。
ちなみに、本田副知事によると、自民党は、「理論武装された政策集団」だそうです。広域の課題は多いですし、実際、州議会ということになれば、こういうことですから、いずれは、活きてくるネットワークだと思います。 昨年は、山口きらら博を訪ねましたが、明日は、倉敷チボリ公園視察が行われる予定です。 さて、本日は、研修会の前に、テクノサポート岡山の「夢づくり産学官連携キックオフ特許活用推進セミナー〜大学等の技術移転ー共同研究と特許活用を中心として〜」を覗きました。 日経新聞の読者なら、非常に気になる「山口TLOの活動状況」について、同センター長の講演がありました。 2年後には、独立行政法人として法人格を持つ(国立)大学の機能として、特許を中心に考えた場合、サービス部隊(ILP・リエゾン機能)、法律部隊(OSP)、セールス部隊(TLO)の連携が必要であり、このうち、「有限」会社山口TLOは、大学の社会貢献活動の一環として、まさに、大学の特許部(将来は、知的財産管理部)の先駆事例としての評価を得ています。 個人の権利をTLOに、特許として承継させ、あるいは、将来的には、大学法人となんらかの契約関係で結ぶ中で、企業等に大学の特許を使ってもらい、また、大学発のベンチャーを起こすことで、まさに大学も生き残りをかけたを戦いをしていくことになります。 本来的に、岡山が、後れを取る理由は、なにもないはずです。 ところで、この度、笠岡市・井原市・里庄町の「夢づくりナノプレジョンエリア」が、文部科学省から都市エリア産学官連携促進事業の事業採択を受け、ナノスケールの超精密生産技術を核とする「産業クラスター」の形成事業に取り組むことになりました。 全国19地域の一つに選ばれたわけで(平成14年から16年。事業費毎年1億円)、「超精密生産技術先進県岡山」を目指すということですが、例えば、リサーチパークで、ITが、東備では、セラミックが、バイオも、林業関係もあります。 つまりは、岡山の「産業クラスター」は一つである必要はありません。 なお、6月議会一般質問では、「産業クラスターと産学官連携」を取り上げています。 さて話がらり変わりまして、尊敬する産業振興財団のI部長の講演レジュメが素晴らしかったため、紹介させて頂きます。行政の側から、こういう声が出ること自体が、素晴らしいことです。 内容は、「起業家」という表現ですが、「本当の政治家」「国際社会に通用する本当の経営者」にも当てはまると思います。 単純に従来の発想で行くのであれば、もはや長期的には、他者を排しながら、全員でぽしゃって行くしかない日本「ムラ」社会への警鐘であると思います。 ともあれ、なにかの参考になれば。 《日本で企業家が育たない本当の理由》 ・少なくとも表面上は豊かであり、誰もハングリーでない。 ・自ら自分の人生を切り開く生き方に慣れていない。 ・官、支援機関は掛け声だけ。本腰が入っていない。 ・本当のことを伝えない官。本当のことを知ろうとしない国民。 ・結果は決まっているという、事前根回し感覚の蔓延。 ・社会文化環境の異なる米国からの輸入メニューでは効果少。 ・自由に自分で考え、発言し、行動できる社会ではない。 そして、以下の指摘は、私も、日本社会の発展を最も阻害しているものと感じます。グローバルスタンダードが言われる中で、そこでしか通じないルールがいかに多いことか。それは、全体の発展には、ただの阻害要因でしかありません。 その中では、得があって、一見均衡が保てていても、全体から見ると大きい損である、ということはあると思います。 この繰り返しをして行く中で、日本は国際社会から取り残され、また、企業家的な発想で政治の世界に飛び込む者も、決して、出てこないのではないか、と思います。 逆に、大胆な発想、新しい局面は、こういったモノを打ち破ったところから生まれてくるものではないでしょうか。否、そうでないと、物事は、変わりようがないのです。 大きく遠くを未来を見据えていたいものです。 《Entrepreneurial harassmennt アン・ハラ》 ・ 服装、席順、肩書き等を気にする。 ・ 年齢・性別・国籍等で差をつける。 ・ 親・兄弟(姉妹)の仕事を尋ねる。 ・ 企業規模を問う。 ・ 実績・経験を問う。 ・ 紹介者、知人を要求する。 ・ 失敗・転職を問題にする。 ※日米の社会構造で、失敗は許されず、権力が序列上位に集中した垂直社会の日本では、ランク社会、使い捨て社会であり、起業家の活動し易い社会構造に転換するする必要がある。 クモの子を散らすような米社会に比して、待っていても何も得られないアリの行進の日本社会には、せめて追い越し車線が必要である。 どちらかと言えば、私は、発想としては、起業家に近いのかもしれません。政治的なイデオロギーの問題ではなく、多分、生き方や環境、境遇の問題でしょう。良いような悪いようなです。 ============================== 《特別付録》2002年6月定例会一般質問原稿より 「産業クラスターと産学官連携」 ※ 難解な質問と悪評だったわけですが、「こころ」の読者の皆様に は、大学関係者も多く、重要性は、ご理解頂けると思います。 また、当然、執行部には、意図が分かっているところですが、「検 討する」の連発であったことを付言致します。 なお、答弁も含めた議事録の公開は、9月になります。 次に、産学官の連携についてお伺い致します。 「新世紀おかやま夢づくりプラン」で言えば、「時代を切り開く産業フロンティア県政」に該当しますが、国策として、「科学技術創造立国」を標榜する現在、基礎研究の充実を大学に、その研究成果の活用を企業が行い、産業を振興し世界に貢献するため、「科学技術基本法」や「産業技術力強化法」が成立し、民間に対する大学の研究成果の技術移転促進に、制度や予算面で、支援体制が取られつつあります。 また、企業の集積とそれを核とした大学や産業支援機関との交流・連携を前提にした地域経済の発展形態である「産業クラスター」論が盛んになってきました。要するに、ネットワーク型の産業組織を前提に、競争力強化の方向を模索し、イノベーション能力や新事業創出能力を産み出し、産業振興に結びつけることが、地域の生き残り策と言うことです。 換言すれば、「産業クラスター論」は、その根本精神において、従来の国土開発の基本である「均衡ある地域の発展」を全面否定し、「地域の特色ある発展」に、シフトしたことが特徴で、いわば護送船団方式から、地域間競争を勝ち抜きたい、そんなやる気のある所が、早い者勝ちになる、そういった施策といえます。 ただ、「産業クラスター」の定義自体が、非常に曖昧で、立場によって、指し示す内容が違うのではないか、という疑問があります。中国経済産業局、企業、財界のイメージはそれぞれですし、文部科学省の知的クラスターとの概念の混同、あるいは、高度成長期のテクノポリス構想の焼き直しが見られます。 この「産業クラスター」概念のとらまえ方の違いで、例えば、岡山県の取るべき施策は、全く異なってきます。そこでまず、重厚長大の時代のコンビナートから、「産業クラスター」に変遷していくと捉えた時、我が県の「産業クラスター」をどことイメージすればよろしいでしょうか。知事にお尋ねします。 そして、思うに、「産業クラスター」構想の根幹には、産学官の連携がある、否、「産業クラスター」の成否は、まさに、産学官連携の成否にかかっているのではないでしょうか。 このことから、中国経済産業局の音頭取りで、本年2月2日に行われた「中国地域産学官連携サミット」では、「中国地域発展のための産学官連携マスタープラン」が、採択されています。ちなみに、マスタープランでは、中国地域が、「世界有数のイノベーション型産業基地」と「世界のモデルとなる循環型社会の形成」を実現するため、5つの方針と3つの目標が掲げられ、地域全体で協働して、産学官の連携を実行していくことが、確認されました。 特に方針の中では、「社会・組織におけるチャレンジ文化の形成」、「イノベーションを担う人づくり」が掲げられ、「意識改革」と「人づくり」という観点から、産学官の連携を捉えたのが、特長的です。 まず、このマスタープランについて、知事のご所見を伺います。 ただ、大学が学術的な視点から研究し、この視点と企業の経済的な視点が融合して成果を上げる、「産学官」協力の重要性は度々指摘され、国でも、様々な機関や審議会が、様々な提言や答申を行い、提言を踏まえ、組織造りや促進施策も実施されてきましたが、なかなか日本社会全体の意識変革に至っていないのが現実です。 こうした観点から、産・学・官それぞれについて質問させて頂きます。 まず、「産」について。 米国では、大学と企業の包括提携が盛んですが、日本では、企業との関係も教授など個人の努力に依存し、組織としての取り組み不足である、と、産学官連携不振のその理由を大学に求めることが多いのですが、実際には、大学で生まれた技術の芽、可能性に自分の問題として、投資をしない産業界の責任も大きいと言われています。 そのためには、、制度として、学に対して、産の側から、ニーズを伝えていく仕組みも必要ですし、例えば、学の持つパテントを事業化するための制度的な人的、情報的、金銭的支援体制が必要です。さらには、ベンチャー精神・チャレンジ精神を背景にした挑戦型社会経済システム構築のための税制面の優遇等のバックアップは、当然に必要です。 まず、官として、産学連携につき、産の側に、どのような働き掛け、刺激策、支援策をとられていくのでしょうか。商工労働部長にお尋ねします。 次に、「学」について。 国立大学の独立行政法人化、最大の課題になる文部科学省の予算の獲得を見越して、1998年施行の「大学等技術移転促進法」に基づき、大学の研究成果と企業を結びつけ、経済を活性化する技術移転機関(TLO)の設立が全国で相次ぎました。 研究成果が移転され、実用化されてベンチャー企業など新産業の育成につながれば、大学にとっては、その技術供与で得た利益を研究費に充てられますし、新たな雇用の受け皿にもなります。 岡山大学も、日本の国公私立トップ30大学を世界最高水準に育成するという「遠山プラン」に先立ち、2000年に、「21世紀の岡山大学構想」をまとめ、「大学院重点大学」志向を鮮明にしました。 しかし、TLOが、大学が研究開発や学生確保で競い合うことを示す象徴的な存在であると言われ、山口大学が、べンチャー企業創出に取り組み実績を上げているのに比べると、岡山大学は、TLOを作り、県内産業界と交流促進するのが遅れていると言われています。 「学」には、優れた技術シーズの創出と公開が望まれますが、知を伝える学にとって、産との連携は、本来的な活動ではないという意識の改革がまず必要です。 かなり大胆な大学内の改革が同時並行的になされないと、「大学の空洞化がもたらす地方産業の空洞化」という深刻な事態になるのではないか、そんな恐れもあり、ひとり大学だけの問題ではありません。 まず、TLO設立につき、どのような支援をされていくのでしょうか。また、中国経済局は、3年で200社の大学発のベンチャーを目指しているそうですが、実際、どれだけ出てくるでしょうか?また、そのための環境整備、その支援は、いかようになされていくのでしょうか。さらに、学科内の研究室の連携はもちろん、県立大学、私立大学との連携も含めた地域内の学学連携が重要ですが、どう後押しされるのでしょうか。併せて、商工労働部長にお尋ねします。 また、こうした連携の仲立ちをするのは、岡山情報ハイウエイだと思いますが、各大学でどのように利用されているのか、とりわけ、それが、若い研究者の参加にどう結びついているのでしょうか。企画振興部長にお尋ねします。 次に、「官」について。 「官」は、技術開発の方向づけ、すなわち、重点分野の設定、基本的な仕組みづくり、研究開発の支援の実行が望まれます。この場合の官は、研究開発施設や工業技術センターだけを意味せず、行政そのものでもあります。税金からなる予算を使うことだけではなく、チャレンジ精神で、自らが新ビジネスを創っていくという、意識改革が望まれます。 まず、行政の持つ「研究開発施設」「試験研究機関」の計画的・戦略的形成を図るために新たな組織を設け取り組まれていますが、今回は特に、生物科学総合研究所について、産学官連携の流れの中で、今後どのような役割を担っていくのでしょうか。農林水産部長にお伺いします。 また、昨年3つの財団が統合して岡山県産業振興財団ができ、産業技術支援については、外部から優秀な人材が集まられていることは存じ上げていますが、会社からのご出向の方は、いずれ帰っていかれます。産業技術に関する自前の人材の育成について、どのような方針をお持ちなのでしょうか。 また、官官連携も重要になります。県と市町村間はもちろん、学会等で連携する学に対して、県境を越えた官、すなわち地方自治体同士の産業に関しての連携システムも、重要になりますが、この点、どのようにお考えでしょうか。 また、産と学、ベンチャーキャピタルとを結ぶためには、アイデアコンテストのような行政の仕掛けも必要ではないでしょうか。特に、児島湖の浄化、福祉機器など、環境や福祉を通しての産業育成を行政が誘導すべきだと思いますが、いかがお考えでしょうか。以上、商工労働部長にお尋ねします。 この項、最後に、産学官のコーディネーターについて商工労働部長にお伺い致します。 まず、我が党が進めているNPO法の改正が実現すれば、12分野に加えて、起業支援や科学技術の振興などが、活動対象になる見通しです。NPOは、組織の性格上、過度に利益を追求せず、起業を取り巻く様々な関係者の中でも中立的な立場を保てるということで、利益第一目標の投資会社と異なり、大学や地域社会、行政などとベンチャーを取り持ち、地域の活性化や雇用創出のきっかけ造りにも貢献できる役割を果たしうると思います。 こうした起業支援NPOをどのように支援されていかれるのでしょうか。 また、この度、外部から、行政の枠組みを越えた自由で大胆な発想による政策立案と、それを実行するための民間人材を任期付きの「産業戦略プロデューサー」を採用されています。民間企業のノウハウと人的ネットワークを生かし、現実の問題点の整理と今後の施策の方向性についての調査研究を行うということですが、その範囲は、商工の全分野に及び、あたかも、岡山県商工の総合プロデューサーですが、組織上どう位置づけられ、どう後進を育成され、どこまでの権限をお持ちなのでしょうか。 加えて、産学官コーディネーターには、大きくプランするコーディネーター、プロジェクト・コーディネーター、個別専門的なコーディネーターの3タイプのコーディネーターが必要であると言われていますが、産学官コーディネーターをどのように養成され、支援されていくのでしょうか。 | ||
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