2003年11月26日(火)
【この際、森づくり条例の創設を!!】

 最近、私は、連続テレビ小説「てるてる家族」に、はまっておりまして、毎朝、新聞を読みながら、NHKBS2で、朝7時30分から楽しみに観ておるわけでございます。

 ひとつには、主演の石原さとみの黒髪と太い眉とぼけ具合いが、日本人らしくて、とてもかわいい!!のと、落語的な脚本が非常に良く出来ていることと、なにより、登場人物が全て前向きで、多少なりとも能天気なのが良いのでございます。

 時々、ミュージカルのように脱線するのも、これまた、洒落が利いています。

 じゃりん子チエは、かく語りき。
「明日は明日の太陽がピカピカやねん!!」


 つまりは、批判するのは容易いですが、しかし、それを前向きに捉えなあきまへんな、「こころ」も脱線しながらも、前向きでないとつまらんがな、と思う今日この頃。


 要するに、森林保全税の問題です。

 本日、この春に、森林「環境」税を導入した高知県を日帰りで訪ねました。桂浜に行くような間はありませんでした。晋作ファンですから良いのですが。

 おりしも、高知市は、県知事選挙と市長選挙の真っ最中ですが、概してこういう時の方が、職員の方は、余裕があるようです。
 かなりじっくりと話を伺うことが出来ました。

 結論を先に申しますと、二番煎じの岡山県の森林保全税は、明らかに問題があるということです。正直に書いて、情けないぐらいに、戦略がありません。
 しかし、それらを全て払拭する手段があります。

 岡山県には、唯一他県にない優位性があります。すなわち、基本的に、水源が県内で自己完結していることです。
 だからこそ独自に言えることがあります。

 それは、都道府県としては、全国初の「森づくり条例」を制定することです。私は、それを提言したいと思います。



 それにしても、高知県の森林環境税の検討の経過は、驚くほど岡山県の流れと同じです。いや、むしろ、滑稽なぐらい、岡山県は、丸々1年遅れで、高知県の辿った道を歩んでいます。

 いわく、課税自主権が認められた地方分権一括法施行後の12年度に、全国的にブームのように新しい税財源の研究が始まりました。

 はっきりと申し上げて、そこには、まず、新税ありきで、新しく課税すること自体が目的で、各自治体とも、増税の仕方を血眼になって追及したのです。

 いかに痛がらせずに、羊の毛を剥ぎ取るかが問題なのじゃ!が、行政の考える課税の基本ですから、知恵を競い合っているわけです。

 プレジャーボート税等様々な税財源が考えられましたが、課税コストの問題から、結果として、三重県が、産業廃棄物税、高知県が、森林保全税を「成功」させたわけです。
 敢えて言えば、岡山県は、二番煎じです。

 今まで、法人に課税しようとか、他所の県民に課税してやれという発想はありましたが、高知県が、森林保全の名目に、自県民に広く薄く課税することに成功したことは、総務省的には、でかしたぞ!ということです。



 ただ、ここで特筆すべきは、高知県の特殊性です。具体的には、水に対する意識です。

 すなわち、早明浦ダムを引き合いに出すまでもなく、仁淀川や吉野川の分水が出来る12年度までは、冬場には、毎年渇水になることから、そもそも、水のありがたみを体感しており、橋本前知事も、もとはといえば、四万十川のダム問題を争点出てきたわけです。

 そして、降水量が変わらないのに、年々渇水になるのは、水源がある森に問題があるのではないか、そういう意識が、常にあるということです。ゆえに、森林保全のために投資するということに、大きな抵抗はなかったということです。

 翻って、岡山はどうでしょうか。そもそもの水源かん養にどれだけの切実さがあったでしょう。
 いわんや、森林まで思いが至るかどうか・・・。


 そして、少なくとも、橋本前知事は、明らかに、意識啓発のための課税と考えていました。後述しますが、1億4000万円の財源では、なにも出来ないのは、前知事もわかっている、しかし、県民が500円払うことをひとつの啓発、もっと言えば、高知県の宣伝と考えたのです。

 失礼ながら日本一の貧乏県と言われる高知県が、その素晴らしさを全国発信する、これは、立派な戦略だと思います。

 言うまでもなく、「環境先進県高知」のアピールは、成功しました。県民は、500円で、その誇りを手に入れました。
 ただし、これは、フロントランナーだから、そう言えるのです。
 二番手以降は、目立ちません。


 もちろん、高知県の森林保全税も、まずは、法定外目的税としての水源かん養税として検討され、しかし、その課税方式で、根拠不明(敢えて言えば、豊田市がそうだったから)の1tあたり1円の水道課税方式は見送られ、県民税超過課税方式に落ち着きました。

 そして、様々なアンケートやシンポジウムの結果、超過課税は、個人も法人も、500円になりました。
 そして、基金を設置し、第三者委員会を設置し、使途に縛りもかけました。
 こういった議論は、昨年の12月までに行われています。
 岡山県は、まともに、これを追っかけています。

 ただ、敢えて言えば、高知県も、課税という目的のために、現実的な対応をしていたらこうなった、ということで、こういうストーリーに、ならざるを得ないのかもしれませんが。



 特筆すべきは、今年の2月定例会で、条例と「予算議案が同時に」通ったことです。言い換えれば、課税をする条例を通すのと同時に、使い道を決めた予算も同時に通したのです。
 これは、当たり前のことです。

 新税検討プロジェクトチームのメンバーと基金運営委員会のメンバーも当然だぶっていますから、常に課税と使途は裏腹のものとして、意識されて議論されていました。

 ところが、岡山県は、12月定例会に条例案を出すばかりに、時機尚早なのかどうなのか予算が示されていません。ただ課税しますという条例だけ通そうとしています。
 実はこれはへ理屈で、高知県では、昨年の12月の時点で、「見做し予算」として、示されていたのです。

 厳しい言い方をすれば、岡山県の森林保全税は、高知県の森林環境税の表面をなぞった換骨奪胎の代物と言えるかもしれません。



 ここに興味深いデータがあります。

 高知県が、実際に、1億4000万円の予算で、どれだけ間伐できるのか、という話です。

 実は、高知県は、新税は啓発活動に当てるものとして、そもそも間伐を考えてはいませんでした。
 これだけの財源で出来ることは、たかが知れているからです。

 具体的には、人工林293000ha(自然林169000ha)のうち、資源の循環利用林、要するに、木材生産をする森は、184000ha。水土保全林すなわち、保安林として、公共事業の対象になるものが、79000ha。それ以外の普通林が、推計30000ha。

 このうち、私有財産の価値を増すことになるので、資源循環林と、また、公共事業のある保安林とを除いた、つまりは、林道から遠く離れて、荒れ放題の、にっちもさっちもいかない個人所有の普通林だけを森林環境税が対象とする森林としました。

 そして、1haあたり、30万円費用がかかるため、5年間を逆算して、1500haについて、森林環境保全事業の対象にすることにしました。普通林の20分の1です。

 そして、本年度は、そのうちのとりあえずは、90ha程度を施行します。

 その90haの施行地の決定もたいへんな手間で、DMの発送、アンケート調査、候補地の調査、所有者への説明、基金運営委員会の判断、協定締結、県が発注・・・・と、なります。

 つまり、普通林30000haのうち、今年度、施行できるのは、90haといった雀の涙程度なのです。

 しかし、これで良いと言うのです。

 すなわち、水源は、基本的には通常目に届かないところにありますが、県民に分かり易いとこを絞り込んで整備します。
 もっと言えば、間伐予定地から逆算して、課税額を決めること自体、不可能であると割り切っているのです。

 逆に、公共事業の対象か、森林環境税でいくか、明確に錆分けするという議論は、ドツボにはまる議論です。

 つまりは、啓蒙であり、もっと言えば、11月11日の「こうち山の日」の推進や、30校3000人の中高生を森林に連れて行くことは、間伐以上に重要だという考えです。

 少なくとも、森林環境税で、地域の産業振興を図ろうとは考えていません。

 もっと言えば、間伐ボランティアは、登場しないだろうが、地域の里山を守ろう、そう思い至るだけでも意味がある、ということです。

 しかし、岡山県は、実は、こういった数字すら示せていないのです。間伐は、これだけしか実施できないけれども、象徴的に、こういう地域をこういう手法で間伐することで、こういう啓蒙効果があると開き直ることすらできていません。
 堂々と、課税は、啓蒙以外の何物でもないんじゃ!と言い張るのも手です。


 おそらく、岡山県の二番煎じの森林保全税は、このままでは大きな議論を呼ぶことなく、単なる追加課税になることでしょう。
 あるいは、高知県の3倍強の予算をもってしても、環境先進県としての称号や、森林保全のために拠出している県民の自覚や誇りを得ることが出来ないかもしれません。

 しかし、どうせ、多数決で条例が通り、500円取られるならば、例えば、愛媛県が、高知県の二番煎じはしないぞと気を吐いているように、岡山県は、岡山県で、この際、とことん、県民の皆様に森林に関心を持って頂かなくては、反対してきた立場としてはおもしろくありません。

 どうせやるなら、岡山県は、物凄いもんじゃ!と他県から言われないと、やりがいがないわい!そのことに県民が誇りを持てなくては。


 というわけで、「森づくり条例」の創設を提言するわけです。精神条例的に、家庭、職場、学校、地域で、森林保全の努力義務を課し、とりわけ、森林保有者に対しては、道義的な第一次的な保全義務を課すというものです。
 高知県も、二の足を踏んでいます。

 そこまで踏み込んだ条例は全国に例がないだけに、やるならそこまでやってしまえ!と思うのです。森林保全は大切なのだから。

 それに反対には違いないが、どうせもうやる言うんなら、こうせられ〜、ということです。
 どうあれ出てくる現実には対応していかなきゃどうしようもないです。
 そういうのもまた、政治の世界でしょう。


 ブルースカイブルー〜。しかし、真夜中に、元気だなぁ・・・。

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