2003年6月15日(日) 【三位一体の改革】

 いよいよ明日からは、改選後初の6月定例会。いやがうえにも気合いが入ります。その前日に、かなりおもしろくない内容でかつ非常に長く失礼いたします。

 しかし、地方財政改革において、極めて重要な話で、基本中の基本のことです。この中で、県政は動いています。


 さて、思い起こすと、片山総務大臣には、私の結婚式で頂戴したスピーチ以来、様々な場面で、「顔が大きくて、足が短いのが同じ」とおっしゃって頂いており、本当にありがたい限りです。
 現職の大臣に、ちょくちょくお会いできるのは、地方議員として僥倖であると思います。

 また、大学の先輩でもあるゆり子夫人は、本当に素晴らしい方で、正直に書いて、私達夫婦は、夫人の熱狂的なファンであると言っても過言ではありません。
 選挙の時には、お連れしてまわるのが嬉しくて嬉しくて仕方ないというのは、共感される方が多いかもしれません。

 そう言えば、片山総務大臣と言えば、「三位一体の改革」です。


 そもそも、小泉内閣が誕生した2001年6月に、経済財政諮問会議は、「今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針(骨太の方針第1弾)」を発表し、その中で、地方の自立と活性化のために地方財政制度の改革が提案され、小泉内閣の政策の柱の一つに「地方財政改革」が位置付けられることになりました。

 そして、2002年6月には、基本方針の2002年版が経済財政諮問会議から発表されました。(骨太の方針第2弾)

 その中では、まず、2002年中に福祉、教育、社会資本などを含めた国庫補助負担事業の廃止・縮減について結論を出すこと、さらに、「国庫補助負担金、交付税、税源移譲を含む税源配分のあり方を三位一体で検討し、それらの望ましい姿とそこに至る具体的な改革工程を含む改革案を、今後1年以内を目途にとりまとめること」が決定されました。

 つまり、本年6月までに、骨太の方針第3弾の中で、 「三位一体の改革」案をつくることが、内閣の方針として閣議決定され、今日に至っているわけです。


 そして、ご案内の通り、今まさに、この国と地方の財政に関して、首相が提唱するこの「三位一体の改革」を巡り、財務省VS総務省さらには、国庫補助負担金に関係する省を加えてのバトルが、繰り広げられています。

 片山総務大臣は、まさに地方の期待を一身に担って、戦われておられます。地方議員としては、ここはまさに、片山総務大臣に踏ん張って頂きたい、心の底からエールを送らさせて頂くものです。


 「三位一体の改革」とは、要するに、国が地方に支出している「国庫補助負担金」と「地方交付税交付金」を削減して、国の歳出削減を進めて、代わりに一定の税源を国から地方に移譲しようとする試みです。

 地方からすれば、あくまで基本は、地方分権一括法施行後、対等協力関係になった国と地方の関係において、「税財源を国から地方へ渡す」ことにあります。

 否、正確には、本来地方のものである税を国から地方に返して頂くということです。当然のことです。


 現在のシステムでは、国と地方公共団体の仕事の分担は2対3となっているのに対し、その経費を賄うための税の配分は、逆に、国税3に対して、地方税2の割合になっています。

 この差を埋めるために、国は、国税として集めたお金の中から、「国庫補助負担金」や「地方交付税交付金」といった形で地方に財源を渡しているのです。

 ちなみに、「国庫補助負担金」には、老人医療や義務教育など国も費用を負担すべきものに支出する「国庫負担金」と、国が政策を誘導するために支出する「国庫補助金」の2種類があります。

 「地方交付税交付金」は、地方自治体の間の財政力の差を埋め、すべての自治体が一定の行政サービスを確保できるよう、国が総務省を通じて配分する資金と言えます。
 地方交付税交付金は、補助金と違って使い道は限定されません。

 地方にとってありがたいのは、自由に一般財源として使える地方交付税交付金ですが、例えば、措置費から支援費の移行に伴う障害者施策のように、一般財源にしたら、地方が本当に続けられるのか、不安なものもあります。(その 1075、1127【障害児(者)地域療育等支援事業について】参照。)


 しかし、こうして法令や、国庫補助負担制度により、国が地方をしばることで、全国どこでも似たような行政を提供しようとするシステムになり、これでは、無駄も多く、真の地方自治は、育ちません。
 少なくとも、国庫補助負担金の廃止ということ自体は、地方分権の流れの中で、否定できるものではありません。

 国から地方への税源移譲は、こういった構造を改革する意味があるのです。たとえ、国庫補助負担金や地方交付税が減らされても、本来の税源を地方に戻す、それが、地方にとっての「三位一体の改革」の意義であるはずです。

 地方とすれば、国庫補助負担金や地方交付税交付金が縮小される代わりに、自主財源を得て、地元のニーズに見合った歳出に自由に振り向けたいのです。


 そして、いわゆる「片山プラン」は、当面、国税・地方税の比率を1対1とすることを目指した税源移譲案です。
 教育、福祉、公共事業など国が使い道を指定して地方に渡している国庫補助負担金を5.5兆円カットし、地方税に移す。具体的には、国の所得税を減らし、地方の住民税を増やしたり、消費税の地方分を増やす。
 さらに、地方財政の健全化を進め、第2段階として地方交付税を減らして、そのかわりに地方税を増やすことによって、国税・地方税を1対1の比率にする、というものです。


 そこで、なぜ、これが、財務省VS総務省VS国庫補助負担金に関係する省の三すくみの戦いになるのかということです。

 地方交付税交付金については、財務省は、地方交付税交付金で自治体の財源を保障する制度そのものを廃止・縮減するよう求めていますが、地方交付税交付金の権限を通して、地方自治体への影響力を保持したいのが、総務省です。

 ただ、国庫補助負担金の削減では、両省の立場はほぼ一致しますが、公共事業や教育などの補助金を通して、地方への関与を維持したい国土交通省、農水省や文部科学省などの事業官庁が族議員と一緒になって反対の立場を取ります。

 一方で、なぜか財務省寄りの政府の「地方分権改革推進会議」(議長・西室泰三東芝会長)が、地方税・財政の「三位一体改革」に関する意見書で、中央から地方への税源移譲を先送りしたことで、東芝と県との取引を見直すとの鳥取県片山知事の発言が、物議をかもしたりしています。


 ところで、地方財政改革、とくに税源移譲の問題は、これまでの中央集権的な財政構造を地方分権型の財政構造に根本から改めようとするものなら、まさに、その中枢の財務省の力を削ぐことが改革の基本になります。

 仮に、地方をしばるの国庫補助負担金が削減されても、削減分の7割しか税源移譲しない、あとは地方でどなんかせぇ、という塩川財務大臣の提案では困ります。税源移譲が、地方の歳出削減努力が前提であるとしても、果たして、ここから何がどう有効に削減できるのか。
 当面、片山総務大臣の言われるように、全額、財源措置が必要です。無理なものは無理です。

 また、財源も、たばこ、酒税、揮発油税の税源移譲ではいかにも厳しいです。やはり国税である所得税などの基幹税に踏み込んで頂かないといけません。1対1にするためにも。


 しかし、一方では、地方に税源移譲されても、税源が乏しければ移譲されたとしても地方財政は賄えず、結局は、地域経済を活性化し、税収を増やす条件にすぎないということでもあります。
 どうあれ、地方の努力は必要です。

 また、義務教育の国庫負担をどうするかだの議論は、すぐに答えが出るはずもありません。


 いずれにせよ、今月が勝負。「三位一体の改革」の議論には注目です。極めて重要な話です。


 なお、近々に、岡山県財政について、シリーズ化しようと思います。益々おもしろくない内容になるかもしれませんが、どうかお許し下さい。

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