2001年6月5日(火) 【PFIってなんなら?】 | ||
本日は、朝から本庁に出掛け、一般質問の打合わせ。今回も、NPOについて、暫定的な支援センター設置や、ワンストップの情報窓口(ネット上に)についてなどは、少し進む予定です。
さて、岡山リサーチパーク・インキュベートセンターに「PFI」の手法を導入するのは良いことだ、などと簡単に書いてしまいましたが、実は、「PFI」の概念の認識が、もうひとつ不十分だったため、再度、学習して参りました。 ちなみに、岡山県には、総務部財政課の横に、「行政改革・PFI推進室」というのが、あります。 こういうカタカナ用語は、今更よく知らないんです、というのは、とても勇気が要るのですが、これは確かに、ややこしいです。勉強になりますが、かなり面倒くさいです。 PFI(Private Finance Initiative、プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)とは、公共施設等の建設、維持管理、運営等を民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用して行う事業手法です。 「民間資本等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」が、平成11年7月に制定され、平成12年3月にPFIの理念とその実現のための方法を示す「基本指針」が、民間資金等活用事業推進委員会(PFI推進委員会)の議を経て内閣総理大臣によって策定され、PFI事業の枠組みが設けられました。 イギリスなど海外では、既にPFI方式による公共サービスの提供が、実施されており、有料橋、鉄道、病院などの公共施設等の整備等、再開発などの分野で成果を収めています。 従来の公共事業との違いは、公共施設等の建設、資金調達、維持管理、運営等につい公共が直接実施していたものを、民間事業者に委ねることにあります。 民間の資金、経営能力、技術的能力を活用することにより、国や地方公共団体等が、直接実施するよりも効率的かつ効果的に公共サービスを提供できる事業について、PFI手法の導入が考えられます。 ちなみに、PFIの事業主体は、公共施設の管理者等ですから、国(各省庁の大臣)、地方公共団体(都道府県知事・市町村長)、特殊法人等の公共法人ということになります。 また、PFIの対象施設は、公共施設(道路、鉄道、港湾、空港、水道、下水道、公園等)、公用施設(庁舎、宿舎等)、公益的施設(公営住宅、教育施設、医療施設、駐車場、地下街等)、「その他の施設(情報通信施設、新エネルギー施設、リサイクル施設、観光施設、研究施設)」になります。 これで理解できる方は、本当にたいしたものですが、もう少し、具体的に書きます。 そもそも、PFI手法でないとどうなのか、という前提が、普通まずわかりません。 「大規模施設建設事業評価要綱」の改定で、普通会計からの県負担が10億円を超える事業については、事前評価が必要で、議会や県民のご意見を聞きながら、大規模事業評価委員会の総合的な評価調書が提出されます。 それを受けて、知事を本部長とする大規模事業検討調査会議が、決定するという流れです。 そして、25億円以上のものは、WTOの関係もあり、外国の方も加えながら、一般競争入札をするということですが、これは、少なくとも、設計、工事、管理の3段階の入札があります。 要するに、この3段階を一回にまとめてしまえ、一括して設計・施工・管理を民間業者を任せてしまうのです。 もっと、具体的に書くと、こういうイメージです。 公共として必要な施設、ここでは例えば焼却炉を県有地に立てることになりました。 民間事業者(以後、PFI事業者)からアイデアを募り、意に沿うものがありました。20年から30年の長期のPFI契約を県とPFI事業者は、結びました。 県は、そのPFI事業者に、土地を無償で貸与します。PFI事業者は、自ら資金調達し、設計・施工・管理をするゴミ焼却施設を造りました。 そのできた施設を県は、借り受けます。もちろん、サービス購入費の中には、維持管理費や建設費が分割で含まれます。 県は、元手はありませんでしたが、分割払いで、事実上焼却施設を手に入れました。なお、PFI契約終了時は、PFI事業者が、更地で返す、無償で県に譲渡する、様々です。 さて、PFI事業者は、民間のノウハウを入れ、様々な試みをします。もちろん、PFI契約は、ゴミ焼却という目的があるのですが、その県との契約以外に、PFI事業者独自に、余熱で、温水プールを経営することにしました。その儲けは、自分のものです。 ざっと、こんなイメージです。 PFI事業のプロセスは、特定事業の選定→事業の発案→実施方針の策定及び公表→特定事業(PFI事業)の評価・選定、公表→民間事業者の募集及び選定→協定等の締結等→PFI事業の実施→事業の実施、サーベイランス等→事業の終了です。 例えば、県下で真っ先にPFI手法が導入された岡山市の当新田の温水プールは、温水プールという市の事業に、PFI事業者が、他のトレーニング施設も加えて、施設を建設とのことで、現在、「民間事業者の募集」という段階。 また、倉敷市のごみ処理施設は、一般廃棄物処理義務のある倉敷市の事業に、PFI事業者が、ガス化熔融炉で、産業廃棄物も焼却し、サービス委託料に、プラス利益を生もうという構想です。 PFI手法は、ゴミ焼却プラス発電など、廃棄物処理施設建設には、特に馴染み易い手法と言えるかもしれません。 ただ、PFI手法は、大きな問題を含んでいます。 そもそも、この手法は、長期にわたる民間と公共のリスク分担という問題があります。民間にしてみれば、「母屋を借りて庇を乗っ取られる」この契約は、保険をはじめ、物価の変動など、リスクがかなりあります。 法律的にも、あらゆるトラブルを想定した契約書(例えば、施設内の備品で県民が怪我をしたら県の責任を問えるか?)が必要で、物凄い厚さの契約書になるそうです。PFIアドバイザーという新職種が、重要な役目を果たします。 いずれにせよ、民間事業者にとって、儲かるぞ!!という話のようには思えません。 また、現行法では、PFI事業者へのサポート制度が、十分にできていません。例えば、一口に資金調達と言っても、行政そのものではないのですから、公的補助の情報が十分ではないし、金利も安くなりません。国庫補助事業か、県単独事業か、県ならば、あるいは起債をし、地方交付税で埋めるという計算も立ちますが、民間で使える手法ではありません。 かえって、入札で受注する方が、楽なのではないでしょうか。 逆に、県は、施設自体が民間事業者の施設ということになれば、当然、固定資産税を支払わないといけません。ご案内の通り、不動産取得税は県ですから、まだ良いのですが、なんで市町村に、いわば県の公共施設が、固定資産税を払わねばならないのか。ここらも、法整備ができていません。 また、リスクを負うPFI事業者としては、ここで、PFI契約以外の付帯事業で儲けたいと思い、頑張った挙げ句失敗。そこで、目的の事業もできなくなった、という事態には、どう対応するのか。 意外と市民、県民にもリスクがあります。 加えて、一般入札で、価格の一発勝負でなく、総合評価方式と称して、学識経験者などからなる審査委員会が、事業者の選定をする、その公平性、公正性、透明性は、どう担保されるのか。 今、PFI手法の先進県は、神奈川県であるとのことですが、岡山県にも、前述の岡山市と倉敷市の先駆事例があります。市町村が、岡山市、倉敷市に、どれだけ追随するでしょうか。 個人的には、市町村や、民間事業者の方に、どれだけメリットがあるのか、様子見という所ではないかな、と思います。 いずれにしても、PFI手法導入云々は、県としては、岡山リサーチパーク・インキュベートセンターぐらいで、県立図書館、県立病院も、ともに、実施設計の段階に入っているので、PFIは、既に関係ありません。 大規模事業凍結中で、PFI手法に見合い、民間に利があるような話は、なかなか、今後議論にならないかもしれません。 こんなに書くのなら、一般質問にすれば良かったです。質問しませんから〜と、お話を伺ったのでした。 いかん、質問原稿を書かねば!! | ||
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