2007年10月17日(水)
【基礎自治体にとって道州制とは】

 行財政改革・道州制等特別委員会県外調査2日目。福岡県庁で、九州における道州制の検討状況について伺いました。

 九州地方自治会も、九州経済同友会も、九州経済連合会も、平成17年の5,6月に、道州制についてのそれぞれの構想やまとめを公表されており、「九州はひとつ」の理念のもと、九州商工会議所連合会や九州経営者協会も加わって、九州地域戦略会議道州制検討委員会が動き出しています。歴史的文化的経緯も尊重し、沖縄県がオブザーバーで入っているのも、特徴的かもしれません。

 答申も出されて、九州観光推進機構のように、政策連合として具体的に動いているものも数多くあり、かなり先駆的に道州制が動いているように見えます。


 ただ気になるのは、九州「道」の場合は、北海道「道」同様、いわゆる道州の区域割りについては悩みが少なく、また、州都を考えたときに、当然、福岡市しかないだろうという分かりやすさが、必ずしも、全てを円滑にしないということです。

 昨日の関門特別市構想も、そうした状況の中で、北九州市が都市間競争の中で生き残る方策のように思えますし、例えば、熊本市が政令指定都市を目指すのも、新幹線がいずれ博多から鹿児島まで直通になる中で、いわゆるストロー現象でかえって福岡市一極集中が起きるのではないか?という危機感が根底にあるように思います。


 また、今朝の地元地方新聞によると、九州市長会が、九州「府」構想推進研究会を発足させたようですが、この根底には、道州制が実現した場合に、市町村といった基礎自治体の役割が、必ずしも明確でないという不安があるように思います。

 地方の二層制が、県・市町村から、道州・市町村に変わったところで、なにがどうなるのか、大切なのは、いかに県から基礎自治体に権限や財源が移譲されるかにあるのに、それに道州制の議論はいまだ応えていないのではないか、というのは当然の疑問です。
 「州」でなく、「府」とするところに、そういった思いがあるのかもしれません。


 市町村にとって、道州制とはなんなのか?これは、大きな論点ですが、州都議論と相俟って、私の質問は、答を濁らされました。

 おりしも、我が党が、道州制を推進させる研究会を立ち上げましたが、道州制の議論の中で、中央官庁が暗躍して、結局は、不要になった国と県の組織や権限を上下から吸収させるだけの組織に道州をしてしまうなら、地方分権と似ても似つかぬ新しい中央集権体制でしかないではないか。こうした観点で、地方議員は敏感に国の動きを見ていきたいと思います。

 少なくとも、道州制になるということは、県議会議員は全員解職、例えば新たに10万人に1人程度の州議会議員が生まれ、国会議員は、現在の例えば5分の1以下になっても良いという議論です。
 国会議員の先生方にも、職を辞する覚悟で議論して頂かないと、気がつけば、市町村・県・国の三層構造が、市町村・県・道州・国の四層構造になって、屋上屋に仕事を重ねて、公務員が増えるだけの結果になってしまいます。

 ともあれ、基礎自治体に、どこまで、国や県の権限や財源を移譲できるかが、真の地方分権のメルクマールです。




 ところで、昨年から指定管理者制度を導入したということで、海峡館に立ち寄りました。我が委員会は、指定管理者制度も付託事件にしているのですが、単純に水族館と見れば、いささか視察先として、申し訳ないようにも感じております。

 もともとが、建て替えに当たり、財団法人を組んで、市の職員を一切採用せず、純粋に民間的発想でやって来られて、導入後の劇的な変化はないものの、指定管理者を管理する行政に対しては、様々な思いがあられるようでした。特に、市議会開会中で、指定管理者サイドからすると、協定事項に入っていない県外調査の対応ということでありましたが、かえって生々しい話を伺うことが出来ました。

 123億4500万円の建設費で、開業5年で、1億円の黒字を出されており、倉敷チボリ公園と比べると、非常に思うところがあります。おそらく、同じ事業を公務員という形でやるとすれば、とても委託管理費に入館料等で収益は上げられないかもしれません。

 政令指定都市には、水族館が必要だが、下関市にあるので良いというのが、北九州市の発想のようですが、須磨や浜田や屋島や、なにより海遊館というのが、水族館のイメージで、翻って、岡山県には、大がかりな水族館は、玉野市営の海洋水族館しかないというのは、ちょっと寂しいです。

 加えて、壇ノ浦の合戦や巌流島の戦い、四国艦隊砲撃や日清講和条約といった関門海峡のようなドラマ性は、瀬戸内海にはないのかもしれませんが、中四国州を本気で言うのなら、例えば宇野と高松が、もっと連携していなければ、話にすらならないのではないかと思えます。
 今回の調査で一番感じているのは、それかもしれません。


 いずれにせよ、岡山県提唱の中四国州は、実現するためのその運動の展開に、あまりに具体性が欠けるように感じます。
 あるいは、玉野市が、政令指定都市・岡山市なら、少し発想が変わっていたのか、あるいは、変わっていくのかな、と思います。ともあれ、岡山県は、口ほどには、対岸をきっちり見ていません。




 余談ですが、こういった委員会の県外調査は、当然と言えば当然ですが、夜の食事については基本的に自腹であるため、それでも一日だけは、全員で、懇親会をすることが慣例です。
 昨日は、三井倶楽部で焼きカレーを食べ、ワインも飲み、夜の門司レトロタウンを散策したりしました。これは非常に風情がありました。

 ただ、委員長の個性で、連日懇談会をする委員会もないではないですが、私は、昼食以外に、県外での議員同士の会食を連日連夜行うよりも、基本的に夜は一刻も早く開放し、なるべく個々が自由に時間を使えるようにします。なにより、私が街を徘徊するのが好きだからです。

 本日のように、博多泊まりで、夜は全くの自由となると、通常は、屋台か中洲で飲み会なのだと思いますが、私の場合は、一人で、キャナルシティの一蘭でラーメンを食べ、今朝、小倉駅でたまたま見つけたビラを頼りに、先ほどまで博多座で、『レ・ミゼラブル』を観劇しました。

 アクロス福岡もそうですが、こういう思いつきで文化に触れることが出来ることが、大都会の凄さだと思います。もちろん、3500円の立見席でしたが、やはり本物を観たという感動がありました。
 9割方が女性でしたし、近隣の方ばかりとも限りませんが、こういう様々な楽しみが身近にあるのが実に羨ましいです。

 小雨が降っていて商店街を行くとあちこちにいわゆるホームレスの方々が。特に、2011年の大阪から鹿児島直通の新幹線開通に向けて、駅舎内の工事が進んでいるようです。
 こういうところにも大都会を感じます。

 もちろん、こうした街と同じ土俵で、タイマンを張り合うことができるはずもありませんが、岡山市は岡山らしい心が通う都会であって欲しいものです。

Copyright (c) 2007 SHINJI SATO Inc. All rights reserved.satoshin.jp