2007年6月9日(土)【目指せ政令市!明日のために
その1 『政令指定都市とはなんぞや?』】

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 介護事業所の指定を打ち切られる訪問介護最大手のコムスンの全事業が別の子会社に譲渡されるようなことは、岡山県としても拒否すべきだとは思いますが、気になるのは、福祉の現場だから、そもそもビジネス的な発想を持ち込んではいけないのだ的な主張が、したり顔にあること。

 コムスンが、弱い者を食い物にした・・確かに経営陣は、そうかもしれないけれど、現場の一線の方々までそうだったのかなぁ?そんな思いで、頑張れる職業でしょうか・・・。

 介護保険制度が、本当に真摯に頑張っている現場の方々にとって、激務の中でも、福祉への熱い思いを持続的に持って頂けるだけの安定した生活が確保できるだけのものに成りえているのかも、今まさに、問われるべきだと思います。福祉「事業」なのですから、小規模であれ、経営が成り立たないといけません。

 こういうことで、行政が、事業者性悪説に立って、細かい書類提出や説明を求めて、善良な事業者まで締め上げてくる方が、現場には辛いです。
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 「こころ」では、5年前に、【政令指定都市を考える】と題して、17回にわたり、集中的に政令指定都市の問題を取り上げてきました。また、悪意を持って意図的に流布され、2004年3月には「こころ」が休刊に追い込まれ、その時期、父も亡くなりました。思い出すだけでも、はらわたが煮えくりかえります。生涯忘れません。

 が、しかし、この問題については、私自身中心となって、岡山市を政令指定都市化の軌道に乗せることで、ケリをつけたく思います。逆に言えば、岡山市が政令指定都市にならねば、浮かばれないこともあります。気魄を込めて、ぶつかっていきます。


【その1 『政令指定都市とはなんぞや?』】

〈政令指定都市とは〉

  政令指定都市とは、人口50万人以上で、政令で定める市です。
(地方自治法 第12章 「大都市に関する特例」第252条)
 現在17市が指定されています。

 しかし、実際の指定は、人口概ね100万人程度、既存の指定都市に比べて遜色ない都市的形態、指定都市の事務を適切かつ能率的に処理することができる行財政能力等を勘案して指定されています。

 そして、福岡市の指定(昭和47年)以降、「将来100万人都市となることが見込まれる人口80万人台」で指定がなされてきましたが、政府の市町村合併支援プランにおいて、「大規模な市町村合併が行われ、かつ、合併関係市町村及び関係都道府県の要望がある場合には、政令指定都市の弾力的な指定を検討する。」とされ、「15年4月に合併予定の静岡市・清水市が人口70万人台であること等を勘案」し、「大規模な市町村合併を行う場合における弾力的な指定」の対象とすべきであると、片山総務大臣(当時)が明言されました。

 そもそも、法律上は、50万人で、政令指定都市になりうるのですから、正確に言えば、適切な運用がされておれば、岡山市は、とっくの昔に、政令指定都市であり、むしろ、倉敷市が、これから、政令指定都市を目指していたはずです。


 しかし、この運用上の基準が、曲者で、前回は、当時人口85万3000人の福岡市を指定するために、「80万人」に要件を下げ、以後、広島市、仙台市、千葉市が続き、当時は、静岡市・清水市の大都市同志の合併を後押しするために、「70万人」に、政策変更されたという見方があります。

 ただ、一般には、平成の大合併に際して、市町村合併を行った自治体には、期間限定で運用基準の緩和がなされることになったとされています。

 そこで、「70万人になれば政令指定都市」という、「70万人」が、一人歩きを初めて、全国で、政令指定都市検討ブームになった、というのが実情です。


 ここ最近でも、平成17年に、静岡市(4月現在・71万933人)が、平成18年に、堺市(同83万2959)が、そして今年4月に、新潟市(5月現在・81万2248)、浜松市(同80万8568)が、政令指定都市に移行しています。

 さらに、相模原市(同70万4767)と我が岡山市(3月推計人口・69万8946人、平成17年国勢調査・69万6172人)が、指定を目指し、さらに、約67万人の熊本市はじめ、全国10箇所(姫路、水戸、宇都宮など)が構想を進めています。

 ちなみに、平成4年に、人口82万9000人で、政令指定都市になった千葉市は、3月現在で、93万1544人。平成15年に政令指定都市になった、さいたま市(旧浦和市・大宮市・与野市)」の人口は、118万8071人。

 ひとり岡山市だけが、政令指定都市化を叫んでいるわけではありません。また、逆に、目指していることを公言しているからには、なれなければ、都市間競争の負け組に入り、全国に、岡山市の恥をさらすことになるというのも、こういう意味です。
 ファジアーノ岡山のJリーグ入りと同様、1ランクも2ランクも上を目指さなくてはいけません。


 ところで、人口63万人であった岡山市は、玉野市・灘崎町との合併が不調に終わり、御津町、瀬戸町・灘崎町、建部町と順次合併を行い、現在「約」70万人まで漕ぎ着けています。

 問題は、この70万人の基準です。国勢調査を基準にすれば、岡山市は、僅か3828人足りません。しかし、県の人口調査によれば、おそらく、流動人口で、早晩70万人超えるはずであるとされています。

 地方自治法では、5年ごとの国勢調査の人口を自治体の法定人口としていますが、総務省がどう判断するかはありますが、一つのハードルであるのは確か。
 吉備中央町(平成17年・14040人)との合併があれば、文句なしに70万人を越えますが、岡山市はこれ以上の合併は考えていないようで、ともかく流動人口で、突破するしかありません。

 加えて、「近い将来100万人を超えると予測」されていない市への指定が可能になったとの解釈で良いのかも、ハードルで、もしそうでなければ、倉敷との強固な連携を言わない限りは、越えられる数ではありません。

 ただ、倉敷市(4月現在・47万579人)と合併ということであれば、端から100万人を越えており、期間限定の運用基準緩和にこだわることはなかったということにはなります。が、こんなことを言っても始まりません。
 どうあれ、今さらどうこう言うよりも、総務省の壁を突破するしかありません。



<政令指定都市のメリット>

 岡山市が政令指定都市になったと仮定して、政令指定都市について。

  政令指定都市の主な特例は、事務配分・行政監督上の特例として、民政・福祉、保健・衛生。都市計画・都市整備、行政組織上の特例として、区の設置。財政上の特例として、税金の一部・交付金の増額、宝くじの発行などがあります。

 一定割合、県から市へ、地方道路譲与税、軽油引き取り税交付金、自動車取得税交付金、石油ガス譲与税、交通安全対策特別交付金などが移譲されます。

 また、法人格や議会はありませんが、その行政区単位で、市議、市選出県議の選挙が行われることになります。

 主な移譲事務として、一般的には、児童相談所の設置、精神障害者手帳の交付等、都市計画決定(市街化区域、市街化調整区域に係る決定を除く)、指定区間以外の国道および県道の管理、県費負担教職員の任免、給与の決定、などが上げられます。

 ただ、いわゆる、「まちづくり」については、自由度が増す分、地方道路譲与税の割り増し等はありますが、県道はもちろん、県管理の国道38kmの管理が必要になります。

 なお、5年前のある文書によると、岡山市の政令指定都市化の財政上のメリットとして、122.9億円という試算されていました。


 ところで、岡山市は、中核市ですが、中核市制度は、政令指定都市以外の都市で、比較的規模の大きな都市に、政令指定都市に準ずる事務処理権限を県から委譲し、より身近な場で行政を行うこととするもので、平成7年度に創設されたものです(地方自治法第252条の22)。

 具体的には、福祉事務所の設置、保健所の設置、身体障害者手帳の交付、社会福祉法人の設立認可等、屋外広告物に係る規制など、県から移譲されています。
 この結果、福祉に関わる具体的な議論は、岡山県ではなく、岡山市、倉敷市ということで、既に屋上屋になりがちです。

 現在、35市が指定され、9市が、検討中です。

 ちなみに、中核市の要件は、人口30万人以上で、要件を満たせば、まず成れるという意味では、政令指定都市とは、全く異なります。

 中核市から政令指定都市に上がるのが、J1リーグ入りです。



 ただここまで書いてご理解頂けるように、基本的に、行政間の権限・財源移譲の側面が強く、市民への行政サービスがいかに変わるかというのは、目に見えて分かり難いものがあります。

 だからこそ、グランドビジョン、もっと言えば、夢を語らないといけないのです。

                                  つづく

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