2002年9月4日(水)
【政令指定都市を考える その1 神戸市】

 県外調査を受けて、本日は、まず、典型的な政令指定都市・神戸市について。一般的に皆様が認識されている政令指定都市のイメージだと思います。


 その前に、平成7年全国自治会自治制度研究会報告書「都道府県制度論ー新時代の地方自治のために」の第3章5「政令指定都市制度の解決不能な政治的矛盾」の記述に、非常におもしろいものがあります。
 突き詰めれば、こういうこともあるかな、というものです。


 いわく、「政令指定都市を抱えることになった府県の知事の政治的矛盾は、府県が中核をなす大都市地域において大して仕事をしないことになったにもかかわらず、依然としてそこの住民の支持を得なければならないということで、これはもう本質的なものであって、制度の廃止をしない限りは解決のしようがない問題であると考えられる」。
 これは、もうその通りです。


 さらに、政令指定都市選出議員の選挙基盤の矛盾として、いわく、「政令指定市の中では、府県のやる行政の量が減って、府県が政令指定都市の中で関与する仕事は、端的に言えば、警察行政と河川とか、森林開発と文化会館のような公の施設とか、に関するものだけで、府県会議員が住民の苦情を聴いて行政に取り次ぐ仕事が、市会議員に比べて非常に少ない。

 ・・・・中略・・・・

 そうすると、市会議員は、自分達が一番住民の面倒を見て票を集め、府県会議員も自分達が養っているのだと言って、同じ系統の政党で一緒になると、市会議員の方がいばって、府県会議員が、お世話になっておりますと肩身を狭くさせられるようなことが起こっている・・・・・・」

 なるほどなぁ。そういう見方もあるかなぁ、と思います。ただ、市議会の先生方に、お世話になりっぱなしであるのは、政令指定都市に限ったことでもないようにも思います。私など、おんぶに抱っこも、いいところです。


 私は、人間関係の基本は、「長幼の序」以外になく、少しでも目上の方であれば、敬うのが当然、いかに親しかろうと、立場がどうあろうと、目上の方に、岡山弁のため口などもってのほか、それが日本の礼儀と思っているため、いばる、いばらない、というのが、正直、よくわからない部分もあります。
 そもそも、議員といえば、ほとんどの議員が、目上の方ですから、私の方が肩身が広くなる状態は、まずありません。


 ただ、個人的には、中心市街地においては、市議会議員的な仕事もありますが、根本的に、市議・県議に上下があるとは全く思っていませんし、実際に、市議会議員の先生方が、最も市民の皆さんに近いところで、汗を流しておられる姿は、秘書時代から見させて頂いておりますし、県議では、とても敵わないと心から思います。

 また、道州制が叫ばれる今日、県が、現在のままであり続けるべきである、あるいは、あり続けられる、と考えている知事は、皆無だと思いますが、直感的に、県議会議員という職業が、市議会議員よりも、長く存在する職業であると思っている県議会議員も、これまた少ないと思います。そういう後ろめたさもあります。

 もちろん、仕事ぶりに関して、市議会議員の諸先輩方から、県議会議員の評判が非常によろしくない、という話は、極めてよく耳にするところではあります。十分反省し、私は、私なりに、最大限努力致します。



 いずれにせよ、今後、政令指定都市化問題をめぐり、県議会議員、しかも、佐藤ごとき若造がなんならと、煮詰まってきた場合に、この「政令指定都市制度の解決不能な政治的矛盾」のような感情論的なことになる可能性は否めません。

 そういう意味では、私の記述は、非常に危ない橋を渡っているわけですが、いつも申し上げます通り、この件について、判断されるのは、市民の皆様です。私は、判断材料として、情報をお伝えする責務があります。

 加えて、私は、岡山市民として、岡山市は、政令指定都市を目指すべきである(ただ、相手先・時期を含めた手順をやや疑問に思うのです)、と考えていることは、重ねて強調致します。

 なにより、そのことは、私が最も望んでいる、県を動かすことに他ならないのですから。
 要するに、岡山が良くなれば、それで良いのです。



 さて、兵庫県と神戸市の関係です。

 まず、大前提として、兵庫県の人口は、約555万人、神戸市は、約150万人。22市あるうちの神戸市の人口分を引いても、岡山県全体の人口の倍以上ある巨大な県であることをご認識下さい。

 以下については、兵庫県は、来春、市議から県議に転じる友人の地元であり、認識が違っていたら、直して下さいね、T議員。加えて、政令指定都市・名古屋市の美しいT議員も、アドバイス下さい。
 また、政令指定都市を目指す熊本市を抱えるO議員や、政令指定都市・川崎市の市議会議員を目指すSさんも、なにかありましたら、ご教示下さいませ。


 兵庫県には、昨年6つから10になった「県民局」というのがありますが、これは、岡山県の総合出先機関の地方振興局とは、似て非なるもので、特に、県の総合計画から地域ビジョンを推進するものですが、規模は遥かに小さい物です。

 とりわけ、神戸県民局は、連絡・調整機能を持つものの、固有の施策は、神戸市が行うということで、神戸市民にとって、行政といえば、神戸市を指すということになります。兵庫県の影は、極めて薄いものです。


 そもそも、神戸市は、明治22年の市施行時に、既に人口13万人。昭和14年には、100万人都市になっています。

 政令指定都市は、もともと、5大市(大阪市、名古屋市、京都市、横浜市、神戸市)を想定したもので、「県内県」というか、要するに、多の市町村と比べても全く別格の都市を指定し、県と同様のものとみなし、さらに、その後、旧五大市に遜色ない都市的形態を備え、行財政能力を備えている都市が、追加指定されていったわけです。


 神戸市の政令指定都市化は、他の4大市と並んで昭和31年。今の行政職員にしてみれば、兵庫県と政令指定都市神戸市が、共存していることは、前提であり、そういうふうにできている、違和感や問題意識を持ちようがない雰囲気がありました。

 もっとも、ご多分に漏れず、県・市の仲は、「神戸土地株式会社」と揶揄されるほど、ニュータウン開発を神戸市が推し進めていた時期には、「山手商事(兵庫県)」VS「浜手商事(神戸市)」と言われたこともあったようですが、阪神・淡路大震災以後、協調関係に転じ、HAT神戸(東部新都心)整備にあたっては、全体の計画・事業主体は神戸市が、県は、その中心地区において、施設群の整備を進めています。

 また、固有事務、とりわけCSR施設(カルチャー、スポーツ、レジャー)については、二重投資を避ける工夫もされているようです。

 広域調整の観点から行政を行う県というのもは、市からすれば、疎ましい部分もあろうかと思いますが、神戸市の意向や動きは、全県に影響を与えるため、県・市の連携・協調は必要である、という考えのようです。



 ちなみに、道州制に対して兵庫知事は、大阪・京都・奈良・滋賀まで巻き込んだ近畿州のようなものを地方制度調査会や財界が言うものの、兵庫県は、それだけで、デンマークやスエーデンよりも、大きいということで、そもそも府県の規模を大きくするという意味での道州制の意味があるのか、という疑問を持たれているいるようです。

 昨日の知事サミットで、9県の中四国州を研究するという合意とは、全く異なった様相を呈しています。


 いずれにせよ、政令指定都市の基本は、兵庫県、あるいは、神戸市のようなこういう規模・形であろう、ということですが、それが、なぜに変容されるのか、・・・・・・・明日に続きます。

Copyright (c) 2002 SHINJI SATO Inc. All rights reserved.satoshin.jp