2002年8月15日(木)
【岡山市政令指定都市化について その3】

 さて、昨日まで、市町村合併について書いて参りましたが、いよいよ政令指定都市の話です。普通、政令指定都市と言ったら100万人都市のことじゃないん?なんで、岡山市がなれるん?ええことあるん?
 そういう疑問にお応えしたいと存じます。


 <政令指定都市とは>

 政令指定都市とは、人口50万人以上で、政令で定める市です。(地方自治法 第12章 「大都市に関する特例」第252条)

 しかし、実際の指定は、人口概ね100万人程度、既存の指定都市に比べて遜色ない都市的形態、指定都市の事務を適切かつ能率的に処理することができる行財政能力等を勘案して指定されています。

 そして、福岡市の指定(昭和47年)以降、「将来100万人都市となることが見込まれる人口80万人台」で指定がなされてきましたが、政府の市町村合併支援プランにおいて、「大規模な市町村合併が行われ、かつ、合併関係市町村及び関係都道府県の要望がある場合には、政令指定都市の弾力的な指定を検討する。」とされ、「15年4月に合併予定の静岡市・清水市が人口70万人台であること等を勘案」し、「大規模な市町村合併を行う場合における弾力的な指定」の対象とすべきであると、片山総務大臣が明言されました。

 そもそも、法律上は、50万人で、政令指定都市になりうるのですから、正確に言えば、適切な運用がされておれば、岡山市は、とっくの昔に、政令指定都市であり、むしろ、倉敷市が、これから、政令指定都市を目指していたはずです。

 しかし、この運用上の基準が曲者で、前回は、当時人口85万3000人の福岡市を指定するために、「80万人」に要件を下げ、以後、広島市、仙台市、千葉市が続き、今回は、静岡市・清水市の大都市同志の合併を後押しするために、「70万人」に、政策変更されたというのが、素直な見方です。

 今回の政策変更では総務省の見解として、「将来100万人都市となる」という要件は、外したと解釈して良いようです。したがって、「70万人になれば政令指定都市」という、「70万人」が、一人歩きを初めて、全国で、政令指定都市検討ブームになっている、というのが実態です。


 ちなみに、平成4年に、人口82万9000人で、政令指定都市になった千葉市は、現在88万7000人。昨年5月に合併した「さいたま市(浦和市・大宮市・与野市)」の人口は、既に、100万人を越えています。1年11ヶ月かけて、来年4月から、政令指定都市に移行する予定です。

 また、強豪浜松市を意識しつつ、(新)静岡市は、来年4月に、人口70万7000人で、静岡市・清水市が合併してスタート。2年かけて、17年4月から政令指定都市移行を目指しています。


 いずれにせよ、人口63万人の岡山市の場合は、「70万人」が見えているため、市町村合併の議論は、今までほとんどなかったにもかかわらず、昨夏移行、ここは、多少無理をしてでも、政令指定都市になるべきではないか、という話が、出てきたものと思われます。

 ただ、この話がややこしいのは、最初に動いたのは、岡山市の側ではなく、むしろ、玉野市長側のラブコールがあったということで、多分、あとあとまで尾をひくような不思議さであろうかと思います。
 この点は、私も、十分に理解できていません。やや謎です。

 まず、「70万人」ありきではないか、という、批判はこういうところから出てきます。



<政令指定都市のメリット>

 岡山市が政令指定都市になったと仮定して、政令指定都市について。

 政令指定都市の主な特例は、事務配分・行政監督上の特例として、民政・福祉、保健・衛生。都市計画・都市整備、行政組織上の特例として、区の設置。財政上の特例として、税金の一部・交付金の増額、宝くじの発行などがあります。

 一定割合、県から市へ、地方道路譲与税、軽油引き取り税交付金、自動車取得税交付金、石油ガス譲与税、交通安全対策特別交付金などが移譲されます。

 また、法人格や議会はありませんが、その行政区単位で、市議、市選出県議の選挙が行われることになります。

 主な移譲事務として、一般的には、児童相談所の設置、精神障害者手帳の交付等、都市計画決定(市街化区域、市街化調整区域に係る決定を除く)、指定区間以外の国道および県道の管理、県費負担教職員の任免、給与の決定、などが上げられます。

 ただ、いわゆる、「まちづくり」については、自由度が増す分、地方道路譲与税の割り増し等はありますが、県管理の国道38km、市道等(岡山市・玉野市・灘崎町・瀬戸町・御津町)計590km、総計628km分の管理が、必要になります。

 なお、ある文書によると、岡山市の政令指定都市化の財政上のメリットとして、122.9億円という試算が出ています。


 その結果として、政令指定都市においては、県の出番は、ほとんど無くなります。同時に、政令指定都市選出の県議会議員の役割も、今よりも遥かに少なくなると思われます。政令指定都市によっては、市議会議員に転出する県議会議員もいるようです。

 この点については、もともと県や県議会議員が不要と思っている私としては、抵抗がないのですが、いろんな考え方もあるでしょう。


 ところで、岡山市は、中核市ですが、中核市制度は、政令指定都市以外の都市で、比較的規模の大きな都市に、政令指定都市に準ずる事務処理権限を県から委譲し、より身近な場で行政を行うこととするもので、平成7年度に創設されたものです(地方自治法第252条の22)。

 具体的には、福祉事務所の設置、保健所の設置、身体障害者手帳の交付、社会福祉法人の設立認可等、屋外広告物に係る規制など、県から移譲されています。
 この結果、福祉に関わる具体的な議論は、岡山県ではなく、岡山市、倉敷市ということで、既に屋上屋になりがちです。

 現在、中核市対象市34のうち30市が、中核市に移行しており、14年度は倉敷市から奈良市が移行しています。

 ちなみに、中核市の要件は、人口30万人以上(倉敷市は、約43万人)、面積100平方キロメートル以上(同約300平方キロメートル)です。

 かなり、大騒ぎで、岡山市が中核市に移行した記憶がありますが、おそらく、政令指定都市ということになれば、この比ではないでしょう。



 ただ、肝心の行政サービスが良くなるか、ですが、そこがまさに市民にとっては問題なのですが、少なくとも、玉野市民に対して、それが、言い切ることができないのです。岡山市民にとっても、とりわけ西大寺の方にとっても、中核市になった時より、行政サービスは、行き届きますよ、と、断言も、なかなかできません。

 行政改革の一環としての市町村合併の先にある政令指定都市が、どこまで、市民の生活に資するのか、本来先にあるべき議論が、十分に語られていない、そこに、今回の議論の難しさがあります。


 市町村合併は、いわば地域同志の結婚です。不謹慎なたとえ話で恐縮ですが。

 「70万人」でなかったら、お互い振り向きもしなかった?恋愛に例えれば、かなり失礼なことで、政略結婚という謗りは免れないかもしれません。本当に相手の幸せを祈ってるのでしょうか?この愛は、成就し、永久に、愛和な家庭を築くことができるでしょうか?
 ただ、案外、幸せかも?やっぱり、愛よりお金よね〜、ということもあるでしょうから。

 などと、揶揄されないためにも、岡山市は、玉野市や灘崎町に、真心からの愛情を捧げないといけません。経緯はどうあれ、今、本当に必要なのは、岡山市民の玉野市民に対する誠意かもしれません。

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