2003年6月11日(水)
【道州制を考える その2・岩手県】

 ザ・グレートサスケ県議については、特にコメントはない。

 いわゆる改革派の増田知事の岩手県も、地勢や文化、歴史、あるいは我が国の食料供給基地であることなど、共通する面が東北地域には大変多いという前提に立ち、まず、その中でも北東北3県において、お互いが、メリットを共有できる事業について共同で取り組むこととして、一昨年度は、15の事業、そして、平成14年度には、20事業を実施している。
 例えば、県外事務所の合同設置、産業廃棄物への共同歩調での対策等成果が出ている。

 さらに、北東北の取り組みをもとにして、北海道・東北自治協議会総会において、広く広域連携について呼びかけ、まず、環境をテーマに連携し、東北各県それぞれ得意とする分野に着目した機能分担による広域連携も視野に入れ、あるべき地方の自立に向けて取り組んでいる。


(仙台に近い結節点・盛岡)

 ただ、前述の青森県に比して、東北の雄都、仙台市に、岩手県は近い。そのことが、青森・秋田県との北東北に加えて、宮城県との連携も重要である。
 岡山県をモデルにした地方振興局でも、宮城県の県北の事務所と共同イベントを開催したり、民間レベルでも動きがある。

 また、東北新幹線八戸延伸に伴い、県都盛岡の拠点機能強化が言われている。盛岡都市圏は、北東北の主要交通網の結節点に位置しており、東北新幹線開業以来、人、物、情報の交流拠点としての都市機能の集積が進み、秋田新幹線開業後も、北東北における拠点としての役割が、高まっている。

 山陽新幹線が博多まで延伸された際の岡山の例を引き合いに出され、東北新幹線の延伸で、単なる新幹線の通過駅になって、盛岡が拠点性を失うという懸念の声もある。

 こうしたことから、東北3県合体後の県都は、盛岡市である、というのが暗黙の了解であると岩手県は思っているフシがあるが、そういう発言は、タブーとなっている。


(改革派知事の基本的考え)

 おそらく、県庁解体論から始まる道州制、県庁の分社化等も含めて、地方分権がらみの発言で、昨今では、地方自立「がんばらない」への発想転換等、増田知事は、全国区である。
 その基本的な考え方は下記の通りであり、時代の趨勢とも言える。

 地方分権の早期実現のためには、これまでのような全国一律の制度ということにこだわるのではなくて、それぞれの地域の意向や特性を生かす仕組み、いわゆる一国多制度の考え方も重要である。

 地方分権の推進については、国の第27次の地方制度調査会において、基礎的自治体としての市町村や都道府県のあり方などについて、第2次の分権改革に向けて具体的な検討が行われているが、地方も、地域住民による自己決定、自己責任の原則による分権型社会の確立を目指して、受け身ではなくて、主体的にみずからの意見を述べていく必要があるものと考える。

 地方分権を推進するに当たり、受益と負担の関係が極めてわかりやすく、住民に最も身近な存在である市町村が、行政の中心になっていくべきものであると考えており、県の権限は可能な限り市町村へ移管して、市町村を越えた広域的な業務や市町村間の調整機能を県が補完する。

 そして一方で、国の権限や関与を最小限にとどめて多くの権能を地方の方に移す、こういう国と地方、そして地方の中で、県と市町村の新しい関係を構築していくことが重要である。

 また、地方分権時代にふさわしい税財政基盤の確立に向けて、あるべき分権型の行財政システムは、受益と負担の関係が明確であるということ、それから、自己決定、自己責任の原則に基づいて、県民の意思を反映した自立的な行財政運営ができるものでなければならない。

 このため、地方歳出に対する国の関与の廃止、縮減を行った上で、国庫補助負担金については真にやむを得ない必要最小限のものに限定して整理合理化を進め、消費税や所得税の一部を地方税に振りかえることによって地方税源の充実を図って、現在、著しく大きい地方歳出の規模と地方税収との乖離を縮小していく必要があると考える。

 また、課税自主権に基づいて、地方公共団体みずからの責任と判断により、既存の税目の超過課税や法定外税の創設などの地方税の充実を図ること、すなわち歳入面における地方自治を確立していくこともあわせて重要である。

 しかし、税財源の移譲を進めた場合でも、税源の偏在という問題があり、財政力の地域格差が拡大する懸念も一方ではある。しかも岩手県のように、例えば核燃料関係税のような大規模な税源を見出すことが困難だということで課税自主権を十分に活用できない地方公共団体も多く見込まれる。

 そのため、地域間の税源の偏在を調整する財政調整の機能というのは依然として必要であり、将来的には、より自立性の高い財政調整システムのあり方についても模索していく必要がある。・・・・・・・・・・・等々。


 ちなみに、昨年、北東北3県共同による地方債発行について、昨秋、北東北広域政策研究会の部会として、3県の実務者レベルによる研究部会が設置された。

 全国における共同発行の例としては、大阪府と大阪市が大阪港と堺港の整備事業について発行したものがあるだけで、複数の県による共同発行は初めてとなることから検討課題も多いようである。


(道州制についての行動スタンス)

 増田知事の考え方は、まず道州制ありきの議論ではないようである。要は、広域連携の実績を積み重ねて、住民にそのメリット、デメリットを十分に示し、幅広い議論に基づく共通認識を醸成しながら、実体論としての地方のあり方を示していくことが必要である、というものである。

 つまり、北東北3県において、産業廃棄物の不法投棄など、県をまたがる広域的な課題への対応や広域観光など、地域のそれぞれの状況や特徴を踏まえた具体的かつ実践的な広域連携取を積み重ねながら、地方主権の確立に向けた国、地方を通じての幅広い議論が行われて、共通認識が醸成されていくようにしようというものである。
 要するに、できるところからやっていこうという話である。
 この点、青森県、秋田県は、合体を公言しているが、岩手県は、まずは、連携の良いところを住民に示して、合体の流れに持っていこうということである。

 ちなみに、岩手県からは、広域連携事業については、北海道と東北7県という括りになるようである。つまりは、東北に、新潟県が含まれるわけであるが、これは、東北電力の所管の関係だそうである。
 実は、通産省や国土交通省は、新潟を含むそうであるが、要するに、省庁の都合である。


(地方分権研究会)

 「北東北広域政策研究会」が、青森、岩手、秋田の北東北3県の企画の実務担当者により、北東北地域全体の将来像を検討するということで、昨年の4月に設置された(青森県資料3−1参照)わけであるが、13年の11月に、岩手県庁内に若手職員を中心に構成した地方分権研究会が作られ、「あるべき地方の姿」報告書が提出されている(資料3−1参照)。

 ちなみに、青森県は、13年12月に、庁内若手職員により、「県の未来研究会」が立ち上げられ、報告書「青森県の地方自治の姿」が、今年2月に提出されている(青森県資料5参照)が、これは、青森のような職員の公募ではなく、関係部係長クラスの指名による研究会だそうである。


(北東北広域連携推進協議会)

 これは、3県のNPOや民間を含めた連絡協議会であるが、要するに、北東北広域連携と名のつく冠事業に、気運を高めるべく助成金を与えようというものである(資料4−3−1、4−3−2)。

 これは、西日本連携軸構想等、同趣旨のものがあるが、各県330万円で、事務局は各県担当持ち回りで、十分に機能しているようではなかった。
 特に、協議会のメンバーも、行政側からの人選によったり、委員の意識の差も大きいようである。

 また、商工会議所など、具体的なものがないと反応し難く、積極的に議論に加わることはないそうである。


(問題点)

 以下、説明者の方との質問のやりとりから出てきた問題について列挙する。

 岩手県は、市町村合併に関して全国的に稀有であるのだが、法定協議会が一つも立ちあがっていない状況である。

 知事から、今まで知事から東北3県合体について、議会に対して、明確な説明があったわけではない。特に、宮城県に近い県議会議員は宮城県との連携を考えている。議員連盟もあるようである。
 岩手県は、青森県の八戸まで含む南部藩と北上川で分かれてる伊達藩に分かれており、特に、伊達藩側は、仙台の経済圏、風習、文化、言葉になるそうである。

 東北7県の括りにしても、福島・山形・新潟県は、関東との連携を望んでいる。特に、福島県は、北関東を向いており、南東北という括りの認識が薄い。
 ちなみに、



(岡山県のとるべきスタンス)

 以上、北東北県をいう、東北3県のうち、2県の状況を伺ったわけであるが、いずれにせよ、道州制の議論が、本格的に再燃する前から、まずは、環境、観光等の面で、広域連携を行ってきた実績がある。
 そして、少なくとも、州都がどこであるか的な話は、極力避けている努力が伺える。また、「北の時代」という、一つのビジョンやロマンがある。

 一方、岡山県の中四国州の提唱は、いかにも唐突の感は否めない。もとより、中四国州そのものを否定するわけではない。しかし、ある意味で、地道な議論、実践活動の上に出るべき論理的帰結であるにもかかわらず、帰納法的に検証することもなく、推進することはいかにも危うい。

 少なくとも、今まず、岡山県がなすことは、香川県との強固な広域連携である。岡山ー香川合体論が醸成されないと、仮に、道州制の議論が本格化した時でも、四国と結ぶのは難しいのではないか。
 いわんや、徳島県などは、関西圏の意識が強いと思われる。

 そういった点からも、香川県との連携策を提唱するとともに、議員という立場で、四国の議員との交流を図ることを模索したい。

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