2001年7月29日(日)【WTO農業交渉と国内農政】 | ||
【WTO農業交渉と国内農政】
農業・農村は、食料の安定供給、地域社会の活力の維持、国土・自然環境の保全等を通じて、我が国の経済社会の発展と国民生活の安定に重要な役割を果たしています。 しかしながら輸入農産物の増大、担い手の減少や高齢化、過疎化など農業・農村を取り巻く環境は、たいへんに厳しい状況にあり、農業の多面的機能を維持できるような国内外の対策が、必要になります。 とりわけ、米の輸入については、1995年からWTO農業協定に基づき、ミニマム・アクセス米を関税化の特別措置により輸入していましたが、輸入量を抑制する策として、1999年4月1日から、関税化に切り替えました。 ちなみに、2000年のミニマム・アクセス数量は、76.7万t、二次関税率は、341円/kgです。 現在、2001年以降の次期WTO農業協定については、WTO農業委員会特別会合で交渉が進められています。 この点、日本は2000年12月に、「多様な農業の共生」を目指した日本提案を提出しましたが、アメリカなど、農産物輸出国派、一層の自由化を主張しています。 この交渉においては、世界各国の農業の持続的発展が可能となり、かつ、「食料・農業・農村基本法」等の国内農政と整合性のある平等かつ公平な農産物貿易ルールが、確立されないといけません。 ともあれ、国内の米を取り巻く環境は、過剰基調による米価の低迷等、厳しい状況にあり、さらに平成13年度は、過去最大規模の生産調整が実施されている中、国産米の需給や価格等に影響を与えないよう、過剰基調をさらに進めるミニマム・アクセス米の輸入量を抑制する必要があります。 岡山県においては、農業農村整備事業をはじめ、農業構造改善事業、新規就農対策等、平成6年10月に決定された「ウルグァイ・ラウンド農業合意関連対策大綱」に基づく対策を積極的に取り組んできた、とされますが、そのさらなる推進と、ミニマム・アクセス米の輸入量の抑制が、農林水産省に要望されます。 また、野菜等3品目についてのセーフガードに関する政府調査は、平成12年12月22日から行われていますが、現行制度は、政府調査が長期間にわたるため、輸入急増時に機動的かつ効果的に対応できるよう発動要件を見直し、運用の透明性を高めた、新たな制度の確立も、要望されます。 ちなみに、岡山県では、知事と県議会議長の連名で、一般セーフガードの発動と機動的かつ効果的な制度の確立を求める要望書が、昨年11月28日に、農林水産大臣等へ提出されています。 ≪ミニマム・アクセス米≫ ガット・ウルグアイ・ラウンド農業交渉において、輸入制限などで、輸入がほとんどない品目について設定された最小限の輸入量をミニマム・アクセスと言います。 輸入制限などを関税措置に切り換えれば、1995年に国内消費量の3%とし、2000年までに5%まで増やすことになりましたが、関税措置へ切り換えない場合は、これを4%から8%まで毎年0.8%ずつ増加させることになりました。 ただし、途中で関税措置へ切り換えたため、それ以降の増加量は、毎年0.4%に半減しました。 これにより輸入されたお米をミニマム・アクセス米といいます。 ≪WTO農業協定≫ WTOは、1995年1月1日に設立された。世界貿易機関(World Trade Organization)の略称。貿易に関する様々な国際ルールを定めるWTO協定の実施・運用を行います。 農業協定は、ウルグアイ・ラウンド農業合意に基づき、農産物貿易に係るルール等を定めた協定で、WTO協定の一部をなすもの。 各国が市場アクセス、国内助成、輸出競争の3分野において具体的かつ拘束力のある約束を作成し、実施期間中(1995〜2000年)に実施すること及びその実施に関する規定を定めたもの。 ≪セーフガード≫ 緊急輸入制限措置。関税を引き上げたり、量を制限したりして輸入品の流入を抑えることをいいます。 輸入増で国内産業が大きな被害を受けていることが世界貿易機関(WTO)の定めた発動の条件。条件を満たさずに発動すると、WTOが取り消しを命じる場合もあります。すべての品目を対象とする一般セーフガードと繊維だけを対象とする繊維セーフガードがあります。 | ||
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