過去の岡山県議会一般質問集 <産業振興>篇

<平成26年9月定例会>(2014年9月25日)

(佐藤)  それでは次に,スピード感についてお伺いします。
 地方創生本部の議論は議論として,地方分権を叫びたい今,国策の動きの推移を見ながら見ている状況には我々はないというふうに思います。特にプロジェクトチームは立ち上げたものの,本当に人口減に立ち向かっていくんだという気迫が具体的な施策の中に,まだこれからだと思いますけれども,見出すことができない。しかし,まず今やらなくてはいけないこと,はっきりしてることが,景気回復が十分とは言えない状況の中で,少なくとも資材高騰と人手不足はしばらくこれは続くだろうと,今までの予定価格をオーバーするような状況にどう激変緩和措置を図るのか,これは例えば面積を見直すか,構造計画を見直すか,明らかに補正予算措置が今後必要になる状況であると思いますけれども,現状の認識と対策についてお知らせください。

(知事)  お答えいたします。
 公共工事の現状認識等についての御質問でありますが,近年資材や労務単価の上昇が見られるため,例年4月に行う労務単価の見直しを2月に前倒しするなど,適正な予定価格の算定に努めているところです。このため,入札の不調・不落は昨年度よりは若干増加しておりますが,その率は2%程度と,他県と比較し,低い状況となっております。こうした中で,コスト縮減を図りながら,事業執行を行っており,当初の予算の範囲内で計画していた事業を着実に実施しているところであります。
 今後とも,建設業の人材確保に努めるとともに,資材等の市場価格を注視しながら適切に対応してまいりたいと存じます。
 以上でございます。

(佐藤)  この人件費高騰等は,これは人材流出に結びつくということで,これから東京オリンピックもあったり,東日本の復興支援であったり,いわゆる賃金が東京のほうもバイト代も随分高くなってるということで,若い世代がこれからどんどん東京に出ていきます。その中で本当に地方としてやらなくてはいけないことは,補正予算を打ってでも,やはり地元に若者を引きとめることだ,そのための補正予算が必要じゃないかという趣旨でありますけれども,できるだけ早急な対応を,スピード感を持ってお願いしたいと思います。



<平成26年6月定例会>(2014年6月24日)

(佐藤)  それでは次に,産業振興について伺います。
 やはり岡山市においてはイオンの進出が黒船に例えられることがありますが,年間2,000万人もの来客があるならば,それをいかに面的にも時間的にも展開するかが課題になってまいります。LRTのような都市交通については以前,申し上げてきましたので,これを産業振興と絡めた場合,観光文化施設もありますし,都市の装置はそろってきたとポジティブに考えることができます。
 そこで,これを起爆剤として,交通の結節点においていわゆるコンベンション機能をさらに高めていくコンベンションシティー構想の推進は重要なテーマになると思います。そもそも,従来も交通の結節点ということで,学会や大会の開催の招致などについて間違いなく岡山は地の利があるわけでありますが,願わくば3,000人規模の大会場があって20程度の分科会まで開催できれば,相当な規模のコンベンションが呼び込めるはずです。ただ,現状でいうと,駅周辺の会場ではグランヴィアホテルが最大で,ママカリフォーラムがそこそこに大きく,実は国際交流センターがそれを補完しているという形になっています。今後,イオンや新医師会館のホールがこれに加わるとしても,例えば飲食ができない岡山シンフォニーホールは分科会場としても距離がちょっと気になりますし,岡山市民会館についても願わくばこうした観点の中に組み込んで考える必要があるとは思いますが,いずれにせよ現状において国際交流センターがかなりコンベンション開催時には便利な施設であるということは言えると思います。私はかねがね,国際交流センターのミッションということを申し上げてまいりましたが,基本的にはもはやこれは実態に即して,月曜から金曜日まではコンベンション施設やビジネス目的の使用も含めてかなり柔軟な対応ができる機動性の高い,駅に近い,ある意味,格安の貸し館としてさらなる増収を図って,そして逆に平日の夜や土日についてはその収益を必ずしも採算は合わないかもしれない本来業務である国際交流や国際貢献に向けるというのも,これもありじゃないかなと思うに至りました。あえて言えば,今までの岡山県国際交流センターから産業国際交流センターとミッションを昇華すべきだと思いますが,御認識をお知らせください。
 また,関連して,これを機に国際交流センター,生涯学習センター,総合グラウンド,きらめきプラザ,記録資料館,天神山文化プラザ,県立美術館,博物館,県立図書館,ルネスホールなど縦割り行政の所管を超えて,所長,館長,指定管理者レベルの協議会をつくり,ネットワークでそれぞれのミッションを相互乗り入れで強化,補完し合い,動くべきではないかと思うにも至りました。先日,実は山田方谷に関する講演会を全く同時刻に県立施設で行うということが起きましたが,例えば子供たちがスタンプラリーのような形で社会教育施設で体験学習をしたり協働で事業を行うことはできないか,少なくとも連関するどの施設でも情報等は簡単に入手できる,かような県立施設のコンソーシアムの構築について御所見をお聞かせください。

(知事)  お答えいたします。
 産業振興等についての御質問であります。
 まず,岡山国際交流センターについてでありますが,同センターは県民と外国人との相互理解を深め,交流を推進し,地域の国際化を図ることを目的に設置したものであり,国際化に関する情報提供や事業を行う中核的施設として活用されていますが,会議室は学会や企業説明会などでも広く利用されております。また,管理運営の収支差額は,指定管理者がセンターで行う国際交流事業の充実にも活用されているところであり,今後とも,岡山駅に近いという立地条件を生かし,利用促進に努めてまいります。
 次に,県立施設のコンソーシアムについてでありますが,関連する施設が連携してサービスを提供することは有意義であるため,例えば岡山カルチャーゾーン内の県立施設については既に協議会を設け,一体となった魅力発信や情報共有に努めております。お話の新たなコンソーシアムの構築までは考えておりませんが,今後とも,関連する施設間での情報提供を一層緊密にするなど,連携の充実を図ってまいりたいと存じます。
 以上でございます。

(佐藤)  ありがとうございました。
 先ほどの国際交流センターにつきましては,コンベンション機能ということになりますと,学会等が1年以上前から動き始める,大きなものになれば2年,3年前から会場の設営,段取りをせにゃあいけんということで,残念ながら今の交流センターではなかなかそれに対応できておりませんので,ある意味,ビジネス目的で収入を上げるためにということであれば,よりそこら辺を機動的に運用できるようにお願いをしたいと思います。



<平成25年11月定例会>(2013年12月10日)

(佐藤)  さて,いよいよ忘年会シーズンに突入しまして,さまざまな会にお邪魔しますと,忌憚のない御意見を多数頂戴いたします。特に,アベノミクスの効果でございますが,これはもうかってる人は余り言わないんですが,多分うちの隣までは来とんじゃけども,何か実感がねえぞという声も多分にあります。政策の最大目標を経済回復と位置づけ,大胆な金融政策,機動的な財政政策,民間投資を喚起する成長戦略という3本の矢を柱とする俗にアベノミクスと呼ばれる経済政策は,デフレ脱却を達成するために日銀法の改正まで視野に入れたことで,国内だけではなくて世界からも注目を集めているわけでございますが,この政策の効果に対する率直な御感想,また岡山県として現段階でこのアベノミクス,うまくこの政策を活用できているというふうな御認識をいただいてるかどうかお伺いいたします。
 そしてまた,忘年会の話題でございますが,現在5%の消費税率は,来年,2014年4月に8%,2015年10月には10%へと2段階で引き上げられることになりますが,そのことへの不安の声もかなり多くございます。現実問題,この消費税増税分を価格に転嫁できるかどうか,また事業発注等について県の予算が増税分の3%をカットされるんじゃないか,こうした職員の方の不要な発言もあったという声も聞きました。具体的に,県内の経済活動,さらに来年度の予算編成,また歳入確保について,消費税増税がどのような影響が出ると予測されているか,そのことから国の対策にさらに期待されることがあるか,何よりもよもや行政のほうが民間に増税分を転嫁するようなことは絶対にないと言い切っていただかにゃあいけんのんですが,それが言い切られるかどうかお伺いをいたします。
 加えて,やはり宴席ともなりますと,これちょっと失礼なんですが,伊原木知事に対する率直な評価を意見として求められることが多くございます。議場の皆さんもそうじゃないかなあというふうに思うんですが,期待を込めてどの議員も恐らく,よう頑張っとられますよとおっしゃっておられるに違いないと思うんですが,ただそれだけじゃ済んどらんのじゃないかなというふうに思います。恐らく,多くの県民の皆様から,民間なら会社が赤字じゃったらボーナスなんか出るわけねえじゃろうとか,あるいは行革でカットするだけじゃったら誰でもできる,どうやってもうけるか,金を回すかじゃと,あるいは民間出身らしい大胆な発想はねえんかなどと,これはもういろんなことを皆様も言われているんじゃないかというふうに思います。私も知事には,知事が行政感覚になれていただくことではなく,行政の方に知事の民間感覚になれていただくこと,このことを期待しております。
 改めて,知事に伺います。
 そもそも,民間の感覚とは何か,民間だったらこうはしない,また民間出身の知事ならではの成果について御認識をお知らせください。
 私も,もうこれは商売の規模は比べ物になりませんが,陶器屋のせがれでございまして,あきんどの血が流れているという自負はございます。知事の考えられる民間の発想,あきんどの発想について,それがどのように行政運営に生かせるかお知らせください。
 特に,議会でたびたび申し上げてまいりましたが,やっと岡山城との連携や夜間開放など,後楽園についての動きが出てまいりました。今後は,いつも申し上げることなんですが,カルチャーゾーンにおける民間を巻き込んだ共通周遊券,これがどうしても必要だと思います。また,アンテナショップも岡山県がこれまで持ってなかったほうが問題だということなんですが,具体的に民間出身の知事のアイデアと,そしてリーダーシップでこれから動き出すものがあればお知らせください。
 そしてまた,これはもう異論があることも承知の上でございますが,カジノについてお伺いいたします。
 先週5日,自民党,日本維新の会,生活の党の超党派の国際観光産業振興議員連盟がカジノを含む複合型リゾート施設の整備を政府に促すカジノ解禁法案を衆院に提出いたしました。法施行後1年以内に刑法が禁じているカジノの解禁に必要な法整備を義務づけたほか,国や地方自治体がカジノの設置運営者から納付金を徴収できるとしており,来年の通常国会での成立が目指されております。このカジノが2015年までには合法化されて,2020年の東京オリンピック,パラリンピックの開催までに最初のカジノの開業が期待されているんですが,このマカオに次いで7.7兆円規模に成長する可能性があると言われているカジノが,問題はこれが日本のどこにつくられるかということでございます。もちろん,治安悪化やギャンブル依存症が懸念されますが,例えばパリから100キロメートル以内にカジノをつくってはいけないという規制があるように,ソウルを除けばどの国も首都にはカジノを置いておりません。東京のお台場にという声があるんですが,ますます東京への一極集中になってしまいます。現在は,静岡県では熱海市,北海道では小樽,苫小牧,釧路市,徳島県では鳴門市,長崎県ではハウステンボスと併設して佐世保市がカジノ誘致のための運動を進めておられます。
 エンターテインメントやアミューズメントをあわせ持つ複合型リゾート施設としてのカジノが瀬戸内海の島にあることについて,私は国際標準的にこれはあり得るんじゃないかというふうに思います。また,経済活性化,雇用の場となる中で,税収については環瀬戸内海圏の環境対策,防災,港湾等の整備,農林水産業の振興のために使うという明確な意図があれば,私はこのカジノの運動について手をこまねいて推移を見守る状況ではないんじゃないかというふうに思います。少なくとも,本当に我々,地味で真面目な教育県の岡山県が大胆な発想で環瀬戸内海圏にカジノ誘致の議論を喚起するだけでも,私は大きな意味があるというふうに思います。至って大真面目にカジノを瀬戸内海の島につくることについてどう思われますか。
 以上,お伺いいたします。

(知事)  自由民主党の佐藤議員の質問にお答えいたします。
 経済政策等についての御質問であります。
 まず,感想等についてでありますが,景気は緩やかに回復しつつあり,雇用環境,さらには為替や株価の状況からも,アベノミクスの3本の矢のうち金融,財政政策の効果はあらわれつつあるものと考えております。県といたしましても,国の15カ月予算に呼応した事業の執行に取り組み,例えば今年度上半期の公共事業等の執行状況は,契約額で前年度比22%,106億円の増とするなど,県内経済に対する下支え効果を発揮できているものと認識しております。今後は,成長戦略に盛り込まれた規制緩和などの具体化にあわせ,本県にとって実効性のある経済対策を進めてまいりたいと存じます。
 次に,消費税引き上げの影響等についてでありますが,まず県内経済への影響については,駆け込み需要の反動等による消費の落ち込みが懸念されるほか,適正な価格転嫁に対する不安の声などがあると聞いています。
 次に,予算編成につきましては,増収分の一定割合が地方に配分されることから歳入増となる一方,公共事業等に係る支出の増などの歳出増も見込まれております。また,国に対しては,先般決定した好循環実現のための経済対策が実効性のあるものになるよう期待しているところであります。県としても,国の経済対策に呼応して平成25年度補正予算を編成する予定であり,平成26年度予算編成においても消費税増税影響相当額を別枠加算する措置を予算要求基準に盛り込んだほか,国の消費税価格転嫁等総合相談センターや関係機関と連携し,中小企業等からの価格転嫁等に対する問い合わせに適切に対応してまいります。
 次に,民間の感覚等のうち,認識等についてでありますが,顧客重視,コスト意識,スピード感を行政に取り入れ,こうした民間の感覚を生かして企業ニーズを踏まえた規制緩和やひとり1改善運動などを実施してきたところであります。今後とも,県民ニーズをつぶさに酌み取り,最小のコストでタイムリーな政策を実現してまいりたいと存じます。
 次に,これからの動きについてでありますが,お話の後楽園と岡山城の一体的な活用を初め企業誘致施策の充実やさらなる規制緩和,先進的手法による交通渋滞対策,マーケット重視の製品,産品づくりの支援などについて,顧客ニーズの把握と客観的なデータ分析に基づき,民間の取り組みや他県の成功事例も参考にしながら,スピード感を持ってこれからの本県に好循環をもたらす施策に全力で取り組んでまいりたいと考えております。
 次に,カジノ誘致についてでありますが,カジノは外国人など観光客の増加等の経済波及効果が見込まれるほか,法案に国や地方公共団体の納付金徴収規定も盛り込まれたことから,歳入増につながる可能性もあると考えております。一方で,風紀,住環境の悪化や青少年への悪影響等の問題も指摘されており,カジノの誘致については慎重な検討が必要であると考えております。今回の法案では,カジノ施設運営者や施設に関する規制等については今後,必要な法規制を講じることとされており,周辺環境への保全対策等も明らかでないことから,お話の瀬戸内海の島にカジノをつくることについても具体的な検討をする段階にはなく,引き続き国の動向等を注視してまいりたいと存じます。
 以上でございます。

(佐藤)  どうもありがとうございます。 カジノについては,一つの起爆剤としてこうしたことを議論として喚起するだけでも,岡山県変わったぞ,それから特に中四国のこの瀬戸内海をめぐる地域との連携も含めて,こうした議論を起こすだけでも私は意味があるというふうに思うので,ぜひ御検討いただきたいと。今のところは全国で4カ所ということですから,イメージとするとお台場であったり沖縄であったり,あるいは仙台であったり,大阪などになると思うんですが,そこでやっぱりこの中国地方の岡山が手を挙げるということに意味があると思いますので,ぜひ御検討いただきたいと思います。
 それで1つ,答弁落ちというわけではないとは思うんですが,申し上げたいのは,この消費税の増税分,これを民間に転嫁する。特に今回,来年度予算の編成の中で,いわゆる産業労働部や土木部の上限も決まってる枠の中でやっていこうということで,少しカットの方向でやってるわけでありますが,そうはいうても予算規模全体は3%,何だかんだで上がるという話になるわけですけども,その部分が民間に転嫁されることはないですよねということを再度確認させていただきたいと思います。要するに,今年度と同じお金を払ったよと,でも3%は民間で負担してねと,こういうことは起きないですよねということを確認させていただきたいと思います。

(知事)  消費税相当分について,民間へのしわ寄せがないことを確認せよとの質問に対してお答えをいたします。
 消費税増税分を中小企業等,立場の弱い取引先に対してしわ寄せをしないよう指導する立場でもありまして,みずからがそのようなことをしないようにしっかり注意していきたいと考えております。
 以上でございます。



<平成25年9月定例会>(2013年9月18日)

(佐藤)  最後に,産業の振興について伺います。
 本当に行政経営をされるのは大変だと思いますが,そろそろ民間出身,経済人である知事だからこそ打ち出せる施策があるのだろうと,岡山県民の皆様は待ち望んでおられます。あえていえば,当然やらなくてはいけない行革や教育再生もさることながら,今までの経験や豊かな人脈の中から,あっと驚くような,岡山県経済の発展,本格的な景気回復の起爆剤が出てくるだろうという期待,私もしております。もちろんフィルムコミッションを再活性化させて御当地映画撮影を行うというようなこともあるでしょうけれども,岡山県を元気にする,知事ならではの動きや施策について,何かございましたら,お知らせください。
 特に,アメリカへの留学経験もあられる知事でございますから,日中,日韓関係にかかわらず,アメリカとの経済関係,国際交流をより強固にする,姉妹縁組をする,旅行客をふやす,そうした具体的な取り組みを私は大いに期待させていただいておりますが,御所見をお知らせください。
 ところで,我が党の雇用対策の質問,新規学卒者の県内企業への就職支援について,経済団体に正規雇用枠の拡大の要請をしたり,合同就職面接会の開催に取り組む,あるいは中小企業の人材育成確保,技術や技能の伝承について,高校生のものづくり技能取得支援事業やものづくりマイスター制度の取り組みについて御答弁いただきましたが,この受験手数料の減免や専門校指導員等の派遣,練習用材料費の補助を行う高校生のものづくり技能取得支援事業は,今年度で終了予定となっております。しかし,技能検定が技能習得の目標として教育現場の柱になっており,就職に対しても大きな効果を発揮しており,また,ものづくり技能者の育成確保という3業界からの要請にも応えるため,ぜひ存続させ,推進させるべきだと思います。さらに,可能であれば,現行のような3年という時限制度ではなく,もう少し長い期間にし,受験手数料の減免同様,専門校指導員等の派遣,練習用材料費の補助についても,事業対象職種を6分野に限らず,ほかのものづくり分野に拡大すべきだと思いますが,御所見をお聞かせください。
 また,県内企業に他県から優秀な技能を持った高校生が多く就職し始めたことは,周知の事実でありますが,広島県では若年技能者の育成指導事業を展開しており,高校生の技能検定合格率3位まで引き上げることを目標としています。かねてから,教育再生の象徴として,直接は市町村教委の所管である義務教育段階の全国学力テストの順位を10位以内にすると,知事が積極的な発言をされておられることが,私は必ずしも教育現場や子供たちによい影響を与えているばかりではないんじゃないかと感じておりますが,一方で社会でよりよく生きていくための教育のはずが,今回の生き活きプランでも驚くほど高校,まして専門科の記述がございません。私立を含めて高校生の技能検定合格率を引き上げることを目標として掲げるべきだと思いますが,御所見をお聞かせください。

(知事)  お答えいたします。
 産業の振興についての御質問であります。
 まず,岡山を元気にする動き等についてでありますが,民間の経済人としての経験から申しますと,「顧客重視」,「コスト意識」,「スピード感」が何よりも重要であると考えております。産業の振興につきましても,プラン改訂素案にもお示ししているように,企業のニーズを的確に把握し,本県のすぐれた操業環境や交通アクセスなどの強みを生かした企業誘致の推進を初め,中小企業支援,観光振興等を地道に進め,いわば一つ一つのスモールサクセスを積み上げることにより,本県に人・モノ・金を呼び込み,生き活きとした元気な岡山をつくってまいりたいと考えております。
 次に,アメリカとの関係についてでありますが,本県においても,従来からアリゾナ州などへの県訪問団の派遣,県内企業の進出,岡山市など6市の友好協定締結など,地域レベルでのアメリカとの関係を深めてまいりました。アメリカは,日本にとって身近な国であることから,観光やビジネス交流など,さまざまな分野でアメリカとの新たなつながりを持つことも,今後検討してまいりたいと考えております。
 次に,高校生のものづくり技能取得支援事業についてでありますが,県内工業高校などの積極的な取り組みもあり,高校生の技能検定合格者数は,事業開始前の平成22年度の181人から,平成24年度には546人と,3倍に増加するなど,大きな成果を上げております。生徒にとっては就職率のアップ,企業にとっては優秀な人材確保が図られ,県内産業の振興につながる有益な事業と考えておりますが,今後,事業成果の検証を行った上で,来年度以降の方針を検討してまいりたいと考えております。
 次に,高校生の技能検定合格率引き上げ目標についてでありますが,現プランの数値目標は,平成28年度までに1.7%から5.1%と,3倍の合格率となるよう設定しておりますが,平成24年度時点で6.0%と,既に達成したところであります。このため,プラン改訂素案では,指標については設定しないものの,雇用拡大プログラムの重点施策の中で,高校生のものづくり技能の習得支援を掲げており,その中で合格率のさらなる引き上げについても取り組んでまいりたいと存じます。
 以上でございます。



<平成25年6月定例会>(2013年6月14日)

(佐藤)  今回50回目の一般質問ということでございまして,毎回傍聴に来ております妻,我々夫婦にとっては,この50回はもう夫婦の歴史でございますし,また,40回以上傍聴にお越しいただいている方も大変多くいらっしゃるということで,心から感謝を申し上げたいと思います。
 それでは,キャンプ序盤,シートバッティングが始まったような勢いで,脂っこい質問及び提言をさせていただければと思います。
 まずは,地方分権につきまして,このたび国の要請に沿って職員給与についてその減額支給措置を行うことを提案されておりますが,まさに断腸の思いであり,地方交付税を手段として,国が地方公務員の給与減額を実質的に強制することは,地方自治の観点から重大な問題であり,あらゆる機会を捉え,二度とこうしたことを行わないよう,国に求めてまいりたいという知事のお言葉に,私は共感するものがございます。まずは,行政経営をされる中で,何かあれば国に依存せざるを得ないということ,あるいは国に権限,財源を握られて,地域の特性や住民の多様なニーズに応じた施策の展開ができない,あるいは国の都合で地方が左右されることなど,中央集権型システムの限界や不合理ということを痛感されたのではないでしょうか。率直な御感想と知事の考えられる地方自治体,また,地方分権のあるべき姿についていかようにお考えか,あわせてお知らせをください。
 あわせて,経済対策についてでございますが,世界的な景気後退による税収減と繰り返される大規模な経済対策で急激に財政状況も悪化して,新たに新規国債を発行して,今回の追加経済・雇用対策,いわゆるアベノミクスが展開されております。もちろんこれには我々も期待をしておりますし,責任があるわけでございますが,さまざまな要望を受けて,そして調整をされて,大変な御労苦で予算編成されたと思います。ただ,国から来るこうした臨時交付金や国庫支出金が,地方にとっては必ずしも自由度が高く,貴重な財源である,そのように私は国民としては手放しで喜んでいるわけではありません。こうした地方の生殺与奪権が結局赤字国債を発行できる中央にあって,地方は国に頼らざるを得ない,そうした現実についてどのようにお感じでしょうか。
 しかし,今回のアベノミクス,経済対策が,ありがたいことに,例えば中小企業支援の予算が平年の4倍分もあるのは事実であります。これを生かすことは,まさに地方の裁量とも言えます。一方で,持続可能で突き詰めれば,県民の皆様一人一人の所得が上がる経済対策として,地方サイドでより実効的なものにしていく努力も当然必要であろうと思います。具体的な成果及び今後の生かし方の思いをお知らせください。

(知事)  地方分権についての御質問であります。
 まず,中央集権型システムの限界等についてでありますが,国が一方的に政策を決定し,地方は従わざるを得ないという状況は,不適切と言わざるを得ず,こうした状況が続けば,地方の活力が著しく損なわれ,ひいては国全体の活力をそぐことにつながりかねないというのが,今回の経験を通じての率直な感想でございます。価値観の多様化した成熟社会においては,より住民に身近な地方自治体が,住民のニーズや地域の実情を丁寧に把握しながら,みずからの判断と責任において,真に必要な政策を決定,実施し,そして何より住民福祉の向上につなげていくようにしなければなりません。このため,補完性の原則に基づく事務,権限,財源の大胆な移譲により,住民自治,団体自治双方の充実と国全体の行政システムの最適化を図ることが,地方分権のあるべき姿であると考えております。
 次に,経済対策のうち,国に頼らざるを得ない現実についてでありますが,本県においては,国の緊急経済対策に呼応し,老朽化した公共施設の緊急的な補修など,本県として必要不可欠な事業について補正措置を講じたところであります。しかしながら,お話のとおり,財源の選択が国のメニューに左右される現状は問題であり,地方の財政運営に必要な財源を国に頼らず,安定的に確保するための地方財政制度の確立が不可欠であると考えております。
 次に,成果等についてでありますが,国の15カ月予算に対応し,景気の下支えを図るため,今年度当初予算では,緊急雇用創出事業を初めとする基金活用事業や中小企業への金融支援,公共事業等により各種経済・雇用対策を実施することとし,早期に具体的な成果が上がるよう,全力で取り組んでいるところであります。また,国の成長戦略を踏まえ,民間活力が最大限発揮できるビジネス環境を整えることで,企業立地を初めとする県内投資を促進するとともに,企業の新技術,新製品の開発や販路拡大を支援することなどにより,県内の雇用や消費の拡大につなげたいと考えております。いずれにしても,地方の自主財源が十分でない現状においては,国の政策を活用し,県として可能な限りの工夫を凝らしながら実効性のある経済対策を進め,地域経済の活性化を図ってまいりたいと存じます。
 以上でございます。

(佐藤)  これは質問というよりも,こうしてアベノミクスという経済対策の中で,本来は一人一人の所得が上がる,そうした実効性のあることを地方でやりたいんだけれども,今回は地方公務員の方々,県庁職員の方々,教職員の方々については,やむなく給与削減ということで,アベノミクスの目指す方向と若干矛盾するところもある,このことは多分知事も大変におつらい思いもされておると思いますし,そうした意味では,我々議会としても議決をせざるを得ないようなことになると思うんですけれども,その中で本来はこうしたことはイレギュラーなことであるということは,私自身強く感じておるところでございます。

(佐藤)  それでは,引き続いて,本県の強みを生かした産業の振興についてお伺いいたします。
 まずは,打って出る施策として,アンテナショップについてお伺いいたします。
 平成21年の11月定例県議会で,東京に臨時の岡山屋以外は47都道府県中30以上が持っている常設の観光物産センター,アンテナショップを我が県は持っていない,その旨を申し上げましたが,このときはたまたまのタイミングで,翌年フジテレビが自社番組と連動して地方の産物を販売する銀座めざマルシェをオープンしたので,翌年1月からその一角に出店し,ちょっとお茶を濁したような感じになりました。私も何度か行ったんですけれども,「もう一つじゃったなあ」というのを,このめざマルシェに対しては持っておるわけでありますが。ただ,他の都道府県で黒字のアンテナショップ自体がほとんどないにもかかわらず,そこから採算がとれないと極めて後ろ向きの時期が続いていたように思います。ただ,このたび構想されているアンテナショップについては,岡山県としての統一ブランドを構築し,各地にある岡山県出身者等が展開する店舗の基幹店として位置づけ,全国に対して岡山ブランドを発信していくとともに,アンテナショップを活用して,都心に住む人々が岡山県に対してどのようなイメージを持ち,どのようなニーズがあるかを収集する,情報収集基地として活用されるものと期待が高まっております。
 まずは,このアンテナショップにかける思いをお知らせください。
 ところで,このアンテナショップについて,一方で岡山ブランド力の向上を目指すことは当然と思われますが,そのためにアンテナショップで販売できる商品は,一流百貨店のバイヤーの目にかなうレベルの厳しい審査会を行い,通過した選抜アイテムを前面に押し出すという方向ならば,これは銀座というのもあるんでしょうけれども,これ話題づくりだけなんじゃというのならば,思い切って秋葉原のようなところへの立地も考えられると思います。基本的なコンセプトは,いかなるものでございましょうか。
 また,観光PR,ツアー誘致,首都圏における岡山名産品の販売拠点という意味で,一般の消費者を対象とするのみならず,商品を出品する企業に対していかにメリットがあるか,特に首都圏バイヤーに対する商談拠点としての機能をいかようにお考えでしょうか。特に,常設のアンテナショップの運営と,例えばビッグサイト等で開催される大きな商談会,こうしたものの出展と連動して考えるべきだと思いますが,認識をお知らせください。
 加えて,バイヤーを対象とした商談会への出展,これは大変に多くあるんですけれども,まさにこの場は都道府県間の戦いの場だというふうに思います。農林水産あるいは各商工支援団体,県民局それぞれの予算で出展者を選定しているため,必ずしもオール岡山で一丸となって観光PR,ツアー誘致,販路拡大効果が行われているように思えませんけれども,今後の対応についていかようにお考えでしょうか。
 次に,本県の強みを生かした産業の振興の中から,都市機能を充実させるために,今ある既存の地域の資源をいかように生かすかということも重要だと思います。県施設の後楽園,県立博物館,県立美術館,天神山文化プラザ,県立図書館,ルネスホール,そして市の施設の岡山城,シンフォニーホール,オリエント美術館,岡山市民会館,さらに民間の夢二郷土美術館,林原美術館といったカルチャーゾーン,さらに人と科学の未来館サイピア,生涯学習センター,池田動物園,京山ソーラー・グリーン・パーク,岡山光量子科学研究所,岡山国際交流センター,きらめきプラザ,総合グラウンド,これらは全てセンター機能を持っているものなんですが,例えばこれは循環バスが走っててもいいような施設なんですけど,これもない。十分にリンクしておりませんし,また,必ずしも岡山市と県の連携が十分じゃないというふうに思います。加えて,特に指定管理者制度の導入の中で,コストばっかりが重視されて,本来なぜその箱物が必要であるか,そうした理念にさかのぼって考えられるべき施設が必ずしも十分にセンター機能を果たせていないんじゃないか,そうした疑問がある施設もございます。これらの認識と今後の対応についてお伺いをいたします。
 ところで,これに関連して,生物の歴史から人間を考えることをテーマに,恐竜を中心とした古生物,地質学の研究とその研究に基づいた展示,教育活動を行っている林原自然科学博物館についてお伺いいたします。
 同博物館は,常設展示施設は持っておりませんが,大小さまざまな企画展示や講演,ワークショップなどの普及活動を通じて研究成果を公開されております。ただ,ああいうことになりまして,その後,本当に瀬戸内市さんの大変な御努力があって,今,保管していただいているということで,そのことには本当に感謝と敬意を表させていただきたいと思います。その中で,昨秋,林原類人猿研究センターから京都大学へチンパンジーが移動になったことは,記憶に新しいんですが,個人や民間企業のコレクションという域をはるかに超えた学術的に貴重なものであるにもかかわらず,場合によっては譲渡,一部これはモンゴルに返さないけんもんもありますが,県内から散逸するおそれがございます。時代が違うとはいえ,箱物まで建設した岡山市立オリエント美術館を思うときに,こうした場面でやはり県内にある貴重な文化的資源を守るため,私は行政が積極的にそれを譲り受けてその活用を考えるべきではないかというふうに思います。しかし,これは民と民をつなぐ話になるわけでありますが,例えばでありますが,県として譲り受けて,スペース的には十分保管,展示も可能と思われる池田動物園や京山ソーラー・グリーン・パークに,貴重な恐竜の化石標本を展示すれば,問題になっております池田動物園についてもさらなら集客が望めるかもしれませんし,また,サイピアの横には,岡山っ子のシンボルとも言える恐竜の滑り台がございますけれども。恐竜から今に生きる動物,さらには宇宙まで,全国に希有な自然科学,宇宙科学の社会教育ゾーン,生涯学習エリアを大展開することがあの場所にできるんじゃないかというふうに思います。ましてや,周辺には多くの大学や専門学校や高校,中学校,小学校という限りない地域の資源も集積をしております。全てをウイン・ウインの関係で結ぶことができるんじゃないかというふうに思います。知事が顧客重視,コスト意識,スピード感の3つの視点に立って,限られた資源を最大限に活用するとおっしゃっていただいているのならば,まさにこうした場面で私は腕の見せどころじゃないかというふうに思うんですが,御所見をお聞かせください。
 次に,限られた資源という中で,実は岡山県で産出する石でありますけれども,石には全国で有名な北木石と万成石がございます。岡山県は,花崗岩の実は主要産地でございます。例えば,北木石は北木島から産出して,大阪城の石垣や靖国神社の大鳥居でも使用されております。また,万成地区で採掘される花崗岩である万成石は,イサム・ノグチが愛した素材でもあり,石原裕次郎などの実は著名人のお墓の墓石にも使用されているということで,備中青御影石も高級墓石材として使用されているそうでございます。このような形で,岡山の石には実は大変なブランド力があるんでありますが,例えばコスト削減という観点からか,県内の公共事業で行われる観光地の橋などにも,平気で実は中国の石が使われていたりして,見る人が見ると,これは中国の石じゃねえかというのがわかるという状況になっております。本県の強みを生かした産業の振興という意味では,石材に限らず,必ずしもコストだけでは計算できないすばらしい岡山産の素材を使ってブランド力を上げて,全国発信するということを,私は行政が怠るべきではないと考えますが,御所見をお聞かせください。
 加えて,こうして県産材の活用も含めた産業振興の観点から,特に南海トラフ巨大地震を想定して,木造仮設住宅の供給を確保する動きが進んでおります。木造仮設住宅は,解体をして災害公営住宅などに再利用できるというメリットがございまして,既に11県が業界団体と災害協定を結んでいます。もちろんプレハブが迅速に何かあったときに大量供給ができるのに対して,この木造仮設住宅は,その補完という形になるのかもしれませんが,木造仮設住宅に係る災害協定について御所見をお聞かせください。
 最後に,まさに,旧林原のモータープールに2014年11月,イオンモールの大型ショッピングセンターが開業いたします。私は,本会議で,同跡地には県庁の移転を含めて,官公庁施設を集積すべきだと申し上げたこともございますが,店舗数約350,売り場面積約8万8,000平方メートル,駐車場は立体と地下で約2,500台ということで,いずれも同社の施設では西日本最大規模で,西日本の旗艦店と位置づける施設が誕生いたします。1階中央には,約2,000人収容のイベントスペース,5階に600席規模のホールを設けて,コンベンション機能も設置されております。御案内のとおり,2011年には,倉敷チボリ公園跡地にアウトレットモールと大型ショッピングセンターの複合施設が開業しておりますが,既存の百貨店や専門店などを含めて商業機能が高まる一方,店舗間の競争が激化,既存の商店街等への影響は,これはもう必至であろうというふうに見られております。同施設に対して一方での期待,そして一方での懸念,また,岡山市と一体となって考えるべき岡山県としての課題について御所見をお聞かせください。

(知事)  お答えいたします。
 本県の強みを生かした産業振興についての御質問であります。
 まず,アンテナショップのうち,思いについてでありますが,アンテナショップはいわば首都圏における本県の営業拠点であり,情報の収集と発信の拠点であると考えております。私といたしましては,本県のイメージ向上につながるプロモーション戦略とあわせ,物販だけにとどまらず,観光客誘致や県産品の販路開拓に向けた情報発信,市場ニーズ等の情報収集を行うことにより,全国規模での岡山県の認知度向上と岡山県のブランドイメージの確立を図り,県内の産業振興につなげていきたいと考えております。
 次に,基本的なコンセプトについてでありますが,私といたしましては,アンテナショップは一般消費者を対象とするだけでなく,バイヤーを対象とした県産品のショ−ルーム,商談の場としての性格も合わせ持つものと考えており,立地につきましても,都心部の情報発信力の高い地域など,アンテナショップ設置の目的を達成するに適した場所を検討してまいりたいと存じます。
 次に,商談拠点としての機能についてでありますが,アンテナショップでは,バイヤーとの商談等に積極的に取り組むとともに,テストマーケティングの場として,首都圏の消費者やバイヤーの評価を県内事業者にフィードバックし,売れる商品づくりに生かしてまいりたいと考えております。あわせて,これらの取り組みを通じて磨かれた県産品を国内外に発信するため,首都圏で開催される展示商談会への出展についても,アンテナショップと連動させながら,引き続き積極的に展開してまいりたいと考えております。
 次に,オール岡山での今後の対応についてでありますが,展示商談会への出展等に当たっては,本庁,県民局,関係団体等が相互に情報を交換しながら,地域の実情やニーズに応じて取り組んでいるところでありますが,今後は,企画の段階からも緊密な連携を図り,オール岡山でより効果的,効率的な取り組みとなるよう努めてまいりたいと考えております。
 次に,既存の地域資源の活用のうち,県施設等の連携についてでありますが,市内中心部に設置された各施設については,それぞれの管理者が施設の設置目的に沿った運営を目指しているものと理解しているところです。また,県や岡山市の施設,さらには民間の施設を加えた連携については,岡山カルチャーゾーンなど一部地域では実現しておりますが,全体としてはさらに連携の余地があると考えております。今後,地域の拠点が有機的にネットワーク化したまちづくりのあり方を,岡山市や関係団体等とともに研究する必要があると考えております。
 次に,林原自然科学博物館についてでありますが,林原グループがメセナ活動の一環として取り組んだ古生物の研究成果や発掘された恐竜の化石は,学術の振興や教育の普及に貢献するものであり,県としても,サイピア等で展示を行うなど活用しておりますが,こうした貴重な標本資料等は学術的な研究機関に集約されて保存されることで,多面的な研究や活用が進むものと考えております。林原自然科学博物館では,今後,県内の大学との連携を進めると聞いており,県としては,そうした動向を見守ってまいりたいと存じます。
 次に,岡山産素材についてでありますが,お話のとおり,本県には北木石や万成石等の有名なブランド石材があり,これまで県立図書館を初め数多くの施設等において使用し,アピールに努めてきたところでございます。県では,こうした取り組みに加えて,石材や繊維,耐火物原料等すぐれた素材を生かした魅力ある製品の開発や販路開拓を目指す県内中小企業に対して,きらめき岡山創成ファンドを活用した支援を行っているところであり,さらに国や関係機関と連携して,岡山産素材のブランド力の向上を図ってまいりたいと存じます。
 次に,木造仮設住宅に係る災害協定についてでありますが,県では,災害が発生した際に被災者の応急仮設住宅を確保する必要があるため,既に関係団体とプレハブ仮設住宅の建設や,民間賃貸住宅の提供に関する協定をそれぞれ締結しているところであります。お話の業界団体との木造仮設住宅を供給する災害協定につきましては,当該団体が全国規模であること,また,県内の登録業者が少ないことから,県産材利用などの産業振興の効果は限定的であると考えておりますが,引き続き検討してまいりたいと存じます。
 次に,大型ショッピングセンターへの認識についてでありますが,西日本有数の大規模な商業施設が本県の玄関口である岡山駅前に誕生することは,広域交通網の結節点としての拠点性を高めるとともに,にぎわいの創出や観光産業への波及,雇用の増加などの面で極めて大きな効果があると期待しているところでございます。一方,御指摘のように,既存商店街等への影響が懸念されているところですが,年間2,000万人を超えるとされる集客力は,地元商店街等においても,ビジネス拡大に向けた絶好のチャンスに成り得ると考えております。県としても市や支援機関等と緊密に連携し,大型ショッピングセンターとの相乗効果が発揮できるよう,学生のアイデアを活用した商店街の魅力アップや小売業者の経営安定対策等に努めてまいりたいと考えております。
 以上でございます。

(佐藤)  これは質問というよりは,私がこういう夢を持っておるので,どのようにお感じになられますかというようなことになるかもしれませんが,先ほど来申し上げている岡山市,政令市になってなかなかこのまちづくり等については岡山県が余り物を言う立場にはない状況にはなっておりますが,しかしながら一方で,岡山市内に本当に岡山県のセンター機能を持つ多くの施設が集積しておるということで,先ほどるる申し上げた施設をぐるっとめぐれば,子供たちが本当にあらゆる可能性に触れることができる,文化であったりスポーツであったり,そしてこのたび我々も宇宙少年団の桃太郎分団というのをつくりますが,宇宙に触れていく,科学に触れていく,そして国際交流もできる,ぐるっとめぐるだけで子供の可能性があふれている,そうした地域だというふうに思っております。その中で,特に今本当にこれは瀬戸内市さんの大変な御努力で,この林原自然科学博物館にあったものを管理していただいておるわけでありますが,これはやっぱりそれぞれ思いがあられると思うのでありますが,やはり数も大変膨大にあるということで,そして最終的には半分ぐらいはモンゴルのほうに,これはお返しせにゃあいけんというのもあるんですが。一方で,この施設にあるものが名古屋の科学館に行ったり,よその地域の科学館に行って,岡山から来た化石だというふうなことで,全国に広がっておる。もちろん学術的なそうした意味合いも強いと思うんですが,その中で学術的な研究機関に,動向,推移を見守りたいということであるんですが,願わくば子供たちに触れる場所に置いてもらいたいというふうに思います。やはり子供たちが化石を見て,一方でプラネタリウムを見て,宇宙飛行士になりたいなと思う子もいるかもしれんし,サイピアの横は昔の古代の地層がありますけれども,どこにでも岡山県の中,可能性があるということで,全部が全部,学術的なところに行く必要もないと思いますので,少しでもそれが,例えば池田動物園や知事も行かれたことあると思いますが,京山ロープウエー,恐らく共通の思い出が岡山っ子としてはあると思うのですけれども,岡山市の中心部をめぐると,子供たちの夢がいろんな方向に広がっていくんだ。その中で,化石については倉庫の中,あるいは学術機関の中にずっとあること,守られるのも大切なんですが,できるだけ人目に触れられる場所,願わくば池田動物園なんかにあれば,ナウマン象と象の違いと,一方は化石ですけれども,こっちは生きとるというふうな,キリンと恐竜どっちが大きいとか,あるいは今の爬虫類と昔の爬虫類の化石を比べるとか,いろんなところで子供たちの関心を引いて,そこから夢に広がっていけるもんがあるんじゃないか。そして,池田動物園の話については,なかなかこれは民間の施設でありますから,それを応援するということは難しいかもしれませんけれども,一方でしかしながら行政のほうの形がどっかで絡んでいければ,少し,また,形も変わってくるんじゃないかなというふうに思います。
 いずれにしても,この岡山市中心部のこのエリアについて,それから先ほどね,学術的な研究機関,推移を見守るだけではちょっと寂しい感じがするんですけれども,子供たちにできるだけ触れるような形になることをお考えいただけないかなということで,これはちょっと御感想を聞かさせていただければと思います。

(知事)  せっかくの岡山の財産である化石等をどのように生かしていくのか,また,岡山市との連携について,権限はないにしても,もっともっとできることはあるのではないかという御質問,御要望についてお答えをいたします。
 確かに,岡山市が政令市になって,岡山県として直接権限を持って何かすることができなくなった部分もございますけれども,岡山市は岡山県にとって大変大切なパートナーでありますので,ぜひいろいろな,岡山市民にとって,岡山県民にとってよさそうなことであれば積極的に提言をするですとか,相談するですとか,連携していきたいと思っております。
 また,化石についてでございますが,それぞれの恐竜の化石,もう一億年以上も地中に眠っていたところをせっかく掘り起こしてもらったわけでございます。このまま,また,倉庫の中で眠るということになると,大変もったいないようなこともございますので,ぜひ場面場面で子供たちや市民の目に触れる場面ができるように,岡山県としても働きかけてまいりたいと思います。
 以上でございます。



<平成25年2月定例会>(2013年3月6日)

(佐藤)  先ほどの感想めいたことを申し上げれば,特に7月に大きな決断を,あるいは我々議会としても6月定例県議会,そうしたところで必要になるかもしれないということで,1年トータル見たときに再来年度予算の編成期になっておれば昨年のこの議論というのが無駄ではなかったなというふうになっていることを強く望みたいというふうに思います。
 それでは続いて,岡山の強みを生かした産業の振興についてお伺いいたします。
 特に知事提案説明の中で,「優良企業の誘致のために規制緩和によるビジネス環境の整備を行う」とおっしゃっておられます。
 まず,具体的に知事の考えられる「規制」というのが何なのか,それをどのように緩和して,そしてそれにより誘致される優良企業の具体的なイメージについてお知らせいただきたいと思います。
 次に,具体的な規制緩和による産業誘致施策について,これはもう最も極端な規制緩和としてカジノについてお伺いいたします。
 もちろん過去の構造改革特区の議論が盛んだったころ,カジノ特区は刑法に関する特区は対象外との規定に基づいて事実上門前払いにされました。ただ,その当時からしてもカジノの議論は実は内々に進んできており,IR法の整備が検討され,例えば大阪の橋下市長は,大阪におけるカジノを含んだ統合型リゾートの導入検討を表明しておりますし,実は現在誘致をしているのが北海道,秋田県,東京都,石川県,静岡県,愛知県,大阪府,徳島県,長崎県,宮崎県,沖縄県など10都道府県を超えております。過去には,香川経済同友会さんなどが国立公園の指定が外れている橋台の島与島あたりに米国ラスベガスのような娯楽施設が集合したエンターテインメント型カジノを想定して提案されたこともございます。もちろん自治体が施設周辺のインフラを整備して良好な環境を維持していかなければならず,その財源確保に税を位置づける必要もございますし,こうした射幸心を助長する「かけごと」を中心とした拠点開発によって本当に健全な形での経済活性化が図れるのか,またカジノを容認することに対しての国民の皆様のコンセンサスが得られるか,何よりも青少年の健全育成の点からもこの議論は避けられないと思います。しかし,先進国の中で100万人以上の大都市にカジノがないのは日本だけと言われる中で,事実上もう都道府県下の誘致合戦が始まっております。その中で,検討すらしないんだということではインバウンドの戦略においても大きく他都道府県におくれをとることになります。カジノについての思いを含め,知事の御所見をお聞かせください。

 次に,産業振興の観点から独立行政法人宇宙航空研究開発機構,いわゆるJAXAでございますが,JAXAとの連携についてお伺いいたします。
 いよいよこの春,「生涯学習センター未来科学棟」改め「人と科学の未来館サイピア」がオープンをいたします。デジタルプラネタリウムを設置されて,宇宙に向かって子供たちの可能性が無限に広がっていくことを本当に楽しみにしておりますが,ここでよもやJAXAとの連携,協定締結を考えておられないことはないというふうに思いますけれども,まずそのことを教育長に確認をさせていただきたいと思います。また,このJAXAと連携して災害監視,防災や農林水産業で人工衛星を利用したり,航空産業から航空宇宙産業に視野を広げて産業連携活動を行う自治体ももう出てまいりました。さらに,一歩踏み込んでJAXAとの連携を目指すお気持ちはないか,お伺いいたします。

(知事)  お答えいたします。
 岡山の強みを生かした産業振興についての御質問であります。
 企業誘致のための規制緩和等についてでありますが,現在水島コンビナートでの事業環境の向上に向け総合特区制度を活用し,道路運送車両法の規制緩和などについて国と協議を進めているところであり,また企業誘致に必要な産業用地を迅速に確保するため,環境アセスメントの規模要件を見直すことなどを検討しているところであります。このような規制緩和や支援制度の拡充などの取り組みを通じて,業種や規模にはこだわらず価格競争に巻き込まれにくい独自の技術を持った企業や食料品関連など地域に多くの雇用を生み出す企業など,一件でも多くの優良企業の誘致や既存立地企業の事業拡大につなげてまいりたいと考えております。
 次に,カジノ誘致についてでありますが,誘致によって外国人など観光客の増加が見込まれ,施設整備も含めた経済波及効果や税収の増加等も期待される一方,風紀,住環境の悪化や青少年への悪影響等の問題も指摘されておりますが,国内ではお話のように東京都,大阪府など幾つかの自治体で構想をまとめ,誘致に向けた動きがなされている状況であります。これまでのところ,本県及び中国地方ではカジノ誘致等に関する議論が具体化しておりませんが,インバウンドの増加や地域経済の活性化に向けた有効な方策の一つでもあり,瀬戸内関係7県が一体となったブランド推進協議会の中で将来検討されるべきテーマでもあると考えられ,国及び他県の動向を注視してまいりたいと存じます。
 次に,産業連携等についてでありますが,お話のとおり他県では衛星の防災利用の実証実験を行ったり,JAXAの太陽電池パネルの軽量化に民間技術を活用するなどの例も生まれており,本県でも現在,衛星を利用した大規模災害時の岡山情報ハイウェイのバックアップ体制構築について検討を進めているところです。また,これまでも航空機関連の研修にJAXAから講師を招いたり,金星探査機あかつきに登載する小型衛星の開発へ県内企業が参加する等の連携も行われているところです。県内企業の強みを生かした宇宙航空関連の新たなビジネスの創出は大変夢があり,大きなチャンスとなることから,県としてもJAXAとの連携を一層進め,航空機産業を初めとする県内企業の競争力強化に努めてまいりたいと考えております。
 以上でございます。

(教育長)  お答えいたします。
 「人と科学の未来館サイピア」についてでありますが,4月中旬にお話のJAXAとの連携協定を結ぶこととしており,サイピアで実施する講座等への宇宙に関するプログラム提供に加え,学校の授業への講師派遣,教員に対する研修等を予定しております。宇宙政策にかかわる方々や最先端の知見に基づく教材に触れることにより,子供たちの学習意欲の喚起や好奇心の醸成に大きな効果が期待できるものと考えております。

(佐藤)  どうもありがとうございました。
 カジノの話をしますと,あとこうしてインターネット中継とかごらんになった方が,あんた「かけごと」のこと言うてえんかなということで随分後お叱りを受けることもあるわけでありますが,私自身余り「かけごと」はしないほうなんですが,その中で知事を巻き込むわけではないんですけれども,知事カジノに行かれたことがございますか。イメージとして,私が申し上げてるカジノというのは決して「かけごと」ではなくてエンターテインメントとして世界のエンターテイナーがやってくるということで,例えば以前与島にというと,本会議で言ったことあるんですけども,そのときには与島は岡山県じゃねえということで怒られたわけであります。あれは香川県でございますから。
 ただ,例えば京橋から,あるいは鷲羽山から,あるいは玉野から,あるいは高松のほうから24時間どんどん船が出てというふうなイメージ,そうしたものも想定できるんじゃないかな。その中で,知事御自身カジノのイメージ,どういうイメージをお持ちでしょうか。

(知事)  カジノについて行ったことがあるか,そしてどのようなイメージを持っているかという質問に対して正直にお答えをいたします。
 私自身ラスベガスに,さあ,どうでしょう,5回ほど行ったことがございます。これたまたまアメリカに留学中にラスベガスのすぐ近く,すぐ近くといっても車で4時間ほどかかるわけですが,砂漠の真ん中で,次に大きな町がラスベガスというユタ州の片田舎に住んでいたためでございます。あと社会人になってから,韓国のカジノに2回かぐらい行ったことがございます。私,学生のころに決めたルールを現在でも守っておりまして,カジノに行くときには一晩に使う限度額を100ドルと決めております。日本円で,1万円でございます。ですから,学生のころはそれが妥当だったのかもしれませんが,社会人になって行くと,ほかの人と比べてかなり限度額が小さいのでびっくりされるわけでありますが,私自身企業経営者として数十億円,ある種リスクをとらなければいけなかったことが何度もございまして,そういうところで十分命を削ってリスクをとっているのに何でわざわざこの不利なリスクをとらなければいけないのかという気持ちが強く,入場料として1万円を限度に楽しむことといたしております。あとカジノは例えばラスベガスにおいては非常に清潔で,かつまたよく管理されておりまして,私自身詳しく調べたわけではありませんが,マフィアを一掃する命がけの取り組みが功を奏していまして,やれば非常に管理されたカジノ経営も可能なのだということを体験いたしております。



<平成24年11月定例会>(2012年12月7日)

(佐藤)  どうしても今回の議論というか,これは抽象的な話にならざるを得ないわけでございますが,逆にこれから議会が重ねられて具体的な施策が出てくるうちに,あのときこの議会でおっしゃっていただいたことの理念というのが,あれはどうだったんだろうという原点の部分ということを確認させていただきたくて,今この質問をさせていただいております。
 そしてその中で,次は具体的な話として,特に知事が力を入れられたい施策,産業の振興,教育県岡山の復活,県民が安全・安心に暮らせる地域づくり,県民全てが誇りを持てる岡山県づくりのうち,この中で特に知事が挑戦されたいという,本県の発展の礎となる経済の活性化と教育の再生についてお伺いいたします。
 まずは,産業の振興についてでございますが,ある意味FA宣言した選手を連れてきたり,ドラフト会議で有望選手を指名するような優良企業の誘致を進めて,人・物・金の誘致を図ったり,あるいはオンリーワン企業の転換を支援するということは,これまでもやってきたわけでありますが,これはなかなか成果が出ておらんという現状がある一方で,やはりまずは地域住民であられる地場の中小あるいは零細とも言える,そうした,時には個人の企業に元気になっていただくこと,いわば既存企業の底上げを図っていくことが,私はより現実的なことだというふうに思います。
 そこで,商工会,商工会議所,中小企業団体中央会などとの連携,さらにはこうしたところで地域をリードする人材育成支援についてのお考えをお伺いいたします。
 また,一方で,国内外の地域と競い合いながら積極的な交流を行っていくためには,岡山県の顔となり,発展への原動力となる都市機能の高度化を図る必要があると考えられますが,市街地の再開発,中心市街地活性化,商店街の活性化についての御認識をお伺いいたします。
 加えて,岡山県がその資源を十分に生かし切っていないのが観光産業ではないかというふうに,私は思うんですが,特に後楽園周辺整備事業としての出石町の整備計画を白紙撤回して以来,なかなかこれは兼六園等と比べても後楽園はうまく生かし切れてないんじゃないか,市の所管の岡山城と県の土木部所管の後楽園が,必ずしもうまく連携する形で観光客を呼び込めていないというふうに思いますけれども,この点について今後の方策も含めて御認識をお知らせください。

(知事)  お答えいたします。
 産業の振興についての御質問であります。
 まず,商工会等との連携強化等についてでありますが,厳しい経営環境の中,地域の雇用を支えている中小零細企業の経営改善や新分野にチャレンジする取り組みを積極的に支援するためには,事業者が持つさまざまな課題にきめ細かい経営指導を行う商工会等との連携は欠かせないものと考えております。資金繰りや販路開拓など,さまざまなニーズに的確にお応えするためには,各団体の指導員のさらなる資質の向上を図る必要があることから,現在,県では,若手職員を対象にした専門的な研修や実践的なセミナーなどを行っており,今後とも,商工会等が地域の中小企業から信頼され,地域経済の振興の重要な担い手となるよう,人材の育成に努めてまいりたいと考えております。
 次に,市街地の再開発等についてでありますが,中心市街地や商店街の活性化,都市機能の高度化などのまちづくりは,地元自治体がみずからの責任において行っていただくことが基本であり,現在,中心市街地活性化法に基づき,県内4カ所で主体的なまちづくりが進められており,県では協議会に参加し,アドバイスを行っております。一方,商店街の多くは,経営者の高齢化や人口減少等により活力を失っていることから,県としては国の支援制度や全国の成功事例等を積極的に紹介するとともに,全県を対象にした個性豊かで頑張る小売店を表彰する制度の創設,高校生や大学生の斬新な発想を生かし,若者が参画した商店街活性化やまちおこしのアイデア募集などを行っており,これらの取り組みを通じて,各地域の元気づくりや魅力の向上を応援してまいりたいと考えております。
 次に,後楽園と岡山城との連携についてでありますが,後楽園の夏の幻想庭園や秋の誘い庭園とあわせて,岡山城においてもイベントの開催や開館時間の延長を行うとともに,年間を通した共通入園券の販売など,岡山市と連携して入園者の増加に努めてきたところでありますが,共通入園券の利用者が後楽園入園者数の約8%程度にとどまるなど,十分とは言えない状況であると認識いたしております。本年度は,市や関係機関との連絡会議を設置し,両施設のホームページを相互に閲覧できるよう改善したところであり,今後は,共通の観光パンフレット,ポスターの作成や観光プロモーションの実施も検討するなど,岡山市との連携をさらに密にし,誘客につなげてまいりたいと考えております。
 以上でございます。

(佐藤)  今までちょっと抽象的な議論が続いているので,この部分についてはもう少し具体的な答弁が欲しいなあというのが,まことに申しわけないですけど,今の御答弁,今までの御答弁と何も変わらない,特に中心市街地の活性化等については,これは基本的には市町村,基礎自治体がやることですよと,商店街についても言ってみれば県のやられる施策はそうないんだと,それから先ほどの後楽園の問題にしても,もう少し踏み込んだ,特にこれは選挙戦のときにも知事御本人がおっしゃっておられたことでありますから,やはりここはもう超えていっていただかなくちゃいけない。特に,農林水産業の振興,これは岡山県の産業の中枢として,もちろんこれは育てていかなくちゃいけない,ブランド化も進めていかなくちゃいけない,一方でやっぱり農村部が元気になる,中心市街地が元気になる,私はこれはリンクしている問題だと思います。中心市街地,商店街を元気にさせようとしようとすれば,郊外が元気にならなくちゃいけない。郊外が元気になって,農村部が元気になって,公共交通をどのように考えるのか,そうしたことも考えていかなくちゃいけない。だから,全部私はつながっている話だと思います。特に,中心市街地で生まれ育ち,周辺を見てこられた知事の思いを,やはり中心市街地に対する思い,商店街に対する思いというのを,やはりこの場で私は何か熱くなるようなものをおっしゃっていただきたいなという気持ちがあります。ただ,あくまで県という組織でありますから,これは中心部だけがようなりゃあええんじゃという話じゃなくて,そのためにも郊外が,農村部がようならにゃあいけんという話だと思いますが,ちょっと今までと余り答弁変わらんぞということで,ちょっとがっくりしております。
 プラス後楽園の問題につきましても,たちまちすぐに問題なのは,やはり岡山城がこれが市の所管である,そして後楽園についても,これは土木部の方には申しわけないけれども,一方でこれは文化財として守るという,一方の役割がある。しかし一方で,観光施策としては,本当にこれは十分にお客さんを呼び込めとるかな,と考えたときに,やはり県のほうから一歩踏み込んで市のほうに働きかけていかないと,これは兼六園にはとても勝てないよと。ましてや,出石町の再開発,これを白紙撤回した後がこの状態ということで,私は県の責任が多いというふうに思っております。いずれにしても,商店街,中心市街地に対する知事の熱い思い,そして後楽園について,市と組んでどうするのか,それについて再答弁お願いいたします。

(知事)  佐藤議員のまちづくりに対してもっと熱い思いをという質問もしくは要望に関してでございますが,熱い思いは夜になってお酒を飲んでからのほうが適切なのではないかと考えております。一言この厳粛な場で申し上げさせていただくとするならば,後楽園が観光を管轄する場ではなくて,土木を管轄する部署が監督しているということを教えていただいたときには,改善の余地があるのではないかと思った次第でございます。後楽園は,皆様御案内のとおり,日本三名園の一つでございまして,大変な財産でございます。この財産をいかに有効活用して,他県から来ていただくか,県内の方にも楽しんでいただくか,これはもっともっと工夫できる余地が残っていると,私は確信いたしております。

(佐藤) なるべく議論というのは会議録に残したいというように思っておりまして,私それほどお酒が強うございませんので,できれば本会議場とか委員会で議論を闘わせたいなあというふうな気持ちがあるということは,申し上げたいと思います。



<平成22年11月定例会>(2010年12月7日)

(佐藤)  ところで,私自身も議会で申し上げ,おかやま発展戦略会議が創設され,意見交換が行われていることは歓迎すべきことでありますが,来年度前半に取りまとめて次期夢づくりプランの中期行動計画にも反映する,そうしたスピード感自体に,私は成長戦略性が感じられません。先ほどのび太の夏休み学習計画と申し上げましたが,計画をつくること自体に意味があるのではありません。基本的には,すぐに施策や事業に取り込まなければ,民間のお知恵をちょうだいする意味がない。逆に,そういう提言をいただかなくてはいけません。何より県では既にミクロものづくり岡山,バイオアクティブおかやま,ハートフルビジネスおかやま,メディカルテクノおかやま,ウイングウィン岡山という重点施策を打ち出しており,こうした重点施策の現状での評価と整合性を図ることが必要でございます。御所見をお聞かせください。

 加えて,9月定例会で物品調達に当たって最低制限価格を設けず底なしの入札を行うことが地域経済の下支えになるのかと申し上げましたところ,出納局長から,最低制限価格の設定は地方自治法の規定により,工事または製造,その他の請負に係る入札に限られており,物品調達に関しましては,必要な効用を満たす物品をより安価に購入することを基本に実施しているところでありますという答弁をちょうだいいたしました。しかし,その後10月1日から,津山市において,一部の役務の見積競争に関して変動型最低制限価格制度が導入されました。その趣旨は,役務委託契約について,競争見積もりにおける過度な低価格による質の低下を防止して,適正な市場価格での契約締結を図ることを目的とするもので,要は5社以上の場合,見積もり提出業者の最高値及び最低値を除外して平均額を算出,それに100分の75を乗じて得た額を最低制限価格とするというものでございます。バス旅行貸し切りバス,その他の役務に加えて,岡山県では多くを物品調達に入れている印刷物を対象業種に加えたことが特徴的で,100分の75という根拠自体はよくわかりませんが,これで少なくとも底なしのたたき合いはなくなっているようでございます。非常に合理的な仕組みであると思いますが,その評価と岡山県への導入は考えられないか,出納局長にお尋ねいたします。
 加えて,県内製品の優先調達,県内業者への優先発注といっても,清掃業務や設備点検等の役務に係る委託契約の発注の仕方,端的にはこれは仕様書の書き方によっては,余りに抽象過ぎても具体に過ぎても結局は適正価格での発注とそごが生じる場合があります。これは,発注サイドにも十分な研究が必要だと思いますが,基本的な考え方を出納長にお尋ねいたします。
 次に,かなり厳しい行財政構造改革の中で,一方で行政サービスがカットされて,一方で歳入確保対策の中で,県民の皆様の負担が増していることは,これはもう事実だと思います。そうした中でも,本当に地場で頑張っている企業やスポーツや文化芸術で頑張っている子供たちのよいニュースというのは多くあります。しかし,よい話もよほど強く希望してやっと知事に表敬訪問ができて,いわば謁見がかなうような状態になっています。私は,言われたから知事が会われるのではなくて,岡山県民は特によいこと嫌いだという評価がありますけれども,こうした時代だからこそ,このような岡山県が元気になるような話については積極的に,こんなにすばらしいことがある,こんなにすばらしい人がいるということを県民にアピールして,お互いに褒め合って元気を出す,喜びを分かち合うようにすべきだと思います。
 例えば,最近でも株式会社中国シール印刷さんは,アメリカのシカゴで開かれた第22回世界ラベルコンテストで3年連続となる最優秀賞,世界一を受賞されました。岡山のデザイン,印刷技術が3年連続で世界一と評価されたということでございます。本当に喜ばしい勇気が出るニュースでございます。例えば,県庁ホームページの「イチおし岡山」というコーナーがございますが,このコーナーにどんな分野であれ,こうした世界一,日本一になった元気が出る話を掲載する,あるいは先般創設された岡山県内の各分野から次世代のリーダーを毎年10人選ぶ「オカヤマアワード」のように,若い才能をどんどん評価して押し上げていく,そうした仕組みを創設すべきだと思いますが,御所見をお聞かせください。

(知事)  次に,おかやま発展戦略会議でありますが,現在,時代の潮流を踏まえまして,物づくり産業の集積という,本県の強みや優位性を生かすという方針のもと,中長期的な視点から,本県が将来にわたり発展し続けていくための戦略について検討いただいております。お話のように,本県ではミクロ物づくりや医療・福祉・健康分野など,重点的な取り組みが進められておりまして,冠動脈用の高性能ステントやあるいは筋肉疲労を軽減する高機能全身サポーターの開発等,多くの成果が上がってきておりまして,今回の会議にこのような取り組み状況や成果等,これを十分に御説明し,これを踏まえて現在議論していただいているところであります。
 なお,会議で示されました提案のうち,早急に取り組むべきものにつきましては,順次施策・事業に取り入れを行うなど,当然のことながらスピード感を持って対応してまいりたいと考えております。

 次に,元気の出る話のアピール等についてでありますが,県内外で活躍されている方々の活動あるいは成果で,県民に勇気や感動を与え,元気が出る話題につきましては,これまでもさまざまな広報媒体を活用して広く県民にお知らせしてきたところでありまして,今後ともホームページへの掲載という御提案もいただきましたけれども,こういったことも参考にしながら積極的に情報発信してまいりたいと存じます。



<平成22年9月定例会>(2010年9月14日)

(佐藤)  本日,民主党の代表選挙が行われますが,結果はどうあれ,現下の経済状況の中で,参議院選挙以降,時間を浪費しながら,結局は税金を使ったコップの中の争いに空白の2カ月の政治状況をつくった責任は,私は極めて重いというふうに思います。民間がきょうの生き死にで日々戦っている中,景気回復の足を政治が引っ張っているようにすら見えます。まずは,いかなる結果であれ,国民の皆様の信を問う解散総選挙を行うのが,私は筋だと思います。ともあれ,年末に向けて,さらにとんでもない事態になるのではないかという恐怖感が襲いますが,もはや政治をあてにせず,先憂後楽どころか,おのれの選挙のためにきゅうきゅうとする政治家,議員が侮蔑の対象になっていること自体,だれにとってもこれは不幸な状況だと思います。だからこそ,地方は,多数党として我々自民党地方議員が何としても守り抜いていく,そんな思いを込めて,提言及び質問をさせていただきます。昨今流行の「注視する」,「推移を見守る」といった,事実上何もしないで放置するような,そんな答弁をいただかないことを切にお願いいたします。
 さて,行財政構造改革も2年目に入りましたが,基本的には,全国どの都道府県も歳出カットを中心とした行財政改革を行っておりますけれども,経費削減だけで財政再建が実現できるのか,地域経済の衰退によって税収減が予想される中で,財政の持続可能性はあるのか,超高齢化社会の社会保障関連支出にたえ得るのかという命題を抱えております。一方で,岡山県はお金がないと,金科玉条のように,それをもって結局は,もとから努力もしない言いわけにしたり,一方的に施策や施設をいじることに伴う大損害について,実際に金銭的な被害が生じても,理解と協力を強制的に求めてこられる,そうしたことへの怒りもしばしば耳にいたします。必ずしも,交付税の仕組みで丸々はプラスにはならない,そうしたことは理解しつつも,本来であれば,県民の皆様の所得が上がって,黒字の地場企業が元気に収益を上げて,そこから税収を上げていくことが行政のとるべき本筋であり,民に負担を強いる行革は,あくまで私は緊急事態だというふうに思います。だからこそ,地方経済の活性化のためには,地方自治体みずからがリーダーとなって,戦略的,組織的に攻めの行政を行っていく必要があるわけでございますが,私も昨年11月定例会で,成長戦略会議を創設すべきだと申し上げ,今月下旬に産学官の各分野で活躍されている県内外の有識者で構成する,おかやま発展戦略会議を発足させて,そこから柔軟で斬新な視点からの活発な議論を通じて,岡山の力強い発展に向けた施策の方向等について提言をいただくということには,期待させていただきたいというふうに思います。
 まずは,行革が民に負担を強いているという,そうした御認識があられるか,経費削減だけで財政再建が実現できるのか,地域経済の衰退によって税収減が予想される中で,財政の持続可能性はあるのか,超高齢化社会の社会保障関連支出にたえ得るのかという命題について,知事の御所見をお伺いいたします。また,今回提言される,おかやま発展戦略会議について,知事の思いをお知らせください。
 こうした中,国の新成長戦略に掲げられた総合特区の制度設計のための提案募集が注目されます。記憶をたどれば,平成14年12月議会でお伺いしているんですけれども,小泉構造改革の根幹をなすものの一つとして,当時,鳴り物入りで構造改革特区というものがありました。当時,本県からの提案は,IT特区や水島港国際物流・産業特区など,地域特性や,あるいは企業参入の動向等を踏まえて提案した4件にとどまって,岡山市,倉敷市がそれぞれ1件,おまけに,こうした規制緩和を求める声に対して,必ずしも各省庁の回答はいいものではなかった,興ざめした感がございました。
 知事は,今回の総合特区の制度設計のための提案募集に当たり,早々に本県の有する強みや特性を踏まえた幾つかの提案を掲げられ,関係団体等の調整を図った上で,国に提案されるとのことでございます。一方で,岡山の発展戦略については,こうしたおかやま発展戦略会議を創設して,開かれた場で,外部有識者の意見を反映していこうとされています。そこで,伺いますが,今回の提案は,どこでどのような決定過程を経て,何を根拠に選ばれたのか,非常に私には不透明に思えます。どういった議論が行われたのか,お知らせください。
 ところで,これは構造改革特区の議論の当時のことでございますが,香川経済同友会が国立公園の指定が外れている橋台の島,橋の島の与島あたりに,米国ラスベガスのような娯楽施設が集合したエンターテインメント型カジノを想定し,カジノホテル棟の宿泊客を年間500万人,関連産業も含めた経済波及効果は約1兆円と見込んだ瀬戸内海カジノ構想を提言されました。今回の議論の俎上には,いわゆるこうしたカジノ構想は上がらなかったのか,あわせてお伺いいたします。
 加えて,免税店について伺います。
 いわゆるインバウンド,外国人観光客,とりわけ中国や台湾の富裕層を呼び込むための仕組みとして,岡山に免税店をつくることが大きな武器になると思います。我々はアジアの国々で,ツアーとなれば,いや応なく連れていかれてしまう免税店でございますけれども,例えば,与島にカジノがあって,世界のエンターテインメントが楽しめたり,瀬戸内海を広島までナイトクルージングできたり,そして免税店で買い物をするというのは,これ私は世界標準ではないかと思います。そして,免税店も実はさまざまなタイプがあるんですけれども,免税店設置についてはどのようにお考えでしょうか。
 そして,この瀬戸内海に関連してでございますけれども,私は現在開催されている瀬戸内国際芸術祭2010について,岡山県の対応が全く理解できません。退任された真鍋香川県知事が実行委員会委員長として,海の復権は人間性の回復と次世代につなぐ最後の仕事として頑張られ,御案内のとおり,会期は7月19日から10月31日まででございますが,既に来場者は予想を大きく超えて約30万人,既に3年後の次期開催も報道されております。連日,海外から高松空港,高松港に観光客がおり立っておりますが,岡山サイドは余り岡山県の協力があるように見えません。今回,提案説明で,あっ晴れ!おかやま国文祭に言及されても,現在開会中の世界的な文化の祭典である瀬戸内国際芸術祭に全く言及されないのはどういうことでありましょうか。知事は,観光振興につきましては,秋の本格的な観光シーズン,あっ晴れ!おかやま国文祭の開催に向け,市町村や県観光連盟等と一体となって,本県の見どころなどを積極的に情報発信しているところであり,そして,インバウンドの振興に取り組むとおっしゃっておられますが,少なくとも,中四国州を言い,そして牛窓や笠岡に島嶼部がある岡山県においては,私はこれは希有なチャンスであり,手をこまねいている場合では全くないと思うんですけれども,今後の対応も含めて,瀬戸内国際芸術祭に対する知事の御認識をお知らせください。
 加えて,これは自公連立政権の時代のころのことなんですけれども,自公連立政権の時代に進められていたもの,この4月に総務省は,ネットワーク経由でソフトや情報サービスを利用するクラウドコンピューティングの普及に向け,特区を創設する方向を示しました。シンガポールなどでは,もう既に国策としてあるんですけれども,情報を集中管理する国内最大級のデータセンターを構築しようということで,実は日本では,コンテナ型サーバーが建築基準法や消防法の対象になって,建築運営費がアメリカの2倍に上がると言われ,こうした規制を緩和しようというものでございます。現在,日本のネット経由の通信量の半分近くが海外のデータセンターを使って,実は7,000億円以上の利用額が海外に流出したと推察されております。これで,クラウド特区でコストを下げて構築されたデータセンターができれば,日本の企業や国や地方の官公庁の機密データは,情報漏れのリスクを減らして,国内に,しかも低価格で格納することができます。問題は,税制に絡む問題や著作権法など,これをクリアするということですが,情報先進県を目指し,かつ交通の結節点でもあり,災害等の少なさで言えば,私は岡山県にも十分に芽があるというふうに思います。東京には,総床面積14万平方メートルの世界最大級のデータセンター,アット東京がありますが,国は2011年春にも,北海道か東北に特区を創設して,国内最大級のデータセンターの構築を目指しており,その投資額は最大でも500億円程度だそうであります。データセンターは情報関連投資,人材育成などの広がりも極めて大きく,岡山県の活性化の目玉になり得ると思います。イメージは,特定のエリアというよりも,岡山県全土で,吉備高原都市やリサーチパークの有効活用のイメージに合うと思いますが,岡山情報ハイウェイの次の目玉施策としてデータセンターについて,どのようにお考えでしょうか,県民生活部長にお伺いいたします。
 次に,提案説明の中で,知事は,「地域経済を下支えするため,県内製品の優先調達を初め,公共事業等における前倒し発注,県内業者への優先発注,県内資材の優先使用の徹底に取り組むなどの対策を全力で進めてまいります」とされました。まずは,県内製品の優先調達というのは,これは当然行うべきだと思いますが,まず何をもって県内製品というのか,また,物品調達に当たっては,最低制限価格を設けず,底抜けの入札を行うことが,結果として,いわゆるたたき合いを強要して,製造業あるいはディーラーの誇りを奪っているように私には見えるんですけれども,それで地場産業を守ることになるのか。さらには,民間の適正な価格形成に資して,地域経済の下支えとなるとお考えなのか,あわせて,これは出納局長にお伺いいたします。
 さらに,気になるのは,前倒し発注,県内業者への優先発注は当然として,どんな入札制度をとっても必ず批判というのは出るんですけれども,いわゆる公共事業における入札の最低制限価格について,これも結果として,積算価格により近いものが落札するのならばともかく,かえって積算から割引を強要することになると思いますが,それは,はなから民間にとっては適正価格ではないんじゃないでしょうか。しかも,民が泣いて官製不安定雇用を生むことになっているのではないか。そもそも,積算することの意味,最低制限価格を設定することの意味,その決定の根拠,さらには不安定雇用との関係,一般工事価格に与える影響,加えて,緊急経済・雇用対策でも同様の方法をとる理由について教えていただきたいと思います。
 一方で,知事は,我が党の代表質問に答えられて,歳入確保対策について,「1,県有資産の有効活用等,2,使用料等の適正化,3,県税の収入率の向上及び,4,新たな財源の創設の4つの対策を柱に据えており,全国トップクラスの98.0%以上の収入率を目指し,納税を呼びかけるコールセンターの設置や県民局の徴収体制の強化など,新たな対策を順次導入し,徴税の強化に取り組んでいる」とされました。中でも,この歳入確保対策のうち,1番の県有資産の有効活用と公の施設の見直しとの関係は,私は本来これは矛盾するものではないというふうに思います。
 特に,金銭的に換算できない,県民の皆様の共通の思い出,私はこれも県の財産であるというふうに思いますし,岡山県として,これから生まれ来る子供たちのためにも,後世に引き継いでいくものだと思います。少なくとも,岡山県の子供たちが将来幼いころを思い出したときに,例えば私の小4の子供は,倉敷チボリ公園を失っておりますけれども,財政コスト削減をもって,子供たちの共通の思い出になるような場所を奪い去ることは,私は大人の罪であるというふうに思っております。
 くどいようですが,岡山県立児童会館でありますが,6月定例会で,「今年度末に児童会館としては閉じるという財政構造改革プランの方針に変更はない」,これは明言されておられますが,「閉館後の取り扱いについては,耐震診断の結果を踏まえ,岡山市や民間に呼びかけ,県民からの要望の中で提案のあった新たな行政ニーズへの対応の可能性を探り,隣接する生涯学習センターも含め,全体としてどのような方向性が考えられるか慎重に検討する」,こうした答弁がございましたが,あれから3カ月以上たっております。改めて,岡山県立児童会館の耐震診断の結果と建物の活用策を含めた今後の方向性について,知事にお伺いいたします。
 折しも,現在,岡山県立児童会館プラネタリウムでは,連日,「はやぶさ」の上映でにぎわっております。長い孤独な宇宙での航海の後に,故郷に届けるカプセルを残して大気圏で燃え尽きた小惑星探査機「はやぶさ」,この姿を最新のコンピューターグラフィックスで見せる作品は本当にすばらしく,何よりもこれはプラネタリウムでないと味わえないものでございます。知事も鑑賞券を御購入いただいたというふうに聞いておりますけれども,岡山県立児童会館プラネタリウムで「はやぶさ」をごらんいただいたでしょうか。もし,ごらんになっていれば,御感想をお聞かせください。
 ところで,この9月1日付で,宇宙航空研究開発機構,いわゆるJAXAでございますが,JAXAが小惑星探査機「はやぶさ」の成果を広く国民と共有し,宇宙への理解増進と宇宙活動の普及啓発に資することを目的に,「はやぶさ」カプセル等の展示を公募によって各地で実施することになりました。既に,相模原市立博物館や筑波宇宙センター,丸ノ内オアゾなどで「はやぶさ」のカプセルの一部が展示されてきましたが,今回の展示は,展示が可能な国内の公益団体,法人で公益目的の展示が対象ということでありまして,再来年の3月まででございます。子供たちがもしも「はやぶさ」のカプセルを見ることができたら,ここから本当に宇宙に向けてのみずからの夢を広げていく子供たちが,岡山からも出てくるに違いありません。日ごろから宇宙に関連する活動をしている科学館,博物館,地方公共団体の応募が見込まれており,もちろん,この招致自体は無料ではないんですけれども,安定的な温度のもと,24時間体制の警備確保等々,条件がありますが,「はやぶさ」のカプセル招致は,岡山県としても,ぜひとも手を挙げるべきだと思います。御所見をお聞かせください。
 また,精神障害者社会復帰施設岡山県立内尾センター廃止後も,特定非営利活動法人岡山県精神障害者家族会連合会(NPO岡山けんかれん)に委託され,運営されている基幹型地域生活支援センター「ゆう」では,日中の相談支援や24時間電話相談,ホステル事業が行われていますが,実際に利用するかどうかではなくて,そういう施設が存在するということ自体が,精神障害者当事者や家族の支えになっております。県からは運営費の削減の方向が示されていますが,家族会だからこそできる事業でも運営でもあり,平成23年度末までに,障害者自立支援法に基づくサービス提供事業者へ円滑に移行できるようにという方向も示されておりますが,障害者自立支援法の事業では,膨大な賃料も発生し,新規委託事業等で何とか財源を捻出できないのか,その知恵を出していかなくてはいけない状況でございます。現在の「ゆう」の協議状況について,改めてお伺いいたします。
 次に,歳入確保対策のうち,2,使用料等の適正化について,総合グラウンド内は所管の違う施設があり,駐車場有料化に当たっては,関係当局も大変な努力をされています。しかしながら,例えば,Kanスタのナイター使用料や指導者の謝礼を含めた駐車代等を,トップアスリートを育てる親が払っていかなくてはいけない,これが家族にとって大変大きな荷になれば,それだけで子供たちの可能性を閉ざしていくことになります。当座のコスト削減や歳入確保の観点からだけ論じては,子供たちの未来の夢や希望を断ってしまうことになる。特に,駐車場の減免やスポーツの指導者,トレーナーに係る必要経費について,これはスポーツ振興の観点から,一定の基準を設けて支援ができないでしょうか,御所見をお聞かせください。
 次に,歳入確保対策のうち,3の県税の収入率の向上について,納税はもちろん憲法上の義務でありますし,徴税の強化に取り組むのも当然だと思います。ただ,税金滞納に伴う,いわゆる差し押さえの話というのも大変よく伺うんですけれども,死に物狂いで働いて,納めたくても納められない状況で,しかも逃げも隠れもしないのに,尊厳を傷つけられたような印象を持たれる,そんな方も多くおられます。それどころか,そうして納めた血税を債権放棄だと何十億円も無駄にして,しかも,だれも責任をとらんじゃないか,こんな人をばかにした話があるのかという,いわゆる逆ぎれの怒りの声も大変に多く伺います。恐らく,担当職員の方にとっても,大変に厳しい業務だと思いますが,いわゆる滞納者への差し押さえの状況と,そこに至る原因,また滞納者と,さらに徴税業務に当たる職員の方々への配慮について,総務部長にお伺いします。
 この項最後に,歳入確保対策のうち,4,新たな財源の創設について,他県の先行事例を検証しつつ,さまざまな観点から,新たな財源の創設について検討を進めるとされましたが,新たな財源について,具体的にはどのような財源をイメージされているのか,お知らせください。

(知事)  自由民主党の佐藤議員の質問にお答えいたします。
 まず,認識等についてでありますが,県では,県民の皆様方にも御負担をいただきながら行財政構造改革に取り組む一方,地域経済対策につきましても,昨年度の補正予算,あるいは今年度当初予算における800億円規模の経済・雇用対策予算などによりまして積極的に取り組んできたところでありまして,さらに,今後は,地域経済の発展に向けた提言をいただきまして,これを県政に生かすこととしているところであります。また,国には,一昨年以来の世界的な景気後退,あるいは,急激な円高に対する全国的な経済対策,及び景気変動に伴う税収不足への対応,少子・高齢化などの社会情勢の変化に対する的確な制度改正など,積極的な取り組みを期待しているところであります。県といたしましては,今後とも,行財政構造改革に取り組むとともに,国に対しましては,効果的な経済対策や,地方税財政制度の充実を求め,地域経済の発展と持続可能な財政構造の確立を目指してまいりたいと,このように考えております。
 次に,おかやま発展戦略会議についてであります。
 経済のグローバル化や少子・高齢化の進展等によりまして,地域間競争が激化する中で,本県が力強く発展し続けていくための中長期的な戦略を検討するということを目的に,今月22日に発足させることとしております。会議は,アジア経済の専門家や,本県の実情に詳しい方など,県内外の有識者8名の委員で構成することとしておりまして,目覚ましく拡大しているアジア経済の活力を呼び込む方策,中四国の交通結節点といたしましての優位性や,ものづくり先進県としての産業集積などのすぐれた地域資源を生かした地域振興策等につきまして,柔軟な発想に基づき,活発に意見交換を行い,本県の発展につながる提言をいただきたいと考えております。
 次に,総合特区等に関しまして,まず,提案の決定過程等についてでありますが,国の募集期間が約2カ月間と限られていたことから,まずは庁内でアイデア出しを行いまして,国の要件であります「地域独自の取組があるかどうか」,「実施主体,運営主体が見込まれるかどうか」等の観点から,水島コンビナートの国際競争力強化などの3つの特区案を取りまとめたところであります。現在,3つの特区案につきまして,具体的な規制緩和や支援措置等に関しまして,関係団体や企業,市町村等と調整を進めておりまして,締め切り期限となっております9月21日には,国にアイデア提案をしてまいりたいと存じます。
 また,いわゆるカジノ構想につきましては,瀬戸内海を舞台にした船内カジノのアイデアが検討の過程で出されたところでありますが,実現可能性が見込めないことなどから,案としての取りまとめは見送ったものでございます。
 免税店設置についてでありますが,県内には,岡山空港内免税店のほかに,消費税を免税する百貨店や家電量販店,貴金属店等がありまして,その数も次第に増加しているところであります。ショッピングは外国人観光客の訪日動機の上位にランクされることから,今後とも,外国人観光客受入協議会とも連携しながら,免税店舗のさらなる拡大に取り組み,積極的な外国人観光客の誘致を推進してまいりたいと存じます。
 瀬戸内国際芸術祭についてでありますが,これまでも,香川県等と連携いたしまして,広域的な観光ルート等を紹介する多言語パンフレットの作成のほか,外国メディア等の招請ツアーを実施したところであります。また,宇野港等に設置しております観光案内所や岡山側の交通アクセスの向上,こういった取り組みにつきましては,今後も継続することといたしております。芸術祭開幕以来,犬島への来訪者や県南の主要ホテルの宿泊者数は,前年同期を大きく上回るなど,芸術祭は本県観光に大きく寄与するイベントであると,このように考えておりまして,今後は,香川県等との連携をさらに強化し,本県への誘客につながるよう,瀬戸内海や,あるいは県内観光地の魅力,これを国内外に発信してまいりたいと存じます。
 次に,公共事業の最低制限価格についてでありますが,積算は,適正な予定価格を把握するため,全国的な取引実態の調査に基づく単価等を用いまして,工事に必要な経費を積み上げて算出するものであります。最低制限価格は,ダンピング防止と工事の品質確保を図るため,直近の工事コスト調査結果等を踏まえまして,工事原価を下回らないよう設定しておりまして,雇用の不安定化につながることはないものと,このように考えておりますが,積算や最低制限価格の設定が民間の工事価格に与える影響につきましては,その実態把握には限界があると考えております。緊急経済・雇用対策につきましても,個別工事のコスト構造が変わらないということから同様に,積算と最低制限価格の設定を行っているところであります。
 次に,県立児童会館であります。
 まず,耐震診断の結果等についてでありますが,耐震診断の診断結果は,児童会館は,補強工事を行えば耐震基準に適合するとのことでありました。今年度末に児童会館としては閉じるという,財政構造改革プランの方針に変更はありませんが,お話の県有財産の有効活用という観点からは,岡山市への呼びかけや,新しいニーズに対応した活用が考えられると存じます。その場合の意義は何なのか,耐震補強,その他の経費はどうなのか,隣接する生涯学習センターとの関連はどうなのかなど,さまざまな検討課題を勘案しながら,引き続き,慎重に検討してまいりたいと存じます。
 映画「はやぶさ」についてでありますが,この上映会を民間の有志の方々が招致されたと聞きまして,鑑賞券を購入させていただきましたが,いまだ,その時間がとれないため,鑑賞はできていないところでございます。
 「はやぶさ」カプセルの招致でありますが,カプセルの展示は,多くの人に感動を与え,子供たちが宇宙や科学技術に関心を持つ契機となることから,大変これは有意義であると考えております。県といたしましては,県内の科学展示施設の意向を確認いたしますとともに,開催可能な場所等の調査を行い,応募の可否等につきまして,関係者とともに検討してまいりたいと存じます。
 次に,基幹型地域生活支援センター「ゆう」についてでありますが,23年度末までに,障害者自立支援法に基づくサービス提供事業者に移行することを目指しております。現在,家族会等の意見も聞きつつ,入院患者の地域移行を促進する拠点的な施設としての役割も含め,必要なサービスの内容や人員,設備等の具体的な事項について検討しているところでありまして,お話の移行後の収支見通し等も含めまして,今後さらに検討を進めてまいりたいと存じます。
 次に,未来のトップアスリートを育てる支援についてでありますが,県ではこれまで,競技レベルや発育発達段階に応じた最適な指導を行うジュニア選手・育成強化事業,スポーツ少年団等へトップ選手や指導者などを派遣する晴れの国トップアスリート派遣事業などを実施してきております。さらに,今年度からは,子供たちの運動やスポーツを実践する能力や資質等を高めるとともに,多角的な支援体制を充実するため,つくろう・のばそう・育てよう!スポーツプロジェクトに取り組んでいるところでありますが,これらの事業においては,指導者等にかかわる謝礼や交通費等を支給しておりまして,今後とも,このような事業を通じて,ジュニア層の競技力の向上に努めてまいりたいと存じます。また,総合グラウンドでは,長時間の駐車が想定される大会関係者につきましては,普通車1台当たり1日200円と低廉な料金設定をし,負担の軽減を図っているところであります。
 最後に,新たな財源についてでありますが,これまで森づくり県民税及び産業廃棄物処理税にかかわる充当事業の拡大や,銀行のATMを活用した数字選択式宝くじの販売に取り組んできたところであります。今後とも,県税の収入率の向上を初めとした他の取り組みの効果を見ながら,他県における事例も検証しつつ,あらゆる観点から検討してまいりたいと存じます。

(総務部長)  歳入確保に関して,差し押さえの状況等についてでありますが,行財政構造改革大綱2008を実現するため,昨年度,滞納整理推進機構を設立するなど,税収確保に積極的に取り組んだ結果,21年度の差し押さえは6,626件と,20年度に比べ,約2.8倍に増加しておるところでございます。また,この差し押さえは,督促状発付後もなお納税催告に応じなかったり,あるいは分納の約束を守らない,こういった者などに対しまして,この差し押さえを行っているところでございます。
 次に,滞納者や税務職員に関してのお尋ねでありますが,税金は納期限内に納付いただくということが原則でございますけれども,真にやむを得ない事情で納税できない滞納者につきましては,分納を認めるなど,徴収の緩和措置を適切に講じておるところでございます。なお,職員に対しましては,研修を強化し,税務職員としての知識や誇りを持たせるとともに,徴収体制を整備するなど,組織的な対応を図っておるところでございます。

(県民生活部長)  総合特区等についてのうち,データセンターについてでありますが,ネットワークを経由して,ソフトや情報サービスを利用するクラウドコンピューティングの普及等により,データセンターへの需要が高まっており,その投資等を通じた地元経済への波及効果が期待されているところであります。このため,県では,県内市町村と連携して,クラウド利用による業務の効率化に関する検討を開始したところであり,その議論の進捗や今後,国が打ち出す支援策の動向等を踏まえながら,県内のクラウド利用の拡大やデータセンターの構築等について,研究を進めてまいりたいと存じます。

(出納局長)  地域経済の下支えのうち,県内製品の調達についてでありますが,お話の最低制限価格の設定は,地方自治法の規定により,工事または製造その他の請負に係る入札に限られており,物品調達に関しましては,必要な効用を満たす物品をより安価に購入することを基本に実施しているところであります。また,何をもって県内製品と言うかについて,入札参加資格要件におきましては,県税納付や県民雇用の観点から,県内に本店,支店,営業所がある事業者をひとしく県内事業者とし,それら事業者からの製品調達を原則としておりますが,さらに進んで,素材使用や製造過程等で,県内経済に付加価値を生み出すことも重要なことと考えております。このため,県産材を活用した製品や電気自動車など,特定の政策に基づく調達はもとより,今後,それ以外の物品につきましても,案件に応じて可能な限り,事業部局の意向を踏まえるとともに,公平性や競争性も確保した上で,地域経済の下支えに資するよう,効果的な製品調達に努めてまいりたいと存じます。



<平成21年11月定例会>(2009年12月8日)

(佐藤)  次に,成長戦略についてお伺いいたします。
 ことしの忘年会は,特に話題が本当に暗いなあというふうに思います。補正予算の一部執行停止などで,どことなく萎縮している面もあって,おまけにドバイショックに円高,希望が持てる将来の経済や社会の姿が明確でなく,消費や設備投資にも慎重になります。昨年の財政危機宣言から極めて厳しい財政構造改革を実施しているわけでございますが,一方で,岡山県にも産業政策を国に任せるのではなくて,民間企業や家計の活力を引き出す強力なメッセージを送る根本的な経済活性化策,成長戦略をはっきりと示す必要があるのではないでしょうか。特に,少子・高齢化が進んで人口が減って国内の内需型企業も含めて,輸出や海外工場というだけでなくて,もっともっとグローバルな環境で闘える,そうした体制をつくっていくのをいかに支援するかは,他県との連携も必要になってまいります。外部の知恵もかりた岡山版ニューディールとも言える成長戦略会議の創設は考えられないでしょうか,御所見をお聞かせください。

(知事)  次に,成長戦略等に関し,まず成長戦略会議の創設についてでありますが,現下の厳しい経済雇用情勢のもと,本県が不況を乗り越え,力強く発展していくためには,中長期的な視点に立ってイノベーションによります産業構造の転換や高度化,今後成長が見込まれる産業の育成などに積極的に取り組む必要があると存じます。このような認識のもと,本年7月に経済6団体代表者と経済雇用情勢への的確な対応や本県の発展戦略について意見交換を行ったところでありまして,引き続き定期的な戦略会議を開催することとしております。今後,このような場におきまして,外部有識者を交えながら,本県の強みを生かした具体的な成長戦略等について議論してまいりたいと存じます。



<平成19年6月定例会>(2007年6月22日)

(佐藤)  この項最後に,知事は,新たな環境基本計画の中に,環境産業を挙げられました。環境産業の海外展開についてはいかように考えておられるでしょうか。
 エネルギー・気候変動問題では,お隣中国が大量の資源を効率悪く消費していて,農業にも深刻な影響を及ぼす可能性があります。また,最近大変気になるんですが,黄砂もその頻度と被害が甚大化していて,単なるこれは季節的な気象現象ではなくて,森林の減少や土地の劣化砂漠化といった人為的な影響による環境問題としての認識が高まっております。少なくとも,お隣中国の環境悪化は,もはや中国の国内問題と言える状況にはなく,国際的に何がしかの手を打つべき時期が来ているというのは,今回のハイリゲンダム・サミットの問題意識でもありました。
 そこで,たちまち岡山が何ができるかというのが厳しいものがありますけれども,中国を世界の工場ととらまえるのではなく,環境産業を展開する市場と考えるのは一つの方策だと思います。御所見をお聞かせください。

(知事)  環境産業の海外展開でありますが,急速に工業化が進み,環境ビジネスに対する潜在的な市場が広がっている中国等へ,国際競争力の高い我が国の省エネルギー,環境技術を展開するということは,地球規模の環境保全といった国際貢献を進めながら,一方我が国の経済,産業の成長力を高める絶好の機会であると考えております。本県におきましても,新産業,新技術の創出,育成に取り組むものづくり重点分野といたしまして,環境やバイオを掲げ,廃棄物の資源化促進やリサイクル技術の開発支援,バイオマスプラスチックやバイオマスエタノールの製品化に向けました産学官共同研究等を支援しているところでありまして,今後,県内企業が技術力や商品力をさらに高め,海外市場へ事業展開していくということを期待しているものでございます。



<平成17年2月定例会>(2005年3月8日)

(佐藤)  最後に,産学官連携についてお伺いいたします。
 私は,地方の時代の多様な主体には,市民はもちろん,行政,企業,NPOに加えて,大学というものがあると思います。学生まで含めれば,総合大学なら行政と同じぐらいは,さまざまな分野にさまざまな人材がいて,NPO以上に行政と拮抗できる人材と知恵,あるいは現状を打破できる潜在能力があるはずであります。これから先,特に独立行政法人化された国立大法人を中心に,地方における大学の役割がますます重要になると思います。もっと言えば,地方の時代において,地方の大学の質が,その地方の命運を決めることにもなり,産業界のみならず,行政も政治も,もはや大学と無関係ではいられません。むしろ,県も市も大いに大学と連携し,関係を深める必要があると考えます。まずは,地方の時代に,地域における大学の役割について,知事の御認識をお知らせください。
 岡山県では,昨年,岡山県の肝いりで,岡山県産業振興財団が動いて岡山TLOが設立されていますが,現在の産学官連携の流れを見ますと,ある意味,経済産業省あるいは産業界からの要請というか,何か画期的な技術のシーズが大学に隠れていないだろうかというニーズからスタートした側面が強かったように思います。そのこと自体,否定するわけではもちろんございませんけれども。ですから知的財産云々という場合には,乱暴に言えば,理系の話であって,特に医学,薬学系からすれば,むしろ遅過ぎるような流れではないかと言えなくもありません。岡山TLOにしても,参加大学は理系あるいは高等専門学校が主であります。ちなみに,四国TLOは,四国4県の21大学,高専と連携しており,中四国州を標榜する岡山県の技術移転活動が,岡山TLOを基軸にするのなら,やや視野が狭いのではないかと言わざるを得ません。この点についての御認識もお伺いいたします。
 ところで,大学のシーズは,私は何もこうした技術面だけではないと思います。少なくとも,地方の時代に優秀な人材を地方に輩出する,その教育のノウハウそのものが大学のシーズであります。あるいは,特許になじむものではなくても,知的財産といったものはあると思います。もっと言えば,自然科学系ではない,人文科学系はもとより,社会科学系の産学官連携もあると考えます。特に,大学コンソーシアムという言葉は,そうした,いわゆる文系の連携の要素も強く含むものであり,大学コンソーシアムに産や官が絡んでくるとすれば,これは岡山型と言えると思います。そして,そこに生涯学習的な人文科学系,さらに実学として経済界とリンクしたような,社会科学系のものまで組み込めば,これは新しい動きと言えるのではないでしょうか。また,岡山県行政の推進の上で,人材交流も含めて,さらに大学と連携していくことも必要であると,私は思います。かような観点から,知事は,人文科学系,社会科学系と産学官の連携,とりわけ大学との協働について,いかようにお考えでしょうか。
 また,総合的な大学との連携室といったものが行政機関には必要ではないかと私は考えますが,いかがお考えでしょうか。

(知事)  次に,産学官連携であります。
 地方の時代の地域における大学の役割でありますが,今,地方は分権の時代を迎え,個性ある地域づくりに取り組んでいるところでありまして,すぐれた知的資源を有する大学との連携は,本県の経済や地域社会の発展にとって,極めて重要であると考えております。これまでも,新たな時代に対応した産業振興を図るため,岡山産学官連携推進会議を核として,岡山TLO,ミクロものづくり岡山等による大学との連携を進めてきたところであります。今後とも,より一層連携を強化いたしまして,地域経済の発展に努めてまいりたいと考えております。
 岡山TLOでありますが,岡山TLOは,岡山大学を初め,県内9つの大学や高専の参加を得るなど,地域一体型の技術移転を目指しているところであります。今後,さらに県内産業の振興を図るためには,TLO活動の広域化を進めるということが議員御指摘のとおり,重要であると考えております。このため,香川・岡山ブリッジシティ構想によります四国TLOとの連携など,近隣TLOとの技術シーズの共有化等の連携策について協議を進めておりまして,さらに,全国展開も図りながら,県内企業への活発な技術移転につなげてまいりたいと思います。
 人文社会科学系での連携でありますが,次代を担う人材育成,まちづくりあるいは文化振興など,人文社会科学分野におきまして,専門的な知識あるいは優秀な人材を有する大学との連携を深め,その成果を地域社会の発展や産業振興に生かしていくということが必要であると考えております。現在,県内の大学が中心となりまして,大学コンソーシアム岡山(仮称)の設立への取り組みが進められているところでありますが,県といたしましても,このコンソーシアムへの協力を初め,人文社会科学系での連携を積極的に進めてまいりたいと存じます。
 なお,総合的な大学との連携室の設置について,特に新たにそういうものを設けることは考えておりませんが,県の総合窓口を企画振興部といたしまして,担当部局間の連携をより一層密にすることにより,適切に対応してまいりたいと存じます。



<平成15年11月定例会>(2003年12月5日)

(佐藤)  次に,産学官の連携について伺います。
 県の施策では,産学官連携の重点分野の育成として,ナノテク分野,バイオ関連分野,医療・福祉・健康関連分野,環境関連分野が掲げられ,この3月には,岡山・産学官連携推進会議が立ち上がっていますが,それに関連して幾つかお伺いいたします。
 まず,医療・福祉・健康関連分野の「ハートフルビジネスおかやま」について,福祉用具の開発支援,利用者への情報提供を図るということですが,今年度,総合社会福祉センターの民間委託に伴って,補装具製作所を廃止されており,また岡山県産業振興財団に事務局を置き,長年活動している岡山県福祉機器研究会では,残念ながら利用者側の参加が余りなかった,そのように聞いております。また,福祉の現場との連携が極めて重要だと思いますが,利用者の皆さんの声を反映させるためには,「ハートフルビジネスおかやま」から生まれた商品を展示する福祉機器の展示場が必要である,そのように思います。例えば,南部健康づくりセンターあるいは新設の新総合福祉ボランティア・NPO会館に,こういった展示場を設けることは考えられないでしょうか,商工労働部長にお伺いいたします。
 次に,産学官の連携による環境関連分野の産業創出については,木質バイオマス,さらにはミニエコタウン構想等々ありますし,さらには,リサイクル素材の活用も重大な課題ではありますけれども,産学官ということでの目玉施策が打ち出されておりません。私は,環境産業として,水の浄化,端的には児島湖を意識した水質浄化産業の育成が極めて岡山らしい施策ではないかと考えます。児島湖の汚泥しゅんせつ事業が,残念ながら余り効果が出ないまま終わろうとする今,場合によっては,特に,産学官連携の水質浄化プロジェクトチームを創設したり,水質浄化コンテストを企画し,水質浄化に関して世界の英知を岡山に結集し,環境産業立県をすることは考えられないでしょうか,知事の御所見をお伺いいたします。
 加えて,ITの分野でも,産学官の連携が進んでいるように認識しておりますが,IPv6について,私はこの場で何度も取り上げてまいりましたが,岡山情報ハイウェイがIPv6化することの具体的なイメージが,ともかくこれがわかないという声を非常によく耳にします。確かに,これからの技術だけに,生活が具体的にどのように変わっていくのか,なかなか説明ができないのも事実です。そこで,私は,6月定例会で申し上げました吉備高原都市のIPv6のテストベッド化がたちまち無理としても,まずは県民の皆様に,岡山情報ハイウェイがIPv6化して生活がどのように変わるのか,実感していただくような場を提供してはいかがかと考えますが,知事のお考えをお伺いいたします。
 これに加えて,産学官の連携によるIPv6の協議会を立ち上げてはいかがでしょうか。
 ところで,来年4月から,すべての国立大学が法人化し,文部科学省の一機関から独立する中で,岡山大学も例外ではなく,民間的発想の経営手法を入れ,学外者も加わり,さまざまな意味で社会へ開かれたものしようとしています。ある意味では,かなり自由度が増した地方の国公立大学法人に資金獲得まで含めた私立大学同様の競争原理も働かせるということではないかと思います。とすれば,もちろん憲法に保障された大学の自治を侵してはなりませんけれども,地方の岡山大学が岡山の産業界等に果たす役割を明確に示していただかなくてはいけませんし,逆に産業界や岡山県サイドからも,地方固有の問題にどう対処するのか,岡山県にいかような人材を輩出してくださるのか,岡山大学に要望を出していくべきではないでしょうか。特に,技術に限らず,大学のシーズを探すには,大学へのニーズを伝えなくてはいけないと思います。それもまた,私は産学官の連携ではないかと考えます。そういう連絡協議会的な仕組みをつくることには,大きな意味があると思いますが,知事はいかがお考えでしょうか

(知事)  産学官連携であります。
 環境産業でありますが,県では,環境産業を重点育成分野の一つに位置づけまして,研究・開発への助成やあるいは地域ミニエコタウン事業によります支援,さらには本県の特性を生かしました木質バイオマス利用技術の開発支援等を行ってきております。環境関連の課題は,水質,大気,廃棄物など多岐にわたっておりまして,多様な取り組みへの支援策が必要であると考えておりますが,御提案いただきました水質浄化産業の育成は,産業振興と環境対策の両面で本県にふさわしいテーマであると考えておりまして,今後の研究課題とさせていただきたいと存じます。
 IPv6でありますが,次世代ネットワーク技術でありますIPv6導入は,身の回りのあらゆるものがネットワークにつながって,すべての県民がITの恩恵を受けることができるユビキタス社会実現のために不可欠でありまして,普及に当たりましては,その利便性を県民の皆様方にわかりやすくお伝えをすることが重要であると考えております。そのために,現在,策定を進めております次期IT戦略プログラムに掲げております生活実感戦略におきまして,IPv6技術によって生活がどのように便利になるのかを県民の皆様に体感していただくための効果的な方策の検討を進めております。
 なお,IPv6の協議会の設置でありますが,産学官によって構成されております岡山県高度情報化推進協議会を活用することも含めまして,今後,検討をしてまいりたいと存じます。
 岡山大学への働きかけでありますが,岡山大学は,本県の中核的な研究・教育機関といたしまして,本県の社会経済,文化の発展に重要な役割を担っているため,地元産業界や県の側からも,岡山大学に向けまして絶えずニーズを発信していくことが重要であると考えております。そのため,現在,岡山・産学官連携推進会議において,県内5大学との産学官の連携・協働の強化を図っているところでありまして,その中で,大学の技術の移転を促す岡山TLOの創設などにつきまして協議をしているところであります。特に,岡山大学が設置をいたしました地域貢献連絡協議会に県としても参画をし,環境対策や生涯学習,食の安全等の本県の諸課題について研究・教育がなされますように,県から働きかけをいたしますとともに,さまざまなテーマに基づきまして,共同研究の場を,現在,設定をしているものであります。今後とも,地元産業に密着した研究活動や,若者が地元で働きたくなるような教育カリキュラムの実施など,岡山大学に対する提言や要望を重点的に,また積極的に行っていきたいと存じます。

(商工労働部長)  産学官連携に関しましての「ハートフルビジネスおかやま」についてでございますが,利用者から真に求められている福祉用具の開発のためには,産学官の連携に加えまして,福祉現場の意見をお聞きすることが極めて重要でありまして,現在,20を超える保健福祉関係団体の自主的な参加をいただいておるところでございます。この取り組みから生まれますところの福祉用具の新製品につきましては,県民が気軽に立ち寄れる場所に展示いたしたいと考えております。お話の新総合福祉・ボランティア・NPO会館での展示を含めまして,今後どのような場所で展示ができますかどうか,検討をしてまいりたいと考えております。
 以上でございます。



<平成15年9月定例会>(2003年9月16日)

(佐藤)  まず,新産業・雇用創出について,県下の7月の有効求人倍率0.91は,全国2番目の水準で,有効求人数も対前年比,同月比で17カ月連続で増加しているものの,建設業は新規求人では再びダウンに転じました。私は,体感としては,本格的な景気回復にはほど遠いのではないか,そのように思います。そうした中,知事が我が党の代表質問に答えられた,産業・雇用戦略会議を立ち上げられることを心から歓迎いたしますが,その立ち上げに際しては,ぜひ御検討願いたいことがございます。
 本年2月,長野県は,財政改革推進プログラムの策定にあわせて,産業活性化・雇用創出プランというものを発表しました。このプランを進める上での考え方は,「産業活性化,雇用創出に関して大胆な目標を設定し,目的達成のために何をすべきかを明確にし,もし障害があればそれを最大限取り除くように努力していきます。できない理由を並べ立てるのではなく,達成するために何をすべきか,どこを変更すべきかといった前向きの取り組みをしていきます」というもので,2万人の常勤雇用と111万2,900日の短期雇用を長野県独自として創出するという非常に積極的なものとなっています。正直に申し上げて,こうした長野県の壮大な実験のような,いわゆる長野モデルについては評価も分かれるところではありますけれども,大阪府でも12万人緊急雇用創出プランを示していますし,マニフェストの策定が叫ばれる今日,こうした全庁的な体系的かつ独立した新産業雇用創出のためのプランを制定する場合には,明確な数値目標を掲げる必要があると考えますが,いかがでしょうか,知事の御所見をお聞かせください。
 さて,このプランの特徴は「既存基幹産業(農業,製造業,観光業)」と,「成長性の高い分野(福祉・医療,環境,教育)」との連携・融合(スリー・バイ・スリー)という言い方をしておりますが,スリー・バイ・スリーによる新産業づくりなどによって産業構造を転換し,自律的で持続可能な長野県の社会経済を構築するということにあります。財政再建のためには,公共事業を削減すればいいんだという考えなのか,2006年までに公共事業を40%,県単独事業を50%一律削減するような長野県においては,逆に言えば建設業はもはや基幹産業でも成長産業でもないとするわけです。そうはいうものの,長野県においても,6月には,とりわけ厳しい経営環境にある建設産業への支援策として,建設産業構造改革支援プログラムが作成されました。要は,産業構造の改革のために,建設業が新たな事業分野への挑戦,技術力や経営基盤の強化などを目指す建設産業の支援のために個別に支援チームを組み,具体的な取り組みに対して担当者を決めて,その実現に向けて応援をするという仕組みですが,本県においてはどのような取り組みがなされているのか,また今後どのように対応されるのか,お伺いいたします。
 また,先日,学生みずからが「起業と地域」をテーマに企画運営した「2003学生連携ビジネスフォーラムinOKAYAMA」が盛大に開催されました。非常に大成功だったと思いますが,この中で,学生ベンチャーの「起業における地域格差」というものが問題になりました。人材流出県と言われる我が県でありますが,行政や大学,地場企業,団体が一体となって,「若者よ,岡山を目指せ」と,そのように言われるぐらい,「金は出すけれどわしらは口は出さん,何でも挑戦せられえ」と,こういったチャレンジできる環境をつくる必要があると思います。こうした資金調達のための地場企業と学生をつなぐシステムづくり,例えばインキュベート施設利用における優遇措置等が必要であると思いますが,具体的な支援策をお知らせください。
 さらに,このたび玉島ハーバーアイランドの一部に,循環型社会形成の観点から,港湾機能を生かした環境産業ゾーンを設定し,県独自施策の地域ミニエコタウン事業として,先駆的な資源循環産業の立地が図られることを歓迎したいと思います。ところで,例えば既存の県営産業団地についても,全く需要,引き合いがないというわけではなくて,法規制や環境アセスメントあるいは地元調整の難しさ等で,結果として弾力的な分譲ができていない場合があるように思います。ある意味で,発想の大転換をもって,未分譲の土地については誘致業種を限定することなく,早期分譲を図る必要があると私は考えますが,御所見をお聞かせください。

(知事)  まず,新産業・雇用創出の問題であります。
 数値目標でありますが,本県産業の力強い展開と,そして雇用の創出・確保を図っていくために,「おかやま産業・雇用戦略会議」を立ち上げまして,これから幅広く御議論をいただくこととしているわけでございます。戦略会議からは,年度内に提言をいただく,このように考えておりまして,いただきますその提言を踏まえて,私といたしましては,御質問にございました数値目標も視野に入れた中・長期的な産業・雇用施策を取りまとめていきたいと考えております。
 建設産業への支援策でありますが,建設業者が経営基盤の強化や新たな事業分野へ進出をしていくということに取り組む際におきましては,これまでも補助金とか低利融資などの支援を行いますとともに,関係団体と協力をいたしまして建設業者の技術力の向上のための研修も行ってきているものであります。
 今後の対応でありますが,先ほど申し上げました「おかやま産業・雇用戦略会議」における議論を踏まえまして,この建設産業への支援策につきましても議論があろうかと思います。これを踏まえて,どのような施策が必要であるのかということを具体的に検討してまいりたいと存じます。
 学生ベンチャーへの支援でありますが,起業セミナーの開催や研究開発費の助成,またインキュベーションセンター使用料の減免等を行ってきておりまして,今後さらに金融機関等との出会いの場の提供も行うこととしております。
 資金力・販売力に乏しい学生ベンチャーと地場企業等をつなぐシステムづくりについてでありますが,これは双方にメリットが期待できるということでございまして,今後経済団体などと協議を進めてまいりたいと存じます。
 県営産業団地の早期分譲でありますが,当初は,団地の整備目的に即した企業を誘致をしてきたところでありますが,平成9年度から熊山工業団地等6つの工業団地につきましては流通業を,そしてさらに,本年度から真庭の産業団地には製造業を,そして玉島ハーバーアイランドには環境関連産業が立地できますように努めてきたところであります。
 お話をいただきました業種を限定しない分譲ということでありますが,これは団地整備におきまして,地元との関係等さまざまな経緯があるということでございますので,これを一律に行うということは困難ではございますが,今後とも,今申し上げましたような事例もあるわけでございまして,時代の変化に合わせた対応というものをしていきたいと,このように考えます。
 なお,個々の企業から具体的な立地の話があった場合でございますけれども,その場合におきましては地元市町村等と十分協議をしながら,なお柔軟な弾力的な対応というものもしていきたいと存じます。また,そういうことを行っている事例も幾つかございます。



<平成14年12月定例会>(2002年12月10日)

(佐藤)  平成12年4月の地方分権一括法施行から2年半以上たって,国と地方は対等・協力関係にあるてなことを言いながら,結局はお互いの超財政難の中で,もはやある意味では行政同士の生き残りをかけたぶつかり合い,責任のなすり合いのようでもあり,県からすれば,今さら薄皮だけであんこの入っていないまんじゅうを国からもらっても,ちょっとうれしくないのうということでございますが,県民の皆様から見るとどうでしょうか。県民は,国民でもあり,市町村民でもあり,国,県,市町村と,どの行政がどう負担しようが,まんじゅうを買うのは自分たちの税金によるわけで,財布の出どころは同じじゃあねえんかと,非常に白けて見ておられる。そういう認識は必要かと思います。そして,つまりは税金を支払う側からすれば,国,県,市町村のトータルのむだを排して,トータルとしての税金や公共料金を少しでも下げてほしい,そういうことであります。
 それでも,少なくとも,岡山県民のトータルの負担を減らすためにも,対等・協力関係であればなおさら,国に向かって「実は,わしゃあ言うときは言うんで,いわれなきものは払わん」,あるいは「ないものは払えん」と,岡山県民のために堂々と闘われる知事の姿勢には心から敬意を表させていただき,拍手を送らさせていただくものであります。
 ところで,正直なところ,知事は,地方分権一括法なるものの施行から3年たとうとする現在,ああ国と県は対等・協力関係になったものだなあとしみじみと実感されておられるのでしょうか。県知事にとって,国とはどういう存在であり,また,今後どうあるべきだとお考えでしょうか。特に,機関委任事務が廃止され,自治事務,法定受託事務を生かした成果と呼べるものは何でしょうか。さらに,逆に県が県内78市町村から,対等・協力関係にあると,そのように認識されているとお感じでしょうか。

 さて,こうした地方と国との関係において,小泉構造改革の根幹をなすものの一つとして鳴り物入りで登場したのが,9月定例会でも取り上げられた構造改革特区です。国のサイドからいえば,「骨太の方針」第2弾で示された個性ある地域の発展,知恵と工夫の競争による活性化という観点から,地域の自発性を最大限尊重する形で進め,特定地域における構造改革の成功事例を示すことにより,全国的な規制改革と波及させて,日本経済の活性化を実現するために設けられたものです。地方サイドからいえば,こうした地域限定の構造改革を行うことで,地域の特性が顕在化したり,特定地域に新たな産業を集積させるなどにより,地域の活性化にもつながるということで,構造改革特区制度を推進することによって地域の活性化を実現することにもなります。ある意味,市場競争を抑制し,特定の産業分野のみを保護した規制を廃し,護送船団方式で規制によって恩恵をこうむってきた業界や,関連する許認可権で影響力を維持している中央官庁,族議員といった既得権益を擁護しようとする構造そのものを改革するということですから,地方分権の時代の象徴として本来渡りに船の施策のはずです。しかし,本県からの提案は4件で,岡山市,倉敷市がそれぞれ1件,おまけに規制緩和を求める声に対して,各省庁の回答は肩透かしのものも多く,興ざめした感は否めません。
 そこで,知事の構造改革特区に対する御認識,さらには規制改革特区ができたとしても,実際に企業の参入に結びつかなければ意味がないと考えますが,今回の提案内容,国からの回答についての御感想をお知らせください。
 加えて,財政措置や税制優遇といった旧来型の手法を用いない仕組みでどれだけの成果が上がるかは,特区の計画を提案する地方自治体の手腕にもかかっていると言えると思いますが,特区の担い手となる民間企業などの提案,さらには今回認められた株式会社の農業分野のほか,医療や教育分野への参画等,第2次提案募集に向け,今後の提案の方針をお知らせください。

 ところで,構造改革特区のうち,話題を集めたカジノ特区は,刑法に関する特区は対象外との規定に基づき事実上門前払いにされました。カジノと言えば,東京歌舞伎町で,非合法のかけゲームマージャン店を火元にした火災で死者44人が出る大惨事が起きたばかりの5月,石原慎太郎都知事は,「先進国の中で100万人以上の大都市にカジノがないのは日本だけ」と,知事就任以来の公約であるカジノ計画の推進を国に働きかけていく意向を明らかにしました。カジノが開設される場合,自治体が施設周辺のインフラを整備し,良好な環境を維持していかなければならず,その財源確保に税を位置づけていく必要があると判断した東京都は,実現に向けて,カジノ税創設を含めて法的整備を国に要請する検討を始めたとのことです。
 カジノ誘致には,太田房江知事の大阪府,静岡県熱海市なども積極的な姿勢を示していて,「イーストベガス構想」として市民運動的な盛り上がりを見せる秋田や石川,また宮崎に沖縄など,全国の7カ所が動きを見せている状況で,合法化を求める請願を採択した県議会も幾つかあります。東京都は,こうした複数自治体に共通する事情のため,現時点では,刑法改正などカジノ合法化の法整備の際,地方税として導入するよう国に求めていくことを想定し,国で税制が準備されなかった場合は法定外税で各自治体で共同実施する道もあり得るということです。
 同様の地方税としては,パチンコ,ゴルフ場,ボウリング場などに課税する娯楽施設利用税が1954年から実施されましたが,消費税導入に伴い89年に廃止,しかし,ゴルフ場利用税だけはぜいたくな娯楽とみなされ,1日最高で1,200円が現在も課税されていて,カジノの利用も同じ扱いをするのが可能だという考えが背景にあるようです。要するに,トトカルチョのサッカーくじをスポーツ振興くじなどと称して文部科学省が売り出す我が国は,競馬が3兆8,000億円,競艇が1兆3,000億円,競輪が1兆2,000億円,宝くじが1兆円,オートレースは2,000億円,そして公営ギャンブルではありませんが,パチンコが28兆円と,非合法カジノやマージャン賭博などをも入れると35兆5,000億円の市場を持つギャンブル王国です。これは,よくも悪くも日本文化でもあるとも言えると思いますが,これを税財源として法的に捕捉できるならば,非常に魅力的ではあります。
 そして,この動きは岡山県とも無縁ではなく,お隣香川県で,本年7月2日,政府が検討中の構造改革特区の指定を受けるため,早急にカジノ構想を表明するとともに,官民一体となった瀬戸内海カジノ委員会を設立するよう求めて,香川経済同友会の観光・交通委員会が「瀬戸内海カジノ構想について」と題する緊急アピールを行いました。緊急アピールでは,他地域の状況や地域的に規制を緩和する構造改革特区などを踏まえ,政府に対する早急なカジノ構想の表明,官民一体となった委員会の設立,県民の盛り上がりを醸成する啓発活動の3項目を要望したのです。カジノ構想が実現すれば,本四架橋の利用客が大幅にアップするほか,離島振興や地域経済の活性化につながり,香川の抱える問題がすべて解決すると指摘し,特区指定に乗りおくれないために早急な対策を促しています。
 香川経済同友会によると,国立公園の指定が外れている橋台の島与島あたりに,米国ラスベガスのような娯楽施設が集合したエンターテインメント型カジノを想定し,カジノホテル10棟の宿泊客は年間500万人,関連産業も含めた経済波及効果は約1兆円と見込んでいるようです。ちなみに,広島県の藤田雄山知事は,10月21日の定例記者会見で,カジノに関し,「公営企業のように公明正大にできるのであれば,競輪や競馬と同じように許容されてもいいのではないか」とおっしゃっておられます。
 前置きが大変長くなりまして恐縮でございますが,中四国州を目指される石井知事におかれましては,カジノ及びお隣香川県の経済同友会が示された,この瀬戸内海に世界のエンターテナーが集い,豪華なディナーの客船が浮かび,マリンライナーが与島カジノ駅でとまるような,この瀬戸内海カジノ構想についていかがお感じでしょうか。

(知事)  地方分権への感想についてでありますが,地方分権一括法が施行されまして,国と地方公共団体は対等・協力の関係となったわけでございますけれども,しかしそのことを実感しているかと言われますと,まだまだ実感するにはほど遠いという認識でございます。真に実効ある地方分権というものを実現をしていくためには,地方税財源の充実など多くの課題がまだまだ残されていると,このように感じております。
 国は,国家としての存立にかかわる事務など,本来果たすべき役割というものを重点的に担っていただきまして,住民に身近な行政というものは,これはできる限り地方公共団体にゆだね,積極的に地方分権を進めるべきであります。そのことによりまして,国と地方を通じました簡素でそして効率的な行政システムというものの構築に資することができるものと,このように考えております。
 また,分権の成果といたしまして,機関委任事務が廃止されたことによりまして,国の関与が縮減をして,地域の実情に応じた自主的な行政運営というものが推進できるようになったわけでございますが,これとともに,岡山県快適な環境の確保に関する条例を初めとするいわゆる環境3条例や,法定外目的税としての産業廃棄物処理税の導入など,本県独自の個性あふれる施策の積極的な推進が図られていると,このように考えております。
 県と市町村との関係についてでございますが,私自身,従来より地域サミット等の場におきまして,地方分権一括法の施行によって,県と市町村は21世紀の地方自治をともに担うパートナーとしてこれからも対等・協力の関係で協力をし合っていこうといったようなことを市町村長の皆様にお話をしてきているところであります。これまでの国,都道府県,市町村という中央集権型の行政システムが長期にわたってきたということで,意識の中に根強くしみついたものもございまして,市町村において県に対する従来からの意識というものが完全には払拭されていない,こういう認識もございます。私といたしましては,さらなる地方分権改革への取り組みがこれからも進められるといった中で,県との対等・協力への認識というものが市町村の間におきまして次第に高まってくるのではないかと,このように考えているところであります。

 次に,構造改革特区であります。
 この認識についてでありますが,特区制度は,地方の知恵と工夫の競争によりまして個性ある地域の発展を図ろうとするものであります。地域経済の活性化や,あるいは全国的な規制改革につなげていく意義のある制度であると考えております。一方,現在,国の方で審議をされております特区法案を見る限りにおいて,関係省庁から各種の規制緩和に当たりましての条件が付与されるなど,地方の提案に十分に沿ったものとは言いがたい側面もありまして,今後とも,より一層の制度の充実が図られていく必要があると,このように考えております。
 本県の提案内容等への感想についてでありますが,本県からは,提出期限までの期間が約1カ月と短かったにもかかわらず,4件を提案しているところでありまして,内容的にも,IT特区や水島港国際物流・産業特区など,岡山県の地域特性やあるいは企業参入の動向等を踏まえて提案をしたものでありまして,地域の活性化に資するものであると考えております。
 こうした提案に対します国の回答でございますが,本県が提案いたしました特区4件29項目の規制に対しまして,特区として対応可能とされました9項目を含む20項目が何らかの形で実施可能とされるなど,全体的にはある程度評価できると考えておりますが,しかし特区としての対応を先送りされた項目もございまして,必ずしも満足できる内容ではないと,このように感じております。
 今後の方針についてでありますが,国の第2次提案募集に向けまして,引き続き民間からの意見というものも聞きながら,福祉や教育等幅広い分野におきましての提案について現在検討を進めております。また,既に提案しております特区につきましても,実現に向けた構想を固めていく中で,新たな規制緩和措置の導入などにつきまして積極的に追加提案をしてまいりたいと考えております。

 カジノについてであります。
 低迷をしております地域経済の活性化やあるいは財源対策のため,東京都を初め幾つかの府県でカジノの実現に向けた取り組みが行われているわけでございます。しかし,我が国において,射幸心を助長するかけごとを中心とした拠点開発によって本当に健全な形での経済活性化が図れるのか,また,カジノを容認をすることに対しまして国民のコンセンサスが得られるのかといったこと等につき,私は大きな疑問を感じておりますし,また青少年の健全育成といった面からも,これは大変問題があると認識をいたしております。
 お話がございました瀬戸内海カジノ構想は,香川県の経済同友会が提案をされているものであります。他の県が提案され,議論をこれから進められるという中でございますので,私といたしましては,今後のその論議の動向を見守ってまいりたいと考えております。



<平成14年9月定例会>(2002年9月19日)

(佐藤)  次に,ここは岡山県ですから,よその県のことを引き合いに出しても仕方ないのですが,各地で反公共事業知事が誕生し,その代表とも言える田中長野県政が再スタートしました。84.1%の驚異的な支持があるものの,有権者の6割近くが,どっちもどっち,田中知事と県議会の双方が歩み寄るべきだと考えているそうで,実際の状況を知るべくもありませんが,争点は,要するにむだな公共事業をめぐる問題であったと思います。私は,個人的には,公共事業には確かにむだな部分もあるが,多くがむだという評価は間違っていると思います。また,そもそも,特に産業のない地域では,公共事業そのものが生活の大きな糧となっており,都市生活者の利己主義で一概にむだであると切り捨てられるものでもなければ,公共事業に依存して生計を立てている方には,地域社会に貢献しているという自意識を持って仕事をされている,そのことに敬意を払うべきだと思います。
 また,本県では,公共事業の効率性透明性の向上を図るため,公共工事のコスト縮減,さまざまな評価システム,電子入札の導入を初めとした入札制度の改善等に取り組まれているところであります。しかし,地域社会発展の基礎をつくるための重要な仕事であるにもかかわらず,公共事業は悪だという風潮が高まり,その根拠は@むだだと思われる公共事業が多い。A大規模な公共事業は環境を破壊する。B公共事業を推進しても景気対策にはならず,かえって財政を危機的状況に追い込む。C公共事業の発注受注をめぐって,談合や政治家の介入・汚職等,不透明な部分が多いので,民間が行う建設事業より多くの金がかかっているというものだと思います。
 ところで,ある大学の宿題に,「近年むだな公共事業が問題視されている。ダムの建設や干拓事業を例にとり,理論的には,どのような場合にこのような事業を行うべきか論じなさい。また,そのような事業の最適な規模は,どのような水準かも論じなさい」というのがありました。模範解答は,「公共事業の結果,各住民が享受する便益の総和が公共事業の費用を上回るなら,その事業を行うべきである。そうでないなら,行うべきではない」「最適な規模は,住民の限界効用の総和と事業の限界費用が一致するような水準である」という,問いを問いで答える非常にあほらしいものではありましたが,要は,その公共事業の地域における貢献度と公共機関の財政事情とその必要性のバランスの問題である。突き詰めればそういうことだと思います。また,模範解答には,「むだな公共事業が終わらないのは,むだな公共事業の実施が,政治家にとって利益になるからであり,その根本的な原因は,有権者がそれを望むからである。問題を解決する一つの方法は,公共事業の費用負担は,当該地域の住民に負わせることを原則にするなどして,限界的税負担を適切な水準に引き上げることである」とありましたが,この宿題に,知事はどのような回答をなされますでしょうか。
 加えて,私は,この問題は,国対地方,すなわち地方分権の根幹にかかわるものであり,1,国,都道府県,市町村という縦の3段階構造の中で,自治体の自主権が確立していないこと。2,事業を規定する個別法は,霞ヶ関の局や課の法律解釈や補助金を含む予算で運用されており,こうした中央省庁縦割りの弊害。3,国が新たに借金を重ねて財源を確保してきた,交付税加算や国の補助金に頼らざるを得ない地方財政制度改革のおくれ等を克服しない限り,解決しない問題だと思います。換言すれば,結果として,中央集権構造の中で,国,地方ともに財政破綻に向かってしまった,そのような,補助,単独の区別なく自治体が国の枠組みの中で公共事業を拡大し続けたやり方をかえ,本当に必要なものに集中して投資できるようにしなくてはいけないと考えますが,知事は,国と,いわゆるむだな公共事業との関係をどのようにお考えでしょうか。
 さらに,日本の社会資本の蓄積は,主要国と比較してもまだまだ脆弱とも言えますが,公共事業を雇用創出や景気回復の手段として用いないという可能性も含めて,また社会資本整備といっても,道路やダムや港ではなく,例えば文化的な施設の建設や環境保全事業などに向け,物理的な建造物に限らず,知的資本の蓄積など,将来的には公共事業の定義そのものが変わってしまうということも考えられますが,今後,公共事業はどういう形になっていくのが好ましいと知事はお考えでしょうか。
 また,各地で,市民の意見をもとにマスタープランをつくり,それに見合う形の公共事業を行うという取り組みがなされています。公共事業を行う主体は,必ずしも従来の国と地方公共団体ではなく,民間,NPOのようなものにも担わせるといった発想も必要な時代になってきていると思われますが,今後どのように手法が変わっていくとお考えでしょうか。
 ところで,公共事業が10%,3%と一律に削減される中で,全産業に占める建設業就業者の割合は約1割,土木建設業が衰退産業であるかのような現状では,成長の見込める産業への人材流動が速やかに行われなければ大変な事態になります。いかように,雇用の創出,転職を支援するのでしょうか,商工労働部長にお伺いいたします。
 また,県の行財政改革の一環として,公共事業の削減を考えたとき,行政組織はどのような体制に変わるのでしょうか,総務部長にお尋ねいたします。
 最後に,公平・公正・透明性は重要であるにしても,法人税等税収の面を考えても,公共工事だけでなく,県からの業務委託の発注,例えば施設の清掃委託等については,地元業者優先の施策をとるべきだと思いますが,いかがでしょうか,総務部長にお尋ねいたします。

(知事)  次に,いわゆるむだな公共事業についての御質問がございました。どういう条件のもとに公共事業を行うのかという大変難しい論文を突きつけられたような思いでございますが,この問いに対しまして,抽象論でお答えを申し上げれば,ただいま議員が御紹介されました模範答案のとおりであるとしか言えないわけでございますが,問題は,具体的にどのように公共事業を進めていくかと,こういうことであろうと思います。当該公共事業の便益であるとかあるいは必要性緊急性等々,あくまでも個別事業ごとにその総合的に公共事業というものを判断をしていくということだろうと思います。その点,本県が先駆けてつくりました公共事業の事前評価システム,こういったものは大変そういった面で参考になるのではないかと考えております。費用対効果のウエートを非常に高くしているというところに特徴があるわけであります。
 次に,むだと言われるような公共事業が生まれる背景の一つということで,地方が実施する公共事業についての考えなんですけれども,こういった我々岡山県内で行われております公共事業について,その判断権というものを関係各省庁が握っているということ,そして,地方は,その関係省庁の財源というものに依存をしておりまして,その財源の補助金とかあるいは地総債,過疎債等々の財政負担以上の便益を享受していると,こういったことで安易に公共事業を行うことになりやすい今のシステム,これがいろいろむだな公共事業として地方が行っている公共事業について指摘される背景にあろうかと存じます。
 私は,そういったことから,公共事業の実施の判断権能とともに,財源も地方に移譲してもらって,我々が,すべてどの公共事業を実施するかということをゆだねてもらうと,我々に判断を任せてもらうということで,受益と負担というものを一致させまして,地方において責任を持って公共事業を行っていくシステム,こういったものをつくっていかなきゃいけないと,これが重要であると,私は考えております。
 公共事業の今後の方向でありますけれども,公共事業というものの定義とか範囲,これはさまざまな考え方がございます。このこと自体について議論をするよりは,まず大切なことは,行政が行っている事業は,これはすべて,最終的には国民,そして住民の負担する財源によって賄われていると,こういう点を認識することでありまして,すべての事務事業を含めて,その優先順位というものを適切に判断をしていかなければならないと,そして,そのことを県民の皆様にわかりやすく御説明し,開かれた県政を展開していかなきゃいけないというふうに考えております。
 特に,問題点といたしましてよく指摘されますのは,現在のいわゆる公共事業に定義づけられますものは,起債の発行対象経費と相なっているわけでございまして,これは住民負担の世代間公平の観点から認められているわけでありますけれども,これによって,当面の負担が軽減されることによって,必要性の判断が甘くなると,こういったことが指摘されますから,そういったことを十分留意をしなきゃいけないと,このように考えておりまして,この点,昨日の姫井議員に対しましても,改めて自重自戒しながら,県立体育館につきましても適切に執行していかなきゃいけないと,このように私は考えているわけでございます。
 新たな手法でございますが,事業の計画策定や意思決定の段階から,住民の皆さんの参加を求めまして,広く関係者の意見を反映させて実施をしていく,いわゆるPI方式(パブリックインボルブメント方式)とか,それから公共施設等の設計建設,管理運営に,民間の資金とノウハウというものを活用して,効率的で質の高い公共サービスの提供を図っていこうという,いわゆるPFI方式への取り組みというものが,最近本県のみならず幾つかの公共団体において行われております。今後の公共事業は,事業のあり方を含めまして,民間やNPOがどうかかわっていくのかと,まさに道路関係公団につきましても民営化ということで今議論がなされておるわけでございますので,そういった点も含めまして,私自身深い関心を持ってこれからも適切に公共事業を執行し,取り組んでいかなきゃいけないと,このように思っているところでございます

(総務部長)  まず,公共事業に係る行政組織についてのお尋ねでございますが,これまでも,県の行政組織につきましては,産業構造や社会経済環境の変化に応じました簡素で効率的な体制の整備に努めてきたところでございます。公共事業の見直しにつきましても,それに伴う業務量がどのようになるのか十分に分析しながら,適正な人員配置や行政組織のあり方について検討してまいりたいと考えております。
 次に,業務委託等に係る地元業者優先についてのお尋ねでございましたが,事業執行に当たりましては,効率性,経済性,確実性などは当然考慮すべきでありますが,地域産業の活性化や県内業者の育成といった観点も重要であるというふうに考えております。
 施設の清掃業務につきましても,本県の登録業者のほとんどが地元業者となっており,地元業者への発注に努めているところでございます。

(商工労働部長)  公共事業削減のうち,雇用の創出と転職支援についてでありますが,建設業からの労働移動は,その多くが業界内であることから,離職を余儀なくされた建設業労働者を新たに雇い入れ,かつその定着を図った建設事業主に助成を行う建設業労働移動支援助成金制度が国において設けられているほか,産業雇用安定センターにおいて,企業間の出向,転籍のあっせんをしておりまして,建設労働者の送り出し,受け入れ情報のマッチングを図っております。
 県といたしましては,緊急地域雇用創出特別基金を活用して雇用の創出を図るとともに,職業訓練の実施や新規成長分野で新たに人を雇い入れた事業主に対する助成など,国の各種助成金制度の周知に努めているところでございます。



<平成14年6月定例会>(2002年6月18日)

(佐藤)  次に,産・学・官の連携についてお伺いいたします。
 国策として科学技術創造立国を標榜する現在,基礎研究の充実を大学に,その研究成果の活用を企業が行い,産業を振興し,世界に貢献するため,科学技術基本法や産業技術力強化法が成立し,民間に対する大学の研究成果の技術移転促進に制度や予算面で支援体制がとられつつあります。
 また,企業の集積と,それを核とした大学や産業支援機関との交流,連携を前提にした地域経済の発展形態である産業クラスター論が盛んになってきました。要するに,ネットワーク型の産業組織を前提に,競争力強化の方向を模索し,イノベーション能力や新事業創出能力を生み出し,産業振興に結びつけることが地域の生き残り策ということです。換言すれば,この産業クラスター論は,その根本精神において,従来の国土開発の基本である均衡ある地域の発展を全面否定し,地域の特色ある発展にシフトしたことが特徴で,いわば護送船団方式から地域間競争を勝ち抜きたい,そんなやる気のあるところが早い者勝ちになる,そういった施策と言えると思います。
 ただ,この産業クラスターの定義自体が非常にあいまいで,立場によって指し示す内容が違うのではないか,そういう疑問があります。中国経済産業局,企業,財界のイメージはそれぞれでありますし,文部科学省の知的クラスターとの概念の混同,あるいは高度成長期のテクノポリス構想の焼き直しが見られます。この産業クラスターの概念のとらまえ方の違いで,例えば岡山県のとるべき施策は全く異なってきます。
 そこでまず,重厚長大の時代のコンビナートから産業クラスターに変遷していくととらえたとき,我が県の産業クラスターをどことイメージすればよろしいのでしょうか,知事にお尋ねします。
 そして,思うに,この産業クラスター構想の根幹には産・学・官の連携がある,いや,産業クラスターの成否は,まさに産・学・官連携の成否にかかっているのではないでしょうか。このことから,中国経済産業局の音頭取りで本年2月2日に行われた中国地域産学官連携サミットでは,「中国地域発展のための産学官連携マスタープラン」が採択されています。
 ちなみに,このマスタープランでは,中国地域が世界有数のイノベーション型産業基地と,世界のモデルとなる循環型社会の形成を実現するために,5つの方針と3つの目標が掲げられ,地域全体で協働して産・学・官の連携を実行していくことが確認されました。特に,この方針の中では,「社会・組織におけるチャレンジ文化の形成」,「イノベーションを担う人づくり」が掲げられ,意識改革と人づくりという観点から産・学・官の連携をとらえたのが特徴的です。まず,このマスタープランについて知事の御所見をお伺いいたします。
 ただ,大学が学術的な視点から研究し,この視点と企業の経済的な視点が融合して成果を上げる産・学・官協力の重要性はこのようにたびたび指摘され,国でもさまざまな機関や審議会がさまざまな提言や答申を行い,その提言を踏まえ,組織づくりや促進施策も実施されてきましたが,なかなか日本社会全体の意識改革に至っていないのが現実です。こうした観点から,産・学・官それぞれについて質問をさせていただきます。
 まず,産について。
 米国では大学と企業の包括提携が盛んですが,日本では,企業との関係も大学の教授など個人の努力に依存し,組織としての取り組み不足であると,産・学・官連携不振のその理由を大学に求めることが多いのですが,実際には,大学で生まれた技術の芽──シーズを可能性に,自分の問題として投資をしない,そういった産業界の責任も大きいと言われています。そのためには,制度として,学に対して産の側からニーズを伝えていく仕組みも必要ですし,例えば,学の持つパテントを事業化するための制度的な人的・情報的・金銭的支援体制が必要です。さらには,ベンチャー精神,チャレンジ精神を背景にした挑戦型社会経済システム構築のための税制面の優遇等のバックアップは当然に必要だと思います。
 まず,官として,この産・学連携につき,産の側にどのような働きかけ,刺激策,支援策をとられていくのでしょうか,商工労働部長にお尋ねいたします。

 次に,学について。
 国立大学の独立行政法人化の中で,最大の課題になる文部科学省の予算の獲得を見越して,1998年施行の大学等技術移転促進法に基づき,大学の研究成果と企業を結びつけ,経済を活性化する技術移転機関──TLOという言い方をしますが──TLOの設立が全国で相次ぎました。研究成果が移転され,実用化されてベンチャー企業など新産業の育成につながれば,大学にとってはその技術供与で得た利益を研究費に充てられますし,新たな雇用の受け皿にもなります。
 岡山大学も,日本の国公私立トップ30大学を世界最高水準に育成するといういわゆる「遠山プラン」に先立ち,2000年に「21世紀の岡山大学構想」をまとめ,大学院重点大学志向を鮮明にしました。しかし,このTLOが,大学が研究開発や学生確保で競い合うことを示す象徴的な存在であると言われ,また,山口大学がベンチャー企業創出に取り組み,実績を上げているのに比べると,残念ながら岡山大学は,TLOをつくり,県内産業界と交流促進をするのがおくれていると,そのように言われております。
 学にはすぐれた技術シーズの創出と公開が望まれますが,知を伝える学にとって,産との連携は本来的な活動ではないという,そういった意識の改革がまず必要です。かなり大胆な大学内の改革が同時並行的になされないと,大学の空洞化がもたらす地方産業の空洞化という深刻な事態になるのではないか。そんなおそれもあり,ひとりこれは大学だけの問題ではありません。まず,TLO設立につき,どのような支援をされていくのでしょうか。
 また,中国経済局は,3年で200社の大学発のベンチャーを目指しているそうですが,実際,どれだけ出てくるでしょうか。また,そのための環境整備,その支援はいかようになされていくのでしょうか。
 さらに,学科内の研究室の連携はもちろん,県立大学,私立大学との連携も含めた地域内の学学連携が重要ですが,どう後押しされるのでしょうか,あわせて商工労働部長にお尋ねいたします。
 また,こうした連携の仲立ちをするのは岡山情報ハイウェイだと思いますが,各大学でどのように利用されているのでしょうか。とりわけ,それが若い研究者の参加にどう結びついているのでしょうか,企画振興部長にお尋ねいたします。

 次に,官について。
 官は,技術開発の方向づけ,すなわち重点分野の設定,基本的な仕組みづくり,研究開発の支援の実行が望まれます。この場合の官は,研究開発施設や工業技術センターだけを意味せず,行政そのものでもあります。税金から成る予算を使うことだけではなく,チャレンジ精神で行政みずからが新ビジネスをつくっていく,こういった官の意識改革が望まれます。
 まず,行政の持つ研究開発施設,試験研究機関の計画的・戦略的形成を図るために,新たな組織を設け取り組まれていますが,今回は特に生物科学総合研究所について,産・学・官連携の流れの中で,今後どのような役割を担っていかれるのでしょうか,農林水産部長にお伺いいたします。
 また,昨年3つの財団が統合して岡山県産業振興財団ができ,産業技術支援について外部から優秀な人材が集まられていることは十分存じ上げておりますが,会社からの御出向の方はいずれ帰っていかれます。産業技術に関する自前の人材の育成についてどのような方針をお持ちなのでしょうか。
 また,官官連携も重要になります。県と市町村間はもちろん,学会等で連携する学に対して,県境を越えた官,すなわち地方自治体同士の産業に関しての連携システムも重要になりますが,この点どのようにお考えでしょうか。
 また,産と学,ベンチャーキャピタルとを結ぶためには,アイデアコンテストのような行政の仕掛けも必要ではないでしょうか。特に,児島湖の浄化,福祉機器など,環境や福祉を通しての産業育成を行政が誘導すべきだと思いますが,いかがお考えでしょうか。以上,商工労働部長にお尋ねします。

 この項最後に,産・学・官のコーディネーターについて商工労働部長にお伺いいたします。
 まず,我が党が進めているNPO法の改正が実現すれば,12分野に加えて,起業支援や科学技術の振興などが活動対象になる見通しです。NPOは,組織の性格上,過度に利益を追求せず,起業を取り巻くさまざまな関係者の中でも中立的な立場を保てるということで,利益第一目標の投資会社と異なり,大学や地域社会,行政などとベンチャーを取り持ち,地域の活性化や雇用創出のきっかけづくりにも貢献できる役割を果たし得ると思います。こうした起業支援NPOをどのように支援されていかれるのでしょうか。
 また,このたび外部から行政の枠組みを超えた自由で大胆な発想による政策立案とそれを実行するための民間人材を任期づきの産業戦略プロデューサーとして採用されています。民間企業のノウハウと人的ネットワークを生かし,現実の問題点の整理と今後の施策の方向性についての調査研究を行うということですが,その範囲は商工の全分野に及び,あたかも岡山県商工の総合プロデューサーのようですが,組織上どう位置づけられて,どう後進を育成され,どこまでの権限をお持ちなのでしょうか。
 加えて,産・学・官コーディネーターには,大きくプランするコーディネーター,プロジェクトコーディネーター,個別専門的なコーディネーターの3タイプのコーディネーターが必要であると言われていますが,産・学・官コーディネーターをどのように養成され,支援されていくのでしょうか。

 次に,中小企業総合指導センターの廃止について商工労働部長にお伺いいたします。
 今回の行革で,中小企業総合指導センターが廃止され,これで外郭団体を含めた県関係組織から中小企業という言葉が消滅いたしました。県内の産業の多くが中小企業である,言葉のあやであるといえばそうなのですが,中小企業経営者の中には,県の中小企業対策が一歩後退したのではないか,そういった印象を持っておられる方が少なくありません。この点についての御説明をお願いいたします。
 私の質問は以上でございますが,私は,産・学・官の連携が実る産業クラスターのイメージは,例えば真庭産業団地あるいは玉島ハーバーアイランドも考えられますけれども,やはりリサーチパークを中心にした岡山空港周辺の美しい高原,丘陵地帯ではないかと思います。あるいは,外国からの技術者たちが吉備高原に暮らし,岡山空港から岡山が文字どおり世界に結ばれるかもしれません。そして,この地域のことを外国のシリコンバレーやドラゴンバレーに倣って,クラスター──これはブドウの房という意味なんですけれども──がブドウの房の意味ならば,あえて岡山は岡山らしくマスカットバレーと,このように呼んでみたいと思います。
 中四国州にマスカットバレーあり,そんな大きな夢を描きながら,質問を終わらせていただきます。

(知事)  次に,産・学・官の連携であります。
 産業クラスターでございますが,議員からさまざまな見地からの御質問をいただきましたが,私は,この産業クラスターというものは,地域のすぐれた資源というものを生かしまして,産業集積を連鎖的に生み出し発展をさせるものでありまして,そういったことから,エリアを固定的にとらえる概念というものではないと,私はそのように考えております。
 県といたしましてでございますが,県南部を中心といたしまして展開をしておる機械産業の集積を生かしまして,本県が優位性を持っております精密加工技術といったものを中心といたしまして,関連する大学とか企業,産業支援機関のネットワーク化の促進等によりまして,技術革新とか,あるいは販路の開拓などの機能強化を進めてまいりまして,世界に通用する岡山版産業クラスターというものをぜひ形成をしてまいりたいと考えております。
 中国地域発展のための産・学・官連携マスタープランについてでありますが,このプランは,中国地域の産・学・官のトップが参加をしたサミットにおきまして全国に先駆けて採択をされたものであります。産・学・官連携によります技術革新とか,あるいは社会全体の意識の改革,人材の育成といったものを進めて地域の発展を目指すものでございます。当マスタープランには,大学発ベンチャー創出数などの具体的な目標数値が掲げられておりまして,中国地域というものが一丸となって達成を図るべきものと考えております。
 御案内のとおり,夢づくりプランの中でも,産・学・官の共同研究を促進する本県独自の施策を具体的にいろいろ盛り込んでおります。こういったものを通じまして,産・学・官連携の飛躍的な強化というものに取り組んでいかなければならないと,このように考えているところでございます。

(企画振興部長)  産・学・官の連携のうち,学の取り組みに関し,岡山情報ハイウェイの利用についてでありますが,現在,県内7大学が岡山情報ハイウェイを活用し,国の学術情報ネットワークに接続することで高速な通信環境での大学間の情報交流を実現をしております。
 こうしたネットワークは,大学間連携に不可欠な情報通信基盤として多くの若手研究者に活用されておりますが,岡山理科大学,高知工科大学等の連携によるインターネットを利用した遠隔講義システム構築に向けた研究や,岡山大学医学部附属病院による遠隔医療システムを利用した内視鏡手術への応用など,さらに広範囲な連携を生み出しておりまして,今後ともこうした連携の促進に努めてまいりたいと存じます。

(商工労働部長)  産・学・官の連携についてのうちの産への働きかけ等についてでございますが,これまでに水島企業と地元大学との連携システムの構築,産・学・官の研究会への参加の呼びかけ,成功事例を紹介するシンポジウムの開催,合同研究発表会の開催支援等を行ってきたところでございます。
 さらに,今年度から新たに設けました企業と大学との共同研究を助成する本県独自の支援制度なども活用しながら,県内の企業がより積極的に大学との連携に取り組むよう働きかけてまいりたいと考えております。
 次に,学の取り組みのうちのTLOの設立等についてでございますが,県内においては,岡山大学で昨年4月にリエゾンオフィスを設置し,将来TLO設立も視野に入れながら活動をしていると聞いております。県といたしましても,技術移転に効果的な仕組みであると考えておりまして,大学との意見交換を図りながら,必要な支援を行ってまいりたいと考えております。
 また,大学発のベンチャーの創出につきましては,大学の若手研究者のシーズを起業へつなげる助成制度を設けておりまして,目標の達成に向け,環境整備に努めてまいりたいと思います。
 さらに,大学間の連携の動きに対応いたしまして,大学合同の研究発表会を支援するなど国公私立を含めた県内大学の連携を一層促進してまいりたいと考えております。
 次に,岡山県産業振興財団についてでございますが,当財団は,中小企業等への経営面,技術面の支援を行っておりまして,民間企業の実態を踏まえた適切な業務を実施するため,企業からの出向も受け入れているところでございます。
 しかしながら,御指摘のとおり,産業技術に関する自前の人材育成は重要と考えておりまして,企業OBの採用なども視野に入れ,技術支援の中心となり,産・学・官連携のコーディネーター役ともなる職員の育成確保を指導してまいりたいと考えております。
 次に,官官連携についてでございますが,県境を越えた広域的な官の連携といたしまして,従来から工業技術センターにおいて他県と連携した共同研究を進めてきたところでございます。今後とも,県内の各地域の産業支援組織や研究機関等との連携を強めるとともに,中国地域の広域的な情報ネットワークを構築することなどにより,行政相互の連携を一層深めてまいりたいと考えております。
 次に,産業育成の仕掛けについてでございますが,県では,起業家にビジネスプラン発表の場を提供したり,大学のシーズの公開を促進するなど,産業育成につながるさまざまな連携施策を講じております。
 また,環境や福祉等21世紀の大きな課題の解決に向け,産・学・官が協働することは重要でありまして,水島工業地帯産学官懇談会におきましても,県が提案した環境をテーマとする共同研究が行われているところでございます。引き続き,こうした観点から,産・学・官連携を通じた産業育成に努めてまいりたいと考えております。
 次に,産・学・官のコーディネーターのうち,起業支援NPOへの支援についてでございますが,多様な組織がそれぞれの立場で起業家の支援に取り組むことが必要でございまして,起業支援NPOの活動はベンチャーの育成にとって有意義なことでございます。県といたしましては,起業支援NPOに対して,県内の産・学・官により構成される産業支援プラットフォームへの参加による情報交換の機会の提供,また県内外の起業家支援組織との交流などにより,その自主的な活動を側面から支援してまいりたいと考えております。
 次に,産業戦略プロデューサーについてでございますが,商工労働部の主管課であります商工企画課の参事(スタッフ職)といたしまして,特別な権限はございませんが,民間ならではのノウハウや豊富な海外駐在経験等を生かし,産・学・官の交流による県内産業の活性化,本県経済の国際化など,商工行政の重要施策について調査・企画を行うこととしております。
 また,当プロデューサーの業務を通じ,部内に民間感覚やノウハウを浸透させ,職員の意識改革につなげていきたいと考えております。
 次に,産・学・官コーディネーターの育成についてでございますが,県内の産業支援機関や大学を中心に技術面などの専門分野のコーディネーターが配置されており,県ではこれらのコーディネーターの連絡会議を運営し,情報交換及び資質の向上を図っているところでございます。産・学・官連携の促進のためには,御指摘のとおり,プランづくりやプロジェクトチームの編成など,さまざまな役割を担う多様なタイプのコーディネーターの活動が重要でございまして,今後ともこうした人材の発掘や育成を図ってまいりたいと考えております。
 最後に,中小企業総合指導センターの廃止についてでありますが,中小企業者のニーズが多様化,高度化する中で,行政が実施する経営診断・指導よりも,幅広い知識を有した民間の専門家を活用することがより有効で効果的であるとの観点から,県中小企業支援センターと5カ所の地域中小企業支援センターを整備したところでございます。それに伴いまして,中小企業総合指導センターを廃止し,中小企業施策に総合的に対応する経営支援課を本庁に新設いたしまして中小企業対策の充実強化を図ったものでございます。県の組織という点では名前はなくなりましたが,中小企業対策に全力を挙げて取り組む姿勢に何ら変わりはございませんので,御理解を賜りたいと存じます。

(農林水産部長)  産・学・官連携のうち,生物科学総合研究所についてでございますが,現在,地場企業を初め全国11の大学等との積極的な共同研究にも取り組みまして,痴呆性を改善する効果のあるたんぱく質の量産技術を開発いたしまして,地場企業での工業化が図られるなど着実な成果を上げているところでございます。
 今後とも,さらに広範な分野で共同研究を推進いたしまして,先端的な技術開発成果の農業分野への応用でありますとか,特許権等のノウハウの地場企業への移転等を通じまして本県産業の活性化に結びつけ,同研究所を本県バイオ研究の拠点施設として一層その役割を高めてまいります。



<平成13年12月定例会>(2001年12月12日)

(佐藤)  さて,先日,もったいなくも,知事と議長が上海便の増便要請に訪中される便にたまたま乗り合わさせていただき,若い経済人たちと計7名で,主に岡山から上海に進出している幾つかの企業の工場を見てまいりました。これは物すごいものでした。経済的に豊かであるかどうかではなく,頑張ればきっと報われる。きっとあしたはきょうよりよくなるだろう,そう無条件に信じられる,要するに夢を描くことができる,そんな中国の青年の姿が私にはうらやましくもありました。爆発的に伸びる中国,人口1,300万人の巨大都市上海の街や人の魅力,可能性に圧倒され,私の中では中国がマイブームになっておりますので,今回は中国にちなんだ質問から始めさせていただきます。
 11月10日に,中国がWTO(世界貿易機関)の加盟申請を承認されたのは,記憶に新しいビッグニュースです。これで中国も国際経済社会のメンバーとして認知され,国際的な通商ルールが通用する国に仲間入りしました。これにより投資や貿易の障壁も減り,世界の企業の投資がますます中国に向かうと思われます。そもそも,世界人口の5分の1,13億人を擁する中国は,比較的良質で安く,豊富な労働力と成長力を秘めた巨大な消費市場であり,企業にとって大きな魅力です。
 中国にとっては,WTO加盟は短期的なデメリットもあるとも言われていますが,同時進行の西部大開発と2008年オリンピック開催という2大プロジェクトによって克服可能であると思われます。途中,経済成長率が鈍化したり,調整する局面に入ったりすることはあっても,政治的なリスク,これはかなりあると思うんですが,政治的なリスクを除けば中国経済の成長は約束されていると見てよいのではないかと思われます。
 一方,我が国の企業は,日本国内はもちろん,ほかのアジア諸国にあった拠点を再編し,中国に集約するような生産体制のシフトが目立っています。このまま対中シフトが加速すれば,日本国内でも地方を中心に雇用機会が奪われかねないという懸念があります。まさに,今日本企業にとっては総合的な対中戦略が不可欠です。日本の産業界は,生産拠点の中国への移転による国内空洞化だけではなく,あるいは対中戦略そのものの空洞化というより深刻な問題を抱えています。
 また,政治的にも,自国内の構造改革が進まないなどと言っているような場合ではなく,中国といかに共存共栄するかの方策を示すことが,21世紀の日本の国の興亡をかけた一大テーマであると私は思います。
 このことは,岡山県にとっても決して例外ではありません。岡山県からは,被服・繊維製品や機械器具の製造業を中心に,海外進出企業の4分の1が上海とその周辺に集中しているわけですが,対中戦略について,この地方分権の時代に,わざわざ中央の意向に沿うこともなければ,いわんや2億8,000万人の人口のアメリカ合衆国にお伺いを立てる理由もありません。中国の規模,国民性,華僑の歴史からしても,いかに岡山県独自のネットワークを築き上げるかが岡山の未来を決すると言っても過言ではないと思います。我々の目と鼻の先に13億人の人間がいるのです。

 そこで,まず知事にお伺いいたします。
 大きな質問になりますが,中国のWTO加盟が岡山県にどのような影響を与えるとお考えでしょうか。
 次に,平成10年開設の中国東方航空の上海への国際定期航空路があること自体,岡山の大変な財産だと思いますが,さらに週3便の増便を目指されることは本当にすばらしいことだと思います。このことが,観光のみならず,経済的にどういう効果,特にフィードバックが岡山にあるか,お知らせください。
 また,さらなる中国への新空路開設に当たって,中国全体を俯瞰するような調査はされているのでしょうか。
 岡山−北京線,あるいは岡山−ハルビン線,岡山−深セン線は考えられないでしょうか。日本−ハルビン線は現在新潟空港しか直行便が就航していませんが,週3便ですが搭乗率もなかなかのものです。北陸,東北,北海道地方の空港がハルビン線の直行便に対し力を入れているそうですが,山形県の庄内空港から来年度に中国北方航空の直行便の就航が実現するようです。日中両国の歴史的な経緯,あるいは日中航空協定の中で,西日本の地域から新規路線開設に向けての話が浮上してこないのはいろいろな問題があるのかもしれませんが,まずはプログラムチャーター便から始め,週2便程度で定期便開設,搭乗率も恐らく上海線以上にいく可能性もあると思います。
 また,中国南方航空を相手に広東方面,とりわけ爆発的に発展する深センへの航路は考えられないでしょうか。
 これに関連しまして,海外への空港の新規路線開拓については,岡山空港から国内の一地域を経由して開設することは考えられないでしょうか。このためには,日本国政府と当該国政府との航空交渉の必要性,あるいは着陸料等の必要経費の増大等はあると思いますが,このことを加味しても集客が見込めると思いますが,いかがでしょうか。
 さらに,平成9年より,ジェトロ上海センター岡山経済交流部,すなわち,これは事実上の岡山県の上海事務所になるわけですが,上海事務所を開設されているわけですが,岡山県の世界への窓口として,まさに汗をかきながら最前線でネットワークを広げられておるその現地での御労苦には本当に頭が下がります。しかしながら,世界レベルで見ると,岡山県という行政単位で,中国,とりわけ上海市を相手にするのにはなかなか難しいのではないかというふうに思います。そのためにも,現地に出されている各県の事務所や日本と現地の企業に注目し,両方の情報ネットワーク,とりわけ人的ネットワークを強化することが重要です。端的には,岡山上海事務所を核とした地方レベルでの対中戦略プランが必要であると考えますが,いかがお考えでしょうか。
 加えて,中国は既にパソコン7,000万台,ネット人口1,900万人の世界最大級のIT市場になっています。お隣の島根県では,既にIT人材交流を始めたと聞きますが,岡山情報ハイウェイの実績を中国と結ぶ方策はないでしょうか。
 また,人事交流という意味では,観光旅行や役員研修ではなく,経済交流を目的として大量に青年,若手企業人を中国に派遣,交流させる施策が必要だと思います。21世紀にどんな連中と我々が国際舞台で戦うのか,あるいは手を組むのか見ておく必要がありますが,そのような施策はお考えでしょうか 。

 あわせて,岡山空港に関して幾つか伺います。
 岡山空港は,1,850台の無料駐車場が売りであることを承知の上で,一部駐車場有料化の提言をさせていただきます。
 毎週東京に出張する経営者,会社員の方は大勢おられますが,ぎりぎりで空港へ入った場合,車がとめにくいということがたびたび起こっているように思います。また,車の保護の問題もあるようです。こういう方々にとっては,駐車場が無料であるということは必ずしも大きなメリットであるとは思えません。そこで,特定の最寄りの区間のみを有料にして,無料のエリアも残すことにしてはいかがでしょうか。例えば,最寄りの500台分を有料にし,例えばですが,1日500円として,これだけでも年間数千万円以上の売り上げとなります。お金と時間のどちらを優先させるか,空港の利用者に選択していただく時代であると思いますが,いかがでしょうか。
 さらに,これは昨日の重複質問になりますが,JALの進出もあり,ビルが手狭になり,またレイアウトも改善すべきではないでしょうか。毎年の利用客の増加に伴い,現在の空港カウンター及び待合室等は余りにも手狭だと思います。
 また,店舗の配置も非常に圧迫感があります。レストラン等も滑走路が見えるところへ移動するなど改装の予定等がございましたら,お知らせください。

(知事)  中国のWTO加盟による影響についてのお尋ねがございましたが,ただいま議員の方からも御指摘がございましたが,本県の産業構造の特色といたしまして,全国的に見ましても対中国への輸出の比率が本県は高うございますし,また中国への進出企業というものも多いということでございます。こういったことから,本県からの輸出が拡大をするということが予想されますし,また同時に原材料調達コストの低減等によりまして,中国に進出をしております企業の価格競争力の強化につながるものと見込んでおります。一方,これも御指摘ございましたが,生産拠点の移転によります産業の空洞化や,あるいはこれに伴う雇用の減少,低価格製品の流入増によります企業,生産者への影響というものも大変懸念されるところであると考えております。
 次に,中国東方航空の増便についてでありますが,増便によります上海線の利便性の向上に伴いまして,観光,ビジネスなどの人々の交流が一段と活発化するとともに,航空貨物につきましても輸送能力の拡大によりまして集積が期待できるなど,中国との経済,文化等の交流に一層の弾みがつくものと考えております。
 中国との新空路開設の調査についてしたことがあるかとのお尋ねがございましたが,平成9年3月,岡山と中国各地との路線開設の可能性について調査を実施をしておりまして,それによりますと,岡山−上海線,岡山−北京線の運航可能性が高いという結果が出ております。県といたしましては,この調査結果や,あるいはプログラムチャーターの成果というものを踏まえまして,上海線の開設を図ったところであります。
 岡山−深セン線等についてでありますが,中国へは今年度岡山空港から北京市に既に7便のチャーター便が運航されておりまして,この実績を踏まえ,関係航空会社に岡山−北京線の開設に向けた働きかけを強めてまいりたいと存じます。
 御質問にございました深セン線,ハルビン線につきましては,当面需要動向等を研究をしてまいりたいと存じます。
 国内他地域を経由した空路の開設についてでございますが,お話がございました手法は,直行便に比べまして集客力にすぐれているということでございまして,今後の新規国際路線開設に向けての有力な手法として,お話にありました手法を活用してまいりたいと存じます。
 人的ネットワーク等の強化でありますが,上海事務所では,ジェトロのネットワークを十分活用をいたしますとともに,中国各地の自治体事務所との連絡会議で定期的に情報交換を行ってきております。また,上海や香港エリアに進出をしております県内企業の協力を得ながら,人と情報のネットワークの形成にも取り組んできております。今後とも,上海事務所を核として,広がりのある人的ネットワークの強化に努めてまいりたいと存じます。
 岡山情報ハイウェイの実績と中国についてでありますが,岡山情報ハイウェイを初めとする高度情報化に積極的に取り組んでまいりました岡山県と,IT社会構築に向けて目覚ましい進展を遂げつつあります中国との間で技術的,人的交流を行うことは大変有意義であると考えられます。さきの「東アジアIT協力会議」等の成果を生かし,具体的な交流方策を検討してまいりたいと存じます。
 経済交流を目的とした派遣等についてでありますが,現在既に相当数の経済団体や企業グループなどが中国を訪問しておりまして,上海事務所が現地での交流というものを支援をいたしております。また,岡山県国際経済交流協会におきましても,ミッションの派遣やあるいは中国語の現地実践研修などを行っておられます。青年や若手企業人等がみずから学んでいただくこと,これが基本ではございますが,県といたしましても,今後ともこのような交流の場づくり,あるいは交流機会の情報提供などの支援を行って,経済交流をもっと活発に展開をするよう努めてまいりたいと存じます。

 岡山空港の問題であります。
 一部駐車場を有料化してはとの御質問でございますが,岡山空港は,開港以来駐車場を無料にしていることが最大のセールスポイントであったわけでございまして,大きな旅客数の着実な増加にこのことが結びついてきているわけであります。岡山空港のこういった優位性というものを確保するために,今年度中に空港の入り口付近に駐車状況を電光式で表示をして,車で来られる方にどこの駐車場が今あいているかということをわかりやすく明示をするなど,引き続き利便性の向上策というものを強力に展開をいたしまして,無料駐車場の利便性といったことで,当面,この無料駐車場という形の運用を継続いたしたいと考えております。
 また,しかし御質問にございましたとおり,駐車場が近くは満杯であるといったようなこともよく私もお聞きをいたしておりますので,より利用しやすい駐車場というものを目指さなければならないと思っておりまして,ターミナルビルの前面にあります駐車場の拡充につきましても検討をいたしたいと考えております。
 ビルの改装予定等についてでありますが,新たな航空会社の進出や旅客数の増加など手狭となる要因がふえておりまして,保安検査機器の増設など可能なものにつきましては早急に対応策を検討したいと考えております。
 なお,現ビル内でのレイアウト改善というものには構造的な制約があるため,ビル全体の増改築につきまして基本計画の策定を急いでおります。旅客の利便性と快適性を抜本的に向上をさせていかなければならないと考えております。



<平成12年9月定例会>(2000年9月20日)

(佐藤)  次に,福祉機器関連産業の振興について,商工労働部長にお伺いいたします。
 我が国の高齢化は,他国に類を見ない速さで進んでおり,厚生省人口問題研究所の推計によりますと,2015年には65歳の以上の方が全人口の25%を超え,4人に1人が高齢者になると言われています。このような高齢社会においては,高齢者や障害者の方が自立的に能力を発揮できるバリアフリーの実現や,生活のあらゆる面でこれらの人々をサポートする機器の開発が重要であると思います。
 例えば,福祉先進国のデンマークでは,惜しげもなくかなり高価な福祉機器が給付されているのを見て大変驚きましたが,そうする結果として,少しでも自立していただくことができれば,御本人にも御家族にも,何よりも医療にかかる費用面でもいいことなんだという考えが背景にありました。加えて,私は,一つの産業としてこのような福祉機器関連産業の成長が望まれると思います。平成9年に策定された岡山県産業活性化ビジョンにおいても,福祉機器関連を含めた医療福祉関連産業が今後成長が期待される分野とされ,本県の産業振興の重点分野に位置づけられています。県内には,岡山大学や川崎医大など,医療福祉関係の大学を初め,人工関節や車いす,入浴装置,介護用ベッド等の福祉機器関連の多様な企業集積があります。このような集積を生かし,これらの大学や企業との連携,技術移転等を促進する事によって,本県の福祉機器関連産業は今後大きく成長するのではないかと考えますが,これらに関する県の取り組みの状況についてお伺いします。
 また,これに関連して,来年岡山県で開催される予定の第16回リハ工学カンファレンスについて要望させていただきます。先日,徳島市において日本リハビリテーション工学協会主催による第15回リハ工学カンファレンスが開催されました。学会関係者を初め,医療福祉関係者や機器メーカーの社員,障害者など,全国からおよそ800人の方が参加され,研究成果の発表や機器の展示,商談会などが繰り広げられ,大盛況でした。実は,このカンファレンスが,来年岡山県で開催されることが決まりました。この会は,福祉機器に関する貴重な研究交流の場であるとともに,ビジネスチャンスを広げる絶好の機会です。本県の福祉機器産業の振興にも大いに役立つものと期待は高まりますが,関係企業や関係者への呼びかけなど,会の成功に向けて御支援いただくようお願い申し上げます。

(商工労働部長)  次に,福祉機器関連産業の振興についてでありますが,工業技術センターにおきましては,歩行障害者用リハビリ機器等の試作開発とかあるいは実用化を促進する観点から,地域企業と共同で介護用ベッドなどの開発を行っているとこであります。また,岡山県新技術振興財団におきましても,産・学・官連携によります岡山県福祉機器研究会を設置いたしまして,県内の福祉機器関連企業や大学の研究者との交流あるいは情報交換,そういったものの支援を行ってるとこであります。
 今後とも,国の補助事業等を活用しながら,大学等の研究機関や多様な企業の集積など,本県の持ちますすぐれた産業資源を生かしまして,福祉機器関連産業の振興を図ってまいりたいと考えております。



<平成12年2月定例会>(2000年3月8日)

(佐藤)  岡山情報ハイウェイにも絡んで,それを発展的に使いこなしていく人づくりのための教育の側面から質問させていただきます。
 まず,教育長にお伺いいたします。平成10年12月に告示された小中学校の新学習指導要領並びに平成11年3月に告示された高等学校と盲学校,聾学校及び養護学校の新学習指導要領は,平成14年度から実施される完全学校週5日制を念頭に置き,ゆとりの中で生きる力をはぐくむことを基本としていますが,授業時間の縮減,教育内容の厳選が図られている中,情報教育については例外的にその充実が図られています。この中で,情報教育及び情報化の推進は,21世紀に向けて生きる力を育成する重要な柱となっています。そこで,順次お尋ねします。
 まず県立学校では,平成10年度岡山情報ハイウェイに接続され,既に授業や特別活動等での活用が始まっているようですが,特に,小学校につきましては,コンピューターの設置,またインターネットへの接続がややおくれているように伺っています。昨年,文部省は,郵政省や通産省などと連携して,情報化による教育立国を目指し,公立の小中高校に校内情報通信網(LAN)の整備をするとともに,公立学校教員90万人全員がコンピューターを操作できるようにする計画をまとめましたが,県内の小中高校でのコンピューターの設置状況,インターネットへの接続状況,また,コンピューターを操作指導できる教員の割合の現状と対策についてお知らせください。
 また,小中学校では,各教科や総合的な学習の時間などの中で,コンピューター等の活用を図ることなど情報教育を推進していくとのことでありますが,いわゆる教科書のない総合的な学習の時間の中で,どのように児童生徒に情報教育を進めていくのでしょうか。加えて,総合的な学習の時間について,各学校の裁量にゆだねられたり,地域社会との交流が進んだりと,学校のあり方が変わってくると思われますが,今後の取り組みについてお伺いいたします。
 また特に高校においては,平成15年度から実施される高校の新学習指導要領で,新たにコンピューターなどを学ぶ教科「情報」が必修となり,さらに専門教科「福祉」が新設されます。文部省の計画は,向こう3年間で全国に情報の先生を9,000人,福祉の先生を1,200人を養成するという大計画であり,高校にほぼ2人の割合で,コンピューターを専門で教える情報の先生が必要になりますが,本県ではどのように養成していくのでしょうか,お教えください。
 加えて,文部省の方針は,電子メールによるカウンセリングなど,コンピューターを生徒指導に活用する考えのようですが,これが,不登校や校内暴力,いじめ,学級崩壊の解決策足り得るのか,また,学校における情報化の推進は,家庭,地域との連携や学校運営のあり方に変化をもたらすものなのか,教育長の見解をお教えください。
 次に,職業教育としての情報教育について,いわゆる専修学校,各種学校についてお伺いいたします。
 専修学校,各種学校は,職業や実際生活に必要な能力の育成,教養の向上を図るための教育機関として,工業,医療看護,衛生,商業実務,家政芸術,文化教養,教育,社会福祉等,多様な分野にわたる組織的な教育が行われており,教育内容が多様かつ実際的であり,また,実践的な専門技術,技能の習得を重視した指導方法がとられており,社会・経済情勢の急激な変化に伴い多様化複雑化する教育上の要請に即応できる教育を行っています。昨春からは,大学への編入学が認められる等,社会的な評価が高まってきており,生涯学習の推進の担い手にもなっています。就職難,戦後最悪の失業率の中で,まさに社会人としての即戦力を養成する教育機関であると思います。伝統的な雇用形態,終身雇用制度が崩れつつある中,新卒者を企業が何年もかけて育成する余裕もなく,スペシャリストを即採用したい,そういうニーズに最もこたえているのが専修学校,各種学校と言えると思います。在校生の中には,大学を卒業後,また,一度社会人を経験して技能・資格習得のため入学されている方も非常に多く,企業が社員教育の一環として提携しているようなケースもあるようです。また,特筆すべきは,県下79校の専修学校,各種学校の学生約1万人の多くが県内在住者で,岡山県内に就職する人が多いということであり,こういった専修学校,各種学校の力が岡山県の底力にもなるということです。特に岡山情報ハイウェイを有効に利用するような情報教育は,一歩も二歩も先に進んでいます。そこでまず,知事に,こういった専修学校,各種学校への認識,評価をお伺いいたします。
 次に,情報産業の市場は,慢性的に人手不足であり,その要請にこたえるべく,商業実務関係の専修学校が頑張っても,日進月歩でコンピューターは進歩しており,パソコンは設備投資というよりも消耗品という様相を呈している中,情報の最先端を行こうとすればするほどみずからの首を絞めてしまうという状況があります。また,介護保険の導入とも相まって,ますます多くの学生が医療看護関係の専修学校に進んでいきますが,こういった学校のパソコンを含めた設備投資もしかり,また,今は理美容もCGを使う時代です。その社会的な要請に比べて,中国5県の中でもまだまだ岡山県の専修学校,各種学校への助成は少なく,パソコンに関してはもちろん,一般的にもさらなる支援が必要だと考えます。特に,一般運営費については,国からの直接の助成制度がないため,県の支援が殊さら重要であると考えますがいかがでしょうか,総務部長にお尋ねいたします。
 さらに,平成10年から,雇用保険の教育訓練給付制度がスタートしています。働く人の主体的な取り組みを支援し,雇用の安定と再就職の促進を図るというこの制度は,条件を満たせば労働大臣指定の教育訓練に対して上限20万円,受講料の80%が給付されるわけですが,まだ県民の皆さんに十分に認識されていないように思います。特に,情報技術革命による起業に際して,技術者や専門家を中途採用するケースもふえており,情報教育としても極めて有用な制度であると考えます。そこで,岡山県下の実績,今後の取り組みについて,商工労働部長にお尋ねいたします。
 加えて,いわゆる人材派遣を含めて,特に女性の就職,再就職のためには,最低限パソコンの操作はできるというのが常識になりつつあります。特に,女性に対して,情報教育を初めどのような教育支援がなされているのでしょうか,生活環境部長にお伺いいたします。
 次に,知事は,本年4月から施行の福祉のまちづくり条例に絡んで,「心」「物」に加えて「情報」のバリアフリーを言われておりますが,岡山情報ハイウェイとどう連関していくのでしょうか。就労という意味でも,障害を持たれている方が情報教育を受けられることは極めて重要だと考えますが,障害をお持ちの方に,どういった形でパソコンを普及し,またどんな情報を供給できるのでしょうか。具体的に保健福祉部長にお伺いいたします。
 最後に,だれでも自由にネットに参加できる岡山情報ハイウェイはすばらしいと思いますが,むしろそのメリットが最大限に生かせるのは,都市部というよりもいわゆる過疎地域であると思います。また,在宅という面では,高齢者の方にも有用です。ところで,幾らパソコンが各戸に普及しつつあるといっても,あんなものはきょうあしたに使えるようになるものではありません。だからこそ教育が必要なわけですが,過疎地の方,高齢者の方に,一体どうやって利用していただくのでしょうか。つないだのはよいけれど,しょっちゅうフリーズして,そうでなくてもわけのわからない代物に慌ててしまう事態が容易に想像できますが,情報ハイウェイのネットを広げれば広げるだけ,地域のコンピューターのトラブルのお助け人が必要であると思います。少なくとも,各市町村あるいは各地方振興局ごとに対応が必要であると考えますが,そういった対策は今後講じられていくのでしょうか,知事にお伺いいたします。

(知事)  情報教育についての種々のお尋ねがございましたが,まず私に対しましては,専修学校,各種学校についてのお尋ねをいただいたわけでございます。本県におきましても,職業教育とかあるいは専門技術教育,こういった分野におきまして大変重要な役割を果たしていただいているわけでございまして,商工業とか,医療とか,あるいは衛生など,幅広い分野において卒業生を送り出して,本県の経済あるいは社会の発展に大きく貢献をしてきていただいたと認識をいたしております。特に,今日では,社会あるいは経済の急激な変化というものがございまして,これに機敏にかつ弾力的に対応する,そういう教育が必要であります。いわゆる実際的な教育というものが必要でございまして,こういった点から考えますと,今後さらにその重要性というものが高まっていくのではないかと,このように期待をしているところでございます。
 次に,高齢者等への情報教育についてのお尋ねでございましたが,パソコンについて,最近における動きを見ておりますと,メーカーとかあるいは販売店が,接続サービスとかパソコンの教室などを行うようになってきていると,このように承知をいたしております。また,各地におきましても,生涯教育の施設であるとかあるいは高等学校の開放講座で実施しておりますけれども,こういった分野に多くの高齢者の方々が参加をされているわけでございまして,NPOとまではいかないですけれども,町内会活動の中にありまして,パソコン教室あるいはインターネット塾などを開催している地域も見受けられるようになってきております。地域コミュニティーの中にありまして,そういった高齢者の情報教育に対しますその支援の輪というものが徐々に広がってきているものと思っております。御提案の趣旨も踏まえまして,地域においてこれからどのような対応が可能なのか,御存じのとおり振興局単位に地域情報化推進委員会というものを設けておりますので,その中にありまして検討をしてまいりたいと存じます。

(総務部長)  専修学校,各種学校に対する県の支援についてでございますが,設備整備等に対する助成を実施しているところでございまして,平成12年度予算におきましては,情報教育などを一層推進するため,前年度に比べて増額することとしているところでございます。
 専修学校,各種学校の運営費に対する助成でございますけれども,その規模や教育内容が多様でございまして,一律の助成になじみにくい事情があることでございますとか,現下の大変厳しい財政状況から行っていないところでございまして,今後の研究課題とさせていただきたいと存じます。

(生活環境部長)  情報教育についてのお尋ねの中の,女性に対する教育支援についてでありますが,県では,主に再就職を希望する女性を対象に,技術講習会や女性就職準備講座などを開催いたしておりまして,特に,お尋ねの情報教育につきましては,ウィズセンターを中心に,パソコン,ワープロの技術講習を,平成11年度においては14講座開催いたしまして,358人の参加を得たところでございます。

(保健福祉部長)  情報のバリアフリーについてでございますが,県内どこからでも,低料金でインターネットの利用ができます岡山情報ハイウェイは,情報のバリアフリーを推進する上での一つの重要な基盤になるものと考えてございます。
 次に,障害者のパソコン利用についてでございますが,岡山障害者職業センターでのOA講習あるいは市町村障害者社会参加促進事業などでのパソコン訓練が実施されているところでございまして,こうした活動が各種の機関であるとかあるいは市町村におきまして積極的に取り組まれるよう努めてまいりたいと存じます。
 また,供給する情報についてでございますが,県におきましては,ホームページでの福祉サービスに関する情報提供に加えまして,今後,バリアフリーガイドの掲載を行うなど,障害者の方に向けての情報の充実に努めてまいりたいと存じます。

(商工労働部長)  情報教育についての中の教育訓練制度についてでございますけれども,平成10年12月制度創設以来の本県におきます受講修了者は,1月末現在で,男性941人,女性615人の1,556人でありまして,男性では技術系,女性では事務処理系が多くなっております。この制度は,働く人が自主的に多様な能力開発に取り組むことに対しまして支援しようとする雇用保険の給付制度でございまして,これまで,国が作成をいたしました広報資料に加えまして県独自のパンフレットを作成いたしまして,雇用保険の適用事業所とか離職者に配布するほか,関係団体の機関誌への掲載など,きめ細やかな制度の周知に努めてきたところでございます。
 本制度は,新年度からは国の直接事務として新たに設置されます労働局で取り扱うことになりますが,県といたしましても,労働局との緊密な連携のもと,今後とも,制度の積極的な周知に努めてまいりたく存じます。

(教育長)  まず,コンピューターの設置状況等についてでございますが,平成11年3月末現在,小中高等学校1校当たりのコンピューターの平均設置台数は,それぞれ,約12台,31台,79台でございます。インターネットへの接続状況は,それぞれ,約19%,52%,95%でございます。また,小中高等学校で,コンピューターを操作できる教員は,それぞれ,約57%,61%,76%でありました。指導できる教員は,それぞれ,約30%,23%,30%でございます。今後,来年度改編いたします県の情報教育センターや,市町村教育委員会が実施いたします研修におきまして,平成13年度末までにすべての教員が操作できて,半数の教員が指導できるようになるよう,計画的に教員研修を行うことにしております。
 次に,総合的な学習の時間における情報教育についてでございますが,今後ますます高度情報通信社会が進展していく中で,児童生徒がコンピューターを活用して,必要な情報を主体的に収集,選択,活用する能力を育成することが重要になってきております。来年度から実施することができる総合的な学習の時間では,例えば,環境をテーマとした学習の中で,インターネットを活用して各地の川や湖の汚れなどを調べてホームページで発表したり,国際理解をテーマとして外国の学校と電子メールの交換をするなど,コンピューターを活用したさまざまな取り組みが推進できると考えております。総合的な学習の時間の取り組みを通して,児童生徒の主体的体験的な学習活動や,地域の人材や施設を活用した特色ある学校づくりなどを一層促進することが大切でありまして,今後とも,総合的な学習の時間の趣旨の徹底に努めますとともに,積極的に取り組むよう指導してまいりたいと存じます。
 次に,先生の養成についてでございますが,本県では,平成15年度から高等学校において教科「情報」の免許状を所有する教員が約190名必要であると見込んでおります。このため,県教育委員会では,平成12年度から3年間で,情報教育センターにおいて,現職教員を対象に講習会を実施いたしまして,「情報」の免許を計画的に取得させることにしております。
 最後に,学校における情報化の推進についてでございますが,いじめや不登校等の問題に関しましては,これまでスクールカウンセラーの配置など教育相談体制の充実に取り組んできているところでございますが,こうした取り組みに加えまして,電子メールを活用した相談は時間や場所の制約を受けずに気軽に相談できるなど有効な方法の一つであると考えております。また,学校におけるホームページや電子メールの活用などの情報化の推進は,学校の情報を積極的に家庭や地域に発信いたしますとともに,いつでも地域の方々から意見がいただけるなど,家庭,地域社会との連携やこれからの学校運営に有効な手段であると考えております。

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