2002年6月1日(土) 【産学官の阻害要因はなにか】

 痩せるほど暑いです。しかし、アイスを食べて痩せません。

 今日・明日と岡山大学で、中国地域産学官連携サミット事務局主催による「産学官コラボレーションシンポジウム」が、開催されています。

 2月議会で、質問当日に、項目から外した「産学官の連携」は、6月定例会一般質問のメインテーマのひとつです。本項は、草稿の草稿になると思いますので、非常に長く、また、専門的になることをお許し下さい。
 「落書き調査隊」のように、身近な話ではないかもしれません。


 中国経済産業局の音頭取りで、本年2月2日に行われた「中国地域産学官連携サミット」では、「中国地域発展のための産学官連携マスタープラン」が、採択されています。今回のシンポジウムは、そのマスタープランの協働事業の第一歩として開催されています。

 ちなみに、マスタープランでは、中国地域が、「世界有数のイノベーション型産業基地」と「世界のモデルとなる循環型社会の形成」を実現するため、5つの方針と3つの目標が掲げられ、地域全体で協働して、産学官の連携を実行していくことが、確認されました。

 特に方針の中では、「社会・組織におけるチャレンジ文化の形成」、「イノベーションを担う人づくり」が掲げられ、「意識改革」と「人づくり」という観点から、産学官の連携を捉えたのが、特長的です。


 本日は、かなり専門技術的な話も多く、私は、職業柄、大枠の理解と制度の構築が、任務と考えているため、途中で失礼致しましたが、連携のためには、産・学・官それぞれに課題があることを感じました。

 そして、その大前提として、マスタープランのいう意識改革が、極めて重要ですが、あるいは、「ベンチャー精神」と「連携(ネットワーク)意識」は、岡山県人が、もっとも不得意、あるいは欠如しているところではないか、という気がしました。これが、産官学連携の一番の阻害要因になります。


 まず、ベンチャー精神・チャレンジ精神を背景にした挑戦型社会経済システム構築のためには、税制面の優遇等のバックアップは、当然に必要です。

 とりわけ、創造性や独創性に富む異能異才の人材を育てるためには、小中高等学校時代からの教育、教師の資質向上が、必要です。

 また、ベンチャーキャピタルと結ぶためには、アイデアコンテストのような仕掛けも要るかもしれません。特に、児島湖の浄化など、環境問題を通しての産業育成など、ある種、行政が誘導すべきではないか、と私は思います。
 例えば、福祉用具立県という誘導もあると思います。いずれにせよ、繊維や重工業の後の時代のエースを養成しなくてはいけません。


 こういったベンチャー精神のもとに、産・学・官の連携のためには、産学官それぞれに役割があります。


 「官」(山口のTLOではNPO、一般市民を含み、「公」と言うそうです。)は、技術開発の方向づけ、すなわち、重点分野の設定、基本的な仕組みづくり、研究開発の支援の実行が望まれます。

 この場合の官は、研究開発施設や工業技術センターだけを意味せず、行政そのものでもあります。税金からなる予算を使うことだけではく、チャレンジ精神で、自らが新ビジネスを創っていくという、意識改革が望まれます。

 また、官官連携も重要になります。県と市町村間はもちろん、学会等で連携する学に対して、県境を越えた官、すなわち地方自治体同士の連携システムも、重要になります。


 「学」には、優れた技術シーズの創出と公開が望まれます。知を伝える学にとって、産との連携は、本来的な活動ではないという意識の改革がまず必要です。

 一方、制度として、学に対して、産の側から、ニーズを伝えていく仕組みも必要ですし、例えば、学の持つパテントを事業化するための制度的な人的、情報的、金銭的支援体制が必要です。
 特に、2年後の独立法人化を控え、財政的にも、大学発のベンチャー・新規事業の創出が、望まれていますが、その環境整備は、学だけではできません。

 そして、学にもまた、学科内の研究室の連携はもちろん、地域内の学学連携が重要です。


 「産」の使命は、優れたシーズをものづくりの力を生かして、経済性に優れた商品化まで仕上げることが望まれます。


 そして、こうした産学官の連携のために、情報を共有するワンストップサポート体制が必要です。具体的には、TLOの設立やインキュベーションセンターの設置がこれにあたると思います。



 ところで、問題のインキュベーションセンターです。

 昨日、テクノサポートの貸し研究室に実際に入居されている方からお話を伺う「第4回マスカットバレーを考える会」を開催したわけですが、正直に書いて、既存のテクノサポート岡山の貸し研究室に比して、ITインキュベーションセンターの方が、どうも施設的に劣るようです。

 とりわけ、同建物内にある工業技術センターの設備利用の利便性が悪くなるというのは、問題のようです。

 わざわざ、設備の劣る新施設に移転する理由が、入居事業者にはなく、逆に、新入居者にとっては、魅力半減ということですが、化学的インフラも十分整備されたテクノサポートに、事業者を新施設に押しのけてまで、ただの事務所が入る理由がどこにあるのかは、疑問です。

 さらには、やはりインキュベーションマネージャーが問題です。企業の論理を知り尽くした方が来ないと、埋まったら50以上にもなる研究室の動きは仕切られないかもしれません。

 それにしても、こうなると、ITインキュベーションセンターのITの意味がなんなのか、産学官の連携に、どう役割を果たすのか、ちょっと疑問も出てくるところです。

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