2001年8月9日(木)
【大阪・商業労働警察委員会調査より】

 【ATC(アジア太平洋トレードセンター)】

 平成6年4月にオープンした大阪のATC(アジア太平洋トレードセンター)には、あるいは多くの方が、既に行かれたことがあるかもしれません。
 この施設などの基本計画は、昭和58年8月、大阪市制100周年記念事業のひとつとして発表された「テクノポート大阪」計画です。

 陸・海・空の最良のアクセスで、世界と直結する大阪新都心を造ろうというわけですが、ご案内の通り、我が国初の本格的24時間空港の関西国際空港。外貿コンテナ埠頭12バース、外貿埠頭55バース、内貿埠頭115バースをはじめ、関空に対応した航空貨物ターミナルなどが整備された大阪港。さらに、阪神高速大阪湾岸線をはじめとする高速道路・幹線道路網。が、あります。
 テクノポート大阪計画は、関西国際空港をはじめとした各種プロジェクトが展開している大阪湾ベイエリアにあって、その中心に位置する埋立地、咲洲・舞洲・夢洲に、高次の都市機能を計画的に集積し、圏域の発展をリードする拠点として、大阪の新しい都心を形成するものです。


 大阪市の人口は、約260万人。大阪市を中核とする大阪都市圏は、人口約1700万人。ちなみに、大阪港の姉妹校・友好港は、ル・アーブル(仏)、上海(中国)、サイゴン(ベトナム)、メルボルン(オーストラリア)、釜山(韓国)、バルパライソ(チリ)、サンフランシスコ(米国)で、年間約7000隻の外国船が入港、特にコンテナ輸送については年間約4100隻、約2200万t。

 今回は、大阪湾沿いに、神戸から関西国際空港まで、阪神高速大阪湾岸線を走りましたが、岡山となにをどう比較しようもない、スケールに圧倒され、これが、まともに、明石鳴門ルートに繋がるわけですから、神戸新空港を待つまでもなく、岡山県は、厳しいなと痛感しました。

 ポートアイランド、六甲アイランドと来て、舞洲(まいしま)は、2008年オリンピックの主会場にしようとしたスポーツアイランド、その先には夢洲(ゆめしま)が工事中。さらに、その先に新島地区。舞洲から陸側に戻れば、お馴染みユニバーサル・スタジオ・ジャパン、そこから下って、天保山ハーバービレッジには、海遊館、そこからOTSテクノポート線で、咲洲(さきしま)、その一部をコスモススクエアと呼び、ATCは、その中核施設です。
 まるで、お台場とディズニーランドと幕張が、一緒になったようなイメージです。

 もっとも、感心はするのですが、岡山県とは、東京と静岡ぐらい離れた気分です。多分、首都圏に近い静岡県の生き残り策を見る方が、現実的だと思いますが、ともあれ、玉島ハーバーアイランドがどうとか、空港3000m化がどうとか、岡山県内で語ることが、外から見るとなんなのか、ということは、知っておく必要があると思います。


 そうは言っても、1995年4月オープンの咲洲のコスモススクエアのシンボルである西日本一高いインテリジェントビル「WTCコスモタワー(大阪ワールドトレードセンタービルディング」も、ATCも、30億円の負債を抱えていると言います。オリンピック誘致失敗を含めて、前途洋々とは言えないと思います。

 しかし、大阪の恐ろしいところは、FAZ(輸入促進地域)で、アジア太平洋地域を中心とする世界各国からの製品の輸入促進を目的とするATCが、年間900万人の来館者を狙って、別の戦略を立てていることです。

 0’sなど、レストランアミューズメントは、幾らでもお客が来るのですが、肝心なのは、ITM(インタ−ナショナルトレードマート)棟。
 すなわち、埋まらないテナントを情報、環境、福祉ビジネス支援施設で埋めてしまったのです。
 「ソフト産業プラザIMedio」ttp://www.imedio.or.jp
 大阪環境産業振興センター「ATCグリーンエコプラザ」ttp://ecoplaza.gr.jp
 「ATCエイジレスセンター」
 とりわけ、後2者は、新聞社と提携して、毎日が、コンベックス岡山の見本市状態です。
 さらに、大阪デザイン振興プラザ、店づくり振興スクエア、などのインキュベーター施設が入っています。

 こういう逞しさは、見習わないといけません。
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【大阪産業再生プログラム】

 実は、特に強烈に感じたのは、大阪府と政令指定都市・大阪市の関係です。日本全国どこでも、こういった都道府県と都道府県庁所在地の政令指定都市の関係は悪いのではないでしょうか。とりわけ、県議会議員と政令指定都市の市議会議員との関係は微妙です。
 国に対しては、基本的には、同格の筈ですが、行政同士の意地の張り合いというのは、相手が中核市でもあるのですから、市民にとっては、いい迷惑かもしれません。


 さて、大阪府の人口は、約880万4800人、この大阪経済の特徴ですが、総生産約40兆円は、オランダ一国分に、相当します。
 以前は、大阪経済が日本経済に占める割合は、「1割経済」ということでしたが、今では、約8%程度のようです。

 商都大阪の名の通り、第三次産業、中でもサービス業の割合が高いわけですが、やはり、製造業、特に、家電、機械部品、金属加工、プラスチック製品をはじめ、高度な技術を有する中小製造業も、非常に多いのです。

 特に、様々な製造業が、バランス良く集積していますが、重厚長大産業、基礎素材型産業から、ITなどの高付加価値型産業、加工組立型産業への転換の遅れ、国内外への企業移転による空洞化が、顕著で、このことが大阪経済活力の低下を招いています。

 なにより、廃業率が、開業率を上回り、失業率も、4〜6月期は、6.4%で、全国平均5.1%を大きく上回ります。
 中小企業の活性化は、商都大阪の生命線です。

 こういった状況で、「創都・大阪の再生」を目標に、大阪産業再生プログラム案が、2000年9月に、策定されています。
 ttp://www.pref.osaka.jp/shokosomu
 中小企業の活力再生・新たな産業分野の創出・魅力ある都市の創造の3つを柱に、創業特区構想・大阪IT宣言・情報通信、バイオ、環境、健康福祉分野の産業育成・府市協調、適切な目標管理のもとでの事業実施と評価の5つを重点課題としています。


 もっとも、前岡山県副知事である太田房江大阪府知事の任期一杯の施策ですが、かえって岡山的には、目新しい印象は受けません。


 ただ、特筆すべきは、「創業促進税制」で、1000万円以下で、創業したIT、ものづくり関係の企業は、5年間、法人事業税が、10分の1に、軽減されます。それ以外の企業でも、半分に軽減されます。こういった事業の場合、普通は交付税措置があるのですが、全く府独自のもので、したがって、将来事業税を大きく返してもらう必要があります。

 同様に、「エンゼルファンド」という、ITやバイオのベンチャー企業に府が自ら「投資」する支援事業があります。また、社債発行につき、府独自で保証する「小額私募債保証制度」という、行政がキャピタリストと化す、思い切った制度もあります。

 また、この4月より、「産業集積促進税制」ということで、企業誘致のために、不動産取得税を半額に軽減する仕組みをつくりましたが、これもまた、交付税措置はありません。市によっては、固定資産税軽減という措置も取っているようです。


 加えて、大きく遅れているITについても、この7月に、特にASPを活用して中小企業のIT化を進める動きを立ちあげています。
 また、大阪ロケーション・サービス協議会が、映画ロケの誘致を活発に行っているというのも、大阪らしいでしょう。
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【大阪産業創造館】

 今回行った中で、一番どうかな、と思うのが、この大阪産業創造館でした。
ttp://www.b-platz.ne.jp
 大阪商工会議所や、大阪府のマイドーム大阪のごく近所に、本年1月29日に、オープンしました。これは、大阪市の施設です。

 具体的には、中小企業・創業者の経営課題解決のために、ワンストップで支援する施設で、大阪市信用保証協会の相談窓口では、金融・融資相談。大阪市中小企業支援センター「あきない・えーど」では、オンライン相談や 面談、専門家派遣(コンサル出前一丁)など、様々なコンサルティングサービスで、創業、経営革新を支援します。ttp://www.akinai-aid.ne.jp

 そのために、人材育成センターや、創業準備オフィス、マーケットプラザが設置されていましたが、ちょっと利用が芳しくないという印象を受けました。


 実は、中小企業に対する資金貸付けや、経営判断、支援を行う団体のワンストップ化という動きは、全国であります。
 札幌でも、(財)北海道中小企業支援センターを訪ねましたが、これは、3団体を統合したもので、こういう動きは、岡山県にも既にあります。

 「その464」で、この4月1日より、『(財)岡山県中小企業振興会(岡山市弓之町)』と『(財)岡山県中小企業研修情報センター(OPTIC・岡山市大内田テレポート岡山3階)』と『岡山県新技術振興財団(岡山市芳賀)』の3つが統合し、『岡山県産業振興財団』が、誕生したことをお伝え致しました。

 実際は、後2団体が、3月31日で、残余財産と業務を岡山県中小企業振興会に引き継ぎ解散、残った団体が名称変更という形をとったわけですが、いまだに専務理事が3人にて、さらに、給与格差など問題も出ているようです。
 8月20日は、今度は、商工労働警察委員会県内調査で、同財団を訪ねますので、改めてお伝えさせて頂きます。
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【大阪府立産業技術総合研究所】

 実は、前述の岡山県産業振興財団は、リサーチパーク内にあるのですが、ここには、工業技術センターもあります。大阪府でこの施設に当たるのが、大阪府立産業技術総合研究所です。
 ttp://www.tri.pref.osaka.jp

 同施設は、「開放と交流」を基本理念とし、最新の施設と新鋭設備を幅広く企業や大学の技術者、研究者に開放するとともに、インキュベーションによる起業家育成や既存企業の新分野進出支援、さらに先導的研究、中核的研究など産学官のプロジェクト研究の推進など多彩な業務を通じて、産学の技術者、研究者との交流を積極的に展開しています。
 基盤技術の高度化と先端技術の応用や実用化を積極的に進め、大阪府の新たな技術振興拠点と位置付けられています。


 その施設自体には、さして驚かなかったのですが、驚くのは、むしろその施設の立地です。都市基盤整備公団が平成4年に開いた「トリヴェール和泉」は、計画人口27000人の複合機能都市。「住む・働く・学ぶ・憩う」を基本コンセプトに造られたこの人口都市は、泉北高速鉄道で、都心部に直結。
 真横を阪和自動車道、大阪外環状道路が走り、関西国際空港にも近く、既に平成7年には、桃山学院大学が移転してきています。
 もっとも、テクノステージ和泉という、工業用地、物流施設用地が、埋まっているようにはとても見えませんでしたが。


 郊外の計画都市にありがちな、妙に整然とした街並みには、私は違和感は覚えますが、吉備高原都市のイメージは、こうだったのではないか、という気すらしてきます。

 決定的な違いは、やはり、ここは、ベットタウン。自己完結は決してしない街です。吉備高原都市には、まず、公共交通機関が必要だったのではないか、それが悔やまれます。

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