2001年7月18日(水)
【セイフティーネット 職業能力開発】

 失業者は約360万人。失業率は、実質4・9%とも、5%を越えているとも言われる状況の中で、「痛み」に対して、十分なセーフティーネットが必要です。
 万が一、皆さんが離退職された場合に、転就職するのに、雇用主、事業主が求める人材に必要な技能を持っていなかったとしたら、最就職は、ままならないかもしれません。

 産業・職業、地域、年齢間における労働力供給の需要との「ミスマッチ」、中高年齢者の雇用機会の不足に対応し、機動的な職業訓練を実施する、職業能力開発は、極めて重要です。
 いわば、「痛み」のセーフティーネットのひとつに、この職業能力開発は、挙げられています。


 個人的には、2年後に失職している場合も想定して、身につまされるような思いで、本日は、国の職業能力開発施設の調査に参りました。
 商工労働警察委員会委員というより、この春より、任命された「岡山県職業能力開発審議会」の委員としての動きと言えるかもしれません。


 具体的には、岡山県商工労働部雇用対策課の御世話を頂き、「雇用能力開発機構岡山センター」「岡山職業能力開発促進センター」「中国職業能力開発大学校」「国立吉備高原障害者職業能力開発校」の4施設を見て回りました。
 午前9時前にスタートしましたが、なにしろ途中、舛添候補の応援もあり、夕方まで、非常にきつい日程になりました。


 とりわけ、こういった国の施設は、県議会議員の県内調査で絶対に行かないこともあり、県の職員の方も勉強を兼ねて帯同して下さいました。

 近々に井笠地区のオンリーワン企業の視察に行く計画を立てていますが、職員帯同というのは、ひとつの評価だと思います。職員の方にとっても、良い機会になるのですから。


 その517で、感じた疑問の幾つかは、解決しましたが、更に大きな疑問も持ちました。



【雇用・能力開発機構】

 労働省の外郭団体で、「雇用促進事業団」は、「雇用・能力開発機構」と名を変えましたが、実は、見直しの対象になっている特殊法人のひとつです。
ttp://www.ehdo.go.jp/
 各都道府県に雇用能力開発センターを設置して、中小企業の人材確保に関する事業主支援業務、職業能力開発関連業務、勤労者財産形成促進業務等を実施して、雇用の安定に向けた様々なサービスを展開しているとのことです。

 ちなみに、雇用失業情勢の変化に対応した離転職者に対する職業訓練の実施、「ものづくり」などの分野における高度な職業訓練の実施等については、ポリテクセンターやポリテクカレッジ(別項後述)で実施しています。

 岡山県で言えば、前述の各施設に加えて、雇用促進住宅、岡山テルサ、山陽ハイツ、いこいの村、勤労者福祉センターなど、岡山県、市、あるいは、その外郭団体が大きく絡んでいる施設が、雇用・能力開発機構がかかわっています。
 さらには、中野サンプラザなど、サンプラザと言えば、この機構が絡んでいます。
 ご多分に漏れず、本旨から離れた宿泊施設、保養施設にまで、事業が拡大しています。
 見直しも、むべなるかな、という側面はあります。

 ともかく資金は潤沢。一応、雇用保険を財源にしているようですが、旧労働省の一般財源も突っ込まれています。


 この団体の行う産業・業種別職業能力開発体系、各訓練コース等の情報提供及び職業訓練に関する各種相談援助は、NTTクレド岡山ビル18F「岡山センター」にあります。

 おそらく、この施設をお知りになるのは、県下に、15個所ある厚生労働省の出先機関である公共職業安定所、いわゆるハローワークから紹介されて体と思います。


 ちなみに、この機構が行う職業訓練については、原則として、対象は、雇用保険の需給資格者です。
 受講料は無料で、入校時には、教科書代等が必要です。また、公共職業安定所長の指示により、入校されると訓練終了まで雇用保険基本基金手当が支給されるほか、条件によっては、受講手当て、通所手当が支給される等、特典があります。

 非常に厳しい表現として、生活保護よりも、職業訓練で再雇用、とも言われるようです。

 個人的には、例えば個人商店の方(雇用保険未加入者)には、こういった保護が及ばず、法施策の不備ではないかと思います。
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【中国職業能力大学校 ポリテクカレッジ】

 大学でなく大学校です。要するに、文部科学省の所管でないものをそう呼ぶようです。例えば、防衛大学校、航空大学校、県によるものですが農業大学校など、結構あります。
 雇用・能力開発機構管理のこの大学校は、当然厚生労働省の所管です。

 玉島インターチェンジを降りてすぐ、作陽大学のすぐそばにありますが、これまた、あまりご存知ない施設だと思います。

 中国ポリテクカレッジは、この4月から、岡山職業能力開発短期大学校の施設を継承し、中国職業能力開発大学校として開講したものです。
 福山職業能力開発大学校と島根職業能力開発大学校が、附属になりますが、端的には誘致合戦に勝ったと言えるでしょう。

 ともかく、文部科学省に対抗するかのように、あくまで、実学に徹します。専門過程2年に、応用過程2年を加えて、専門知識・技能を融合して、生産に結び付ける教育訓練を行うということで、むしろ、特定分野を追究し、視野狭窄に落ち込みがちな大学の工学部よりも、卒業後、たちまち、即戦力になれるとのことです。

 あくまで、産業界のニーズにタイムリーに応える(実学融合)ということが、厚生労働省所管の醍醐味のようです。課目の半分が、実技。
 新卒者を研修機関として、育てる余裕は、中小企業にはなく、採用即戦力という時代になっていくのでしょう。

 逆に言うと、大学は、何をやっているのか、学問は趣味か、という疑問も出てきます。特に、文科系で、4年間、学問する、教授の趣味に付き合う、余裕は、誰も無くなることでしょう。
 ともかく、卒業するまでに資格が取れて、就職に直結するような大学でないと、少子化の時代に、大学も生き残れない方向になると思います。

 ちなみに、大学校のねらいとしては、在職者のスキルアップということも、イメージとしてあるようですが、それだけ余裕があれば、新卒の即戦力を選ぶ、という厳しいことになると思います。


 ところで、全校300人しかいない学校なのに、尋常でないような広さ。この7月には、建設費20億円の応用棟が完成。
 設備の充実度は、普通の大学の比ではないと思います。
 厚生労働省も、ずいぶん金があるんだなぁ、という気がします。

 例えば、公立中学校が絶対潰れないのにも似たような学校経営。
 それなら、私もしてみたいものです。
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【国立吉備高原職業リハビリテーションセンター】

 おそらく、本年度中には、非常に厳しい方向性が打ち出されると予測される吉備高原都市ですが、中核施設として「吉備高原医療リハビリテーションセンター」があるのは、ご存知のことと思います。
 ただ、これが、いわゆる労災病院、いわば、旧労働省系(労働福祉事業団所管)の病院であるというのは、私も初めて知りました。

 「国立吉備高原職業リハビリテーションセンター」は、この医療センターに隣接しています。(医療リハと職業リハを合わせて、総合リハ。)
 そして、その管理は、「雇用・能力開発機構」の前進である「雇用促進事業団」から分かれた「日本障害者雇用促進協会」(雇用・能力開発機構との人事交流あり)によるものです。

 当初は、医療リハと有機的連係のもと、中途障害の方の医療リハと職業リハというイメージがあったようですが、80人定員の高卒新卒の方を基本に、1年間の職業能力開発に重点が置かれるようになったようです。

 ただ、ひとつの傾向として、いわゆる学校施設などでノーマライゼイション、バリアフリー化が進み、以前よりは、比較的普通校に通学できるようになり、勢い重度の障害のある方が、来られるようになるということがひとつ。
 また、従来は、身体障害の方を対象にしていましたが、今後は、精神障害、知的障害のある方の職業能力開発を検討していくようです。
 この点、県の専門校は、知的障害の方も対象としています。

 パソコンは、障害のある方に、新しい可能性を産み出したのは、事実だと思います。多くのパソコンが並べられていました。

 もとより、障害者の方の雇用促進は、どんどん推し進めないといけません。ただ、この施設の充実度に対しては、多少なりとも疑問は覚えました。
 もちろん、県や市町村では、あれだけのことは、やろうにもやれないので、国の施策は、重要だとは思いますが。
 ただただ、すごいなぁ、とため息でした。

 個人的には、病院と連携した職業能力開発は、極めて重要なことだと思います。とりわけ、高齢者の方にとっても、必要なことだと思います。
 しかし、結果論ではありますが、やはり、街中にあるべきだと思います。
 残念ながら、吉備高原都市は、目論見を外れて、やや陸の孤島になりつつあります。



 今回は、いわば雇用・能力開発機構の管理する国の施設を見て回りましたが、国と県の役割分担、特殊法人にたいして、多くの疑問を持ちました。
 けれど、これは、おそらくごく一部のことなのだと思います。

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