2005年11月25日(金)
【次世代よりも現世代育成を】

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 本日は、次世代育成・男女共同参画特別委員会の県内調査。委員会で一任を取り付けて調査先を自分の思いで選べるのが、委員長特権というべきもの。県外調査の石井十次も郷中教育も、日々の活動も、全て私の中では繋がっています。
 情緒障害児短期治療施設である「岡山県立津島児童学院」、不登校の子ども達と親の居場所である「フリースペースあかね」、児童自立支援施設である「岡山県立成徳学校」を訪ねました。
 発達障害、さらには、非行の影にある家族の瓦解、児童虐待、ネグレクト・・子供は社会の被害者であるけれど、その前に、救われるべきは、悲しみの連鎖の中にいる親かもしれない、親の居場所があるだろうか?子供の問題は、まさに、親の問題であるという事実を突き付けられました。
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     ↓ 詳しくは

 津島児童学院は、昭和37年に全国で一番最初に設立された情緒障害時短期治療施設で、平成14年度からは、運営が社会福祉法人旭川荘に委ねられ、来年度からは、引き続き指定管理者になる予定です。

 現在は、定数50人に対して、38人が入所。小学生中心の施設であるのが特徴的で、県立ですが、市立伊島小学校派遣学級としての位置付けです。
 この40年間、非行傾向・不登校が圧倒的だったのが、近年、被虐待が激増しています。そしていわゆる母子家庭の割合が半数を超えています。
 平均在院期間は、2年5ヶ月で、昨年10人の退所者のうち、5人が児童養護施設、3人が知的障害施設、家庭に戻ったのは、2人です。特に、被虐待27人のうち、78%が、発達障害を抱えているというのは驚きです。この因果関係がわかりませんが。

 民間の活力で、医師の配置もできましたが、いかんせん居住は、4人部屋が基本で、運動場こそ広いですが、施設の老朽化が目に付きました。
 また、短期間で家庭に返すのが目的ですから、家族会の立ち上げなど家族支援が急務です。

 いわゆる特別支援教育の流れの中で、ハンディを持つ子ども達も、普通学校に通っています。一方で、聾学校、盲学校などの統合の動きもあります。
 こうした中、近年実数が増えたのか、あるのが分かってきたのか、発達障害は明らかに増えていますが、現場の教師が、地域の学校で支えるのには、限界が来ているのではないかとも思えます。

 今後、こういった施設の潜在的な需要は益々高まるものと思え、国の法律も受けて、体系的な整備を考えないといけないのではないかと思います。
 少なくとも、親の相談場所が少ないのではないかと感じます。



 「フリースペースあかね」は、映画『あかね色の空を見たよ』をきっかけに、平成13年4月に開設された不登校児と、その親と、時には、引きこもりの大人達の居場所です。
 普通の住居といった暖かい雰囲気で、今日も元気な中学生が何人か来ていました。

 大人も子供も1回500円ということで、月曜日から金曜日の午前10時から午後4時30分まで開放されています。
 岡山市教委、適応指導教室との連携もあり、「あかね」に来れば、出席扱いになり、学割も使えます。

 問題は、任意団体ゆえに、維持費となる財源。映画上映費での運営ですが、いつか底を尽くということで、行政の支援があれば良いのですが、逆に自由な運営とは矛盾し、難しいところ。

 ポイントは、親の会で、孤立する親のネットワークを組んでいるところです。

 教育を受ける権利の中には、環境が合わない子ども達に合う環境を作ることが重要ですが、教育という意味では、学力保障の問題があり、民間だけでは難しい面があります。
 こうしたフリースペースが、学校に代わりうる場所になるかどうか分かりませんが、行政的な支援も考えていかなくてはいけない時期に来ています。



 岡山県立成徳学校は、明治21年に私立岡山感化院として設立され、昭和3年に岡山県に移管され、昭和23年の児童福祉法の施行に伴い教護院となり、現在は、県内唯一の「児童自立支援施設」として運営されています。

 全国に58ある法律に基づく施設ですが、成徳学園は、117年の歴史と伝統を持っています。
 特徴は言うまでもなく、一組の夫婦職員を核に、疑似家族を構成し、子ども達と24時間体制で関わることです。

 児童相談所の措置や家庭裁判所を経て、非行児や環境上の理由から生活指導を要する63人が在籍、うち女子が24人で、中学生が多いです。

 ここでも、被虐待は、16%。養育機能が弱い家庭の子ども達が多いと言います。普通のことが普通にできていないということですが、サッカーに興じる子ども達は、はちきれんばかりのパワーが溢れていました。ただ、要するに、大人も自分も信じられない、いわば社会の被害者という位置付けです。

 必ずしも、全ての職員が教員資格を持っているわけではありませんが、指導要領に準じて、授業も行われていますし、規則正しい生活が送られています。

 あるいは、親も、虐待の連鎖の中にいて、親を責めない、親に寄り添うように接するという職員の方々は、おそらく県庁職員の中でも、最も厳しい労働条件かもしれません。職員全てが、それぞれの味を出せと言われる校長はじめ、公職にある者としての確かな責任と誇りを感じて、まさに頭が下がる思いでした。


 次世代育成という言葉は実に心地良い響きです。
 しかし、次世代ではなく、今、親の世代である我々の育成こそが、先にありきではないか、子供は何も悪くない、少なくとも、悪くなかったんだ、と、強く感じています。

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