2005年12月5日(月) 【小児緊急医療について】

 一昨日の山陽新聞社の「子育てシンポジウム『キャッチして子どものSOS』のうち、『何とかならないか小児緊急医療』というパネルディスカッションの内容を私見を加えて、以下まとめさせて頂きます。当然将来の質問原稿を意識して。
 詳細は、20日山陽新聞朝刊。


 深夜に子どもが発熱して痙攣を起こした時に、救急車を呼び、小児緊急へ運んだという経験がある保護者は、どのくらいおられるものでしょう?

 我が家では、子供の発熱に、夜中に時間外ということで自家用車で病院に行ったのは2回ですが、いずれも大事にならずに済みました。あるいは、翌朝でも良かったかもしれません。ただ、その際に、病院や診て下さった小児科医でない医師の対応に対して、かなり思うことがあったのも事実です。

 しかし、今から思えば、お互いの認識不足に起因することもあります。保護者の不安、医師の勤務実態がお互いにピンと来ていません。結果、お互いに無駄なことをしてしまっているということになっているのかもしれません。


 保護者にしてみれば、同時に核家族化が進む中で、経験則に裏打ちされた「あ〜あ〜、そんなん大丈夫、大丈夫。子どもはそういうもんじゃ。」という安心の言葉がない、あるいは、かかりつけ医はじめ、ネットワークを知らない、なによりも、子どもの病気に関して簡単な知識すらない、当然、応急処置の仕方も知らない、ゆえに、とにかく知っている大病院に駆け込み、しかも、待たされる、という事態が起きます。昼間は特に。
 結果として、専門医あるいは、小児科医でない医師からすれば、なんでこんなことでわざわざ来るんなら?この親は、もう少し落ち着かんかい!ということになります。
 しかし、文字通り、親身でないようで、そうでなくても、気が立っている保護者からすれば、その対応は、なんやねん!という気分に・・・。

 慌てると、冷静を装いながら、自分でも不思議な行動をするものですが、私が一番分からなかったのは、25年も前に、母が家で虫?に刺されたショックで倒れて、往診に来られた医師の向こうで、『ゴルゴ13』を読んでいたというもので、看護婦さんから「息子さんは、ずいぶん動揺していました。」と言われました。
 子供のこととなると、親なら平静でいられないのは当然です。


 一方、入院患者を中心に診ることを前提にした大病院においても、小児科医も、ナースも1〜4人。医師の数は増えないのに、時間外受診者数は、5年で倍増し、誤診率が上がりそうなほどに、身も心もクタクタに。いわんや、病院においては、地域の開業医の方が、多忙の中、なかばボランティアに近い形で、小児緊急医療体制を組んで下さってもいます。

 そこに今日もまた、慌てふためいてドタバタと・・・。時には、罵詈雑言や皮肉の一つもあびせられ・・・親なら、もう少し、落ち着けっちゅーねん!という気分に・・・。


 一方、急患を救急車で搬送する消防局にしてみれば、医療行為ができる緊急救命士は、県下で、64名、13隊と体制を整えていますが、過去10年で、搬送は、約1万4千から2万2千件に急増(昨年の1件には、亡父も含まれています。あの時は、ありがとうございました。あの時は、平和町から近所の川崎病院が、いかに遠く感じられたか・・・)。

 特に、小児の搬送も右肩上がりで、8.7%。男児の割合が高く、熱性痙攣、頭部や顔面の外傷が多く、72%が軽症で、重症は、5%。入院せず、そのまま帰る方が多いのも特徴的とか。

 子どもですから、訴えの聴取はできず、保護者は、高次医療機関が整った大病院を希望するのも特徴で、公務として、希望を聞き、行けば必ず搬送する、とのことで、他県で、救急車をタクシー代わりに使って逮捕者が出た事件は記憶に新しいです。
 救急隊も人は不足しているわけですから、自家用車やタクシーという手段はないのか、考えてみる余裕は必要です。


 ちなみに、県下では、救急受け入れ病院は、89。小児は、29。医院は、460。小児のうち、24時間受け入れは、6病院で、岡山市内に3、倉敷市に2、津山市に1。
 問題は、他の市町村で、小児受け入れも少なければ、そもそも小児科医も少なく、高速道路で1時間以上かけて搬送することもあるそうです。また、消防局の所管というのもあるようです。
 いずれにせよ、岡山市内の小児緊急医療体制は、関係者のご努力で、それでもかなり恵まれている方だと評価できそうです。



 問題は、行政の役割です。

 救急医療体制整備については、市町村単位での入院不要の軽症の初期救急、入院を要する二期は、5つの圏域(県南東・西、県北3)、さらに、重症の三期は、赤十字、川崎、津山中央病院が指定されています。
 このうち、二期の県南東西は、小児科も24時間体制ですが、高梁・新見・真庭については、24時間対応は出来ず、津山・英田は、休日夜間に課題を残しています。
 これは、いわゆる「南北格差」の顕著な事例で、是正されなければいけません。

 また、平成16年7月より、電話相談が開始されており、土・日・祝日・年末年始の18時から23時まで、「#8000」で、受け付けています。ただ、これ自体広く知られているかどうか・・・。

 また、ほとんど軽症で、実態は、休日・夜間対応策であるとは言え、重症も混在し、急変するのが特徴であり、地域連携や特定の拠点診療所に地域の医師に入って頂いたり、内科医等に小児救急の研修を受けて頂くことも重要ですが、診療報酬の問題は、避けて通ることは出来ないでしょう。
 一方で、小児科医は急には増えずとも、医療の集約化という事も言われており、二期、三期に小児科医を増やすことも必要になります。


 ただそれ以外にも、例えば保育園に預けた子どもを職場を離れて昼間に外来に連れていけない実態、減点主義で、子育てでいつも責められ続けている母親の心情に、社会があまりにも無理解であるということも事実です。

 そうであれば、地域による子育て、例えば、簡単な医療知識もさることながら、もしもの時に助けてもらえる地域の情報流通、ネットワークをさらに充実していくことが必要です。

 地域子育て支援センターに行けない、「地域のお母さん」とも言える愛育委員や保育士の方々と接することが出来ない子育て世代にいかように対応していくのか。
 親の気持ちに寄り添うような小児緊急医療体制の整備は、平素の安全、安心のネットワークの整備そのものです。

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