2000年11月17日(金) 【岡山県立岡山聾学校】

 50年前に、寄宿舎が全焼し、16人の聾(当時は、聾唖という)児が、逃げ遅れて焼死するという痛ましい事件もありましたが、岡山県立聾学校は、90年以上の歴史を持っています。

 最大時には、幼稚部、小学部、中学部、高等部あわせて400人いた生徒も、ここ10年でさらに、3割減で、現在69人。学校教育法施行令第22条の3に規程する、両耳の聴力レベルが100デシベル以上(ガードレール下の列車の音)の児童、生徒などを対象にしています。

 生徒減の理由としては、まさに、「その244」の裏返しということになります。ただ逆に、知的障害との重複障害を持つ児童、生徒が増加する傾向があります。ちなみに、中学3年生は、欠員です。

 もっとも、高等部は、評価が高く、産業工芸課、被服科、理容課の本科と理容課の専攻課を持ち、とりわけ卒業生が、120店舗も出しており、全国1位の実績を持っています。

 加えて、昔は、手話が、禁止されたこともあったようですが、まず日本語を学ぶ(口語教育)ことを前提に、手話や発音サインを交えてのコミュニケーションが、なされています。
 聾者は、話せないわけではないことをまず、ご理解下さい。否、それどころかいわゆる読唇で、「健常者」と手話も要約筆記もなしで、「話ができる」のが、理想であり夢なのです。


 本日、特に取り上げたいのは、幼稚部です。

 原因は様々ですが、いわゆる聴覚障害児は、500人に2人の確率で生まれます。単純に、今後も県下で、毎年20人の聴覚障害児が、誕生する可能性があります。

 厚生省は、2005年から、新生児に対して聴覚検査(ABR)をすることを成文化しました。発見次第すぐに補聴器をつけ、また3歳になると、人口内耳の手術を受ければ、かなり聴力が、上がるそうです。
 言語訓練は、早ければ早いほど良いわけですが、問題は、幼稚部以前の専門的指導の確保です。市内には、幼児の民間の言語訓練期間がり、聾学校ではなく、普通学級への進学を目指します。 しかし、0歳から3歳児は、文部省の管轄ではないため、聾学校の幼児部が、言語訓練するこができません。

 まさに、文部省と厚生省の間の問題ですが、ABRの導入で、たちまち0歳からのニーズが、分かってきます。実は、教育相談という形での対応も考えられているようですが、正式に制度として、認められたいところです。

 全国的に、児童、生徒の減少が続く聾学校で、生涯学習機能、情報センター機能の強化充実などに加え、やはり、乳幼児教育の充実も喫緊の課題だと思います。

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