2002年12月24日(火)【高齢者医療改革について】

 メリー X’masでございます。

 クリスマスプレゼントというわけではありませんが、今朝の朝日新聞によると、帝人が米企業と開発した在宅用の人工透析装置を厚生労働省に承認申請したとのことです。

 身内に人工透析患者がいるため、朗報であると思うと同時に、透析にかかわる患者の自己負担は、国の特定疾病療養制度や自治体の公費助成により、ほぼゼロに抑えられているというものの、約21万人に及ぶ患者の透析治療費は、年間の国民医療費の30分の1にあたる約1兆円であるということに、改めて驚かされます。
 こういった制度があるということに、なにより、支えて頂いている全ての方に、本当に感謝を申し上げるものです。


 ところで、困った時はお互い様とは言いますが、こうした支えあいの象徴的なものが、健康保険ではないかと思います。
 ちなみに、私は、国民健康保険加入者です。

 さて、ご案内の通り、この7月に、その健康保険法が改正されました。

 10月には、高額療養費の自己負担限度額の引き上げられ、今までは市区町村により多少の差がありましたが、原則70歳以上の高齢者は、老人保健制度の対象者であり、治療費の自己負担は、原則1割であったところ、老人保健制度の対象者を5年かけて75歳以上とし、70歳から74歳までの方は、老人保健制度ではなく、健康保険制度の対象者となりました。

 70歳以上の高齢者の患者負担は、定率1割ですが、一定以上所得者は、2割になり、2割負担になる高額所得者の高齢者の方から、ご不満の声も頂いています。
 また、3歳未満の乳幼児は、3割から2割負担に引き下げになっています。

 そして、来春には、健康保険の被保険者本人の窓口負担が、2割から3割に、賞与からも毎月の保険料と同率で保険料を納付するという流れになるようです。ちなみに、サラリーマン本人の窓口負担が、1割から2割になったのは、1997年です。

 今回の改正は、健康保険の給付や負担について見直し、制度の健全化を目指そうとするもので、医療保険財政は、数年間は維持できるようになったということですが、こうした患者の負担増や保険料の引き上げにより、家計にも、かなり大きな影響を及ぼすことになりそうです


 ところで、健康保険には、「政府管掌健康保険」、「健康保険組合」、「国民健康保険」などがありますが、老人医療費の負担増などを背景にその財政は限界にきています。

 現行制度は、現役世代が割り勘で、高齢者の医療費を賄っていますが、高齢者の医療費は、総医療費の3分の1を占める11兆円にものぼり、大企業のサラリーマンの健康保険組合(健保)で、8割、自営業者の国民健康保険(国保)では、6割弱の市町村が赤字です。

 働き盛りの世代にとって、詳しい内容は理解し難しくとも、自己負担が増え続け、制度は、いずれ破綻するに違いない、という確信に近い不安があるのではないでしょうか。
 世代間の公平な分担と言いながら、年金も、絶対に元は取れないというのは、自明なことになりつつあります。

 かように、高齢者医療制度に対しては、給付費の約7割を現役世代の医療保険が機械的に分担する現行の老人保健制度への不満が強いため、厚生労働省は、医療制度の抜本改革試案(保険の再編・統合、高齢者医療、診療報酬体系)を公表し、高齢者医療改革では、保険間の助け合いで費用を賄う方式と、高齢者だけが入る新保険を作る方式の2案を併記しました。
 来年3月末に、政府の基本方針が、まとまるとのことです。極めて重要な話ですが、国の議論ということで、なかなかにじれったいものもあります。



 ところで、我々子育て世代は、本当に福祉の対象だと思いますし、どんどん支援すべきだと思いますが、では、一般的に言われるような、時間とお金のある高齢者の方が、どんどん国のためにお金使って下さいよ、というほど、そんなに安気かというと、どうも自分の両親を見て、そんな気が、全くしません。
 あるのは、まさに、老後の不安です。年金ひとつとっても、安心できるのは、限られた高齢者で、高齢者の方に、さらなる負担をかけて良いとも思えません。いずれ、親の世代も、私達の世代も、高齢者にはなるのですから、世代間闘争をしている場合ではありません。
 ただ、多少なりとも、できる限りの負担は、「孫のために」して下さいと、お願いもしたいです。


 いずれにせよ、むしろ今出来ることは、要は、まずは産業を振興し、本当に無駄だと思える公共事業費については減額し、社会保障費である医療費の政府負担枠を広げ、医療機関スタッフの充実をはかる意外の道はないと思います。それが、構造改革です。
 超少子高齢化に堪え得る持続可能なインフラとシステムを整えないといけません。

 子供を育てながら、介護のことも考える、まさに、繁栄や幸せとはなにか、働き盛りの世代の決断が、全ての世代の未来を左右します。その責任は、極めて重大です。

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