2002年7月2日(火)【少子高齢化スパイラル】

 2日に渡る県内調査は、岡山県でも、最も、高齢化率が高い高梁地方振興局と阿新地方振興局管内を回るものでしたが、改めて、過疎地域の抱える問題の深刻さというのを痛感致しました。

 また、ある意味で、議員の県内調査は、振興局にとっては、一大行事で、現場の声を本庁に届けるという意味合いもあるのですが、つくづく、県の守備範囲の広さ、職員の方の異動の大変さというのを感じました。
 今更ながら岡山県は広いです。

 さらには、市町村合併に関しては、皮肉にも、要するに、少子高齢化・過疎化に伴い郡部の体力が弱まっていることが、それを促進させているとうことも理解できました。

 郡部における少子高齢化、過疎化は、中心市街地のそれとは、次元の違う深刻な問題です。もちろん、中心市街地も深刻ですが。



 例えば、ある町の巨大なドーナッツ型の幼稚園・保育園・児童館連携施設は、一見豪華にすら見えますが、要するに、幼稚園と保育園を別々に運営できないため、0歳児から3歳児までは、保育園、4歳5歳は、幼稚園プラス預かり保育(保育園より親の負担が掛からない。ただし、午後5時30分まで)、それに、隣接する小学校から、児童館として、学童保育、という複合施設でした。

 本来の選択肢(あくまで親の事情ですが)が増えるという意味での幼保一元化とは全く異なる動きでした。

 加えて、幼保一元化について一般的に言われる問題、つまり、行政の縦割りの壁が高く、施設の供用ができなかったり(保育園部には、独自の給食施設の必要)、保育園は行政職、幼稚園は教育職であることからの連携が難しく、また、行政の所管も違う(この町では、教育委員会が一元管理)、国(文部科学省か厚生労働省か)の補助金の違い等、難しい問題も出ています。

 ちなみに、この町の昨年度の新生児は、15人でしたが、正直、子育て世代にとって、自然環境は魅力ですが、多様化するライフスタイルの中で、悩みは深いと思います。結果として、若い世代が、地域を離れれば、地域の少子化に拍車をかけることになります。



 一方、高齢化、端的には、介護保険の問題です。長期的に見ると、この介護保険の導入というのが、良くも悪くも、国や国民を変えていくターニングポイントになったのだろうなと思います。

 一昨年の地方分権一括法の施行と同時に導入された介護保険は、一方で、国と地方の関係を対等・協力と言いながら、その実、保険の母数を広げるためにも、保険の実施主体である各市町村の合併に向けての試金石となりました。

 現在、郡部で、市町村合併に対して前向きな地域は、まずは、ごみ処理の問題で、町村を越えた広域事務組合などを作り、さらには、介護保険の実施主体として、手を結んでいる地域です。

 すなわち、市町村合併に向けて、研究会を作り、合併協議会を立ち上げていく以前に、広域事務組合等で、一緒に、様々な行政事務を行ってきた実績があるわけです。

 逆に言うと、岡山市のように、政令指定都市化に向けた、ある意味、明るい市町村合併の話ではなく、極めて身近な介護や、ごみ処理などの行政事務が、行えなくなるという、切迫した状態にあると言えるかもしれません。

 ところで、しかし、要介護認定者数や、サービス需給者数の割合が、こういった地域の方が低いというデータがあります。これは、単純に、お年寄りが元気であるという以上に、様々な理由で、家族(しかも高齢者の)が、ぎりぎりまで介護されているのではないか、という、ことかもしれません。

 ちなみに、岡山県全域の65歳以上のいわゆる高齢化率は、20.7%ですが、高梁、阿新管内の町村は、軒並み30%を越えています(備中町は、45%を越えています。)。
 長命は素晴らしいことですが、それを支える世代が、いなくなっては、立ち行かなくなります。



 ともあれ、少子高齢化、過疎化対策が、必要だということは、誰もが、わかっているわけで、問題は、当然具体策です。
 いわゆる郡部は、県南以上にそのスパイラルに入っています。これは、岡山県あげての命題です。

 やはり、農業、なにより、林業から、6次産業化が必要であるというのも、共通認識です。誰もが暮らしたい自然環境の素晴らしさの中で、新しい産業が創出され、雇用が生まれれば、若い世代も暮らすだろう、というのも、共通認識です。

 そして、しかし、そのことを地域で考えていかないといけません。もはや、国は手取り足取りまではしてくれる時代ではありません。

 議員が、無責任に、自明の課題を挙げても仕方ないのですが、危機的な状況であるということを誰もが強烈に認識することが、極めて重要です。

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