過去の岡山県議会一般質問集 <犯罪被害者支援>篇

<平成16年12月定例会>(2004年12月15日)

(佐藤)  次に,たびたび今議会でも取り上げておられます犯罪被害者支援についてお伺いいたします。
 ちょうどこの原稿を書いておるときに,友人の御尊父が殺害されるという事件がございました。一日も早い事件の解決と御冥福を心からお祈りしたいと思います。
 この12月1日,傷つけられたり生命を奪われるといった犯罪に巻き込まれた被害者とその家族の権利を守ることと,国や自治体の責務を定めた,犯罪被害者等基本法が成立しました。もっとも,あくまで基本法であり,大もとになる考えが定められただけで,基本計画等を通じた具体的な支援についてはこれからです。また,基本法成立に伴い,特に犯罪被害者を手助けするグループの活動の重要性も指摘されています。もっとも,日本にあるグループの数はまだまだ少なく,また支援団体への国の財政支出は,年間でアメリカが200億円,イギリスが50億円,日本には助成制度すらなく,ネットワーク加盟の37の民間支援団体は,財政難に苦しんでいます。まずもって,岡山にも,こうした支部組織,岡山弁護士会が中心となって設立されて1年がたつ被害者サポートセンターおかやまや,DV被害者を支援するDV防止サポートシステムをつなぐ会・岡山などがありますが,こういった団体にどういった支援を考えておられるのでしょうか,警察本部長にお伺いいたします。
 さて,私は,基本法成立の翌日,犯罪基本法制定の契機ともなった社団法人被害者支援都民センターを訪ねました。そもそも,基本法の発端は,1991年の犯罪被害者等給付金支給法10年のシンポジウムで,飲酒運転のひき逃げ事件で18歳の御子息を失った現在の同センターの事務局長の,「日本では,被害者を救う道は何もありません」との訴えを受けて,92年に犯罪被害者や遺族の精神的ケアを目的とする犯罪被害者相談室が設置され,それが発展的に改組され,2000年に設置されたのがこの被害者支援都民センターであります。そして,2002年5月には,東京都公安委員会から,犯罪被害者等早期援助団体の指定を受け,さらに同年11月には,会費を納めたり寄附した者が税法上の優遇措置を受けられる特定公益増進法人に認定されています。
 ところで,この犯罪被害者等早期援助団体とは,2002年4月施行の犯罪被害者等給付金の支給等に関する法律に基づいて,都道府県公安委員会が犯罪被害者等の早期軽減に資するため,さまざまな事業を適正かつ確実に行うことができる非営利法人を,この犯罪被害者等早期援助団体として指定する制度であります。そして,この指定を受けると,当該団体の求めに応じて,警視総監もしくは道府県警察本部長または警察署長は,被害者の同意を得て,被害者等の氏名,住所,犯罪の概要等に関する情報を提供することができます。多くの被害者は,被害直後には麻痺状態や混乱等のために,みずからのニーズを判断して支援を求めることはできません。実は,電話をかけようと思えるまでにも,1年から3年ぐらいの期間が必要であるそうであります。また,支援してくれる民間団体が本当にプライバシーを守ってくれるのかなどの不安から,民間団体に支援を求めることにちゅうちょする傾向にありました。しかし,この制度により,被害者支援の法的根拠が明示され,被害直後の危機的状態の中で,犯罪被害者相談員等が被害者に接して,被害からの回復のために最も効果的である直接的支援を行うことができるようになったのです。すなわち,警察と直結し,被害を受けてからすぐに支援を開始することができます。私は,警察が一義的な支援の機関であるというふうに思っておるわけですが,実は基本法ができる以前でも,その気になれば,この制度を活用してかなり機動的な犯罪被害者支援が行えました。しかし,なぜか全国でこの犯罪被害者等早期援助団体に指定されている組織は,現在5つしかございません。加えて,来年4月から施行の個人情報保護法では,むやみに個人の情報を提供すれば2年以下の懲役また10万円以下の罰金であり,被害者支援とはいえ,行政からすれば,個人情報については情報提供してもよいという法的根拠が必要になります。私は,早急に犯罪被害者等早期援助団体を設立するか,あるいは既存の団体を指定すべきであると考えますが,個人情報保護法との絡みも含めて,警察本部長はいかようにお考えでしょうか。
 また,同センターから,「もう一度会いたい」という遺族の手記が出版されていますが,これは涙なくしてはとても読むことができません。その中で,「自助グループにおける同じ体験をした者同士の共感『私ひとりではない』という思いは,大いなる励ましと慰めになる」という言葉が出てきます。多分当事者でないと本質的なことはわからないことの方が多いのだと思います。そして,その活動の中から,刑法改正の危険運転致死傷罪成案のための署名活動,また生命のメッセージ展の全国的展開が行われています。また,同センター専務理事の「救済と支援は違います。あくまで被害者は自分の力で生きていくのです。人間には,その人自身が持っている対応能力や対処能力があるため,自分で問題を乗り切る能力を持っているのです。それを支援するのです」という言葉が耳に残ります。そのことを意識して,センターには,被害者の方が気楽に集えるグループ活動のための部屋がありました。私は,DV被害者のような犯罪被害者の自助グループが活動する場の整備が極めて重要であると考えますが,いかがお考えでしょうか。
 さらに,これは犯罪被害者支援に限ったことではありません。多くのボランティアの方々にも支えられている,いわゆる電話相談等で,精神的不安や悩みを抱えた人に対して相談業務に当たられている方,そういった方の技術向上の支援,また二次受傷とも言われる相談員自身のメンタルヘルスの問題に対しては,いかように対策をとられているのでしょうか,保健福祉部長にお尋ねいたします。

(知事)  次に,自助グループの活動の場でありますけれども,現在,県内におきまして,DV被害者の自助グループの活動はありますものの,犯罪被害者等の活動につきましては,把握をされていないところでございます。お話をいただきました場の整備につきましては,今般,成立をいたしました犯罪被害者等基本法に基づき,今後,国において行われます犯罪被害者等基本計画の策定や県内での自助グループの結成の動きなどを十分踏まえながら,県警察本部等関係機関と協議をいたしまして,適切に対処してまいりたいと存じます。

(保健福祉部長)  犯罪被害者支援のうち,相談員に対する支援についてでございますが,相談に従事する際には,相手の気持ちやニーズを把握するために深く耳を傾け,共感と理解を伝えることが心のケアにおいて重要でございまして,ボランティア等に対する研修会などに,保健所,精神保健福祉センター等の専門職員を派遣し,技術的な支援を行っているところでございます。
 また,相談員自身が相談に応じる中で,強いストレス状況に置かれたり,燃え尽き症候群に至ることもあるため,相談員自身のメンタルヘルスについても,精神保健福祉センター,県立岡山病院等の医師等が相談に応じるなど,支援を行っているところでございます。

(警察本部長)  まず,民間の被害者支援団体への支援についてであります。
 議員御指摘の被害者サポートセンターおかやまは,昨年11月,岡山県精神科医会,弁護士会等の方々が中心となって民間被害者支援団体として設立され,またDV防止サポートセンターをつなぐ会・岡山につきましては,平成13年に結成され,DV被害者の自立支援等の活動に取り組んでいる民間団体であると承知しております。県警察といたしましては,これらの団体に対しまして,相談員等の養成のための研修やスタッフ等に対する必要な助言を行ったり,協働して犯罪被害者等に対する支援の取り組みを行っているところでありますが,県警察として,さらに支援できることがないのか,これらの団体の要望をお聞きしながら検討してまいりたいと考えております。
 次に,犯罪被害者等早期援助団体の設立指定や個人情報保護法との関係についてであります。
 民間の被害者支援団体が犯罪被害者等早期援助団体としての指定を受けるためには,犯罪被害者等給付金の支給等に関する法律及び犯罪被害者等早期援助団体に関する規則の規定により,非営利目的の法人であること,事業を行うための施設を有し,一定の相談員を確保することなどが求められており,これらの条件が満たされた場合に,都道府県公安委員会は,犯罪被害者等早期援助団体として指定できることとされております。現時点では,被害者サポートセンターおかやまが犯罪被害者等早期援助団体を目指して事業を展開していることは承知しておりますが,法人格を有していないことなどから,この早期援助団体の申請がなされていないところであります。このため,県警察といたしましては,被害者サポートセンターおかやまが早い時期に犯罪被害者等早期援助団体としての条件を備えるよう,先ほども申しましたように,研修や助言等の支援のほか,同センターの要望をお聞きし,県警察としてさらに支援できることがないのか検討してまいりたいと考えております。
 また,個人情報保護法との関係についてでありますが,議員御指摘の犯罪被害者等早期援助団体の指定がなされるまでの間における民間被害者支援団体等への情報提供につきましては,個人情報保護法及び個人情報保護条例においては,本人の同意があれば第三者へ個人情報を提供することができることとされております。また,犯罪被害者等給付金の支給等に関する法律においても,犯罪被害者等早期援助団体に情報提供する場合には,事前に被害者等の同意を得てから行うこととされております。
 なお,被害者等の同意を得る場合には,事前に援助の具体的内容や早期援助団体の職員等には守秘義務が課せられていることなどについて十分な説明を行った上で,その同意を得ることとしており,被害者支援に伴う個人情報の取り扱いにつきましては,細心の注意を払って行うこととしております。



<平成13年6月定例会>(2001年6月14日)

(佐藤)  次に,私ごとながら,昨年生まれた子供もきょうで7カ月,寝返りを打ちながら転げ回り,ここからちゃんこ,はいはいと,かわいい盛りです。それにしても,世の中には,どうしてこんなにかわいい子供を殴ったり殺したりする親がいるんだろうと疑問でなりません。昨年11月20日に施行された児童虐待の防止等に関する法律は,児童虐待を防止し,虐待への対応を図るものですが,今回成立した法律は,当面の緊急法整備的なもので,附則第2条で施行後3年を目途として,この法律の施行状況等を勘案,検討し,必要な措置を講ずるとしており,児童虐待については,引き続きまだまだ議論を深めていく必要があると思います。私自身が子育て中の世代ということもあり,むしろ虐待する親はどんな親なんだろうか,同じ時代をどのように生きてきたんだろうかと考えます。経済的な豊かさ,そしてバブル崩壊の中で,家族の社会からの孤立,そこから来る育児の密室化,地域社会の子育て能力の低下,虐待する親の多くがみずからも虐待を受けていたという世代間連鎖も指摘されています。彼らもまた,みずからの暴力の由来におびえ苦しんでいるかもしれないのです。母親の3人に1人が子育てに困難を感じ,さらに5人に1人は子供を虐待しているのではと悩んでいると言われます。子育てを母親だけに押しつける家族関係のもとで,虐待しているのではと思う母親は,親として不適格と自分を責め,さらに自信をなくしてしまう,そんな母親を孤立させない支援も必要です。大切なのは,虐待を防止する力を家族の内と外にどう築くかということだと思います。そして,児童虐待があった親子が温かい家庭を取り戻すこと,親子を引き離した後に正常な関係に修復する,不幸の連鎖を断つ,究極の目標はそれしかないと思います。そういった観点から幾つか質問をさせていただきます。
 まず,家庭内においては,子育てに関して,すべて母親任せにしないように,やはり男親,父親の働きが重要だと思います。以前,知事は「父親が積極的に育児というものにかかわっていくという,共同で育児をしていくということ,これが何よりも大切なテーマ」とおっしゃられました。どうか新米パパに,知事御自身の育児体験を踏まえ,「父」とは何か,「親」とは何か,御教示ください。知事も,おしめはかえられたのでしょうか。
 また,子育てに関心を示さない男性に,基礎から父親学を教育すべきではないか。父親の相談事業を展開すべきであると思います。父親が子育てするために,私は,男女共同参画家庭,男性よ家庭に帰れと強く申し上げたい。家庭を顧みず,仕事も遊びも男のかい性などという風潮に対して,平日にPTAの行事に参加しても構わない,積極的に育児休暇の利用をすべきであるといった啓発をどのように行われていかれるのでしょうか。
 また,2001年度から厚生労働省や地方自治体の助成事業に加え,産科医と小児科医が連携して,出産前の女性に育児指導を行う日本医師会の事業も始まっていると伺っていますが,その取り組みを含めて,母親の育児不安への対応について,保健福祉部長にお伺いいたします。
 次に,児童相談所の相談への対応についてお尋ねします。
 土曜,日曜日も児童相談所の相談業務を行い,24時間体制で相談を受けつけ,ふえ続ける虐待,その他の相談に対応すべきだと思いますが,いかがでしょうか。
 また,7月には青少年対策の相談窓口を一本化した岡山青少年総合相談センターを設置するとのことですが,緊急性を要する児童虐待への相談等,児童相談所との機能分担はどのようになるのか,あわせて保健福祉部長にお伺いいたします。
 不幸にして虐待が起きた場合,児童相談所が児童と親の両方を指導していくことが効果的であると思われますが,年間300万件もの虐待報告のあるアメリカでは,再発防止のため加害者である親の精神的ケアを制度化している州が多いと言います。虐待の重症度が高いほど,自分から治療に結びつこうとしないとすれば,強制的に子供と引き離してでもケアを受けさせる必要もあると考えます。加害者となった親の指導についてはどのように行われているのでしょうか,保健福祉部長にお伺いいたします。
 また,虐待された子供を保護し,適切なケアを行う重要な場所として児童養護施設や情緒障害児短期治療施設があります。子供たちが安心して生活でき,そこで勤務する職員の方々も余裕を持って子供たちにかかわることができるような体制がなければ,児童虐待の対策としては不完全であると言わざるを得ません。施設内でのケア,社会に出た後の糧となる学習指導,さらに生活支援対策の現状と今後の支援策について,保健福祉部長にお伺いします。
 さらに,保護者との分離を余儀なくされた子供たちには,施設での養護だけではなく,家庭養護が重要です。児童福祉法第27条は,委託先として,まず里親を挙げています。ここでいう里親は,里親制度のうち養子縁組が前提の養子里親より,むしろ養育里親です。実の親が育てられるようになるまでの一定期間,家庭的な環境を提供し,心身の健やかな発達を促そうとするもので,1カ月から2年が目安ですが,長期間面倒を見る里親もいるそうです。アメリカなどでは,子供の半数近くが一般家庭に引き取られると言われますが,日本では1割程度です。日本の狭い住宅事情,核家族化の進行など養育能力の低い家庭がふえる中,代役の必要性は一段と高まります。今後里親の活用についてはどのようにお考えでしょうか,保健福祉部長にお伺いします。
 昨年11月20日に児童虐待防止法が施行され,約半年が経過しておりますが,県警察における児童虐待事案の取り扱い状況はどのような実態でしょうか。また,今後どのように取り組まれるのか,あわせて警察本部長にお伺いいたします。
 この項最後に,岡山の偉人として知事が尊敬される石井十次がもし今生きていたら,災害孤児ではなく児童虐待を受ける子供たちにどんな救いの手を差し伸べていたでしょう。石井知事には,孤児の父ではなく,岡山の子供たちの父になっていただきたいと切に願います。そのためにも,岡山市門田本町の石井十次記念館に,石井十次に,今再び光を当てていただく方策はないか,お尋ねいたします。

(知事)  次に,児童虐待についてであります。
 父親学についてでありますが,私自身のお尋ねもございました。時間の許す限り私は子育てにかかわってきたところでございまして,夜起きてミルクを温めたり,温め過ぎて冷やしたり,いろんなことをした経験は今でも思い出すわけですが,具体的におしめを取りかえたことがあるかというお尋ねでございますが,おしめを取りかえることのみならず,洗った経験も今思い出します。一緒に子育てをしたなあというふうに思っております。やはりそういうことを重ねながら,子供に対する愛情というものが非常に高まってきたなと,このように思っているところでございます。7カ月という大変かわいい盛りのお子さんがいらっしゃる佐藤先生におかれましては,ぜひとも「らせん」「リング」の作者であります鈴木光司さんに負けないように,岡山県内最大の,史上最大の子育てパパというふうになっていただければと御期待を申し上げる次第であります。
 次に,子育てへの関心をはぐくむ事業でございますけれども,乳幼児に接する機会が少なくなっております中学生とか高校生に,市町村の乳幼児健診等の場を活用して,乳幼児に触れる体験の場というものを設けております。
 また,7月から実施をいたしますまちかど子育て応援ルーム事業の中で,父親の育児教室も実施をする予定であります。
 啓発についてでありますが,男性の育児参加等家庭における男女共同参画につきまして,新たなライフスタイルへの転換や意識改革に向けまして積極的な啓発に努めてまいりたいと存じます。
 石井十次についてのお尋ねがございましたが,明治20年岡山市内に全国初の孤児院を開き,一生を孤児の救済に尽くされた社会事業の父として,私自身も日ごろから深く尊敬をしているところでございます。過日,石井十次記念館を訪れまして,私自身改めて深い感銘を受けたところでございます。同じ石井という名前でもあったものですから,石井家としても誇りに思ったということもございましたが,いずれにいたしましても,我が岡山県が福祉先進県と言われますそれは石井十次先生のおかげでございます。また,そういった立場から,石井十次先生に,遺業に,光を当てていかなきゃいけない,私も同感に思います。石井十次の,子供を大切にするというすばらしい理念を私自身も受け継いで,子供の課題にこれからもしっかり取り組んでまいりたいと思います。

(保健福祉部長)  児童虐待をめぐる一連の御質問をいただいております。
 まず,母親の育児不安への対応についてでございますが,中央児童相談所に設置いたしました子ども・家庭電話相談室や保健所,福祉事務所の家庭児童相談室など,さまざまな窓口で相談に当たっているところでございます。また,7月からは,まちかど子育て応援ルーム事業の中で,子育て何でも相談を実施し,休日でも気軽に相談できる体制を整えることとしているところでございます。
 なお,お尋ねのありました医師会が行う産科医と小児科医が連携して育児指導を行う事業,これの県内での実施はないと聞いておりますが,国,県の補助を受けたメニュー事業として,倉敷市が産後ケア事業というものを実施しております。
 児童相談所の相談への対応についてでございますが,宿日直体制をとるなどいたしまして,週末を含め24時間体制で児童の一時保護や緊急の相談等の対応に当たっているところでございます。
 また,幅広い相談に対応する岡山県青少年総合相談センター(仮称)でございますが,これと児童相談所の役割分担につきましては,児童相談所は児童虐待等に対処する専門機関としての役割を充実させ,これら両機関が相互に緊密な連携を取り合いながら,的確な対応に努めてまいりたいと考えております。
 加害者である親などへの指導についてでございますが,これまでは,児童の指導に付随する形で必要に応じ保護者に対し指導を行ってまいりましたが,昨年制定されました児童虐待の防止等に関する法律では,保護者が指導を受けるよう明確に義務づけられたところでございます。虐待を行った保護者の中には,御指摘のように自分も被虐待経験など心の問題を抱えている方も多く,児童相談所におきまして精神科医の助言指導による効果的なカウンセリングを行う事業を本年度から開始したところでございます。
 児童養護施設等への支援についてでございますが,虐待により心に傷を受けた児童に対しては,心理療法で傷をいやしたり,児童ごとに異なる心の問題を受けとめた上での支援が必要なことから,児童養護施設等への心理療法職員や被虐待児個別対応職員というものの配置を進めまして,心のケアの充実に努めているところでございます。
 また,施設での学習指導につきましては,児童相談所と連携いたしまして,入所児童の個性に応じた対応がなされております。
 生活支援対策といたしましては,高等学校等入学支度金などの補助事業を実施しているところでございます。
 里親につきましては,平成12年度中県内で94人の方が登録されておりまして,28人の児童を預かって,御自身の家庭内で養育してくださっておりますが,これらの児童のうち,被虐待児は2人となっております。児童相談所では,里親への委託も貴重な選択肢の一つであると考えておりますが,このほか,児童養護施設等への入所も含めまして,子供の抱える状況により適切な判断,対応に努めているところでございます。

(警察本部長)  まず,児童虐待事案取り扱い状況でございますが,昨年11月の児童虐待防止法施行以来,県警察では10件を認知いたしております。その内容は,身体的な虐待が7件,性的虐待が2件,いわゆるネグレクト行為が1件でございます。このうち,6件につきましては,殺人あるいは傷害等の刑事事件として処理いたしますとともに,ほかの4件につきましても児童相談所へ通告をいたしております。
 県警察といたしましては,法の施行にあわせまして児童虐待対応マニュアルを作成いたしまして,職員に対する指導教養を徹底するなど,その取り組みを強化しているところでございます。
 次に,今後の取り組みについてでございますが,御案内のとおり,児童虐待事案に対する警察の対応は,児童虐待事案の早期発見と児童相談所等への通告,児童相談所長の要請に基づく援助活動,児童の保護あるいは事件化等々多岐にわたるわけでございますが,まず,何よりも重要なことは,被害児童をできる限り早期に発見し,保護することでございます。このため,県警察といたしましては,今後とも,各相談窓口の活用を初めとする各種の警察活動を通じてはもちろんでありますが,児童相談所,学校,医師など関係機関とも緊密に連携を図りながら,事案の早期発見に努めてまいりたいと考えております。
 また,認知した事案につきましては,その軽重,緊急度に応じまして,児童相談所へ通告するほか,悪質な事案につきましては厳正に対処してまいりたいと考えているところでございます。



<平成13年2月定例会>(2001年3月8日)

(佐藤)  さて,ただいまより,自分のことは思い切り棚に上げまして質問をさせていただきます。
 参議院超党派議員が中心となっていわゆるドメスチック・バイオレンス(DV)防止法案をまとめて今国会への提出を目指しています。DVは,親密な関係にある,あるいはあった男性からの女性に対する暴力をいい,ここでいう暴力は,女性の人格の尊厳を身体的,性的,心理的,社会的隔離で侵すもので,具体的には,身体的,生理的後遺症,精神的後遺症,経済的打撃を与えるものだそうです。要するに,女性の意に反して身体や心を傷つける行為はすべてDVの範疇に入るわけです。
 今回具体的に調べさせていただくうちに,私は,いわゆるシェルターに一時保護されるような場合は,同時に生活指導,生活支援が極めて重要であると感じました。DVの原因の理由の一つとして,女性の経済的な自立が困難だから暴力を受けても逃げられないことが挙げられています。根本的には,性別による役割の強要など,男女の社会的な不平等を解消する真の男女共同参画社会の実現が必要ですが,当座,いかに経済的な自立を支援するかが重要になります。そのために,一時保護施設は,ただかくまわれるだけではなく,同時に次の一歩を踏み出す生活指導施設,生活支援施設でないといけないと思います。
 そこで,保健福祉部長にお伺いいたします。
 県の女性相談所及び一時保護所は,売春防止法に基づく保護を要する女性だけではなく,家庭生活の破綻や生活の困窮等,社会生活を営む上で困難な問題を抱え,現に保護,援助を必要とする状態にあると認められる女性に対しても広く相談に応じ,必要な一時保護をしておられます。しかしながら,DVによる女性の被害がクローズアップされている昨今,女性相談所においては,DV防止法の成立・施行を待つまでもなく,喫緊の課題としてより積極的に対応することが求められています。
 そこで,まず女性相談所のDV被害女性に対する公営住宅への優先入居や就業等に対する支援の現状,さらに,今後の女性相談所の体制整備の方向についてお伺いいたします。
 また,女性相談所の一時保護所に入所した被害女性は,安全な場所への保護を求めて家庭から逃げてきた場合が多く,入所後も,逃げた自分を追って加害男性が押しかけてくる不安に常におびえており,被害女性の自立意欲に大きな悪影響を及ぼしています。被害女性が少しでも早く自立できるために被害者の長期にわたるフォローをいかに行うか,とりわけ被害者の新居や職場を加害者に知られない,来させない方策があるでしょうか。
 加えて,DVは,DV被害女性のみならず,同時に,児童虐待という子供たちへの暴力になってあらわれていることも指摘されていますが,2つの問題の関係をどのように認識され,どのように対策がなされているのでしょうか。
 さらに,県警本部長にお伺いいたします。
 岡山県警の犯罪被害者対策室は,臨床心理士に委託したカウンセリングアドバイザー制度を平成9年7月より始められており,また,24時間態勢の犯罪被害者のための一時的保護施設借り上げを計画されていますが,この制度は,女性相談所とどのような形で連携がなされ,また女性の自立,社会復帰のためにどんな支援がなされているのでしょうか。
 また,バーチャル体験しかできない子供たちに,DVのみならず,暴力そのものがいけないのだと実感させる教育がどのようになされているのか,教育長にお伺いします。
 とりわけ,マスコミに対して有害な性や暴力表現にある種の規制をお願いすることはできないでしょうか。
 この項最後に,DVの問題は,結局は男性が変わる以外に解決方法がないと指摘されていますが,私自身への適切な教育の必要性を含めて,男性への啓発,カウンセリング等は今後どのように行われていくのでしょうか,生活環境部長にお伺いいたします。

(生活環境部長)  ドメスチック・バイオレンスに関しての男性への啓発についてでありますが,DVは,基本的人権を踏みにじり,男女共同参画社会の実現を阻害する行為であります。このため,県としましては,このたび策定した「おかやまウィズプラン21」に基づき,DVへの県民の理解と認識を深めるため,各種の講座や研修会等を通じ,すべての男性自身が暴力を容認しないという価値観を持つよう,徹底した啓発活動に努めてまいりたいと存じます。
 また,男性へのカウンセリングにつきましては,ウィズセンターでの相談を初め,必要によっては専門家の適切な治療が受けられるよう,医療機関等との連携を図ってまいりたいと存じます

(教育長)  次に,ドメスチック・バイオレンスにつきまして,教育面での対応についてのお尋ねでございますが,学校教育におきましては,人権尊重の精神を育成することを基本に据え,実体験が不足しがちな現在の子供に,動物の飼育等生き物との触れ合いや,高齢者施設や保育所等の訪問などの体験活動を通して,生命を尊重し他人を思いやる心など心の教育の充実を図っております。
 その中で,暴力に関しましては,子供の心により強く訴えられるよう道徳用のテレビ番組などを活用いたしまして,人の痛みを実感し,暴力を否定する気持ちを培っております。
 なお,マスコミに対する規制につきましては,番組の大部分は中央で制作されておりまして,県教育委員会といたしましては対応が難しく,現在,関係部局と連携を図りながら,国に対して業界の自粛,自制についての指導を強化するよう要望しているところでございます。

(警察本部長)  県警察におきましては,犯罪の被害者等で保護を希望される場合には積極的に隔離保護をしてまいりたいと考えておりまして,その場合には,同様の活動を行っておられる女性相談所とも十分な連携を図って,適切に対応してまいる所存でございます。
 また,女性相談所で犯罪の被害者等を保護された場合,本人がカウンセリングを希望される場合には,連携をとりながらこのアドバイザー制度の活用についても協力してまいりたいと考えております。
 さらに,この制度により保護した女性の自立,社会復帰のための支援につきましては,関係機関と連携しながら,警察として可能な範囲で対応してまいりたいと考えているところでございます。
 以上でございます。

Copyright (c) 2014 SHINJI SATO Inc. All rights reserved.satoshin.jp