2003年9月6日(土)
【ロシア特別編6 共同体の子供達】

 5日午後には、モスクワ市の南西の郊外の住宅街の中にある孤児院を訪ねました。多分こういった施設に足を踏み入れた日本人はそういないと思います。

 ソヴィエト体制から自由主義経済に移行していく中の1995年に同施設は開設されました。経済が大混乱する中で学校を辞めたり、いけない子供達が非常に多くなり、地区の行政機関ごとに宿泊施設が設けられました。

 その地区でも、地区の親のない(親権が剥奪された場合も含めて)子供達が、地下鉄の駅の入り口やゴミ箱の横で保護されました。自分の意思で入所した子は一人もおらず、警察が届け、風呂に入れ、医者の検査を受け、知能・知識を調べ、先生をつけて一人クラスで教育され地域の託児所に預けられました。当初、6ヶ月の期間が決まっていましたが、1998年に法的に育児所に昇格し、期間制限を廃して、大人になるまで暮らすことができます。

 時として、モスクワでは親のない子供の方が恵まれていると言われるぐらい、サポートは徹底していて、医療費、着る物、全てタダで季節ごとに支給され、毎月お小遣いは200ルーブル。公共交通機関はモスクワ州まで含めてタダで乗れ、劇場など空席があればタダ。大学に行けば卒業まで暮らせ、就職の際に会社に寄宿舎がなければ、最低必要な家具を揃えて国がタダでアパートを与えます。

 夏休みの3ヶ月のうち、1ヶ月はサナトリウムに入りますが、それ以外は黒海海岸でキャンプ。もちろん、医師、看護士、歯科医も来ます。そしてロシア正教の勉強も。現在4才〜18才まで51人の子供が暮らし、スタッフ80人。


 こうした子供達への保護は、「青少年クリエイティブセンター」もそうですが、とても日本の行政では、まずは予算的にできません。仮に同レベルの高齢者、障害者福祉を展開すれば財政破綻するかもしれません。

 この孤児院はぐるりをマンションで囲まれていました。中庭の中にあるようなこの施設のどこからでも周囲のマンションが見え、まさに守られている感じです。子供は、地域共同体のものであるという思想的なものもあるのかないのか、不思議な風景ではありました。

                          ロシア編つづく・・・

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