2003年9月6日(土)
【ロシア特別編4 多民族ということ】

 5日(金)午前には、モスクワ市役所の新館(といっても元公爵邸を改装)にある民族会館を訪ねました。

 ロシアには、100を越える民族が暮らしていますが、モスクワ市にも少数民族を含めて多くの民族が住んでいます。全国に84ある民族別の協会を束ねる事務局として世界文化センターがあり、例えば民族で会議等を催したい時に、市役所に申し込めば、民族会館の会議室やホールを無料で使うことができます。

 いずれ美術館も造りたいということですが、現在は1週間ごとに民族ごとの美術作品の展示をしており、それに合わせてその民族の料理店がオープンしています。

 この建物にはもともと教会部分もあったのですが、それは復元せず、宗教も異なる多民族国家の苦労が偲ばれます。


 1980年代末のペレストロイカ以降、民族別の教育方式がシステムとして取り入れられており、義務教育(国語としてのロシア語を含めて)に、さらに民族別の教育機関が設けられ、その民族の文化・歴史・国語を市役所で認められた規約の範囲内で教え、学ぶことができます。ただし、規約以外のことを母国語で教えてはいけないことになっています。


 国連で採択された「平和文化」については、平和と世界という言葉が同じであり、常に民族問題を内包しているロシアには、非常になじむもので、モスクワ市も「モスクワにおける世界文化」を施策として推進する中で、民族間の様々な問題を越える運動として展開されています。


 今後、新しい民族がロシアに入ってくることはないと思われますが、ソ連なきあとの融和策としても、モスクワが国と連携しながら、こういった動きをしていく責務があります。

 それにしても、それだけの民族が言語や宗教を越えて、いわば政治思想で結びついたということが、今から考えても物凄いことだと思います。ソ連がロシアになり、共産主義思想がなくなっても、こういった施策で一体感を醸成せざるを得ない、そういった国の事情があります。それは、いずれかなり重い負担になってきます。


                          ロシア編つづく・・・

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