2004年5月12日(水)【またまたNPOに関して】

 昨夜、書聖と称される中国書家愛新覚羅毓(いく)セン氏の歓迎夕食会に出席させていた大ました。ラスト・エンペラー清朝17代皇帝・愛新覚羅溥儀の系譜だそうで、紫禁城の中で出てきたキリギリスは、灘崎町におられたという感じです(『ラスト・エンペラー』より)。

 実は、溥儀の弟の溥傑のお孫さんという方が、岡山大学におられたりして、「赤い月」ではありませんが、いわゆる満州も含めた日中の歴史が、非常に身近なものに感じました。



 連日、極めて堅い内容が続きまして申し訳ありません。5月23日の自民党NPOシンポジウムですが、コーディネーターということになると、さすがに、勢いでは、できません。
 正直なところ、頭を抱えつつあります。

 今朝の朝日新聞もタイムリーに、NPOのことが取上げられ、特に、公益法人制度改革についても言及がありました。
 やはり、議論の流れからすれば、そこまで行かないといけないのでしょう。


 以下、シーズの10周年記念イベントの松原事務局長の指摘を踏まえてまとめさせて頂きます。

 法人格がない中で、90年代前半のいわゆる市民活動団体の課題は、政府系資金(補助金)が増える中で、行政の下請けとして、行政に振り回されたり、反政府団体のような認識や補助金の流用や不正経理など「自立性の危機」「独自性の危機」「信頼性の危機」への対応であり、その解決のために、NPO制度の創設が目指されました。
 そして、法制定により、それらが、解決するだろうと考えられていました。

 しかし、1998年のいわゆるNPO法施行、さらには、2001年の認定NPO法施行後、現在全国で、毎月500法人、既に約1万6000のNPO法人が生まれ、さらに、法人格を取得せずとも、任意団体も増えて行く中で、新しい課題が登場してきています。
 もっとも、それは皮肉にも、10年前とよく似た課題であると言えます。

 すなわち、認定NPO法制度も不備の中、会員や寄附金は思うように増加せず、また、補助金・委託事業など政府系資金が入る一方で、行政の監督強化が進み、さらには、企業が営業目的でNPOを作り、犯罪行為を行う隠れ蓑のNPOが増加、情報公開制度も不十分ということで、新たな「自立性の危機」「独自性の危機」「信頼性の危機」が、生まれているということです。


 一方で、NPOの2局化、すなわち、ビジネス的な「非営利目的事業者」と、いわゆる市民活動団体である「市民参加型団体」の2方向に、NPOは、進んで行き、それぞれ、「自立性の危機」「独自性の危機」「信頼性の危機」への対応が異なってきます。

 いうまでもなく、シーズの関心、また、私自身の関心も、後者のNPOにあるわけですが、「自立性の危機」「独自性の危機」「信頼性の危機」の解決、換言すれば、財源の確保、行政・企業との差別化、信頼性の確保は、三位一体です。
 そして、基本的には、目的を明示し、市民活動としての成果を上げ、より多くの関心層を掴み、さらに、情報を公開し、賛同者、特に、寄付者を増やして行くことが、これからの「市民参加型団体」NPOの進むべき道だと思われます。
 そのためには、さらなる税制面の優遇措置など、政策的な後押しが、どうしても必要です。

 そして、NPOが、社会問題解決のための良い循環をつくるコーディネーターとして機能するためには、寄付文化の醸成が必要です。
 松原氏は、寄付を不浄のものとして捉えるのではなく、寄付者が、どうやったら寄付によって幸せになるか考えることの重要性、もっと言えば、個別の寄付交換から合理的な募金が可能な社会システムの構築の必要性を言われます。
 思うに、「公益性」を持って、NPOの本来持つミッションが、寄付者の幸せと全く重なるとしたら、それは、まさにNPOだけの持つ僥倖と言えるかもしれません。

 この点、私は、どうしても政治家の後援会活動を思わざるを得ませんが・・。


 いずれにせよ、日本の経済社会の構造変化、すなわち、官から民という規制緩和の流れ、裏返せば、財政逼迫で官が従来のサービスを提供できないということでもありますが、加えて、「公益」に関わる問題、人権、環境、福祉、教育、国際問題等々に関して、官が対応できないような多様なニーズ、多様な課題も出てきてます。
 こうした中、今後も、NPOの役割は、益々重要になっていくに違いありません。さらに、雇用の受け皿(現在総就業者の4%程度)や経済成長の原動力となることも、求められています。

 現在、NPOに関しての制度的枠組みは、整いつつありますが、まさに、行政や企業と役割分担をしながら、「自立性の危機」「独自性の危機」「信頼性の危機」の克服が図られていかないといけませんし、そのための施策が実現されるようを私自身も尽力してまいります。


 ところで、気になるのは、公益法人(財団法人、社団法人)制度改革です。
 もともと明治時代、民法34条で、公益法人の設立には役所の許可が必要であるとされ、民間への公費支出を禁じる憲法89条により、社会福祉法人(全国約18000)、学校法人(全国約7800)など行政の監督権の強い法人ができ、官製公益法人のみ公費が補助されています。

 しかし、一部の財団法人や社団法人には、天下りや補助金漬けの批判があり、昨年、現在の公益法人に代えて新たな非営利法人を設けるとの基本方針が、閣議決定されています。

 内容は、設立を簡単にする一方で、現在の税制優遇をなくし、寄附金や会費にも原則として法人税を課すという方向で、政府としては、公益性のある団体は税制を優遇する姿勢ですが、公益性の判断主体や基準をどうするかなど問題は多く、NPO法人への影響も必至と見られています。

 なお、公益法人制度改革に関する有識者会議が発表した「議論の中間整理」は下記の通り。ただし、先日、パブリックコメントの募集は終わっています。
 ttp://www.gyoukaku.go.jp/news/h16/news0331.html


 NPOシンポジウムが、公益法人制度改革まで話が及べば、自ずと将来、公益法人シンポジウムが必要になります。
 将来において、宗教法人シンポジウムというのがあるかどうかは分かりませんが。

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