2003年4月19日(金) 【福祉移送特区とNPO】

 構造改革特区のうち、全国第一弾の岡山県全域を対象として、「障害者等移動制約者」のための新しい移動支援策として、「タクシー等でカバーできない部分」をNPO等によるボランティア輸送(「有償」)により補完する福祉移送特区について。


 そもそも14年度単県事業の「福祉移送コーディネート事業」の成果として、タクシー業界等とは、役割分担等十分に協議し、経緯は十分に理解して頂いた上での、改革特区で、現在のところ、業界からの反対等は、ないとのことです。

 要するに、病院等への移送に限定されている介護保険や支援費制度とは別立てで、「移動制約者」のコンサートや買物等への外出の際の利用をイメージすれば良いとのことです。

 具体的には、一般旅客乗用自動車ではなく、自家用自動車で、有償運転を認める(いわゆる白タク)規制緩和の特区ということです。

 運用そのものは、6月1日以降、振興局単位で、タクシー業界を含めた運営協議会の協議を経て、運輸支局を窓口に、NPO、社会福祉法人が、申請→「許可」という流れです。


 さて、気になるのは、有償とは幾らかということ。基本的には、国土交通省の通達で、タクシー料金の半額を越えない額に落ち着きそうですが、私が一番に気になるのは、税制面について。

 残念ながら、収益が上がるほど儲からないことを前提に発案された節があり、NPOボランティアの現状、意向とは、かけ離れていないか、と感じました。したがって、課税のことについて協議不足です。

 儲からずとも、あるいは、儲からないことをNPOは、やるだろう。いわんやタクシー業界の圧迫にはならないだろう、という想定が、果たして当たるかどうか。


 たとえ、タクシー業界の半額とはいえ、人件費等がボランティアで、減価償却が要らない福祉車両を使えば、これは、まともに、NPOの収益につながります。
 33項目にはまれば、当然課税対象。解釈ではまらねば、まるまる入ります。このあたりも、ポイントです。

 福祉NPO、あるいは、社福の中で、税金を払おうが、収益事業の柱にもって行こうとする団体も出てくるかもしれません。特に、介護保険認定事業者なら、病院の移送は、介護保険、そこから、映画に、買物にとなれば、タクシー料金の半額近くを徴収。
 利用者にしてみれば、突然、有償になることもあるでしょうが。

 加えて、会員限定の移送を行う既存のNPOは、会費プラスガソリン代実費と認識していますが、金額設定は、なかなか難しいです。

 さらには、福祉移送用の車両があるという前提がありますが、福祉車両が必要な「移動制約者」の定義も難しく、個人的には、安全面等も含めて、大冒険の規制緩和だと思います。


 いずれにせよ、必ずしも、福祉タクシーが、収益の柱にもなり得ないタクシー業界との住み分けができれば、あるいは、郡部において、少しでも全面的にボランティアだった事業者にお金が入るなら、構造改革特区は、大成功ということになります。

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