【報告事項】  《JR伯備線へのフリーゲージトレイン導入促進
              三県議会協議会総会および研修会出席》

 北九州国際会議場で開催されたJR伯備線へのフリーゲージトレイン導入促進三県議会協議会総会 では、粛々と事業報告、決算報告、役員改選、事業計画、予算案が承認され、小田圭一岡山県議会 副議長に替わり、11期になられる島根県の浅野俊雄県議会議員が、会長に就任された。特に、島根 県が強く導入を希望されているため、今後、国への要望も加速化していくと思われる。
 そもそも、伯備線には、当初、ミニ新幹線の導入の声があったが、平成4年からフリーゲージトレインの導 入要望に替わり、関係3県から50万円が出費され、協議会は運営されており、会長は3県が持ち回りで 行っているという仕組みである。
 研修会は、第二次試験車が保管されているJR九州小倉工場に会場を移し、JR九州、JR西日本、 JR四国はじめ、民間企業12社からなるフリーゲージトレイン技術研究組合の梅田課長および中山工場 長よりお話を伺った。なお、第一次試験車は、JR四国多度津工場に保管されているとのことである。
 ちなみに、昨年の行政刷新会議の事業仕分けで、開発費にも充てられている国土交通省の10年度 の概算要求で盛り込まれた計27億円の「整備新幹線建設推進高度化等事業費補助」が対象となり、 要求通りと提言されたのであるが、これには、次年度に開発続行を再検討するという条件付きである。特 に、九州新幹線長崎ルートに導入予定ということで、JR九州には大きな影響がある。 ただ、あくまでフリーゲージトレイン技術研究組合は基礎研究、実験を行っており、営業車両として、導 入、開発するのは、JR各社の考えによるとのスタンスであった。したがって、伯備線への導入に具体的に沿 った内容ではなかったのであるが、大枠の流れというのを把握することができた。

 フリーゲージトレインの開発は97年頃からスタートしており、第一次試験車両は、JRがこうした試験用の 専用線を持たぬため、アメリカコロラド州のプエブロ実験線を借りて、2年近くに速度向上試験、耐久性確 認試験などを行って、在来線(日豊線や予讃線)と山陽新幹線(新山口〜新下関間)で走行試験を行 った。改良を加えた2007年からの第二次試験車両は、在来線で、130km/hを記録し、昨年の12月 24日未明に、九州新幹線・川内―新水俣間で、270km/hを記録した。ただ、その後の軌間可変技術 評価委員会の評価のように、在来線の軌道の急カーブの走行については、かなり課題が残っている。こうし た様子を当日のDVDで拝見させて頂き、説明を頂戴した。そしてさらに、第三次試験車両の開発が進め られているということである。なお、保管中の第二次試験車両そのものは観ることができたが、可変の動きそ のものは、観ることができなかったのは、少し残念である。
 そもそも、軌道間が広く、スピードを追求していないスペインは実用化しているが、機関車方式らしく、高 性能な動力分散の電車方式で開発しているのは日本だけらしいのだが、幾つか課題がある。導入の可能 性のある路線を走行する特急列車は、所要時間の短縮のため、伯備線のように、振り子機構を装備した 車両を使用している線が多いが、振り子機構を装備したフリーゲージトレインで試験を行う必要があり、な により、台車が非常に重くなり、線路やポイントの傷みが早くなるし、騒音や振動も気になるところである。 意外に保守費用が、かかりそうである。
 また、新幹線と在来線の接続部分である軌間変更専用の路線の設置についても、岡山駅をイメージし ても、かなり費用がかかると思われる。加えて、今のところ、非電化路線では使えない。
 それでも、他の候補路線に比べれば、利用者が多く、フリーゲージ化にかかる費用も少ないことから、まだ 問題が少ない伯備線は、早期に導入される可能性がある。
 少なくとも、この5年で、フリーゲージトレインの研究開発については、いわゆる白黒がつくと思われる。JR 東日本が、最高速度360km/hで営業運転を行うためのデータ収集を目的として開発した試験電車E9 54形(ファステック)の開発が一挙に進んだようなこともあり、今後は、JRの考え方、あるいは、政治的な 動きにも関わるものと思われる。端的に言えば、できるならば、向こう10年内に、さもなくば、開発撤退とい う状況にある。このあたり、導入促進三県議会協議会の成果をきっちり出していく正念場に差し掛かって いるとも言えるだろう。もっとも、地元の費用分担など、具体化してくればするほど、新たな高いハードルもあ りそうに思う。

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