【報告事項】  《第7回都道府県議会議員研究交流大会》

 「第7回都道府県議会議員交流大会」は、地方6団体のひとつである全国都道府県議長会の主催で、岡山県議会からは、14人の出席で、自民党11人、公明党3人。夜の交流会まで出席したのは、、私だけのようであった。全国から、650人もの出席があり、たいへんに議論が白熱した。5時間みっちりと、ある意味、ギラギラしながら話を伺うことが出来た。
 この大会を通じて、議会活性化等の様々な提言が行われてきており、地方制度調査会等の議論に、かなり反映されている。二元代表制の一方を担う地方議会として、執行機関の監視機能に加えて、透明性の向上や政策提言機能の強化など、議会改革への思いが、毎回確認される。
 都道府県議会にとって、道州制の議論は、現在の最大関心事で、「道州制を考えるー都道府県の将来ー」というパネルディスカッションの後、5つの分科会のうち、第1分科会「道州制に向けた具体的取り組みについて」に、出席した。
 分科会の終了後、散会になったので、他の分科会の議論が分からなかったのだが、大会宣言等が出せる会でもないので、やむを得ないだろうか。

 結論から言えば、道州制導入に対して、全国の都道府県議会議員に、かように反対意見があるということを認識していなかった。ただ、反対の根本は、格差の問題、もっと言えば、州都や区割りの問題に帰因している。
 特に、分科会のコーディネータが、「広島は広島が州都になるので中国州、岡山は岡山が州都になるので中四国州を言っている」などと、場内から失笑が漏れる発言をしたので、岡山県の名誉にかけて、「知事は、公的な場で、そうのような発言は一切しておらず、道州制の議論と州都の議論は、峻別すべきと申しております。」と、申し上げた。
 我々議員や経済界が、夢として語っても、県の公式見解ではないのは、広島の知事の発言との大きな違いではある。後日編集される報告書に、写真付きで発言が残るので、岡山県議会で、道州制が付託事件の行財政改革・道州制等特別委員会の委員長が、黙っていられるわけがない。

 もっとも、これは、道州制の議論の本質だろうか?と疑問に思った。岡山市の政令指定都市化の区割りや区役所の位置の問題と似ていなくもなく、岡山市が州都になろうがなるまいが、道州制を導入しないと、この国は、もたないのである。中四国州にならなくても、岡山市が州都にならなくても、この国のために、道州制は導入しないといけないのである。
 地方分権の推進については、昨年末に地方分権改革推進法が成立し、第2期改革が始動したわけだが、行財政改革の視点のみから地方分権が論じられることがないよう、地方分権の本旨である、住民ニーズに応えるための権限移譲を目指した改革にしていくことが重要と、全国都道府県議会議長会会長は、言われるが、800兆円の財政赤字をどうする気もないのは、国の動きを見ていれば分かるわけで、このまま100年で人口を半減させ、超高齢化社会を迎える日本が、このままの体制で、なんで持続可能なのか?1兆3000億円の財政赤字の岡山県は、県庁職員の給与も上がり、期末手当もやっぱり出るが、なんで、これでもつのか?・・・・もつわけがない。それだけのことで、ある意味、実に夢がない話なのである。岡山市の政令指定都市化も、財政問題で論じず、薔薇色論を展開するから、迫力がないのかもしれない。要は、生き死にの問題なのである。
 それでも、やはり、最後は、国に決めて貰わないと、どうしようもない。期待もするし、ジレンマでもあり、ともあれ、明治以来の時代の変わり目に、我々は立っているのである。
 こういう認識が実は、委員長である行財政改革・道州制等特別委員会ですら、薄いのではないかとかねてから、不満に思っている。例えば、国の動きがあったら、それが、委員会で報告されるのが常であるが、国に任せていて、本当に、道州制導入が日の目を見るのだろうか?


<パネルディスカッション>「道州制を考える―都道府県制の将来―」

 まず、コーディネーターの佐々木信夫・中央大学大学院経済学研究科教授は、その論点と課題を整理した。必ずしも、すっと腑に落ちないので、独自の整理であろう。かえって分かり難い面もあった。本来、基調講演でもないのに、ここまで、コーディネーターが、指摘して良いのであろうか?いずれにせよ、分科会まで含めて、この段階で話してしまった感じで、個人的には、不満が残った。

・「道州制論議の背景」には、@分権国家論 A財政再建論 B憲法改正論がある。
・「府県の役割」は、@広域的統一的な事務 A国と市町村の連絡・調整事務 B市町村の補完指導があるが、府県機能の空洞化と広域化という
          二極分化を起こしていく。
・「道州制導入」の理由は、@日本を分権国家にする A広域化時代の対応 B行財政の効率化
             小さな政府をつくる。ため。
・「道州制の内容・構成」は、@現行の都道府県廃止、広域圏を単位にした道州 A広域圏の圏庁と国の出先機関を統合し、国から権限を移し、
              州政府をつくる B州政府を公選の知事と議会を置く地方自治体とし、広域政策を展開する内政の拠点にする。
・「道州制の論点」として、
 @道州制の性格は、 地方庁or広域自治体or連邦制国家への移行を前提とする道州?
 A道州の所管事務は?
 B国の省庁の出先機関の仕事の大半と府県4 の業務の大半を合わせた大きな政府?
 C移行の手順、時期は?
 D市町村と道州の関係、政令市などの大都市と道州の関係は?
 E州政府の自治体組織の設計をどうするか?議会制度、選挙制度、執行機関、公務員制度
・「道州制のメリット」は、@行財政基盤の強化 A行政サービスの向上 B魅了ある地域、都市圏の形成 C国際競争力を強める 
             D大都市圏との経済活力向上
・「道州制のデメリット」は、@国民が望んでいない A現行制度で広域連合を B住民の声が届かない C州の間の格差が広がる 
              D国家がバラバラになる

 道州制移行で、国家公務員の半数以上が身分移管。国は、河川、港湾、道路など公共事業の権限失う。予算編成の骨格を州に奪われる。本当に賛成するのか?警察、国有林野、高等裁判所の移管で、国の統一性は確保できるのか?
 このコーディネーターは、立派だけれど・・・・話しすぎではないだろうか?

 松本英昭・第28次地方制度調査会専門小委員会委員長=元自治事務次官)は、事務方らしく、たいへんな早口で、高度成長期にかえって中央集権的になり、国の機構組織が膨大化していった過去の経緯を説明。中央集権的な道州制ではなく、地方分権との脈絡で導入される道州制でないと意味がない。地方公共団体は、政府・統治体であるという地方自治感の変化もあることを指摘した。

 宮島香澄・日本テレビ報道局記者、道州制ビジョン懇談会委員は、@地域の自立、自治意識を高めていく必要。A役割分担ではなく、まず、基礎自治体がすべきこと、できることを固めて、広域が効率的なら道州がやるという考え方の必要。B格差に対する心配をどうするか。の3点から、道州制の問題を語った。理念の話をして具体的姿が見えないが、この具体論を自治体や都道府県に期待したい、とした。専門家でないだけに、かえって、主張が分かり易かった。美しい女性だから、フロアから質問が集中したのでもなかろう。

 井上洋・社団法人日本経済団体連合会第一産業本部長)は、バブル崩壊後、東京一極集中に対して、憲法改正も含めた連邦制に近い形の道州制を提案する素案をつくったが、コンセンサスを得られず、15年経って、広域的な経済圏をつくる、分権型の国家をつくることは、日本の企業の活動にも重要になった。導入目標は、2015年。
 目的は、@統治機構を見直し、政策立案・遂行能力を国も地方も向上させる。国と道州と、さらに広域合併した300〜500の基礎自治体の役割の組み直し A地域経営という視点 B末端の地域において行政サービスをいかの向上させるか の3つ。

 倉知俊彦・愛知県議会議員は、平成8年の地方分権・首都機能移転調査特別委員会発足から、10年の活動から説明。国の思いに振り回されることなく、地方が一致団結して対処していく必要を熱く語られた。地方政府を一元制の議院内閣制にしたらどうか、また、衆参両院の一院化を提言した。

 鉄永幸紀・鳥取県議会議長は、基礎自治体、住民の視点から見た道州制という見地で、地方分権の究極の目標は、基礎自治体の自立と住民自治の確立になり、限りなく二層制に近い三層制にすべきで、都道府県連合や単独存続もあり得ると熱く語られた。前段については、多いに首肯できる。住民や国民の利益を第一に考えるべきであるというのは、その通りであろう。

 その後、道州制導入の必要性をいかに国民に認識して貰うか、道州制導入が切り札となる問題、逆に浮上する問題をパネリストに問うたが、これは、上記の再確認程度になった。
 むしろ、フロアからの質問があった。総論賛成のパネリストに対して、6名の議員の質問の中には、むしろ、そもそも論で、真の地方分権に繋がるのかと、推進そのものに懐疑的なものがあったのは、前述の通りである。ただ、その根本は、あくまで、地方を思う気持ちであって、保身のための、いわゆる抵抗勢力ではないというのは、地方議員なら誰でも分かる。


<第1分科会>「道州制に向けた具体的取り組みについて」

 あくまで、推進を前提に、首都機能移転の轍を踏まないためのHOWについて、道州制特区推進法に基づき道州制に向けて具体的に取り組む北海道や、各ブロックで道州制構想に積極的に取り組んでいる事例等を通して、その問題点、課題について議論した
 コーディネーターは、昇秀樹・名城大学都市情報学部教授。

 栗山和郎・社団法人関西経済連合会理事は、地元の自治体に対して、現行の広域連合制度を利用した関西広域連合について。ほぼ資料に沿う。実践的な行動が、分権改革、道州制を実現する方法であるとした。(資料参照)広域連合がいかように民を反映しているか疑問に思ったこともあり、この広域連合における都道府県議会議員の役割を問うたのだが、要は、「一緒に検討しよう」というお答えであった。
 竹内英順・北海道議会議員は、道州制特区推進法に基づく取り組みについて、資料に沿って。

 質問も各地の事例を含めたものであったが、大方は、パネルディスカッションでされた指摘であった。私は、コーディネータの昇教授の言葉が、特に印象に残った。
 右肩下がりの時代に入った日本において、持続可能な仕組みを作るために、市町村合併、道州制は、必要不可欠である。合併したら、道州制になったら、こんなに良いことがある、ということもあるが、合併しなかったら、道州制に移行しなかったら、今の生活が持続可能なのか?政治家は夢のある話をしないといけないが、本音はそうなのだ、と頭の片隅に置くべきだ。・・・もっともである。
 まさに、議会に必要なのは、こうした危機意識ではないだろうか?ぬるま湯に浸かった、いわゆる「茹でガエル」のまま、地方が国の動向を見守るようでは、真の地方の自立、住民自治はあり得ない。そのことは、我が国そのものの凋落に繋がるのではないか。
 議会改革もさることながら、我々の乗るタイタニックそのものが沈没中である。

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