【報告事項】  《政令指定都市(新潟市)》

 5月15日の議決を経て、私は、「行政改革・道州制等特別委員会委員長」に就任した。行政改革・道州制等特別委員会は、チボリ公園はもちろん、今年度から、道州制の問題、さらに、岡山市の政令指定都市化についても、付託事件になり、委員会名も変更されている。

 岡山県政の最重要問題に特化する委員会で、個人的には、やりがいのある重要ポストであり、この春の選挙中にも意識して掲げていたテーマばかりである。特に、党としても、岡山市、岡山市議会と密なる連携を図っていきたいと考えている。
 初回の委員会では、委員長として提案して、委員から次回委員会の開催時間を30分早めて、午前10時からの開催にする了解を得た(残念ながら、好評とはいえず、これはその後、定着していない)。本会議の午前10時30分開催をいじるには、要項を変える必要があるようですが、昭和46年以来の委員会の申し合わせを変革する端緒になればと、まずは、できる一歩ではあった。
 さっそく第1回目の委員会から、行革とチボリ公園について、2時間を超える充実した議論の委員会になり、次回6月1日には、道州制、政令市について議論することになった。特に、岡山市の政令指定都市化については、この委員会が県議会の直接の担当で、委員長の責任も重大であり、委員会運営にあたる委員長として、ともかく、委員会で具体的な議論に入る前に、知っておくべきことがあると考え、今回、新潟市に個人調査に入ったわけである。なお、6月早々には、浜松市も堺市も訪ねるので、報告は、それらを合わせて行うことにする。
 なお、政令指定都市の議論については、他都市の事例に比べて遅れ気味であり、直感的に、この1ヶ月内にも、岡山市で、たたみかけるように議論が急速に進みそうで、そのためにも、県と市のコラボレーションが必要であると考えていた。また、その動きを作るためにも、委員長も機動し、臨機応変に委員会を開催しようと考えている。


 ところで、政令指定都市の調査報告をする前に、敢えて、政令指定都市の問題をまとめたい。時間的には、新潟市、浜松市、堺市の調査結果に基づく見解が錯綜するが、敢えて、総論として、2回の調査の前提を書いておく。

〈政令指定都市とは〉

 政令指定都市とは、人口50万人以上で、政令で定める市である。(地方自治法 第12章 「大都市に関する特例」第252条) 現在17市が指定されている。
 しかし、実際の指定は、人口概ね100万人程度、既存の指定都市に比べて遜色ない都市的形態、指定都市の事務を適切かつ能率的に処理することができる行財政能力等を勘案して指定されている。

 そして、福岡市の指定(昭和47年)以降、「将来100万人都市となることが見込まれる人口80万人台」で指定がなされてきたが、政府の市町村合併支援プランにおいて、「大規模な市町村合併が行われ、かつ、合併関係市町村及び関係都道府県の要望がある場合には、政令指定都市の弾力的な指定を検討する。」とされ、「15年4月に合併予定の静岡市・清水市が人口70万人台であること等を勘案」し、「大規模な市町村合併を行う場合における弾力的な指定」の対象とすべきであると、片山総務大臣(当時)が明言した。

 そもそも、法律上は、かように50万人で、政令指定都市になりうるのですから、正確に言えば、適切な運用がされておれば、岡山市は、とっくの昔に、政令指定都市であり、むしろ、倉敷市が、これから、政令指定都市を目指していたはずである。
 いわば原則禁止、きわめて例外的な限定解除と捉えるのが素直であろう。ゆえに、優れて政治的にもなる。
 しかし、この運用上の基準は、曲者で、前回は、当時人口85万3000人の福岡市を指定するために、「80万人」に要件を下げ、以後、広島市、仙台市、千葉市が続き、当時は、静岡市・清水市の大都市同志の合併を後押しするために、「70万人」に、政策変更されたという見方がある。
 ただ、一般には、平成の大合併に際して、市町村合併を行った自治体には、期間限定で運用基準の緩和がなされることになったとされている。
 そこで、「70万人になれば政令指定都市」という、「70万人」が、一人歩きを初めて、全国で、政令指定都市検討ブームになった、というのが実情である。


 ここ最近でも、平成17年に、静岡市(4月現在・71万933人)が、平成18年に、堺市(同83万2959)が、そして今年4月に、新潟市(5月現在・81万2248)、浜松市(同80万8568)が、政令指定都市に移行している。今回は、2回に分けて、これらの全ての都市を訪ねたわけである。

 さらに、相模原市(同70万4767)と我が岡山市(3月推計人口・69万8946人、平成17年国勢調査・69万6172人)が、指定を目指し、さらに、約67万人の熊本市はじめ、全国10箇所(姫路、水戸、宇都宮など)が構想を進めている。
 ちなみに、平成4年に、人口82万9000人で、政令指定都市になった千葉市は、3月現在で、93万1544人。平成15年に政令指定都市になった、さいたま市(旧浦和市・大宮市・与野市)」の人口は、118万8071人。
 かように、ひとり岡山市だけが、政令指定都市化を叫んでいるわけではない。また、逆に、目指していることを公言しているからには、なれなければ、都市間競争の負け組に入り、全国に、岡山市の恥をさらすことになるというのも、こういう意味である。
 ファジアーノ岡山のJリーグ入りと同様、1ランクも2ランクも上を目指さなくてはいけないのである。


 ところで、人口63万人であった岡山市は、玉野市・灘崎町との合併が不調に終わり、御津町、瀬戸町・灘崎町、建部町と順次合併を行い、現在「約」70万人まで漕ぎ着けている。
 問題は、この70万人の基準である。国勢調査を基準にすれば、岡山市は、僅か3828人足りない。しかし、県の人口調査によれば、おそらく、流動人口で、早晩70万人超えるはずであるとされている。
 地方自治法では、5年ごとの国勢調査の人口を自治体の法定人口としているが、総務省がどう判断するかはあるが、一つのハードルであるのは確かえある。
 吉備中央町(平成17年・14040人)との合併があれば、文句なしに70万人を越えるが、岡山市はこれ以上の合併は考えていないようで、ともかく流動人口で、突破するしかないのである。
 加えて、「近い将来100万人を超えると予測」されていない市への指定が可能になったとの解釈で良いのかも、ハードルで、もしそうでなければ、倉敷との強固な連携を言わない限りは、越えられる数ではない。
 ただ、倉敷市(4月現在・47万579人)と合併ということであれば、端から100万人を越えており、期間限定の運用基準緩和にこだわることはなかったということにはなるだろう。
 が、こんなことを言っても始まらない。どうあれ、今さらどうこう言うよりも、総務省の壁を突破するしかないのである。



<政令指定都市のメリット>

 岡山市が政令指定都市になったと仮定して、政令指定都市について。

 政令指定都市の主な特例は、事務配分・行政監督上の特例として、民政・福祉、保健・衛生。都市計画・都市整備、行政組織上の特例として、区の設置。財政上の特例として、税金の一部・交付金の増額、宝くじの発行などがある。
 一定割合、県から市へ、地方道路譲与税、軽油引き取り税交付金、自動車取得税交付金、石油ガス譲与税、交通安全対策特別交付金などが移譲される。
 また、法人格や議会はないが、その行政区単位で、市議、市選出県議の選挙が行われることになる。
 主な移譲事務として、一般的には、児童相談所の設置、精神障害者手帳の交付等、都市計画決定(市街化区域、市街化調整区域に係る決定を除く)、指定区間以外の国道および県道の管理、県費負担教職員の任免、給与の決定、などが上げられる。
 ただ、いわゆる、「まちづくり」については、自由度が増す分、地方道路譲与税の割り増し等はあるが、県道はもちろん、県管理の国道38kmの管理が必要になる。
 なお、5年前のある文書によると、岡山市の政令指定都市化の財政上のメリットとして、122.9億円という試算されていた。


 ところで、岡山市は、中核市であるが、中核市制度は、政令指定都市以外の都市で、比較的規模の大きな都市に、政令指定都市に準ずる事務処理権限を県から委譲し、より身近な場で行政を行うこととするもので、平成7年度に創設されたものである(地方自治法第252条の22)。
 具体的には、福祉事務所の設置、保健所の設置、身体障害者手帳の交付、社会福祉法人の設立認可等、屋外広告物に係る規制など、県から移譲されている。
 この結果、福祉に関わる具体的な議論は、岡山県ではなく、岡山市、倉敷市ということで、既に屋上屋になりがちである。
 現在、中核市には、35市が指定され、9市が、検討中である。
 ちなみに、中核市の要件は、人口30万人以上で、要件を満たせば、まず成れるという意味では、政令指定都市とは、全く異なる。
 中核市から政令指定都市に上がるのが、J1リーグ入りと言えるかもしれない。


 ただ、基本的に、政令指定都市や中核市の議論は、行政間の権限・財源移譲の側面が強く、市民への行政サービスがいかに変わるかというのは、目に見えて分かり難いものがある。だからこそ、グランドビジョン、もっと言えば、夢を語らないといけないのである。


<政令指定都市への道>

 「僕の前に道はない。僕の後ろに道は出来る。」政令指定都市への道程はそんな感じである。すなわち、その手続きは、特に法令で規定もされていないのである。もちろん、先例都市の実践例が豊富にあるので、それに沿っていくことになる。これは、歴史的経緯を含めた地域事情に「大きく左右されるところである。
 ただしかし、はっきりしているのは、県・市の共同作業であるということで、特にここから先は、県・市のベクトルが同じ方向でないと決して成功しない。
 つまりは、お互いの描く夢が共通でなければいけないのである。

 例えば、新潟においては、同格と思っていた都市・仙台市が、平成元年の政令指定都市移行により急速に伸びた「仙台ショック」を背景に、東北か上越か北陸か関東かどちらにせよ地理的などん詰まり感から、大陸を意識した国際ゲートウエイ構想を持っている。ここには危機感があるが、ゆえに、夢がある。
 静岡県においては、県の西、中、東に政令指定都市を創って、政令「県」を目指す夢がある。後述の浜松市や堺市においても、都市間競争の中で埋没してしまうという危機感が、政令指定都市の道に進んだ背景にある。
 政令指定都市・岡山は、倉敷との強固な連携を持って、中四国州の州都を目指す、そんな大それた夢を描けば良いのだと思う。

 少なくとも、過去において、仮に、県・市の相互に連絡を欠いて、意思疎通が図れない時期があったとしても、今後は、ある意味で、総務省に対して、あるいは国に対して、共通の夢を掲げながら、共同戦線を張っていく信頼できる同志でなければならない。

 もちろん、県から権限移譲を受けるというのは、県との戦いの側面がないとは言えないが、県サイドには、もとより市と戦う意志などないはずである。例えば、県サイドが口出しするな的な表現があれば、この信頼関係は崩れてしまうだろう。

 県から市への権限、財源移譲はもちろん、当面は、総務省への窓口は、県であり、また県・市で国との協議に当たることになるので、県議会議員がこのことに関わるのも当然である。ただし、要節度。
 今から思うと、県議会内の超党派の「岡山市及び周辺市町合併問題議員研究会」が動いていた時代は、本当に不幸であった。夢は、「推進」すべきものであり、「問題」のはずはないのであるから。
 これからは、県議会に研究会が出来ても、「推進研究会」であって欲しいものである。


 さて、法定ではないが、これまで政令指定都市に指定された都市では以下のような手続きを経た上で、指定がなされている。
 公表されている基本的なタイムスケジュールで記す。洒落や酔狂ではなく緊急事態であり、この数ヶ月がヤマである。しかも、下記が、完全にスムーズに行くケースであり、逆に、どこかで詰まれば、構想自体が不可能になるのかもしれない。なんとなくできるものでは、絶対にない。今回調査した全ての都市が、確固たる意思とそれに基づいた戦略を持っている。
 ただ、この合併特例法の時限立法の期限が、平成21年度までで、通常政令指定都市は、4月1日に発足しているが、相模原市は、平成22年3月末までの移行を目指しているとのことある。
 もっとも、高谷岡山市長が平成21年4月を目途にされているので、なかなかずらせるものではないと思うが、動かせる可能性もゼロではないと考える。
 いずれにせよ、この流れに沿って最後まで突破できる可能性は、今のところ半々ぐらいではないか、そのぐらい厳しい行程表である。

 既に、昨年10月に、県市の研究会が設置され、事務移譲についての研究が進んでいるが、11月には、岡山市政令指定都市推進本部も設置されている。
 先日は、それをさらに進める「県市連絡会議」の設置が市から県に要望された。

 6月 岡山県議会

    市から要請があった県市連絡会議設置を知事が表明?

    ※各党の代表質問で、スタンスが示されますが、注目は6月14日の我が党の代表質問および知事答弁である。他党のスタンスは、
     分からないが、中央では、連立与党でもあり、公明党も良識ある判断をされると思われる。
     今まで知事は、岡山市の政令指定都市化について、「推移を見守る」→「意義があること」と答弁が動いてきたが、そこからどれ
     だけ踏み込んむかが、ポイント。
      ↓
    ◎県市連絡会議設置

    ※財政問題等の実務的な議論開始。県・市の職員の皆さんの総力を結集する必要がある。議会は、信頼を持って推移を見守る必要が
     ある。
     財政問題等高度な政治判断が必要なこともあるが、ここで議員が、1000以上あり、法定のものも多い権限移譲事項を全て精査
     するなどと言い出したら、混乱するだけ。頑張れ!と、執行権限の範囲とする勇気も必要である。チェックを入れれば良いという
     ものでもない。そして最後の最後は、トップの政治判断に委ねることになる。

 6月 岡山市議会
   行政区画審議会設置条例通過
     ↓
 7月 ◎行政区画審議会設置・諮問
     ↓
  夏  意外に早く中間答申が出る?

 夏から秋

    住民説明会?
    ※選挙区に直結するが、我々議員が、区割り等の問題に深入りしないことが肝要かも。先日の「政令指定都市移行を目指す岡山市政
     に関する懇談会」で、私が、岡山県議会議員が言及すべきではないと言った理由である。
     また、ここで地域間で、区割りや区役所の位置等で紛糾すれば、タイムアウトになる可能性がある。市民の皆様の絶大なる協力が
     必要なところ。市民の総意を結集する最大のヤマである。
     総論賛成各論反対になりがちな場面で、小異を捨て大同につくことが出来るかどうか、そもそも論まで戻らず、突き進めるかに、
     岡山の未来がかかっている。逆に、議論を押さえ込めるだけの力も必要である。絶対に越えないといけない。
10月 行政区画審議会最終答申
    ◎行政区設置方針決定
    ◎県・市で「協定書締結」
     ↑
    これで第一関門突破!!ここが当面の目標である。知事と市長の固い握手が見られれば、未来が広がる。

11月 ◎岡山市議会 『政令指定都市に関する意見書』議決

    知事・県議会に対して、『政令指定都市の実現への要望書』を提出


20年
 2月 ◎岡山県議会 『政令指定都市に関する意見書』議決

 4月 ◎総務大臣に『政令指定都市の実現への要望書』提出

    ※ここから先は、国の政治の世界。ゆえに、今回の参議院選挙で、どうしても片山参議院幹事長に勝って頂かないと岡山市の未来が
     ないというのは、そういう意味。
     政権交代が云々という抽象的で無責任な選択では困るということである。最後は、閣議決定事項である。
     1年前から続いている事前説明・事前協議(「国勢調査を基準にするのか」「近い将来100万人を超えると予測されるか」につ
     いては、ヒアリングに耐え得るものと信じる。)から、総務省との本格協議さらには関係省庁との協議 。前年度から、都合50回は、
     協議が必要と言われている。

10月 ◎政令指定都市移行の閣議決定
    ◎政令公布

21年
 4月 ◎政令指定都市移行・区制施行=GOAL!かつSTART!!→州都への道に続く。

 今回の調査は、実際のところ、こうした行程表に沿って岡山市が突き進んでいくことが可能かという調査である。結論から言って、限りなく厳しく、限りなく無理が要る。突きつめれば、政治力に集約されるかもしれないが、それは、市民の理解や協力と背反する危険がある。
 以上こういった総論を踏まえて、報告に入る。

(新潟市役所)

 面談者は、別紙参照。(新潟市・資料2:以後、新潟市略)
 別紙のように大部の資料を頂戴した。政務調査室を通じて、質問項目をお伝えしていた(資料1)ため、それに沿う形で御準備頂いたのは恐縮である。
 こうした質問をした根本的な疑問は、総論に書いたように、政令指定都市への道程の中で、幾つかの大きなハードルあるいは目標があるが、6月の県市連絡会議の設置、行政区画審議会の設置、10月の行政区設置方針決定、県・市で「協定書締結」、さらに、11月の岡山市議会の『政令指定都市に関する意見書』議決、来年2月の岡山県議会の『政令指定都市に関する意見書』議決という行程は、現実問題短かすぎて、どこかで詰まれば、政令指定都市化が頓挫する恐れがあり、一方で、それゆえに、この短期間で、果たして本当に、市民・県民の意見を十分に反映した、あるいはそれを担保した議論が行えるのかということである。そして、結論を端的に言えば、かなり無理があると言わざるを得ない。が、しかし、それをやるならば、相当な覚悟が必要であるということである。
 ただ私自身が反省すべき点は、新潟市役所の調査では、行程について重点を置きすぎて、財源・権限の移譲について、もう少し説明を頂ければ良かったということである。県サイドから、それは一応聞いてはいるが、他市への後の調査で意識することになった。一方で、政令指定都市になった効果については、2ヶ月で、顕著に語れるものではないが、少なくとも、雇用関係の改善、工業用地が売れるようになった、マンション建設が続いているという効果は出ているそうである。むしろ、経済界の視点からということで、それは、商工会議所からということになる。

 下記は、調査項目と該当資料である。なお報告書の添付資料は、大部であるが、2組頂戴できたので、そのまま。下記の資料番号は、先方の印刷の通り。
(1)政令市移行への事務の進め方
  ・執行体制(資料1−1、2、3)
  ・議会審議の状況
  ・対国・県への働きかけ
(2)行政区の区割りの決定について
  ・区画審議会の運営等(資料2−1、2、3)

 この市役所でのお話を伺って、少なくとも、1年8ヶ月前までに、「行政区画の編成及び区役所の位置」の最終答申が出ているような前々年度の流れは、岡山市の目指すものと違わないのであるが、全く似て非なるもので、根本的な違いは、時間的な余裕と覚悟であると感じた。以下は、資料3に詳しい。
 そもそも6年前に、県が、「政令指定都市移行型」として、市町村合併の合併パターンを示し(政令指定都市移行型は、岡山県では合併パターンとして、そもそもなかった)、その半年後、平成13年8月に、国が首尾良く、「政令指定都市の指定の弾力化」を示した。5年前の平成14年5月に、市議会で、「政令指定都市の実現を目指す決議」が可決されており、そこから行われた市町村合併は、合併協議会でも、合併で政令指定都市を目指すことが強く意識されたものであり、ゆえに、区割りや区役所の位置は、合併の際にかなり念頭にあったと言っても過言ではない。それは、在任特例を一切使わなかったという議員の姿勢にも表れている。
 そして、区割りについても、2年半前に、まず市民から意見募集されて、2年3ヶ月前に、5案を示して、さらに意見募集、それをもって2年前に、行政区画審議会が設置され、合計23箇所で住民説明会が実施されている。そこから先の議論は、むしろ区名についてであり、15000件の意見を集約して、区名を決めて、県市で事務移譲等に関する基本協定を締結している。
 翻って、岡山市の広域合併は、政令指定都市化は強く意識されていたにもかかわらず、区割りや区役所の位置を向こうに置いて、すなわち、地域特性を加味して、区割り後の地域の役割を議論することすらせず、闇雲に、合併特例債と数字合わせのために合併したという批判に対して、強く抗弁できないものもあるのではないか。このことは、今後の過程において禍根を残すような事態を招きかねないのではないか。


(新潟県庁)

 面談者は、別紙参照。(新潟県・資料1:以後、新潟県略)
 新潟県庁での調査項目は大きく分けて、@政令指定都市移行までの事務の進め方についてとA政令指定都市に伴う県議選の選挙区変更についてである。Aについての意味合いであるが、政令指定都市化に伴ういわゆる区割りの議論は、区が、市議会議員はもちろん、県議会議員にとっても選挙区になるため、議論が加熱した場合、区割り等について、何をどこまで県議会議員が言うことが出来るか?どれほど県議会議員が、市に対して、物申してきたのか、ということを知りたかったのである。委員会の議論において、県議会議員の議論の限界を認識しておきたかったわけであるが、結論を言えば、少なくとも、区割りについては、県議会議員は節度を持って、少なくとも、自分の選挙区と絡めて言及することは、舷に避けるべきではないかと感じた。むしろ、権限・財源を移譲する中で、県と市の役割分担についての議論をする方が重要ではないか。
 新潟市の政令指定都市化に関しての県議会内部での実際の赤裸々な議論は、当局も理解していないのかもしれないが、非常に、県議会の関わりが薄いように感じた。議会で話題になったのは、平成12年頃のことで、当時の知事・市長との間で、そうした雰囲気が出来ていったようである。ただ、平成16年7月の県市連絡会議設置についても、議会の根回し等はなかったということで、逆に、岡山市に関しては、県議会が過度に関わりすぎているのであろうか?新潟の議員が、常に大所高所に立って、あっさりしていたのだろうか?それにしても、非常にたんたんとした印象を受けた。
 区割りについては、粛々と決まり、おまけに、議員定数をこの春の選挙で、61人から53人にすることも積極的であったように感じる。地方自治法では、定数66人であるところを5人減していたのをさらに平成18年12月定例会で8人の大規模減。平成19年2月定例会では、政務調査費の収支報告書の領収書の添付を義務付ける条例を全会一致で可決もしている。非常に立派な議会であるとしか言いようがない。(資料2)

 ただ、行政同士の事務以上の手続きには、1年半の議論を要している。また、その協議後、20回以上、総務省と交渉している。その中で、道路や児童相談所関係で、職員は、80人程度減少しているが、農地転用については譲渡しているが、農業振興対策については譲渡していない。「大地と共に育つ田園型政令市」という観点からは、幾分不満があるのではないかと推察されている。
 そして私自身反省しなくてはいけない点は、後の他市の調査ではかなり意識したが、県道が市管理になるわけであるが、道路の起債についての負担をいかに市が負うかこそが、権限財源移譲の最大の攻防、実は、それこそポイントであるという十分な認識がなく、十分に聞けていなかったことである。敢えて言えば、県議会議員が県サイドから市に物申すとすれば、ここなのである。これは調査能力不足と言うしかない。
(資料3)

 それにしも、4月発行の「県民だより」には、新潟市の政令指定都市化について全く触れてもいない(資料4)。これはこれで実に不思議である。ある程度予想はしていたのであるが、県の方からは、政令指定都市が生まれたことについて、かえってなかなか本音が聞けないこともある。そういうことも予想して、商工会議所と自民党県連に寄らさせて頂いたのである。

 ところで、こうした調査の際には、なるべく広報物やパンフレット類を頂くことにしているが、おもしろいと感じたのは、別紙の県職員が直接出向き県の施策等を説明する「にいがた県政出前講座」や料金受取人払いの「知事へのたより」である。また、新潟市の「新潟市シティプロモーション」認定事業募集も良い。案外、こういうところから、一般質問の提言の材料が拾うことが出来る。もっとも、年4回発行する「県議会だより」や委員会の県外行政視察レポートなどは、我々議会側がしっかりと取り組んでいくべきことである。(資料5)。
 もっとも、新潟県庁は、周辺の飲食店に事欠くようないわゆる工業団地用地の中にあり、県警本部庁舎と並ぶ豪儀な佇まいは、ちょっと感心しない(資料6)。ただ、朱鷺メッセなどは、目前の信濃川を船で移動することが出来、これは便利である。


(新潟商工会議所)

 面談者は、別紙参照。(新潟商工会議所・資料1:以後、新潟商工会議所略)
 新潟商工会議所にお邪魔して、やはり一番勢いがあるのは、行政よりも、経済界であるということを感じた。そもそも、新潟商工会議所が『新潟100万都市経済圏構想』を提言したのは、バブル絶頂期の昭和62年である。朱鷺メッセに象徴される新潟の勢いは、この時から生まれ衰えていない。別紙の活動経過を見ても分かるように、その都度その都度、様々な提言や決議を行っている。また、ある意味で町議まで含めた議員対策となる懇話会も、定期的に行っている。特に、政令指定都市推進特別委員会は、平成10年に結成されており、平成11年の選挙前には、100万都市に関するアンケートも採っている。商業のみならず、農業や食料やバイオについても加味して、商工会との連携も模索しつつ、グランドデザインは、平成13年2月に、提言発表されている。「新潟市政令指定都市推進産業会議」が発足し、まずは市に、そこから市と合同で、県や国に対して、運動を展開している。この商工会議所の動き無くして、新潟市の政令指定都市は、決して実現しなかったろう。(資料2、3)5月の会報には、政令指定都市・新潟実現の喜びや勢いに溢れている。(資料4)
 その時その時、財界のリーダーがまさに引っ張ってこられた印象を受けるが、翻って岡山の動きはどうであろうか。この調査の後、会頭にお時間を割いて頂き面談をさせて頂いたのは、やはり夢の推進力としての商工会議所はじめとする経済界の力は大きいからである。言うまでもなく、街を元気にする経済を活性化させるためには、歴史・伝統・文化等々全ての発見・底上げに違いない。

 蛇足ながら、議員派遣ではないが、新潟県自民党県連合会にも立ち寄らさせて頂いた。事務局長から少し議員内部の事情を伺わさせて頂いたが、区割り議論については、権限のない当該議員は、反対を含めて際立った動きはなかったというが、区割り後の「選挙区貼り付け」の決定は、「地獄だった」とのことである。
 そのことはしかと受け止めたい。

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