【報告事項】  《三重県の議会改革勉強会出席》

 昨年12月9日に、第28次地方制度調査会答申が、内閣総理大臣に提出され、この度、全国都道府県議会議長会が設置する「議会制度研究会」の報告書がとりまとめられたが、議会改革先進県の三重県議会が、東京まで事務局ごと遠征して、議会改革勉強会を開催したものである。全国都道府県議会議長会が後援に入っているとはいえ、一県議会の議長の呼びかけに、全国からこれだけの呼応があるというのは、驚きである。それだけ、三重県議会会の改革の評価が高いということの証左であろう。
 別紙のように、都道府県議会の3分の2がなんらかの形で出席しており、我が県議会からは、私一人の出席ではあったが、岡山県議会の体面を保つ形になった。注目すべきは、宮城県や鳥取県が、三重県と並ぶ議会改革御三家として、大挙議員を派遣していたことで、逆に、私一人がのこのこ行くようでは、間違いなく、全国的に、岡山県議会の改革の評価は、高かろうはずもない。


 今回これだけの注目が集まったのは、田中三重県議会議長の開会の言葉にあったように、地方分権一括法施行6年経ても、地方議会は制度改正が行われておらず、議決・監視機関、立法機能にも限界が感じられることへの共感がある。議会の自立性を高め、二元代表制としての議会の地位を高めたい、普通の活動を行っている議員なら誰でも願うことである。  なお、田中三重県議会議長は、論点を整理されてコメントされた。議長が、全国の改革派を自称する議会の面々の前で、これだけ論理的に筋道を立てて説明が出来るというだけでも、順送りでない議長人事があったのではないかと思わせるに十分である。

 岩名三重県議会議会改革推進会議会長の主催者挨拶によれば、一括法施行後の15年10月に、宮城県と連携し、議会改革推進会議を設置し、議会「特区」を国に申請したりしながら、議会招集権を要望する運動を行う中で、連携の必要を痛感され、連絡協議会を和歌山県議会、群馬県議会も賛同、さらに、輪を広げようとされているとのことである。  ただ、こうした呼びかけが、岡山県議会に届いていないことは残念である。いわゆる改革派知事に対抗するため、否応なく議会が改革せざるを得なかったのが実態であろうとは思うが、強烈な個性を持った改革派知事の登場を待つまで、議会は内部的に変わろうとしないのであろうか。

 もっとも、キーノートスピーチの和歌山の「紀の国森づくり税条例」の取り組みそのものについては、13県が制定し、23県が協議中ということもあり、目新しさは感じなかった。我が県の森づくり県民税は、知事側の発案であったが、むしろ、課税に関して、議会が積極的に推し進めるべきなのかは、吉井和歌山県議会議長が言われるように、イギリスの議会が、王の課税を制度で縛ることから始まった中で、それは、必要なサービスには相応の財源をという認識と裏腹であったとしても、疑問である。
 平成13年の三重リサイクル条例の影響で、お隣の全国6位の森林県である和歌山県が、動いたところもあるだろうが、議員発議をするだけの地域特性があると考えるべきで、やはり、議会から課税すべきあるという条例制定は、目的において議会改革とは別のものと思えてならない。後の意見交換会では、中村三重県議会政調会長から、都市部では市議会の反対決議が出たことが紹介されたが、そういうこともあるかなと思う。ただむしろ、6回にわたるシンポジウムやアンケート調査の実施を行われたということであるが、その手法であろう。それが応用が利く。


  次に、キーノートスピーチを題材として意見交換会。

 大森東大教授は、自主課税権の行使を議会が行い、森林に目を向けたことを評価。とりわけ、議員が住民に説明する側にまわったことが議員の能力を高めたとされる。

 さらに、自治省からの天下りの方だろうと推察するが、襲田正徳全国都道府県議会議長会事務総長。議会提出条例は、全国で、平成11年から17年の間に、1000件。912件が可決成立しているとのことである。権限強化条例も、99件が成立。ただ、この権限強化条例については、わが県においても、いわゆる長期計画を議会の議決事項としたことが本当に良かったのかは、運用してみて疑問の余地はある。行政の長期計画に連帯保証のはんこをつき、それに長期間議会が縛られることが、適切なチェック機関としての権能の強化に繋がるだろうか。この点で、襲田氏は、条例の実行の監視、さらには、検証の必要性を指摘された。いずれにせよ、議会が条例制定をするということ自体が、各議会の個性や伝統になり、リアルに県議会の活動が伝わることになるのは指摘の通りで、ともあれ、やってみなければ始まらないと理解した。

 次に、駒林良則名城大学教授。行政法学者も地方議会に感心を持たれる方が少ないとのこと。確かに、岡山の各大学の方々にとって、我々の岡山県議会は研究の対象にすらならないとすれば残念である。氏は、政策立案は、執行部側という思いが執行機関にも強いと思われるが、議決機関が行う政策形成機能は、また別の役割があるかもしれないとする。その中で、
できた条例と執行部の規則との整合性、また、住民意見を集める手続きをルール化する必要を指摘された。もっともである。

 次に、妹尾松山大学教授。昨年1月の四日市でのシンポジウムを受けて、松山市議会も対面型になったそう。現行の法的枠組みの中で、96条1項15項目に制限列挙されていない義務規定、それ以外は、96条2項。しかし、議会として、執行部局が着手できない領域を見出すことがスタートである。たとえば、道州制では地域社会をどう捉えるか問題になるが、単一の自治体を超えた取り組みも求められる。法律である地方自治法に規定がなくても、憲法92条の自治体への後見的配慮である「地方自治の本旨」にとって必要不可欠ならば、憲法に適合するものと解釈すべきではないか。法律と条例は、上下ではなく並列。規律の対象が異なるだけ。自治体固有の自治事務の一義的責任は、自治体にあり、法律との解釈に齟齬があれば、憲法92条に。
 村上福岡大教授。憲法学では、憲法84条租税法律主義の法律には、条例が含まれることに異論なし。
 どちらかというと2人は、法律論に。

 以下、フロアとの意見交換や大森教授のコメントを整理すると、以下の論点になる。
 ※は私の主観。

 @課税自主権と議員提出条例の可能性について
 A議決機関と知事との関係(条例制定後の監視をいかようにしているか)
 B議会での政策立案機能のあり方
 C議員提出条例の憲法上の問題

@について

 まず歳出削減、減税をすべきではという意見もあるが。地方自治体の最終の意志決定機関は議会。税こそ、地方自治の本旨である。税収の2億6000万円よりも効果がある。
  ※ この点については、前述の通り、やや考えが異なる。

Aおよび Bについて

 議会と知事との関係、議会が果たすべき機能のうち、監視機能はこれまで通り、政策形成機能が問題である。地域の問題は誰が「発見」するのか、問題提起については、双方からやっているし、首長と遜色はないはず。次に、どういう形で「解決」するか、リサーチ、「調査」が必要。政務調査費は、ここにあるべき。支出が伴うが、調査分析は重要。ここから政策形成機能始まる。
  ※ 政務調査は、かくありたいものである。

 次は、「企画立案」。執行機関が、執行する事案をはなから執行機関が企画立案することとしているのは、お手盛り。やりたくないことは企画立案しない。逆に企画立案を自らしている知事は強い。議会は、どうやったら企画立案できるのか?地方自治法では、委員会レベルで、企画立案できる。これを議会は強めるべき。条例、規則、予算でも良いが、自分達が企画立案したものが、どう「執行」されているか、どう効果をもたらしたか、「監視」機能も高まる。
  ※ 「発見→調査→企画立案→執行→監視」を通じて、「解決」となる。この「解決」を執行機関に委ねてはいないか。
    それでは、お代官様への直訴と変わらない。

 誓願・陳情の取り扱いについて。こうしたいわば政策提案について、主体的に議論できていないのではないか。現在地方自治法は、手続きを書いてはあるが、議会が誠実に執行したか法的に義務づけるべき。紹介議員制も廃止すべきはないか。
  ※ 誓願・陳情については、議会の政策形成機能の端緒になるという発想は、全くないのが現実ではないか。議会都合で
    不採択になれば、むしろ後退、継続でも、執行しない理由を付与しているようなものである。

 それに即した問題として、議会事務局の機能、スタッフの充実。議会事務局の本質は、議会の強化を願ってはいないのではないか。今までは、庶務をやれば良かった。それが政策形成機能が入った事務になった。
 考え方手法として、議会事務局の人事権は議長に。議長は議会を掌理する。議会が必要な人材を知事部局、外からとれる予算枠を作るべき。知事部局の職員を借り受けているのが現状。知事は、代表としての政治家でり、執行機関の最高責任者であるが、ほとんどの職員は、執行のために採用されている。執行のための職員が、企画立案に当たっていると言うこと。議会事務局の職員が企画立案して何が悪いのか。条例化は、法制も必要であるが、裁判が起こされても、維持できるそういう能力がある議会事務職員が必要なら、特定の職員を併用して、議員の政策立案企画機能に参与して貰ってもかまわないのではないか。そのためにも、議会が付属機関を置けないというのは固定観念。地方自治法に書かれていないし、法律上禁止されてはいない。
  ※ 政務調査に当たるべき優秀なスタッフを有効に活用できていないのは、すべからく議会側の責任であると考えている。
    議員が変わらないのに、事務局スタッフが変わるわけがない。現状は、議員のわがままに、公費を使い、おつきあい
    頂いているだけではないか。

 たとえば、予算措置が必要なものも、条例化できる。議会から企画したものについて、参考人制、公聴会を開くことも出来る。臨時議会招集の要件は、限定が多いが、積極的に解釈可能。文書で質問、文書で応えるような制度もないわけではないが、出来ないと思いこみ。地方自治制度調査会の答申のうち、相当部が残っている。
 知事の専決処分についての取り扱いも問題。税についての条例は、議会が決めていくという発想なら、すべて税に関する条例が専決処分なら、憲法違反ではないか。税に関する条例は、絶対に、専決処分にさせるべきではない。もっとも大きな意義を議会は放棄してきたのではないか。
  ※ 確かに専決処分は、年4回の議会の議決をはずすほど緊急性が高いのは、交通事故の示談処理ぐらいではないか。
    招集せずに、専決なら、理屈から言えば、やりたい放題である。


Cについては、前述。

 その他
 さらに、現在の議員の身分、報酬についての法的位置づけをどうするのか。世間の常識から考えて、報酬、政務調査費はこうあって良いのか。政治家の活動として、公選職という新しいカテゴリーにおいて、今まで以上に働くべきである。大会派に入って、会派がものを決めれば、勉強しなくともすむ。会派と議員、議会の活動をどのように考えていくのか。
 現行法では、議会は、それぞれの自治体の内部機関でしかない。二元代表制のもとで、議会が自治体の最終意思を形成するという共通認識がもたれていない。
  ※ いずれも議会改革の定番的な問題であるが、つきつめれば、個々の議員の考え方につきる。日本で残された数少ない
    護送船団方式が、議会かもしれない。個人的には、この数年で、馴れ合いの中で、退歩している感じすら覚える。
    たとえ僅かずつでも、行政ときっちり対峙し、政策形成がきっちりとできる議会に組み替えていきたい。

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