【報告事項】  《公益法人制度改革・犯罪被害者支援》

【世田谷美術館】

 世田谷美術館は、高校時代の恩師にご紹介頂いた。岡山県立美術館も、新聞社主催の特別展や特定の団体が後援に入ると来場者が多いが、では平日に、地域の住民がふらりと地元の文化芸術を楽しむ環境の中にあるかというと必ずしもそうは言えないと思う。公営の美術館でありながら、何か特別なことがないと訪ねないというのは、さびしい限りである。あるいは、常設展の時にこそ、公設美術館や博物館の真価が問われるのかもしれない。そういった意味では、城下文化ゾーンから後楽園にかけて、もう少し回遊性を高めれば、日常生活の中に文化芸術が溶け込むのではないだろうか。

 世田谷美術館は、1979年「世田谷区基本計画」に美術館が盛り込まれ、1986年に開館。この美術館の基本的性格は、当時の答申の「区民生活に密着した」「生涯学習の場としての」「内外の文化交流の場としての」「自然環境と一体となった都市空間の中の」美術館というコンセプトに現されている。
 渋谷を出て、すぐに、田園都市線用賀駅を降りると、私鉄の駅ではあるが、一方は、再開発ビルに地下で繋がっており、感性な住宅街を抜ける美しい用賀プロムナードに自然と入る事になる。常に、世田谷美術館の案内板があり、まず美術館まで歩いても、道に迷うことはない。プロムナードにも様々な工夫が凝らされていて、人口の小川が、都会の喧騒を一瞬に忘れさせる雰囲気がある。こういった導線は極めて重要であると思うが、残念なことに、桃太郎大通りを歩いていて、文化ゾーンに繋がる道には、さしたる工夫がない。失礼ながら、一連の桃太郎がらみの銅像も、教科書的で月並みである。
 駅から歩いて約15分、戦前はゴルフ場であったというロンドンのハイドンパークに酷似するという広大な砧(きぬた)公園が広がる。その中に世田谷美術館は建つ。23区内にあるというのが、不思議なくらいな感覚があり、総合グラウンドよりもまだ広い公園の中にある。当日は、幼稚園児が、広々とした芝生の丘を走りまわっていた。そういう意味では、はじめに美術館ありきではなく、あるべき場所にあるのだろう。
 ちなみに、一般の方が、何人も、自然の中にある美術館をスケッチしていた。特に、1987年からは、美術大学も開催されているし、友の会では、バス見学会なども行っている。さらには、お花見客相手に、「世田谷美術館さくら祭」も開催している。
 もちろん、世田谷美術館への導線は歩きだけではなく、京急バスもあるが、用賀駅までの200円というのは、安くないし、必ずしも道は、きれいでもないのは付言する。

 世田谷美術館は、財団法人世田谷区美術振興財団によって運営され、管理費や運営費の大部分は、世田谷区からの委託及び補助金を受けている。また、美術品は、世田谷区の公有財産である。

 世田谷区は、東京23区中最大の区であり、人口80万人を超す。すなわち、人口だけで言っても、岡山市より巨大である。 しかも、日本を代表する文化人が信じ難いほど住んでおり、文化水準もきわめて高いと言える。また、区行政として、緑地帯も保存されており、「緑の世田谷」として、住民に最も望ましい居住環境を拡大確保していこうと努めているそうである。ゆえに、世田谷美術館も、こうした地域的特性に深く根差していると言える。
 そんな世田谷区あるから、「区民の日常生活に密着する」ことが、同時に、「国際性を志向する」ことになる。また、市民が、運営資金まで含めて、美術館を支えるという、世界的にはポピュラーな思想も、「世田谷美術館友の会」ではリアルな感もある。
 さらに、世田谷区の作家達によって、世田谷区で創造される文化財を世田谷の文化遺産として、収集、保管、伝えるという歴史的使命もある。
 そういうこともあり、向井潤吉アトリエ館に加えて、昨年は、清川泰次記念ギャラリー、今年には、宮本三郎記念美術館という文館も3館オープンしている。

 この点、いかにも、岡山県立美術館は、現在活動している岡山の芸術家に冷たい。県展ばかりが文化芸術でもなかろう。公立美術館の本来の意味を考えれば、まさに現在、岡山の作家達によって、岡山で創造される文化財を岡山の文化遺産として、収集、保管、伝えるという歴史的使命もあるのではないか。

 さらに、世田谷美術館も加わっているが、都内の国公私立の44の美術館、博物館、動物園、水族館のネットワークで「東京・ミュージアムぐるっとパス2004」というものが発売されている。2ヶ月の有効期間で、ミュージアム巡りができるということで、2000円でも、十分にもとが取れる。(財)東京都歴史文化財団が事務局であるが、岡山にも、こういった知恵が欲しい。



【どうなる?NPO法人制度の未来】

「どうなる?NPO法人制度の未来〜公益法人制度改革の有識者会議報告を受けて〜」は、この4月に出席した「シーズ=市民活動を支える制度をつくる会」10周年記念シンポジウムの続編にあたる。
 4月の報告書では、『現在、NPOに関しての制度的枠組みは、整いつつあるが、まさに、行政や企業と役割分担をしながら、「自立性の危機」「独自性の危機」「信頼性の危機」の克服が図られていかないといけない。ところで、気になるのは、公益法人(財団法人、社団法人)制度改革である。もともと明治時代、民法34条で、公益法人の設立には役所の許可が必要であるとされ、民間への公費支出を禁じる憲法89条により、社会福祉法人(全国約18000)、学校法人(全国約7800)など行政の監督権の強い法人ができ、官製公益法人のみ公費が補助されている。しかし、一部の財団法人や社団法人には、天下りや補助金漬けの批判があり、昨年、現在の公益法人に代えて新たな非営利法人を設けるとの基本方針が、閣議決定された。 内容は、設立を簡単にする一方で、現在の税制優遇をなくし、寄附金や会費にも原則として法人税を課すという方向で、政府としては、公益性のある団体は税制を優遇する姿勢だが、公益性の判断主体や基準をどうするかなど問題は多く、NPO法人への影響も必至と見られている。ただ、今回のイベントでは、公益法人制度改革についてのコメントはなかったので、派遣報告としては、ここまでの言及とする。』と結んでいる。
 今回は、11月19日に、政府の有識者会議が、公益法人制度改革の基本的枠組みについての最終報告を提出したことを受けてのイベントである(資料1)

 まず、雨宮孝子明治学院大学教授の基調講演は、法学者であるがゆえに、法解釈に入っていったので(資料2、3、4、5)、非常に難解であった。
 ざっくりとまとめると、最終報告の内容は、公益法人制度を廃止して、「新しい非営利法人制度(仮称)」に移行し、中間法人制度も、この「新しい非営利法人制度」に統合され、廃止となるというものである。ただ、今回は、NPO法施行5年では、NPOが成長過程にある段階であるとして、NPO関係の強力な運動が起き、NPO法人制度は、「引き続き存置されるべき」ものとなった。しかし、将来的には、NPO法人制度も、制度に組み込まれることになるのではないかという見方が強くある。そして、公益性があると判断されれば、登記だけで設立された非営利法人に対して、税制上の優遇措置を認めていこうというものであるが、この公益性の判断基準、判断主体が、非常に問題になっている。と、いうことになろう。
 敢えて言えば、小泉内閣が掲げた構造改革のうちの公益法人制度改革の端緒となる報告書が出たということであるが、そもそも、この公益法人制度改革の議論は、公益法人を各省庁の天下り先にしたり、補助金を垂れ流しにしたりするという「官益法人」に対する批判を受け、特に、旧KSD汚職事件を機に進められてきたものである。現段階のその答えが出たということである。

 実は、雨宮教授は、この最終報告に反対であると言うのは、特に、中間法人制度の廃止が時機尚早ではないかという視点である。なにしろ、中間法人制度は、2002年から施行されて、現在1200法人ぐらいしか設立がない。中間法人制度は、NPO法人制度のように、市民から作ってくれという声があったわけではないが、公益法人から公益性のないものを移していくという意図があったという。その活用が曖昧なままに、中間法人制度が廃止ということに異を唱えられているわけである(資料3)。逆に、将来的にNPO法人が統合されるということ自体には、反対という立場ではないようである。この点は、NPO側とは主張がやや異なるかもしれない。
 一方、NPO側(シーズ松原事務局長)は、今回の最終報告で、NPO法人が、「新しい非営利法人制度」に統合されず、存置されることに、NPO側の運動の成果として、一定の評価を示しながらも、「存置されるべき理由」に問題があるとする。それは、文面を素直に読めば、あたかも、特定の公益性を有する法人を認証という簡易な方法で設立させるNPO法によるNPO法人は、規律のしっかりした公益性を有する法人による公益的活動の健全な発展を図る「新しい非営利法人」に含まれないと読み取れるからである。ゆえに、NPO法人は、規律の緩い法人であると取られかねない事を危惧しているのである。

 ところで、公益法人制度改革そのものであるが、こうした報告書が出て、実際に施行になるというのは、例えば、2011年からというイメージで動いていくらしい。特に、税制についての議論が行われていないので、来年度いっぱいで、税調で議論が行われて、おそらく、2006年3月末までの通常国会あたりまでに、法案が提出されるのではないかということだそうである。また、NPOに関しては、この「新しい非営利法人制度」の出来の善し悪しで、統合されるかどうか決まり、なによりも、現行のNPO法自体に改良の余地があるということである。


 ただ、問題は、前述の「新しい非営利法人制度」の公益性の判断者である。他分野にわたる判断主体が誰なのか、そして、併行して47都道府県も、NPO法とパラレルに、判断機関が必要になる。この際、公益性の判断基準の要件の客観化など、地方レベルでも、問題になってくるのである。

 いずれにせよ、公益法人制度改革の議論は、始まったばかりで、しばらく見守っていく必要がある。


 ところで、この調査から、たちまち公益法人制度改革についての議論自体は難しいが、このシンポジウムの中で、公益法人とNPOとの境が曖昧になっていることに注目し、私は、12月定例会の一般質問に結び付けた。具体的には、下記のようなものである。

 NPOと行政の協働について岡山NPOセンターの財政基盤検討委員会の「レポート2003−NPO財政力強化への提言−」を受け、NPOと行政の協働のルール作りが必要であると提言したが、この度、「岡山県とNPOとの協働の手引き(素案)」が発表され、今まさにパブリックコメントが募集されている。この手引きは、パートナーシップ社会の構築に向けて、岡山県とNPOとがどのように連携していくべきかという基本認識や協働事業を行おうとする際の標準的な手法について県としての統一的な考え方を示すもので、手引きの作成自体が、NPOと行政の協働により作成され、NPO側の声も良く反映されていて、今までの行政が作成する文書になく、非常に分かり易い文章で、敢えてNPOにぐっと押されている点を積極的に評価するものである。
 しかし、この手引き素案では、社団法人、財団法人といった公益法人との協働については曖昧である。その協働の基準が、NPOとの関係同様に必要なのではないか。
 そして、私は、行政が出資したり人的交流を行うという意味での官製の公益法人であれ、市民活動としてのNPOであれ、それらを「新しい非営利法人制度」という同じ土俵で一度フラットにして、第三者機関により「公益性」を判断された上で、しかるべき非営利法人が、行政と「協働」する時代が来ると考える。岡山県も、現在官製公益法人を含めて300以上の公益法人を所管しているが、NPOを含めて、行革の観点から、県との関わり合いが深い団体との関係を一度フラットにすることによって見直し、再構築する時期が来るのではなかろうか。
 特に、社会経済情勢等の変化により、公益法人が行う事業について営利企業の事業との競合等で、当該事業を公益法人が行うことの意義の低下が認められるような場合には、解散あるいは営利法人あるいはNPO法人等その他の法人形態に転換したり、さらには、公益信託の手法で実施すべきよう指導すべきではないか。
 また、指定管理者制度の導入が叫ばれる今日、例えれば施設管理型と言えるような既存の公益法人については、どういう対応をするか。さらに、外国人研修制度のように、公益法人の所管がなじまないものや、県の委託を受けたいわゆるセミナーや講演会の開催などのソフト面は、NPOの方が、機動的に対応できる場合も多く、官製公益法人の手から切り離すべき事業も、かなり多いように思うが、今後どのように対応するのか。
 加えて、公益法人ばかりではなく、要は、経営破綻すれば、県が一蓮托生になるような団体については、県の直轄に戻すか、さもなくば予め県民の皆様に広くお伝えしておく必要があると考えるがどうするのか。
 また、手引き素案の中でも指摘されているNPOと県庁内の各部署をつなぐワンストップの協働相談窓口の必要性について、特に、来秋以降は、「岡山県ボランティア・NPO活動支援センター(仮称)」内に、担当セクションごと移転して設けるべきで行政サイドの窓口は何も本庁にある必要はないのではないか。

 これらは、参考資料として、答弁ごと(資料6)に添付して報告する。



【被害者支援都民センター】

 この9月に、縁あって代表を中島岡山県立病院院長が務められる「被害者サポートセンターおかやま(VSCO)」の啓発イベントにお邪魔させて頂いた。10月3日が、全国被害者ネットワークが制定した「犯罪被害者支援の日」であり、また、同会の存在を広くアピールし、支援の輪を広げようという趣旨の会であった。(資料 1 )
 ちなみに、「DV防止サポートシステムをつなぐ会・岡山」という会もあることも承知している(資料2)し、DV被害者支援の重要性は、何度も本会議等で申し上げてきたが、今回の報告の中で、「犯罪被害者」と言う場合、殺人・傷害・交通事故などの犯罪や事故、性被害、DV・ストーカー被害など全般を称しており、DV被害者は、犯罪の一類型として捉まえている。
 VSCOは、岡山弁護士会が中心となって設立から1年であるが、犯罪や事故の被害者や、そのご家族・ご遺族などに対して、研修を受けた電話相談員が、具体的な悩みについて、解決の糸口を見つけるお手伝いをし、さらに、弁護士、臨床心理士、精神科医、警察などの専門家や関係機関を紹介されるということで、現在は、週2回の電話相談や刑事裁判への付き添いを行っておられる。ただ、私自身が保護司でもあり、正直、幾分、加害者の弁護にも立つ弁護士のイメージとは良い意味で違う活動のようにも思えるが、DV被害者支援の議論と比しても、もうひとつ具体的な支援のイメージが湧かず認識が不十分であった。
 特に、日本の場合は、被害者には誰も手を差し伸べることなく、かえって、被害者は、様々な二次被害に苦しむ傾向があり、むしろ、被害者を責めたり、無理に励ますことで、かえって追い込むことにもなりかねないということで、私自身、軽軽に被害者支援をというほどの理解ができなかった。自転車が盗まれて腹が立つというレベルの話ではなく、ある日突然大切な肉親の命が奪われた時、奪った相手をどう思い、何に癒されるかという想像は難しい。
 その時より、ずっとこの(社)被害者支援都民センターの事が気になっていた。特に、「官製」の支援組織が、なぜ既に東京にあるのかというのが一番大きな疑問であった。

 やっとこのセンターを訪ねた前日の12月1日に、犯罪被害者への総合的な対策の枠組みを定める犯罪被害者基本法(資料3−1、3−2)が成立した。ちなみに、11月28日には、岡山県でも、この法律の制定を意識した「被害者支援フォーラム2004」が、警察本部県民生活課を事務局として開催されている(資料4−1、4−2)。そもそも立法の発端は、1991年の「犯罪被害者等給付金支給法10年のシンポジウム」で、飲酒運転のひき逃げ事件で18歳のご子息を失った大久保恵美子氏(被害者支援都民センター事務局長)の「日本では被害者を救う道は何もありません」との訴え。この発言を受けて、山上皓東京医科歯科大教授(被害者支援都民センター副理事長)が、92年に、犯罪被害者や遺族の精神的ケアを目的とする犯罪被害者相談室を設置。発展的に改組され2000年に設置されたのが、まさに、(社)被害者支援都民センターである。つまりは、実は、このセンターそのものが、犯罪被害者基本法成立とともに、歩んできた組織なのである。
 そして、2002年5月には、東京都公安委員会から「犯罪被害者等早期援助団体」の指定を受け、さらに、同年11月には、会費を納めたり。きふした者が、税法上の優遇措置を受けられる「特定公益増進法人」に認定されている。
 後述するが、この「犯罪被害者等早期援助団体」の指定の意味が、今回の調査の主眼となり、結論から言えば、岡山県に、こうした「犯罪被害者等早期援助団体」を設立すべきであるというのが、この報告書の主張になる。

 要約すれば、犯罪被害者支援の基本は、まずは、『犯罪を認知する警察と「犯罪被害者等早期援助団体」が中心となり、関係機関や団体、企業、地域等との連携を密にして、社会全体として被害者を支援し、被害者の持つ自己回復力を支えること』であり、そういう施策を取るべきだ、ということになる(資料5−1、5−2、5−3、5−4、5−5)。


 自らも警察庁におられた青木俊一専務理事から、「被害者の辛さや痛みを一番分かっているのは警察であるはずなのです」という言葉を聞き、首肯した。にもかかわらず、刑事事件であれば、訴追は検事の仕事であり、弁護士は、加害者の弁護にまわり、被害者支援は、蚊帳の外に置かれ、被害者の痛みが一番分かるはず警察は、頼りにならないような感すらある。むしろ、警察官や検察官による事情聴取、裁判における証言、心無い言葉や対応、さらには、マスコミや周囲の人間の対応も含めて、精神的身体的経済的被害を受けた被害者をそうした二次的被害が襲う事になる。
 特に、因果応報、喧嘩両成敗という考えがある我が国では、犯罪被害者の落ち度が言われるが、昨今は、何一つ罪のない人間が、ある日突然言われなき理不尽な犯罪の被害者になる。この時、被害者を支援する者がいなければ、国や社会への絶望感が、いずれ自暴自棄となり、自滅の道しかないということになる。
 さらに、「電話相談が出来るようになるまで、通常、1年も、半年もかかりますよ」ということで、実際に、心理療法士や精神科医の出番は、被害を受けてからかなり後の事だそうである。いわんや、同じ「直接的支援」でも、被害者が裁判所の証人尋問を受ける場合や公判の傍聴を行う「法廷サービス」も被害からかなり時間が経っての事であり、むしろ、支援の時期が早ければ早いほど支援の意味が深まるということで、「危機介入」重視という考えを同センターは、とっている。
 この点、引き合いに出して恐縮であるが、岡山のVSCO(資料6)あるいは、東京犯罪被害者支援センター(CVSC)(資料7)は、実は、「危機介入」に関しては、基本的に、弁護士や警察の出番である。VSCOは、これを橋渡しするわけであるが、逆に、警察から、他の団体に橋渡し・連携をしても良いはずである。敢えて言えば、公安委員会から指定を受ける「犯罪被害者等早期援助団体」とは、警察サイドからも連携される組織と言える。

「犯罪被害者等早期援助団体」とは、2002年4月施行の「犯罪被害者等給付金の支給等に関する法律」に基づき、都道府県公安委員会が犯罪被害者等の早期軽減に資するため、@被害者等に対する援助の必要性に関する広報活動及び啓発活動を行うこと。A犯罪被害者等に関する相談を行うことB犯罪被害者等給付金の裁定申請を補助すること。C物品の供与又は貸与、役務の提供その他の方法により被害者等を援助すること。の事業を適正かつ確実に行うことができる非営利法人を「犯罪被害者等早期援助団体」として指定する制度である。
 そして、指定を受けると、当該団体の求めに応じて、警視総監若しくは道府県警察本部長又は警察署長は、被害者の同意を得て、被害者等の氏名、住所、犯罪の概要等に関する情報を提供することができる。
 多くの被害者は、被害直後には、麻痺状態や混乱等のために、自らのニーズを判断して支援を求めることはできない。電話をかけようと思えるまでにも、約1年から3年くらいの期間が必要である。また、支援してくれる民間団体が信用できるのか、本当にプライバシーを守ってくれるのかなどの不安から、民間団体に支援を求めることに躊躇する傾向にあった。
 しかし、この制度により、被害者支援の法的根拠が明示され、被害直後の危機的状態の中で、当該団体の犯罪被害者相談員等が被害者に接し、被害からの回復のために、最も効果的である直接的支援を行うことができるようになった。
 ところで、こうした連携の中で必ず問題になってくるのが、来年4月から施行の「個人情報保護法」である。むやみに、情報を提供すれば、2年以下の懲役、10万円以下の罰金である。さすれば、行政からすれば、個人情報については、情報提供しても良いという法的根拠が必要になる。
 私は、早急に 「犯罪被害者等早期援助団体」を設立するか、あるいは既存の団体を指定すべきであると考える。

 また、同センターから「もう一度会いたい」という遺族の手記が出版されている(資料8)が、これは、涙なくしてはとても読むことができない。その中で、「自助グループにおける同じ体験をした者同士の共感『私ひとりではない』という思いは、大いなる励ましと慰めになる。」という言葉が出て来る。多分当事者でないと本質的な事はわからないことの方が多いと思う。そして、その活動の中から、刑法改正「危険運転致死傷罪」成案のための署名活動、「生命のメッセージ展」の全国的展開が行われている。
 また、専務理事の「『救済』と『支援』とは違います。あくまで被害者は、自分の力で生きていくのです。人間には、その人自身が持っている対応能力や対処能力があるため、自分で問題を乗り切る能力を持っているのです。それを支援するのです。」という言葉が耳に残る。被害者は、支援者の気持ちがいかようなものであるか敏感に察知され、即座に心を閉ざされてしまう。そのことを意識して、センターには、被害者の方が気楽に集えるグループ活動のための部屋があった。会議室のような部屋ではあるが、自由に出入りができる。私は、DV被害者のような犯罪被害者の自助グループが活動する場の整備が極めて需要であると考える。
 犯罪が起きてカウンセリングすれば終わりではなく、実際は、葬儀、事情徴収、裁判 被害者は、精神的に異常になったのではない、犯罪による衝撃で元来持っている能力を喪失している思考も行動も出来なくなっているだけなのだという思いがある。

 さらに、これは、犯罪被害者支援に限ったことではないが、多くのボランティアの方々にも支えられているいわゆる電話相談等で、相談業務に当たられる方の養成の支援、また、二次的被害とも言われる相談者のメンタルヘルスの問題に対しても、相談員の方から問題があるのですよというご指摘を頂いた。


 以上かなり詳細に書いたのは、2日の調査を持って、15日に、本会議の質問に上げたからである。多くの疑問は、直ちに、知事、警察本部長、保健福祉部長に提言した。答弁書の写しも、参考資料として添付する(資料9)。

 実は、犯罪被害者等早期援助団体の指定については、現状では難しいという認識はあった。いうまでもなく、財政面の問題である。センターは、その財源をほとんど寄附と会費で賄っていた。寄附は、船舶振興会や自転車の関係から多くあり、また、都の公安委員会から宣伝費として、1200万円の委託があり、それをポスター印刷代に当てていた。さらに、6ヶ月交替で、現職の検事が研修で入っていたし、警視庁からの出向もある。施設自体も、上は都の公営住宅で、下の1、2階を新宿区の「元気館」という名の以前は勤労者福祉施設と共用している状態であった。敢えて言えば、事務員が常駐して月曜から金曜日まで運営ができる金と人とノウハウがあった。
 この点、岡山の現状では、犯罪被害者の絶対数も含めて、センターと同様の形と言うのは難しいとは考える。ただしかし、DV被害者支援も含めて、物の考え方という意味でも大きく参考になることがあるように思う。

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