平成23年11月定例会 一般質問 自由民主党 佐藤真治


1 児島湖流域の防災体制等について
 (1)児島湖の管理体制の見直し      (農水)[ 知  事 ]
 (2)市町等への要望    総務・土木協力(農水)[ 知  事 ]
 (3)県管理樋門の操作          (土木)[ 知  事 ]
 (4)湖内の水位             (農水)[農林水産部長]
 (5)旭川ダムの放流等
    ア 潮位との関係等     農水協力(土木)[ 知  事 ]
    イ 制限水位の見直し        (土木)[ 土木部長 ]
    ウ 放流時の周知          (土木)[ 土木部長 ]
 (6)児島湖流域下水道浄化センター    (土木)[ 知  事 ]
 (7)浚渫
   ア 児島湖等         農水協力(土木)[ 知  事 ]
   イ 周辺市町との連携         (土木)[ 土木部長 ]
 (8)土捨場               (農水)[農林水産部長]
 (9)西南側地区の整備方針        (農水)[農林水産部長]
 (10)都市近郊型の浸水対策    農水協力(土木)[ 知  事 ]
 (11)遊水池としての農地利用       (農水)[ 知  事 ]
 (12)排水機能の現状等   総務・土木協力(農水)[ 知  事 ]
 (13)雨水処理              (土木)[ 土木部長 ]
 (14)海岸保全施設の現状等        (土木)[ 知  事 ]
 (15)締切堤防の嵩上げ等         (農水)[ 知  事 ]

2 児島湖流域以外の防災体制について
 (1)民間企業等との協定締結       (総務)[ 知  事 ]
 (2)BCP
   ア 中小企業の支援          (産労)[ 知  事 ]
   イ 県の業務             (総務)[ 危機管理監 ]
 (3)広域防災公園        土木協力(総務)[ 知  事 ]
 (4)災害発生時の体制          (総務)[ 危機管理監 ]
 (5)災害情報の提供           (総務)[ 危機管理監 ]
 (6)避難所           教育協力(総務)[ 知  事 ]




(佐藤)  おはようございます。
 自由民主党の佐藤真治でございます。
 やれ早口だ,やれ量が多いと,いろいろあるかもしれませんが,これも一つの病でございますので,何とぞよろしくお願いいたします。
 ことしを振り返ってみたときに,東日本を襲った大震災・津波,大変な猛暑,岡山県にも甚大な被害をもたらした台風と,まるで我々人間の営みをあざ笑うかのように,大自然が猛威を振るいました。もはや我々は,神仏に何かを試されているのではないかと,えも言えぬ不安に襲われると同時に,四季折々の美しい風景のある我が祖国は,こうして地震や津波,台風と,火山噴火という大天災がある国でもあり,しかしその中で我々の先人たちが確かに生き抜いてきたこと,そして我々も生き抜いていかねばならないのだということも痛感した年でございました。そして,その中で我々が守り続けてきたものは,大自然への畏敬と共生の念,生かされていることへの感謝,そしてかたいきずなであることを,今,改めて思い知らされたように思います。しかし,その中で政治としてなすべきことを速やかに行うことこそが,我々の使命だと思います。特に,大きな被害を出した台風12号,15号につきましては,来年以降も同じような被害が地域に出るとすれば,これは人災であるというそしりは,免れないと思います。
 特に,6月定例会で私は,東日本の震災を受けて,児島湾締め切り堤防について,国に対して安全性の確認,強化を強く求めるべきだと申し上げ,さらに児島湾に排水ができない事態が想定される場合の児島湖の水位の調整を含めて,地域の安全の確保をすべきである。さらに,倉敷川や笹ケ瀬川について,老朽化した脆弱な堤防の整備をすべきであると申し上げました。知事は,児島湾締め切り堤防の安全性の確認等については,その後,鹿野農林水産大臣にお会いしていただいて,国に対して強く求めていただきましたが,児島湖については,あらかじめ干潮時に締め切り堤防の樋門操作によって児島湖の水位を下げるなど,適切な排水管理に努めている。そして,干拓地の浸水対策として,岡山沿岸海岸保全基本計画に基づきました堤防の整備や,排水機場の設置を進めているとの御答弁でございました。しかし,こうした危険性を指摘させていただいたにもかかわらず,その後,残念ながら9月3日の台風12号,その間の台風,大雨,さらには台風15号で,岡山市南区全域を初め児島湖流域に避難勧告が出され,各地に大きな被害が出て,児島湖流域の市や町からは,県の児島湖の管理体制の見直しについて強い要望の声が上がっております。その点につきまして,まずどのように御認識されているのかをお伺いいたします。
 さらに,市や町は県に要望して,それを受けた県のほうは,国に方策の検討を要望して,資料提供しただけでは,根本的な解決にはほど遠いものがございます。逆に,児島湖流域の市や町に,県として具体的に要望できることがあるのか。また,国に具体的に,何を,いつ,どのようにお願いをするのか,お伺いいたします。
 加えて,我が党の代表質問に対して,児島湖周辺地域の県管理樋門の操作を原因とする被害は発生しておらず,管理に問題はなかったと答弁されておられますが,問題がないということは,改善の余地すらもないのかをお伺いいたします。
 児島湖流域では,少し雨が降るたびに農業用水をのぞき込んで,また,水があふれるんじゃないか,そうしたトラウマを地域住民の方が持っておられる状況で,私は改めて児島湖,児島湾,児島湾締め切り堤防に対して手を加えなければ,来年も台風が来て児島湖がいっぱいになって,もう児島湖に水が流せんようになった。そうした時点で,また,地域が水につかるしかないんかと,こうした不安は払拭されないというふうに思います。
 そこで,短期的,中期的,長期的に,児島湖,児島湾,児島湾締め切り堤防に対して,市町村,県,国が何をすべきか,どう連携すべきかについて,私なりの提言,質問をさせていただきます。
 まず,地域の方の声として,台風が来る,大雨が降る,そういうときにはもっと早く児島湖の水位を下げるべきではないかという声が大変に多くあります。もちろん干拓農地の水源としての役割を保つため,湖内を一定の水位に保つ必要がございますが,さらに弾力的な運用が可能か,周辺との調整の仕方を含めて,農林水産部長にお伺いいたします。
 ところで,9月3日の台風12号のときに,児島湖の水位が正午ごろに2メートルを超え,その後も急激に上昇いたしましたが,児島湾締め切り堤防の樋門があけられたのがやっと夕方になってからでございました。当日の児島湾の満潮の時間は,午後3時ごろ。大体6時間をかけて満潮や干潮を繰り返すわけでございますが,締め切り堤防があけられるタイミングは,児島湾が児島湖よりも潮位が低いとき,すなわち干潮のときでございます。それは,日に2回しかありません。しかし,9月3日の前日は,樋門を1回しかあけることができませんでした。なぜか。言うまでもなく,本来の干潮の時間に児島湾の潮位が児島湖より下がらなかったからであります。なぜ児島湾の潮位が下がらなかったか。1つには,台風の位置。紀伊半島に長く居座って奈良県や和歌山県に甚大な被害をもたらした台風12号でありますが,この場所に台風がいますと,岡山県北では偏西風,いわゆる広戸風が吹きます。一方,県南では引き潮を押し戻してしまう。それで,児島湾の潮が引かなかったということもあります。加えて,旭川ダムの放流が問題だったのではないかという声もございます。これは,大潮と台風が重なった平成16年の台風でも指摘されましたが,旭川ダムがゲート放流を始めると,4時間から5時間後に児島湾に水が到達する。その放流水が潮位に影響したのではないかという声でございます。そして,今回,旭川ダムは,真夜中の午前1時にゲート放流を始めました。そのときに,決してダムは満杯ではございませんでしたが,流域に多く雨が降ることが予想されたため,制限水位以下でありましたが,放流を開始したわけであります。
 私は,この判断自体は,むしろ努力されたものだったというふうに思います。ただ,結果として,その放流水が児島湾の干潮の時間に向けて放流された,これが問題だということであります。もちろん旭川の流量がどれだけ児島湾の潮位に影響するのか,この数字を出すのは不可能だとは思うものの,干潮を迎える時間に毎秒1,000トンを超える水が放流されたわけですから,何がしかの影響はあったんじゃないかというふうに思います。特に,今回アンラッキーだったのは,県北の大雨が旭川を流れて県南に到達するその時間に,県南が大雨だったということであります。いずれにせよ,自然現象の児島湾の潮位について,人為的にわずかでも影響を与えられるのは,旭川ダムと湯原ダムの放流しかないわけであります。
 そこで,湯原ダムの放流も加えた旭川ダムの放流と児島湾の潮位の関係についてどのような認識をお持ちでしょうか。また,今後,児島湾締め切り堤防の樋門の開閉と旭川ダムの放流についてどのように連携されるでしょうか。工夫の余地はないんでしょうか,あわせてお伺いいたします。
 加えて,昭和29年につくられた旭川ダムにつきましては,昭和59年に予備放流方式から制限水位方式に変更されて以来,見直しが行われていません。旭川ダムの利水は,言うまでもなく,発電用の水と岡山市民の飲み水ですから,これを安易に放流して渇水になれば,これこそ人災になってしまいますが,旭川ダムの制限水位の見直しについて,今後の方針を土木部長にお伺いいたします。
 加えて,旭川ダムの放流のサイレン自体が何かすら御存じない方が想像以上に今回おられましたが,旭川ダムの放流時の地域への周知の徹底,これを含めた対策について土木部長にお伺いいたします。
 次に,児島湖の側について。
 今回の台風は,大雨による被害が多かったということが,平成16年の高潮被害が多く出た台風との決定的な違いであったというふうに思います。ただ,児島湖から児島湾に排水ができなくなったというのは,共通であります。そして,今回,観測史上最大の水位を児島湖も記録したわけでありますが,その中で気になるのは,児島湖畔の玉野市東七区にある児島湖流域下水道浄化センターの放流水が急激に増したということであります。台風が来たらトイレに行く回数がふえるという人も,中にはおられるかもしれませんけども,基本的には降水量と下水の浄化水の放流量の増加というのは,本来イコールではありません。要は,雨水が下水道にかなり入ってきたということであります。地域によっては,マンホールのふたがぱかぱかあいていた。あるいは,わざわざそれをあけて雨水を下水道に流したところもあります。結果として,現状の浄化センターの処理能力を超えた下水と雨水の流入があって,消毒液を入れて中間処理の段階で放流をせざるを得ない状況になりました。ただ,それでも児島湖の水位への直接的な影響は,1センチにも満たかなかったというふうに伺ってはおるんですけれども,しかしこれも児島湾の潮位同様,人為的に影響を及ぼせるもの,逆に言えば,改善の余地があるものじゃないかというふうに思います。
 まずは,児島湖流域下水道浄化センターの施設拡大も予定されておりますが,放流量の増加が児島湖の水位に及ぼす影響について,現状を含めて御認識をお知らせください。また,改善の余地がないのか,改めてお伺いをいたします。
 関連して,児島湖の容量自体が砂や泥が堆積して下がっているという指摘があります。また,児島湖に流入する県管理河川について,すべてについてしゅんせつの要望が上がっております。基本的に,しゅんせつにつきましては,最下流部から行わなければ意味がありませんが,国に対して,児島湖内のしゅんせつを求めることを含めて,今後の児島湖に流入する県管理河川のしゅんせつについてお伺いいたします。
 特に,最下流域になる浦安地域では,農作物の品質向上のために水質の改善,これは極めて重要な問題でありますが,こうした児島湖に流入する河川や用水の河口部と合流部においては,岡山市初め周辺市町との連携によるしゅんせつを行ってはどうか,土木部長にお伺いいたします。
 また,国のしゅんせつにより揚げた泥をわざわざ固めて児島湖内に集めて土捨て場をつくって,これを県が管理されております。地域では,これを無用の長物という声が上がっておりますが,この土捨て場を今後どうするおつもりなのか,農林水産部長にお伺いいたします。
 さらに,6月議会で申し上げた児島湖内部で堤防がない西南側の地区に,今回やはり浸水被害が出ました。1つには,岡山市所管の郡漁港でありますが,一部が民地であります。再度危険性を指摘させていただいて,今後の整備方針について農林水産部長にお伺いいたします。
 ところで,今回,雨水を取り込んで児島湖流域下水道浄化センターの放流量が増加したことに,私は2つの問題があるというふうに思います。
 1つは,大雨を受けとめる地域の保水力がかなり落ちているということであります。つまりは,昔は水田で宅地化された地域では,雨が一挙に農業用水に流れ込んでしまう,それが一挙に道路にあふれ出るということであります。雨水がたまらないのであります。それが児島湖に一挙に流れ込んでしまう。特に,埋め立て,干拓で農地をつくってきた地域では,農業用水が張りめぐらされておりますが,これ自体そもそも田んぼを潤しながら流れる川でありますから,速く流れることを想定しておりませんし,かんがい排水用のポンプも田んぼに水を張ったり引いたりするものでありますから,排水能力自体はそもそも高くない。つまり,児島湖流域はもともと水が抜けがたいわけであります。もちろん農地が宅地化される,発展する,そのことのすべてがいけないわけではないわけでありますけれども,それをするのであれば,保水力と排水力を補う必要がある,あるいはポンプや樋門による水の制御をよほどきちんとしておく必要があると思います。特に,今,地域住民の方々にも目の前を流れる農業用水が,これが一体どこから来て,どこに流れるのか,そして樋門やポンプがどこにあって,それをどなたが管理されているのかもわからなくなってしまっている,そうした節がございます。実際は,土地改良区や水利土木委員,町内会や消防団の方々が必死の思いで樋門やポンプの管理をしてくださっておりますけれども,昔とは決定的に地域の保水力が異なってきています。恐らく台風でなくとも集中豪雨,ゲリラ豪雨で,農地を宅地化した地域で浸水被害が今後拡大する可能性がございます。
 まずは,遊水地のような保水機能の確保,道路マップのような農業用水マップをつくり,さらには信号機のような樋門やポンプの設置状況,機能確認等,根本的なチェックをする必要があると思いますが,こうした農地を宅地化した都市近郊型の浸水被害に対する対策をお知らせください。
 さらに,最大の遊水地というと,私は水田そのものであるというふうに思います。防災というよりも,これは減災という観点から,食の確保,環境保全などに加えて,農地の多面的機能として,地域の減災対策として,大規模な農地を緊急時の遊水地としても確保・保全するという考え方も必要であるというふうに思いますけれども,御所見をお知らせください。
 加えて,今回排水ということでは,揚排水機の排水機能や消防団を含めた可動式のポンプをフル回転をさせたものの,老朽化等の排水力不足,故障,燃料切れが続出いたしました。農業用の排水機設置には,背後地の農地の面積基準が大変重く,今後はやはり可動式の排水ポンプ,さらには今回の被害の中でフル回転した国土交通省のポンプ車のような可動式の機動性の高い車両を,例えば,県北でいうラッセル車や除雪車のように,沿岸部には緊急配備ができる体制をつくることが必要だと思います。老朽化したポンプの改修やポンプ車両配備を含めて,排水ポンプ等排水機能の現状の認識と今後の強化方針をお知らせください。
 さて,雨水が児島湖に入る問題の2点目でありますが,言うまでもなく,児島湖流域下水道浄化センターには,早島町,岡山市,倉敷市,玉野市の下水が来ているわけでありますが,これは汚水と雨水が分離されて処理される分流式という仕組みをとっています。しかし,岡山市と倉敷市の中心部の比較的早く整備された下水道については,もともと下水道に雨水を取り込む合流式という仕組みになっております,特に,岡山市中心部については,基本的には合流式の北区七日市西町の旭西浄化センターで処理され,旭川に放流されるものですが,汚水の一定量については,分流式の児島湖流域下水道浄化センターで受ける形になっております。言いかえれば,岡山市中心部の汚水をわざわざ玉野市まで運んで処理して,それを児島湖に放流しているという話になるわけであります。さらに,昭和38年1月につくられた旭西浄化センターは,汚水については今年度末には,児島湖流域下水道へ送水し,雨水滞水池として整備される予定となっております。しかも,先ほど申し上げた大雨を受けとめる地域の保水力という意味では,岡山市中心部の保水力はかなり落ちていると言わざるを得ないと思います。特に,雨水が西川や枝川といった農業用水にあふれるような場合には,もはや下水道に流れなくなった時点で地下街に雨水が流入する可能性,いわゆる都市型の洪水の可能性が高まっているというふうに,私は思います。
 そこでまず,今後の下水道整備,旭西浄化センターも関連して,岡山市内の雨水処理に対する現状認識,さらに改善のために岡山市とどのように連携するのか。さらに,関連して,今後のまちづくりで特に都市部においては雨水が地下に浸透しにくく,短時間に川に集中して流れ込む都市型水害に対する現状認識,大型ショッピングモールなどがつくられる場合には,地下貯水タンクなどの遊水地機能を持たせることを要請すべきであるというふうに思いますが,土木部長の御認識をお知らせください。
 さて,旭川ダムや児島湖流域下水道浄化センターの放流や締め切り堤防の樋門の開閉を工夫しても,やはり潮位,水位の変化が自然現象であるからには,最終,最後はそれに関係なく,児島湖から児島湾に強制排水ができる,そうした仕組みをつくるべきだという声がかなり多く上がっております。しかし,ここにも2つ問題があります。
 1つは,平成16年の台風の被害による児島湾側の高潮対策が終わっていないということであります。たとえ児島湖から水をかき出しても,児島湾の側がそれによりつかる可能性があります。特に,東日本大震災以降,津波の想定も大きく変わっており,本来であれば高潮でなく津波を想定した基準で沿岸を守る必要がありますが,児島湾側の海外保全施設の現状と今後の方向についてお知らせください。
 また,仮にこうした大きな排水ポンプ,これを締め切り堤防にずらっと並べるとすれば,恐らくこれはもう見たこともないような巨大なポンプの設置が必要になると思います。
 そこで,問題になるのは,やはり締め切り堤防そのものであります。6月議会で申し上げたように,締め切り堤防はそもそも厚さ15メートルから20メートルに達する軟弱な海性粘土層に築造されているため,構造物としては必ずしも強固なものであるとは言えません。そして,これが国の施設であるからには,安全性の確認強化を国に求める必要がありますが,さらに堤防のかさ上げ,排水ポンプの設置についての検討も必要だと思います。今後の方針をお知らせください。
 次に,児島湖流域以外で防災体制の確立についてお伺いします。
 まず,企業との関係において,岡山県ではさまざまな団体と災害時応援協定の締結を推進しています。今回の台風被害の中で,私は津波や河川のはんらん等大規模な水害が発生した場合に,一時避難施設として近隣住民が避難できるよう,民間企業等の建物の高層階,これを開放する協定の締結を推進する必要性を強く感じました。御所見をお聞かせください。
 また,突然発生した自然災害,大火災,テロ攻撃などの緊急事態に有効な手を打つことができなければ,経営基盤の脆弱な中小企業は,廃業や事業縮小,従業員解雇に追い込まれるおそれがございます。
 そこで,事業資産の損害を最小限にとどめつつ,中核となる事業の継続,あるいは早期復旧を可能とするために,平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法,手段など取り決めておく計画BCP(事業継続計画)の必要性を感じます。BCPは,顧客の信用を維持し,市場関係者から高い評価を受けることになり,株主にとって企業価値の維持・向上にもつながります。東京都のように,中小企業に対してBCP策定支援を行うお考えはないか,お伺いいたします。
 関連して,災害時に優先されるべき業務を非常時優先業務として選定し,それぞれの業務について,業務開始目標時間を設定する県政におけるBCPはいかようになっているか,危機管理監にお伺いいたします。
 加えて,東京都では,平常時には防災学習施設のある都市公園として,災害発生時には首都圏広域の現地対策本部,広域支援部隊等のベースキャンプ,災害医療の支援基地として機能する東京臨海広域防災公園を指定しておりますが,総合グラウンド等を広域防災公園として整備されるおつもりはないか,お伺いいたします。
 特に,地域防災計画における災害発生時のレベルフォーの非常体制では,全職員が一斉参集するわけでありますが,現実問題,危険も伴って居住地から参集すること自体が可能かどうか。第1配備,第2配備,現地機動班要員,自局の応急対策業務を行う特別配置職員と,さらに細かくシミュレーションすべきだと思いますが,危機管理監の御所見をお聞かせください。
 また,今回の台風被害の中,一番タイムリーに災害情報が届いたのは,エリアメールであったという声があります。これは,気象庁が配信する緊急地震速報や地方公共団体が発信する災害避難情報などを受信することができる,NTTドコモの携帯電話向けサービスで,対象エリアにいる利用者に限定して配信されたものであります。携帯電話各社と県総合防災情報システムのリンクなど,災害情報の提供にさらなる工夫ができないか,危機管理監にお伺いいたします。
 最後に,今回各避難所の備蓄ではラジオがなく,テレビ,パソコンが設置されておらず,情報が入ってこなかった,体育館等がそもそも浸水していて,プライバシーの問題もあるけれども,教室の2階以上を使えなかったのかという声もありますが,避難場所としての公立小中高校の問題点についてどのような御認識があるか。さらに,子供用の備蓄,最重要備蓄物資,すなわち水,食料,携帯トイレの重点配備に加えて,ソーラー発電機,携帯電話充電器,さらには消毒液等,避難所の備蓄のあり方についてどのような認識をお持ちで,今後どうしていくのか,御所見をお伺いいたします。
 以上で質問を終わらさせていただきます。まことにありがとうございます。


(知事)  自由民主党の佐藤議員の質問にお答えいたします。
 まず,児島湖流域の防災体制等についての御質問であります。
 児島湖の管理体制の見直しについてでありますが,今回の台風第12号接近時においも,県ではあらかじめ干潮時に湖内の水位を下げるとともに,記録的な豪雨による水位の上昇に対しましては,外潮位を見きわめながら最大限の排水を行うなど,樋門操作は適切に行ったと考えております。一方,流域市町から要望のあった関係機関への情報伝達,連絡体制等の連携強化につきましては,重点的に取り組む必要があると考えておりまして,現在,児島湖の管理に関する連絡会において,流域市町とともに具体策の検討を行っているところであります。
 市町等への要望についてでありますが,県では,今回のような浸水に対しましては,関係機関が連携し,それぞれの役割に応じた対策を講じるべきと考えておりまして,流域市町には,まずは内水排除に万全を期していただきたいと,このように考えております。また,国に対しましては,今回の台風による降雨と河川からの流入及び外潮位が湖内水位に与えた影響の検証と,児島湖の防災機能をさらに高める方策について早急に検討するよう,既に要請し,資料提供も行っているところでありまして,その結果が示された段階におきまして,県といたしましても必要な取り組みを行ってまいりたいと存じます。
 県管理樋門の操作についてでありますが,児島湖周辺地域の県管理樋門につきましては,現時点では操作を原因とする被害は発生していないことから,管理に問題はなかったと考えておりますが,児島湖流域の浸水対策について,市町から相談があれば適切に対応してまいりたいと存じます。
 旭川ダムの放流等についてのうち,潮位との関係等についてでありますが,御指摘の9月2日18時の干潮時に,締め切り堤防樋門の開門ができなかった際には,旭川ダムからは放流はしておらず,一方,9月3日のダム放流時には開門できたことから,ダムの放流により開門できなくなるほどの潮位への影響はないものと考えております。両ダムの洪水調節は,流入量と降雨の状況等から,必要量の放流を行うものでありまして,樋門の開閉と放流を連携させることはできないと考えております。
 児島湖流域下水道浄化センターについてでありますが,日放流量を児島湖の水位に換算すれば,現時点で約1.3センチメートル,最終的な増設後で約3.2センチメートルとなりまして,水位への影響は差し引き約1.9センチメートルの上昇があると認識をいたしております。このたびの放流量増加は,下水への雨水の流入が主な原因でありますが,雨水の流入を防ぎましても,その雨水は河川等を通じまして児島湖へ流入するということでありますので,児島湖水位の低下にはつながらないものであります。一方,下水を適切に処理するという観点からは,雨水の流入を防ぐことが重要でありまして,流域の市町に対しまして,下水道の適切な管理運営を徹底するよう強く働きかけてまいりたいと存じます。
 しゅんせつについてのうち,児島湖等についてでありますが,豪雨に先立って下げておける水位には,潮位の影響などにより限界があることから,児島湖の湖底を掘削しても洪水時の児島湖の水位を下げることにはつながらず,国に湖内のしゅんせつを求めることは考えておりません。児島湖に流入する県管理河川では,土砂が堆積し,河道が阻害されている箇所につきまして,しゅんせつを引き続き実施いたしますとともに,笹ケ瀬川や倉敷川では,河川整備計画において,堤防の整備が完了した後,河道の掘削を行い,流下能力の向上を図ることとしております。
 都市近郊型の浸水対策についてでありますが,対策といたしましては,内水排除のための河川ポンプ等の整備や流出抑制のための雨水貯留施設の整備等が考えられますが,これらにつきましては,土地利用全体の中で検討,整備する必要がありまして,市町の主体的な取り組みが必要であります。今後,市町と連携をしながら,児島湖周辺の土地利用のあり方や浸水対策につきまして検討してまいりたいと存じます。
 遊水地としての農地利用についてでありますが,お話の農地を緊急時の遊水地として活用することで,貯留機能を高めることは,減災対策の取り組みの一つではありますが,排水が難しい低平地という地形条件や,農作物への影響,農家,非農家を含めた地域全体での合意形成など,多くの課題が考えられますことから,今後,関係機関と児島湖流域の防災・減災対策のあり方について検討をする中で研究してまいりたいと存じます。
 排水機能の現状等についてでありますが,児島湖流域には,県市が管理している多くの排水機場がありまして,一部には設置後50年を超え,老朽化により排水機能の低下が見られ,更新時期を迎えているものがあると認識しております。また,ポンプ車両は国が市町村の要請に応じて出動させているものでありまして,機動性が高いことから,一定の排水効果はあると考えております。県におきましても,今後,検討してまいりたいと存じます。
 県では,岡山市南区と玉野市において,現在,排水機場の整備を進めているところでありますが,今後とも,役割分担に応じた浸水対策に取り組みますとともに,内水排除を担う市町が地域の排水計画を考える中で,排水機の更新や能力の増強等のお話があれば,協力あるいは助言をするなど,市町との連携を図りながら適切に排水機能の強化に努めてまいりたいと存じます。
 海岸保全施設の現状等についてでありますが,16年の台風による高潮被害を踏まえて改訂いたしました岡山沿岸海岸保全基本計画に基づき整備を進めておりまして,児島湾内において対策が必要な14カ所のうち1カ所の整備を完了し,現在10カ所で事業を実施しております。また,津波を想定した対応につきましては,現在,国において検討が進められております新たな地震動等の想定及びこれに基づく基準等の見直しを踏まえまして,適切に対応してまいりたいと存じます。
 締め切り堤防のかさ上げ等についてでありますが,お話の堤防かさ上げや排水ポンプの設置も含めまして,防災機能をさらに高める方策の検討を去る10月に国に対し要請し,検討に必要な降雨に関する資料等を提供しておりまして,今後,国の検討により排水ポンプの設置等についても方向性が示されるものと考えております。県といたしましては,その方向性を踏まえ,関係機関と連携し,児島湖流域の防災機能をさらに高めるよう必要な取り組みを行ってまいりたいと存じます。
 次に,児島湖流域以外の防災体制についての御質問であります。
 まず,民間企業等との協定締結についてでありますが,県では,これまで民間が所有するものも含め,津波避難ビルの指定を推進するよう沿岸市に助言してまいりました。このたびの東日本大震災や台風災害を受けまして,県内市町村にも高層の建物を一時避難施設として開放する協定を民間企業等と締結する動きがありまして,今後,県といたしましてもその意義や必要性を普及啓発するなどいたしまして,協定締結の取り組みが促進されるように支援してまいりたいと存じます。
 BCPに関し,中小企業の支援についてでありますが,BCPについては,これまで県のホームページや産業振興財団の情報誌を活用いたしまして,その必要性の周知に努めているところでありますが,本年8月に実施いたしましたアンケート調査では,策定済み,または,策定中の企業は約5%にとどまっておりまして,このような状況を踏まえ,商工会議所,商工会等の支援機関と連携し,一層の周知を図りますとともに,具体的な策定支援につきまして,現在,検討を行っているところであります。
 広域防災公園についてでありますが,県地域防災計画では,現在,大規模災害時の支援物資等の受け入れ候補地を,岡山空港,流通センター等としておりまして,広域防災拠点としての機能は,こうした施設を中心に確保してまいりたいと存じます。
 なお,県総合グラウンドなど一定の広さを持つ公園は,既に広域避難所として指定されていることなどから,御指摘の広域防災拠点機能を有する公園として整備するということは,考えていないところであります。
 避難所についてでありますが,学校を避難所とする際は,一層のバリアフリー化や避難所運営における学校と地元市町村との役割分担などの問題があると認識をいたしております。また,水や食糧,調製粉乳等は,目標数量を定めて確保に努めているところでありますが,その他の種類の物資の備蓄や学校などの各避難所への分散備蓄につきましては,今後その必要性や課題等につきまして,他県の状況も踏まえまして研究をしてまいりたいと存じます。
 以上でございます。


(危機管理監)  お答えいたします。
 児島湖流域以外の防災対策についてのうち,まず県の業務のBCPについてでありますが,最も大きな被害を受ける大規模な地震を想定したBCPを作成することとしておりまして,現在,庁内関係各課等が選定いたしました災害時に優先して実施する非常時優先業務の取りまとめ等を行っているところであります。
 なお,県のBCPにつきましては,地域防災計画を踏まえる必要がありますことから,防災計画の見直しと並行して,本年度末を目途に作成したいと考えております。
 次に,災害発生時の体制についてでありますが,突然発生する地震の場合には,勤務課所の近くに居住する職員をあらかじめ緊急初動班員として指定し,迅速な対応を行いますとともに,道路状況等により,本来の勤務課所へ出勤ができない職員は,最寄りの県民局等へ参集することとしております。このような体制により,災害時の機動的な対応に努めておりますけれども,3連動地震による被害想定や今回の台風災害等を踏まえますと,今後,非常時の体制を見直す必要があると考えておりまして,そうした中でお話のシミュレーションや職員の参集訓練の実施等についても検討してまいりたいと存じます。
 最後に,災害情報の提供についてでありますが,お話のエリアメールは,NTTドコモに加え,来年春からはau,ソフトバンクでも同様のサービスを開始する予定でありますが,これにより市町村では,県総合防災情報システムに加えまして,各携帯電話事業者ごとに避難情報等を入力することとなり,業務が煩雑になるなどの課題が生じるというふうに考えております。このため,来年度から着手することとしております県総合防災情報システムの再構築の作業の中で,各携帯電話事業者を含め,さまざまなメディアと連携し,一層効率的かつ迅速に災害情報を県民に提供できる方策を検討してまいりたいと存じます。
 以上でございます。


(農林水産部長)  お答えいたします。
 児島湖流域の防災体制等についてのうち,湖内の水位についてでありますが,台風の接近が予測されるなど,豪雨により児島湖の水位が異常に上昇するおそれがある場合に,あらかじめ湖内の水位を下げておくことは,大変重要であると考えておりまして,水利関係者等の理解のもと,弾力的に水位を事前に下げる対応を行っているところであります。今後とも,潮位による制約はありますが,大雨等が予想される場合には,事前の樋門操作により湖内水位を下げるよう努めてまいりたいと存じます。
 次に,土捨て場についてでありますが,お話の場所は国営事業によるしゅんせつ土を活用し,児島湖内の水流を改善するため,締め切り堤防護岸の一部として整備されたもので,県が国から管理を受託しているところであります。土捨て場の利用については,管理者である県から岡山市等関係機関に対し照会を行いましたが,利用計画がなく,現在に至っており,今後,自治体等から相談があれば,所有者であります国の意見も聞きながら適切に対応してまいりたいと存じます。
 次に,西南側地区の整備方針についてでありますが,郡漁港については,7月に管理者である岡山市に対し,早急に整備するよう申し入れを行ったところでありますが,現時点では具体的な整備計画は決まっていないと聞いております。また,民有護岸の整備につきましては,所有者が行うものでありまして,相談があれば必要な指導,助言を行ってまいりたいと存じます。
 以上でございます。


(土木部長)  お答えいたします。
 児島湖流域の防災体制等についてのうち,旭川ダムの放流等のうちの制限水位の見直しについてでございますが,旭川ダムの制限水位より下には,水道やかんがい用水等がためられており,10年に1回程度の渇水の際にも利水が確保できるよう定めたものでありますので,制限水位を見直すことは,こうした利水容量を削減することになりますため,考えていないところでございます。
 続きまして,放流時の周知につきましてでありますが,旭川ダムでは放流開始時及び放流量が一定に達すると予想されるたびに,警報車による通知と警報局サイレン吹鳴を事前に実施するとともに,岡山市が関係町内会長等に連絡を行っているところであります。また,サイレンについては,その内容の説明看板を河川堤防等に設置しておりますが,放流時の周知方法を含め,毎年洪水期前に実施する関係町内会長等も参加する連絡会議において,チラシ配布を依頼するとともに,県のホームページも活用するなど,さらなる周知に努めてまいりたいと存じます。
 続きまして,しゅんせつのうちの周辺市町との連携についてでありますが,河川管理者が行うしゅんせつは,堆積物により流下能力が低下し,治水安全上緊急性を有する箇所から実施しているところでありまして,御指摘の箇所につきましては,今後,そのような箇所でのしゅんせつが必要となった場合には,周辺市町と連携し,適切に対応してまいりたいと存じます。
 次に,児島湖流域の防災体制等についてのうちの雨水処理についてでありますが,岡山市内で現在雨水処理を計画している区域は,5,700ヘクタールであり,そのうち約2,400ヘクタールの整備を終えており,合流式の約900ヘクタールは,旭西浄化センターで受け入れ,分流式の約1,500ヘクタールはポンプ等で河川に排水しております。雨水の流入で旭西センターの受け入れ量が増加しても,児島湖流域下水道浄化センターへは,晴天時の汚水量に相当する量を送っており,流域下水道センターの受け入れ量は増加しないこととなっております。旭西センターは,処理区域に比べ雨水の処理能力が低いことから,市に対し施設の増強については働きかけてまいりたいと存じます。
 都市型水害につきましては,岡山市中心部は戦後の復興期にそのほとんどが市街化され,保水力の低下はその時点からの課題であります。既設の施設に対する貯留施設の整備は,困難な面もございますが,新たに整備される大規模な施設に対しましては,岡山市,倉敷市において補助制度を設け,企業に対し設置を促しているところであります。
 以上です。

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