平成21年2月定例会 一般質問 自由民主党 佐藤真治

1 岡山市の政令市移行について
 (1)今後の支援              (総務)[ 知 事 ]
 (2)県の行政規模             (総務)[ 知 事 ]
 (3)一極集中の懸念            (総務)[ 知 事 ]
 (4)産業振興               (産労)[ 知 事 ]
 (5)定住自立圏構想等           (企振)[ 知 事 ]
 (6)全国都市緑化フェア          (土木)[ 知 事 ]

2 道州制について              (総務)[ 知 事 ]
 (1)議論の本質等
 (2)国の出先機関等

3 国直轄事業負担金等について
 (1)割合等            総務協力(土木)[ 知 事 ]
 (2)国の公益法人への負担金等       (総務)[ 知 事 ]
 (3)国との役割分担        土木協力(総務)[ 知 事 ]

4 旭川及び後楽園界隈について
 (1)一級河川の移管            (土木)[ 知 事 ]
 (2)旭川京橋・桜橋地区の河川敷      (土木)[ 土木部長 ]
 (3)後楽園界隈のグランドデザイン等    (土木)[ 知 事 ]
 (4)観光物産センターの廃止等       (産労)[ 知 事 ]

5 吉備路界隈について
 (1)吉備路自転車道        産労協力(土木)[土木部長 ]
 (2)吉備線のLRT化           (生環)[ 知 事 ]
 (3)遺跡の保全等             (教育)[ 教育長 ]
 (4)博物館の建替え等           (教育)[ 教育長 ]




(佐藤)  自由民主党の佐藤真治でございます。
 本日最後でございますので,いましばらくおつき合いのほどをよろしくお願い申し上げます。
 まずもって,森先生の御逝去に当たり,心からお悔やみを申し上げます。
 私ごとでございますが,ちょうど10年前,当時の岡山第1選挙区で私が初めて立候補した選挙では,同じ選挙区の自民党の現職議員には,門木先生,蜂谷勝司先生,肥田先生,そして森先生がおられました。34歳の挑戦で,こうした大先輩の方々の胸をかりたわけでございますが,あれから10年たって,この議場から森先生までおられなくなりました。本当に寂しく,正直なところ不安すら感じております。
 森先生には,私が代議士の秘書時代からお世話になっておりましたが,さしでお話ができるようになってからも,御相談していたのは,あの郵政民営化が争点となった衆議院選挙や,その後の市長選挙,そして我々の統一地方選挙,さらには岡山市の政令指定都市移行をめぐる問題についてで,すべてがすべて,本当にややこしい問題ばかりでございました。体調がお悪い中で,本当に難しい問題がのしかかっていたのだと思うと,今となってはもう申しわけない気がしてなりません。紆余曲折あって,あれだけお互いに苦労して,私自身もここまで人生が左右されるとは思っておりませんでしたけれども,この春,岡山市がやっと政令指定都市に移行する,その姿を見届けられることがなく逝かれたのは,本当におつらいことだなあというふうに思います。いつも温和で常に全体のことを考えておられた森先生に改めて感謝を申し上げて,御冥福をお祈り申し上げます。
 さて,まずは,その岡山市の政令指定都市移行について伺います。
 そもそも政令指定都市は,もともとが大阪,横浜,名古屋といった大都市をイメージした制度で,住民税や法人税が上がる割には,公共交通も含めたインフラ整備は,民間の開発も含めて,かなり進んでいるため,財政的にはむしろ豊かだろうなという印象がございます。一方,近年の政令指定都市は,大規模な市町村合併で中山間地域や農村部を持ち,県と同格ではありますが,同時に行政課題自体も県の縮小版とも言えるほど,大都市の問題に特化しておりません。そういった意味では,中山間地域を多く抱え,極めて広大な岡山市が,きめ細かい行政サービスを行うための今後の財源については,正直なところ,一抹の不安を覚えております。政令指定都市移行後にも,当面さまざまな課題があふれ出てくるかもしれません。そういうときに,やはり県との連携が必要な場面も出てくるでしょう。常に県が行っていた県道のアダプト事業に関して,岡山市ではすべてが引き継がれるというわけではなく,今まで汗をかいてくださった関係団体からも批判の声が上がっているという話も漏れ聞いております。常にその財政力に応じて,補助金を抑制される傾向がございましたけれども,政令指定都市移行後の岡山市への財政面や人的な面での支援の考え方について,お知らせください。
 また,一方で,もともと政令指定都市を持つ都道府県で,最も人口が少ない我が岡山県が,単純に岡山市の70万人の人口が抜けるとすれば,ある意味,小規模の県になる。したがって,例えば行革というよりも,その人口規模から県職員が3,600人になるんだという考え方もあるかもしれません。岡山市の政令指定都市移行に伴い,岡山県の行政規模を縮小していくべきだという考えは正しいのでしょうか。さらに問題は,かかる人口規模の本県において,少子・高齢化の時代にかかわらず,人口がふえている岡山市が,表現は極めて不適切ですが,ひとり勝ちする施策に走れば,他の26市町村にはむしろ悪影響が出ることもあり得るという理解も必要ではないかと思います。もちろん,中国地方で,広島への一極集中をさせないという意味では,岡山市の政令指定都市化は極めて重要でございますが,県内の一極集中が起こり,中山間地や農村部が疲弊すれば,実は中心市街地もへたってくる。広い市の内部ですら,一極集中の危険もあって,メガシティを目指すのか,コンパクトシティを目指すのか,岡山市は大飛躍のチャンスではございますが,一方では大ピンチと裏腹である,そういう認識を私は持っております。
 岡山県と助け合いながら,ほかの26市町村を引っ張っていくぞという気概を岡山市には求めたいものですが,岡山市の政令指定都市移行に伴い,一極集中が起きて,他の市町村に与える影響が危惧されるのですが,県全体のバランスを保ち,広域行政を推進する県として果たすべき役割についての御認識をお知らせください。
 ところで,岡山県の個人・法人県民税や法人事業税の4割は,岡山市民や岡山市内にある企業が負担しています。実際は,地方交付税が岡山市に行って,国から県にその分おりてこないわけですから,トータルで言えば県がもらい得でも何でもないのですが,県税の収入の3割は景気変動の影響を受けやすい法人事業税と法人県民税の法人二税でございますから,岡山市において,この法人二税をいかに上げていただくかは,県財政にとっても重要な課題であります。中小企業支援などの産業振興について,県が果たすべき役割をお知らせください。
 また,先日,総務省は,来年度からスタートする近隣の市町村が連携して生活基盤を維持する,定住自立圏構想について,中核的な役割を担う中心市候補となる地方都市一覧を発表いたしました。医療や福祉,教育インフラなどを一体的に整備,維持し,人口の流出を防ぐことを目的に,人口4万人を超えて,昼間人口が夜間人口を上回っていることを条件に,岡山県では,岡山市,倉敷市,津山市,備前市が候補になっております。ところで,お隣の藤田広島県知事は,垂直補完と水平補完という言葉を使われております。基礎自治体に権限や財源を移譲する中で,県が果たすべき役割として,補完性の原則がございますが,基礎自治体同士でも補完すればよいというのが水平補完という考え方であります。実際,消防や廃棄物の処理では,広域で行われているわけですが,自立性を第一義に,県からの垂直補完ではなくて,周辺の基礎自治体からの水平補完をするという考え方は,あえて合併されなかった町村にとっては,むしろ好ましい話ではないかもしれませんが,こうした定住自立圏や水平補完という考え方について,どのように御認識でしょうか。
 ところで,会期中に岡山市の政令指定都市移行もあり,その岡山市と岡山県の最大の協働事業である全国都市緑化おかやまフェアは,これからの県,市の関係を占う意味もある,極めて重要な催しでございます。役割分担からいえば,少なくとも岡山県内外から広域的に来場を呼び込むには,岡山県サイドが頑張らないといけません。期間中に御協力いただける多くのボランティアの方々も集われますが,一方で,今のところ,西大寺のメーン会場とサブ会場の岡山城,後楽園や協賛会場の西川緑道公園,半田山植物園との情報の共有や交通アクセスも含めた連絡が明確ではありません。肝心の都市緑化についても,全県的な展開がなければ,県が絡んで開催する意味がなく,改めて岡山市と協働して全国都市緑化おかやまフェアを開催する意義と決意についてお知らせください。
 ところで,岡山市の政令指定都市移行は,中四国州の州都を目指す大前提であるという言い方があります。岡山県においては,78市町村が27市町村になった市町村合併の中で,広域合併を進めても,県や国の有効な支援がない現実から,道州制についても否定的な見解が基礎自治体レベルではかなりあって,とりわけ町村会は,真正面から道州制の推進には反対の立場をとっております。
 私は,知事のおっしゃられる中四国州や,巷間言われている州都岡山バラ色論が,かえって道州制の議論の本質をあいまいにしているのではないかと感じるときがあります。私が考える道州制は,言葉は極めて不適切だとは思いますが,内戦に近いものがございます。中央集権国家体制に対して,もちろん武装するわけではございませんが,地方から反乱を起こすという,あくまで戦いであります。我が国の何がおかしいのかを一言で言えば,国税と地方税の割合が6対4であるにもかかわらず,実際の事業は,国と地方で4対6である。要は,一たん国に税金を召し上げられて,地方に再配分される間に,異様な無駄が,人間,権限,財源においてあるということであります。これを正す,ある意味,霞ヶ関や永田町から,人間,権限,財源を取り戻す,その手法が道州制であります。バラ色の未来というよりも,このままだと,日本や地方が本当にぶっ壊れるぞという,やむにやまれぬ状況の中での究極の選択であるというふうに私は思っております。もちろん,夢としては描くけれども,中四国州は一つの結果であって,目的は道州制ではないか。中四国州になろうが,中国州になろうが,岡山市が州都になろうがなるまいが,道州制に進まなくては,日本や地方がだめになるという話でございます。だからこそ,国の行財政改革の一環ではなく,地方から喚起する道州制の議論に迫力があるのだと思います。
 今,地方政府の樹立という言葉も生まれています。仮に,本当に残念な過程ではありますけれども,中四国州という枠組みでなくても,仮に岡山県に州都が来なくても,それでも道州制は推進すべきとお考えか,道州制の議論の本質は何かを含めてお伺いいたします。
 加えて,地方分権改革推進委員会が,昨年12月の第2次勧告では,地方整備局や地方農政局など4省の6機関を,企画部門を担当する地方振興局(仮称)と直轄公共事業を実施する地方工務局(仮称)に統廃合し,労働局を廃止して,地方厚生局に統合するなど,地方への業務移管,出先機関の改革案,出先機関の職員のうち,3万5,000人を段階的に削減するという案を示しました。これは地方分権というよりも,むしろ国の行革の一環のようにも受け取れますけれども,道州制議論において,こうした国の統合する出先機関が,いずれ州政府で県とも一体化していくものと認識されているのかどうか,お知らせください。
 それ以上に,この勧告で大切なのは,地方の自由度が大幅に高まる,地方に対する国の義務づけ,枠づけの廃止を実現することですが,いかように御認識でしょうか,あわせてお伺いいたします。
 国との問題で関連して,国道整備や河川改修事業など,国が実施する公共事業費の一定割合を都道府県など,地方自治体が負担する直轄事業負担金が今問題になっております。事前によく相談がなされていない場合があり,負担金の精算や明細が透明でなく,全国知事会も,地方分権の趣旨に反すると,その廃止を要求しております。一方で,政府の事業に反対すると,国の補助事業でしっぺ返しを食うんじゃないか,そうした怖さから,例えば国の管理河川や道路は,都道府県よりもかなりグレードが高くて,維持管理のレベルも高い場合も多いんですけれども,あえて渋々負担金を支払っている,そうした現状があるかもしれません。
 岡山県においては,合理的な制度として,その直轄事業負担金の負担の割合が適当とお考えでしょうか。さらに,こうした一方的な負担を県が市町村に課していないか,その御認識をお伺いいたします。
 また,国からの一方的な請求とも言える中央省庁の官僚の天下り先となることも多い公益法人への負担金の総額は幾らになるのか,その認識を含めてお知らせください。
 一方で,この問題の本質は,公共事業の考え方そのものであると思います。景気後退で地方財政が疲弊しても,福祉や教育など歳出需要は大きい中で,公共事業の主導権がいまだ依然として国にあるということです。しかし,戦略性を欠いた公共事業の波及効果が限られるということは,我々も経験済みであり,国の公共事業は国際競争力の強化につながる拠点空港の建設や,便益が全国に広がる基幹的な交通網の整備などに集中して,そのほかはむしろ地方に任せるべきではないかという考えもございます。例えば,今後の追加経済対策でも,公共事業を有効活用するためにも,国との役割分担をはっきりさせることは極めて重要だと思いますが,御所見をお聞かせください。
 ここからはあえて,個別具体的に,岡山市が政令指定都市に移行する前に,その記念として,岡山市のいわゆる地元ネタについてお伺いさせていただきます。
 まずは,旭川及び後楽園かいわいについて伺います。
 昨年5月の地方分権改革推進委員会の1次勧告では,権限の移譲が柱でございましたが,国道や一級河川の管理,農地を転用する権限の移譲なども打ち出しています。まさに,一級河川旭川については,特に下流域は国の管理になっておりますが,県内で完結しており,将来的には都道府県で管理すべきだという話でございます。まずもって,こうした一級河川の管理については都道府県が行うべきだと考えますが,御所見をお伺いいたします。
 ところで,旭川京橋・桜橋地区の港湾施設は,もともとは戦前河川改修に伴い,内務省が設けたものでございますが,その後も県が国から河川法に基づいて占用許可を受けて,ほぼ,この県庁前から二日市の岡山市立中央図書館手前の旭川右岸の河川敷を港湾施設として占用しておりました。しかし,新岡山港も整備されて,港湾施設として利用されないことから,平成12年度末で港湾施設を廃止しましたが,諸般の事情で原状回復ができず,占用廃止が行えないまま現在に至っております。現在は,港湾というよりも,芝生園地の緑地が公園的に整備されて,京橋朝市も開催されておりますが,特に後楽園前などは遊歩道の整備が進んでおり,親水性の高い憩いの場として,さらなる活用が望まれております。一方,中環状と外環状をつなぐ幹線でもある都市計画道路の津島飛行場線については,番町以北については,都市計画の変更を行って,拡幅をしないというのが市の方針でもあり,しかし京橋以南の判断も政令指定都市移行後は市にゆだねることになりますが,なかなか見込みが立っておりません。そういうこともあって,この道路のバイパス機能を河川敷の区域内道路が果たしているということで,なかなかこれは重要な道路になっております。今必要なことは,旭川京橋・桜橋地区の港湾施設について,それが港湾施設でないのなら,今後の活用をはっきりさせることであります。そのためには,国,県,市が同じ土俵に上がる必要があります。いわんや,一級河川は地方が管理すべきだという気概があるのならば,県こそがリーダーシップをとるべきだと考えますが,いかがでしょうか。
 もっとも,旭川京橋・桜橋地区が港湾施設ではないというのは,一つの考え方にすぎないと思います。私は岡山市と組んで,新たなる港湾施設に変えていけるのではないかと考えております。例えば,世界的なアートの聖地として,瀬戸内海の島めぐりに出る船が,公園緑地として美しく整備された新しい京橋から出航する。そんな世界的な観光拠点になる。そこに京橋朝市がある。そういう夢も描いております。旭川京橋・桜橋地区の新たな港湾施設としての活用について,あわせて土木部長の御認識をお聞かせください。
 さて,この旭川でございますが,少し上流に行きまして,新鶴見橋という大きな橋がございますが,古い鶴見橋のほうは,まさに後楽園の玄関口になります。しかし,鶴見橋かいわいの堤防については,一段低くなっている地域があって,防災上,危険ですし,知事が初当選された以降も,後楽園周辺整備事業,いわゆる出石町の再開発について,白紙撤回されたまま,つまりは観光文化拠点の整備を撤回した状態が延々と続いております。いわゆる,この近所の農政局跡地は,現在ある岡山後楽館中高が旧南方小学校へ移転することが決まっていて,出石町再開発と相まって,兼六園周辺に絶対に負けない観光文化ゾーンにするために,例えば観光バスの集積地にするような種地にもなっております。来年の国民文化祭を見越して,この機に後楽園かいわいやカルチャーゾーンについても,県,市,国で一体に考えるチャンスであり,岡山市が政令指定都市になるとする今,県,市,国一体で旭川まで加味して,グランドデザインを描かなくてはいけないときであります。その認識をお知らせください。
 あわせて,兼六園周辺と後楽園の周辺の違いについての御認識と,その中で県が果たすべき役割についてもお伺いいたします。
 また,こうした重要な時期に,一方的に岡山シンフォニー1階の観光物産センターの廃止方針を決めました。観光物産拠点も廃止するところに,観光・文化行政の戦略性を全く感じませんが,観光物産センターの跡地の活用策とあわせて,御所見をお聞かせください。
 最後に,吉備路かいわいについてお伺いいたします。
 特に,JR吉備路沿線には,吉備津彦神社,吉備津神社,高松稲荷や備中高松城,鬼ノ城など,まさに日本のまほろばとも言える史跡が並んでおり,決して大和路に劣るところはなく,一説には年間観光客50万人を超えるとされているのですが,県内の広域観光の中でも,後楽園や倉敷美観地区と必ずしもうまく連携できておりません。
 先日,吉備路自転車道を久しぶりに自転車で走りましたけれども,この吉備路自転車道は,正式名称は,一般県道岡山総社自転車道線であり,その起点は総合グラウンドにあった旧いずみ町交番前なのですが,ここにある看板からして,津島遺跡を津高遺跡と書いておりまして,こうした案内看板や休憩所,特にトイレの表示はかなり工夫が必要だと思います。そもそも岡山市の政令指定都市移行に伴って,吉備路観光の幹線とも言える総社までつながる,この吉備路自転車道については,総合的にどこが所管することになるのか,吉備路観光における位置づけの御認識と今後の整備の方向も含めて,土木部長にお伺いいたします。
 ところで,第4回岡山市都市交通戦略検討会議では,都心と地域拠点との連携軸の強化,都市内の回遊性の向上を目標とし,吉備線のLRT(次世代型路面電車)化など,交通戦略の事業プログラムを示しました。まさに,LRTと吉備路自転車道がリンクすれば,非常に魅力的な観光拠点になるはずでございますが,国道180号の交通緩和策という観点からも,JR総社駅まで続くJR吉備線LRT化の話は,県も積極的にかかわるべきだと私は思いますが,御所見をお聞かせください。
 また,この吉備路において,畿内に次ぐ規模を誇る岡山県内の大型前方後円墳の発掘調査が,いよいよ動き始めました。二重周濠が確認された両宮山古墳に続いて,昨年は湊茶臼山古墳,さらに今春から全国第4位の規模を誇る造山の造山古墳の周辺部の調査が始まります。もしも周濠が見つかれば,畿内の大王墓と肩を並べて,吉備の王の巨大な勢力が明らかになると注目されております。ところが,この造山古墳に加えて,全国9位の規模の作山のほうの作山古墳,こうもり塚古墳,備中国分寺跡などが含まれている吉備路風土記の丘県立自然公園の中核施設,県立吉備路郷土館の廃止が決まっております。全国17カ所の風土記の丘で資料館廃止は初めてということで,しかしその一方で,国体の際に,桃太郎スタジアムを改修するための約束とはいえ,津島遺跡史跡整備事業が完了して4月から供用開始するのは,どこか私はちぐはぐな感じがしてなりません。世界遺産登録を目指す百舌鳥・古市古墳群にも劣らないとの評価があるにもかかわらず,吉備の巨大古墳については,石室まで発掘されたものも限られて,史跡指定さえもされていないものもございます。本格整備された古墳もなく,保護や活用が立ちおくれております。古墳の管理主体は市町村とはいえ,遺跡の保全・活用を見据えた計画,体制づくりを進めるべきではないかと考えますが,教育長の御所見をお聞かせください。
 また,最後でございますが,文化観光の拠点として,財政危機を脱した暁には,古墳時代から近世に至るすばらしい遺跡,史跡が多い吉備平野のJR吉備線近くにこそ,老朽化した博物館を建てかえて,文化財を集積した総合博物館を建てる,しかも大和朝廷に拮抗した古代吉備王国の規模からして,太宰府や奈良や京都と同様の国立博物館を誘致する,そんな夢を描きたいものですが,教育長の御所見をお聞かせください。
 幾つか夢も申し上げましたが,御答弁よろしくお願いいたします。ありがとうございました。


(知事)  自由民主党の佐藤議員の質問にお答えいたします。
 まず,岡山市の政令市移行についてであります。
 今後の支援でありますが,岡山市が円滑に政令市に移行できるよう,財政面の支援といたしましては,昨年度,双方で合意いたしました上で締結した基本協定において,一定の費用について,激変緩和措置として必要な助成をすることとしておりまして,来年度当初予算におきまして,必要額を計上しております。
 また,人的支援は,来年度から2年間,土木関係で26人,保健福祉関係で13人の県職員を派遣することとしておりまして,移譲事務が岡山市において円滑に実施できるよう支援してまいりたいと存じます。
 県の行政規模についてでありますが,岡山市の政令市移行に伴い,土木・福祉関係等の事務が移譲されまして,職員定数で約80人の減少となる見込みでありまして,予算規模も一定程度,縮小するところでありますが,県の行政規模は大幅には変わらないものと考えております。いずれにいたしましても,県としては,行革大綱2008に基づき,スリムな体制を目指す中で,県民サービスに配慮しながら,選択と集中をより一層加速させ,最小の経費で最大の効果が上がるよう,施策を推進してまいりたいと存じます。
 一極集中の懸念でありますが,岡山市の政令市移行を契機といたしまして,本県のイメージや知名度の向上,ビジネスチャンスの拡大等が期待されるところでありまして,県といたしましては,岡山市と連携しながら,こうしたプラス効果を県下全域に波及させていくということが重要と考えております。
 また,政令市移行後も,県が広域的,総合調整的な役割を担うということには変わりはないことから,今後ともそれぞれの地域が資源や特性を生かして,個性と魅力ある地域づくりを主体的に進められるよう,各地域の実情も十分配慮しながら,県全体の発展に向けて,各種施策を展開してまいりたいと存じます。
 産業振興でありますが,岡山市は県下の民間事業所の3分の1以上が集中する県経済の中心でありまして,岡山市域における産業振興は,県全体の産業振興においても大きなウエートを占めているということから,政令市移行により,県の事務が市に一部移譲されますものの,引き続き県も大きな役割を担うこととなる,このように認識をしております。
 今後とも,産業支援機関や岡山市と連携を図りながら,岡山大学など市内にある大学の多様な技術シーズを生かした新産業の創出や,中小企業みずからの創意工夫による経営革新の取り組みを支援することなどにより,県内産業の振興に努めてまいりたいと存じます。
 定住自立圏構想等でありますが,地方分権改革の進展に伴い,規模や能力の異なる市町村が,地域における総合行政を担うためには,隣接市町村との水平的な補完による対応も必要であると考えております。このたびお話の定住自立圏構想が制度化され,備前市を中心市とし,兵庫県赤穂市,上郡町の2市1町が先行実施団体として,圏域形成に向け取り組んでいるところでありますが,地域の諸課題に応じまして,自主的な連携を行うことは重要であると考えておりまして,今後とも市町村の主体的な取り組みに対し,適切な助言等を行ってまいりたいと存じます。
 全国都市緑化フェアでありますが,都市緑化の取り組みを全県的に広めますとともに,岡山の魅力を全国に向けて情報発信するため,庭園都市を目指す岡山市と共同開催することとし,岡山市以外のすべての市町村においても,大型プランター等の出展を行うほか,19の市町村が伝統芸能の紹介や特産品の販売を行うこととしております。さらに,県内各地で40を超える花や緑に関する協賛事業を展開することとしておりまして,こうした県民の方々との協働の取り組みによりまして,フェアをぜひとも成功させ,未来を担う子供たちに緑や命の大切さを伝えますとともに,環境に優しい暮らしや,緑豊かなまちづくりを全県的に広げてまいりたいと存じます。
 次に,道州制についてであります。
 まず,議論の本質等でありますが,道州制は国と地方の役割分担を見直し,新しい国の形をつくるという地方分権改革の究極の姿と言えるものでありまして,東京一極集中のもとで,地方に蔓延しております閉塞感を打破し,個性豊かで活力に満ちた地域を創造し,我が国全体の発展を図っていくためには,その導入がぜひとも必要であると考えているところであります。
 道州制の区割りにつきましては,政府の道州制ビジョン懇談会の専門委員会において,その基準や基本方針について検討されておりまして,その議論を注視しているところでありますが,私といたしましては,道州は,自主的自立的な施策を実施できるだけの十分な自立力と将来の発展可能性を備えることが必要であると考えておりますことから,かねてより中四国州を提唱しているところであります。
 一方,州都につきましては,この問題が先行いたしますと,道州制そのものの議論が進まなくなる懸念があることから,まずは道州制と中四国州がともに実現するということを目指しまして,県民の理解の促進に努めますとともに,各界各層での議論の高まりや,機運の醸成を図ってまいりたいと存じます。
 国の出先機関等でありますが,道州制のもとでは,国の役割は外交,防衛など,国家の存立にかかわる事務に限定し,内政に関する事務は広く地方が担うべきでありまして,統合される国の出先機関につきましては,道州制の導入に当たり,当然これは廃止され,その事務等は道州が担うべきものであると考えております。
 また,義務づけ,枠づけの廃止につきましては,お話のように,地方自治体が住民や地域のニーズに応じた,きめ細やかな施策を推進する上で必要不可欠なものであると考えておりまして,第3次勧告において,さらに踏み込んだ具体的な勧告が行われますように期待いたしております。
 道州制の導入につなげるためにも,まずは義務づけ,枠づけの廃止を初め,地方税財源の充実強化など,第2期地方分権改革の着実な推進が必要でありまして,引き続き,地方六団体とも連携しながら,国等に対し,強く働きかけてまいりたいと存じます。
 次に,国直轄事業負担金等についてであります。
 まず,割合等についてでありますが,国直轄事業負担金は,自治体に対して個別に財政負担を課する,極めて不合理なものであることから,早急な見直しを求めますとともに,特に維持管理費は,本来,管理主体が負担すべきものであることから,即刻廃止を求めているところであります。本県のみならず,地方自治体の財政状況は極めて厳しい状況にありまして,これまで以上に強く求めていく必要があるものと考えております。
 一方,市町村負担金は,地方財政法上,大規模かつ広域的な事業については対象外とされているということ,県管理道路の維持管理費は徴収していないことなど,異なっているところであります。また,事業予定箇所の選定に当たりましては,市町村からの要望を踏まえるなど,市町村との意思疎通を図っているところであります。今後,関係する市町村に対しまして,一方的な負担と誤解されないように,丁寧に説明をしてまいりたいと存じます。
 国の公益法人への負担金でありますが,来年度当初予算における国の公益法人に対する負担金額は,約6億円程度でありまして,その主なものといたしましては,過去に整備した林道事業にかかわる森林総合研究所への負担金約2億1,000万円や,日本スポーツ振興センターに対する児童生徒にかかわる災害共済掛金約7,000万円,住民基本台帳事務にかかわる地方自治情報センターへの約5,000万円などでありまして,基本的には受益の程度などに応じまして,他県と同様に負担いたしているものであります。
 国との役割分担でありますが,地方にできることは地方が担うとの原則のもと,国と地方の役割分担を抜本的に見直しをし,国から地方への事務権限の大幅な移譲を進めていくことが必要であると考えております。公共事業につきましても,国が行う事業は,全国的な見地から必要とされる基礎的または広域的事業に限定し,それ以外のものは国庫補助負担金の廃止・縮小を含め,財源と一体的に地方へ移譲することで,地方がそれぞれの地域の,あるいは住民のニーズを踏まえまして,みずからの判断に基づいて事業を選択し,決定することができる仕組みを構築すべきものと考えているところであります。現在,第2期地方分権改革は山場を迎えておりまして,地方による主体的,総合的な施策展開が可能となるよう,引き続き,あらゆる機会をとらえ,国等に対しまして強く働きかけるなど,積極的に対応してまいる所存であります。
 次に,旭川及び後楽園かいわいに関しまして,まず一級河川の移管でありますが,都道府県内で完結する一級河川の移管に当たりましては,現在の整備管理水準を確保するために必要な財源等に関しまして,適切な措置が講じられることが何よりも重要であると考えておりまして,そうした前提条件が整うならば,都道府県が責任を持って受けることができると考えているものであります。
 後楽園かいわいのグランドデザインについてでありますが,後楽園周辺整備事業が白紙撤回された経緯や,来年度からの岡山市の政令市移行を踏まえますと,岡山市が主体的に検討する必要があるものと考えております。
 兼六園との違いでありますが,兼六園周辺では,多くの歴史的町並みが保存されます一方,後楽園周辺では,オリエント美術館や林原美術館など,特色ある文化施設が集積しているという違いがあるものと認識いたしております。今後,後楽園周辺のまちづくりにつきましては,これは政令市となる岡山市が主体的に進めるべきものであると考えておりまして,県といたしましても,県有施設の管理者の立場から,国とも連携し,積極的にこれに協力してまいりたいと存じます。
 観光物産センターの廃止等でありますが,本センターが現在地に移転する際には,交通の利便性や駐車場の存在,カルチャーゾーンの入り口に位置すること等を考慮し,当時としてはすぐれた立地条件を持つ場所に設置を決定したところでありますけれども,その後,人の流れが駅周辺にシフトするなどの変化が見られたこともありまして,このたび観光物産センターの廃止方針を決めたところであります。今後は事業の費用対効果や民間との役割分担を踏まえながら,より多くの観光客が集う場所において,伝統的工芸品の展示や実演イベント等による県産品のPRや,観光案内を行えるよう,そのあり方等を現在検討しているところであります。
 なお,本センターの跡地につきましては,県が引き続き活用することは困難でありまして,御理解を賜りたいと存じます。
 最後に,吉備線のLRT化についてでありますが,お話のように,岡山市が年度内を目途に策定を進めておられます都市交通戦略素案によりますと,都心と地域拠点との連携軸の強化に向けた交通施策の一つとして,吉備線のLRT化が示されておりまして,来年度,LRTの推進等に向けた事業調査が行われると聞いております。LRTは,駅間距離を短くして利便性を高めることができる,また,低床式でだれもが利用しやすい,さらには,大気汚染の心配が少ないなど,人にも環境にも優しい公共交通であるというように考えているところでありまして,県といたしましては,岡山市の検討状況等を見きわめながら,適切に対応してまいる所存であります。
 以上でございます。


(土木部長)  お答え申し上げます。
 旭川京橋・桜橋地区の港湾施設についてでございますが,船舶による物流や人流の利用がなくなりまして,同地区の港湾施設の廃止をしたものでございます。現在,占用許可取り消しに向けて,国と協議をしているところでございます。
 お話の新たな港湾施設としての活用につきましては,地域の活性化を図るための一つの方策でございますが,京橋付近では治水上,十分な河川断面が確保されておりませんで,今後,治水対策と一体的に検討されるべきと考えております。
 次に,吉備路自転車道についてでございますが,岡山市の政令市移行に伴いまして,岡山市内の区間は岡山市が,それ以外の区間は県が,それぞれ管理や整備を行うこととなります。このため,御指摘の案内看板等の不備につきましては,早急に点検を実施いたしまして,3月末までに適切に対応いたします。
 また,吉備路観光における位置づけの認識と今後の整備の方向につきましては,自転車を利用した観光スタイルの提案は,今後の吉備路観光におけます重要なツールとなり得るものでございまして,岡山市や総社市とも連携いたしまして,案内看板ですとか,あるいは休憩施設等の整備を推進してまいりたいと考えております。
 以上でございます。


(教育長)  お答えいたします。
 まず,遺跡の保全等についてでありますが,造山古墳を初めとする巨大古墳につきましては,吉備の国を代表する文化遺産であり,県民共有の財産として適切な保護,保存に努めているところでありますが,それらを整備,活用していくことも大切であると考えております。これらの古墳を整備,活用するに当たりましては,所管する市町村が主体となって,保存管理や整備に関する計画を策定することが求められるところであります。県教育委員会としましては,計画策定や遺跡活用へ向けた取り組みが一層推進されるよう働きかけるとともに,文化庁との連絡調整や専門職員の派遣等を通じて,関係市町村を支援してまいりたいと考えております。
 次に,博物館の建てかえ等についてでありますが,現在の極めて厳しい財政状況下での具体化は困難でありますが,吉備の国を全国に発信する機能を持ち,新しい時代にふさわしい博物館のあり方について,十分時間をかけて取り組む必要があると認識しておりまして,近年開館した主要博物館の実態調査などをもとに,研究を進めているところであります。
 また,国立博物館の誘致につきましては,国の整備方針が明確でないことや,さきの九州国立博物館の例を見れば,地元自治体が用地を確保したり,多額の建設費を負担しているなどの課題があると考えておりまして,今後の国の動向を見守ってまいりたいと考えているところでございます。
 以上でございます。

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