平成15年11月定例会 一般質問 自由民主党 佐藤真治

1 新税について
(1)課税の客体                 (総務)[ 知  事 ]
(2)方向性                   (総務)[ 知  事 ]
(3)県議会への上程理由             (総務)[ 知  事 ]
(4)基金の繰替運用規定             (総務)[ 知  事 ]
(5)森林保全条例                (農水)[ 知  事 ]
2 産学官連携について
(1)ハートフルビジネスおかやま    保福協力 (商労)[商工労働部長]
(2)環境産業  生環・農水協力         (商労)[ 知  事 ]
(3)IPv6                  (企振)[ 知  事 ]
(4)岡山大学への働きかけ            (企振)[ 知  事 ]
3 支援費制度について              (保福)[保健福祉部長]
(1)予算不足を心配する市町村の現状等
(2)制度等の周知
(3)支給決定の基準
(4)障害児への対応
(5)民間のデイサービス事業者の育成
4 NPOについて
(1)ルールづくり                (生環)[ 知  事 ]
(2)事務事業評価                (生環)[生活環境部長]
(3)県民ボランティア・NPO基金等  商労協力 (生環)[生活環境部長]
(4)新総合福祉・ボランティア・NPO会館    (生環)[生活環境部長]
(5)市町村職員の研修              (生環)[生活環境部長]
5 NGOについて                (企振)[ 知  事 ]
(1)国際貢献推進条例制定の理由
(2)NGOとの連携
(3)岡山県国際交流協会の寄付行為
(4)国際貢献活動




(佐藤)  自由民主党の佐藤真治でございます。
 地方分権一括法施行後,地方はまさに生き残りをかけた戦いを展開しております。その中で,議員は議員で岡山県が生き残るための施策を提言していく責務があると思います。金がない中で,いかに知恵を出していくか,今回もまたまた多岐にわたってしまいますが,提言を旨として,通告に従い質問をさせていただきます。
 まずは,新税につきまして。
 課税自主権が認められた地方分権一括法施行後の12年度に,全国的に,ブームのように新しい税財源の研究が始まりました。時には,各自治体とも財政危機の折,新しく課税すること自体が自己目的化し,いかに使うかを考えることよりも,何が課税客体足り得るかを追及し,知恵を競い合っていた,そんな皮肉な見方もできるかもしれません。結果として,三重県が産業廃棄物税,高知県は森林環境税を成功させたわけですが,岡山県は今2つとも採用しようとしております。もちろん課税客体の検証をすればそうそう可能性があるわけではなく,常識的な線に落ち着いたということかもしれませんが,肝心なのは,これがいかに有効に使われていくか,そのことだと思います。そこでまず,知事にお伺いいたしますが,今回,森林保全税を提案されているわけですが,今後も,このように課税自主権に基づいて法定外目的税としての課税が不可能な場合も含めて,さらに増税する客体がある,そのようにお考えでしょうか。
 また,課税自主権による法定外目的税と超過課税はどういう形で使い分けていくのか,あくまで森林保全税は例外なのか,方向性をお知らせください。
 次に,高知県では,森林環境税を通すに当たり,昨年度の2月定例会で,みなし予算ということで,要するに税収の明確な使い道を示して条例を上程いたしました。しかし,岡山県では,今回の森林保全税に関して,みなし予算を示すことなく,今定例会に上程をされました。その理由についてお知らせください。
 また,今回の条例では,基金を一般会計に繰り入れることはないことを条文にうたっておりますが,既に財政赤字補てんに使われている数々の基金があるわけでございますが,これについては今後どのようにされるのか,お知らせください。
 森林保全税につきましては,いろいろ申し上げたいこともございますが,その内容につきましては置くといたしまして,私は,この森林保全税を課すにしても,森林保全条例あるいは森づくり条例といったものが必要ではないか,そのように考えます。具体的なイメージは,精神条例的に,家庭,職場,学校,地域等で森林保全の努力義務を課して,とりわけ森林保有者に対しては,道義的な第一義的な保全義務を課すといったものです。つまり,我々岡山県民は,皆森林保全の努力義務を負っている。ゆえに我々の大切な森林を守るために我々は500円を拠出して,特に森林保全の一義的な責任を果たせていない民有林の放置林に対しては,我々の責任として保全に努めるのだということであります。私は,一般県民に広く薄く課税した財源を,事情はどうあれ,事実上放置された民有林の間伐にも投下するという,こういった方向なわけですから,所有者により重い責任が生じてくるのは当然だと考えます。特に,ある意味,私権の制約を伴うものであり,こういった条例自体,全国に余り例がありません。高知県でもちゅうちょしたものですけれども,ここまで岡山県が踏み込めば,森林保全税も絡んだ岡山の森林保全に対する啓蒙施策は全国一のものになります。こういった森林保全条例について知事の御所見をお聞かせください。
 次に,産学官の連携について伺います。
 県の施策では,産学官連携の重点分野の育成として,ナノテク分野,バイオ関連分野,医療・福祉・健康関連分野,環境関連分野が掲げられ,この3月には,岡山・産学官連携推進会議が立ち上がっていますが,それに関連して幾つかお伺いいたします。
 まず,医療・福祉・健康関連分野の「ハートフルビジネスおかやま」について,福祉用具の開発支援,利用者への情報提供を図るということですが,今年度,総合社会福祉センターの民間委託に伴って,補装具製作所を廃止されており,また岡山県産業振興財団に事務局を置き,長年活動している岡山県福祉機器研究会では,残念ながら利用者側の参加が余りなかった,そのように聞いております。また,福祉の現場との連携が極めて重要だと思いますが,利用者の皆さんの声を反映させるためには,「ハートフルビジネスおかやま」から生まれた商品を展示する福祉機器の展示場が必要である,そのように思います。例えば,南部健康づくりセンターあるいは新設の新総合福祉ボランティア・NPO会館に,こういった展示場を設けることは考えられないでしょうか,商工労働部長にお伺いいたします。
 次に,産学官の連携による環境関連分野の産業創出については,木質バイオマス,さらにはミニエコタウン構想等々ありますし,さらには,リサイクル素材の活用も重大な課題ではありますけれども,産学官ということでの目玉施策が打ち出されておりません。私は,環境産業として,水の浄化,端的には児島湖を意識した水質浄化産業の育成が極めて岡山らしい施策ではないかと考えます。児島湖の汚泥しゅんせつ事業が,残念ながら余り効果が出ないまま終わろうとする今,場合によっては,特に,産学官連携の水質浄化プロジェクトチームを創設したり,水質浄化コンテストを企画し,水質浄化に関して世界の英知を岡山に結集し,環境産業立県をすることは考えられないでしょうか,知事の御所見をお伺いいたします。
 加えて,ITの分野でも,産学官の連携が進んでいるように認識しておりますが,IPv6について,私はこの場で何度も取り上げてまいりましたが,岡山情報ハイウェイがIPv6化することの具体的なイメージが,ともかくこれがわかないという声を非常によく耳にします。確かに,これからの技術だけに,生活が具体的にどのように変わっていくのか,なかなか説明ができないのも事実です。そこで,私は,6月定例会で申し上げました吉備高原都市のIPv6のテストベッド化がたちまち無理としても,まずは県民の皆様に,岡山情報ハイウェイがIPv6化して生活がどのように変わるのか,実感していただくような場を提供してはいかがかと考えますが,知事のお考えをお伺いいたします。
 これに加えて,産学官の連携によるIPv6の協議会を立ち上げてはいかがでしょうか。
 ところで,来年4月から,すべての国立大学が法人化し,文部科学省の一機関から独立する中で,岡山大学も例外ではなく,民間的発想の経営手法を入れ,学外者も加わり,さまざまな意味で社会へ開かれたものしようとしています。ある意味では,かなり自由度が増した地方の国公立大学法人に資金獲得まで含めた私立大学同様の競争原理も働かせるということではないかと思います。とすれば,もちろん憲法に保障された大学の自治を侵してはなりませんけれども,地方の岡山大学が岡山の産業界等に果たす役割を明確に示していただかなくてはいけませんし,逆に産業界や岡山県サイドからも,地方固有の問題にどう対処するのか,岡山県にいかような人材を輩出してくださるのか,岡山大学に要望を出していくべきではないでしょうか。特に,技術に限らず,大学のシーズを探すには,大学へのニーズを伝えなくてはいけないと思います。それもまた,私は産学官の連携ではないかと考えます。そういう連絡協議会的な仕組みをつくることには,大きな意味があると思いますが,知事はいかがお考えでしょうか。
 次に,本年4月から,障害福祉の分野で新たに導入された支援費制度についてお伺いいたします。
 支援費制度は,身体障害者福祉法等の改正により,障害者の福祉サービスが措置制度から契約制度へ大きく転換し,「障害者の自己決定権がこれまで以上に尊重され,自立が支援される」と説明されてきました。このことは,障害者と民間事業者の私的契約において,利用者がサービスを自己選択,自己決定する利用制度であり,自己責任も負うことを意味しています。ただ一方,支援費制度は,大変皮肉な見方をすれば,障害者福祉に責任を負ってきた国や地方自治体が,それをある意味で民間にゆだねることで,諸経費等の予算を抑えて国の財政再建に寄与するという面もあるのではないか,そのようにも思います。そういった中で,地方自治体がどこまで責任を負っていくのかが問題であると思います。特に,サービスの選択においては,必ずしも居住する市町村内に限らないということで,県の役割も非常に重要である,そのように思います。この秋,ある県立の養護学校で,支援費についてのアンケート調査が行われましたが,必ずしも順風満帆な立ち上がりとは認識されていないようです。その中の御意見も参考にさせていただきながら,以下,保健福祉部長に質問をさせていただきます。
 まず,支援費制度の導入に伴い,結果的にはサービス水準が落ちるのではと懸念される中,在宅サービスの利用者等が急増し,早くも予算不足を心配する自治体が出ているように伺っています。以前から,財源確保のため,介護保険との統合論もあるわけですが,予算不足を心配する市町村の現状と今後の見通し,また県の支援方針についてお知らせください。
 加えて,アンケートによれば,支援費制度の内容そのものが十分に理解されていない状況が読み取れます。さらには,事業所が開設された場合等の周知はもちろん,各事業所の事業内容を一覧で示したり,説明書の配布等を希望する声がありますが,今後いかように周知していただくのでしょうか,方策をお知らせください。
 加えて,支給決定は市町村が行うわけであり,ケアマネジャーのようなものがいない状況で,支給決定についての不安や不満の声も非常に多いわけですが,そういった意味では,市町村や担当職員によって変わらない支給決定の基準の明確化が必要であると思いますが,いかように今後対応されていくのでしょうか。
 さらに,そもそもデイサービスが小学生以下の障害児と18歳以上の障害者しか使えない,こういった仕組みそのものがおかしいのではないかという声が非常に多く上がっております。とりわけ,入浴サービスを受けたいような中高生の身体障害児などにとっては,深刻な問題になっています。今後いかように対応していくのでしょうか。
 また,特に,小学生については,土,日が休みになって,さらに長い夏休み等,養護学校周辺あるいは校内に放課後児童クラブを設置すべきではないかという声も上がっております。既存の放課後児童クラブの支援に加えて,NPOを含めた民間のデイサービス事業者の育成も強く望まれると思いますが,今後どのように対応していかれるのでしょうか。
 以上,保健福祉部長にお伺いいたします。
 次に,NPOについてお伺いいたします。
 県内の認証NPOは,既に170を数え,まさに百花繚乱でさまざまな活動が展開されていますが,多くのNPOに共通した悩みが,財政的な基盤が弱いということです。そうした中,先日,岡山NPOセンターの財政基盤検討委員会が,「レポート2003−NPOの財政力強化への提言−」を発表されました。この提言書の作成自体が,日本財団の助成事業ということでありますが,岡山NPOセンターの各理事がみずから執筆された非常にすばらしい提言書で,全国でも,なかなかこれだけの提言はないと思います。今回は,その提言書を踏まえた上で,NPOに関して幾つかの質問をさせていただきます。
 NPOが社会を変革する新たな主体となるためには,会費,受託事業,収益事業,助成金,寄附金,融資といった財政基盤を強化する必要があります。その中で,NPOの側からすれば,委託事業については,財政基盤の安定のために非常に魅力的ではあるわけですが,あたかも行政の下請になる,そういった危険性もはらんでいます。言いかえれば,助成事業の主体はNPOでありますけれども,委託事業の主体は委託者である行政にあって,責任も行政にあると思いますが,NPOが委託事業を受けることで,組織基盤とも言えるミッションが脅かされる,そういった危険もあるわけです。そういった観点から,提言書の中では,NPOの側からNPOと行政の協働に関するルールが示されています。私は,行政のサイドにも,委託先の選定から事務評価まで含めて,こうした明確なルールに基づいて,しかもそれが公開されることが必要であると思います。あるいはNPOと行政が協働する前に協定といったものも必要なように思いますが,知事はいかがお考えでしょうか。
 また,提言書の中では,基盤強化のツールとして,自己評価を積極的に位置づけて,具体的な自己評価シートを示されています。こうした自己評価の公表がNPO自体への信頼を高めるものと思いますが,私は,委託内容が行政主導型か,あるいはNPO主導型か,あるいは企画公募型かを峻別した上で,どんな場合も責任は行政にあって,行政自体の事務事業評価自体は必要である,そのように思います。少なくとも,NPOの事業委託について,事務事業の部分そのものを丸投げして,行政の事務事業評価の逃げ道になることがないよう,行政が委託すること自体の効果も含めた事務事業評価も必要であると考えますが,いかがでしょぅか,生活環境部長にお伺いいたします。
 ところで,財政基盤の強化のためには,いわゆる借入金というものも考えられます。特に,国の委託金が出るまでをこのNPOがつなぐというようなことも必要になってくるかもしれません。特に,立ち上げのみならず,運営そのものにも融資があれば,NPOの運営も随分楽になることと思います。そういった意味では,労金さんのように,市井の地銀や信用金庫が融資制度をつくってくださればありがたいですし,北海道NPOバンクのような私募債をつくるようなことも必要かもしれません。何より,県が検討するとした県民ボランティア・NPO基金の現状はどうなっているのでしょうか。また,山口県のように,県費で中小企業診断士がサポートし,金融機関の融資に結びつける方策は考えられないでしょうか,生活環境部長にお伺いいたします。
 これらに関連いたしまして,17年にオープンする新総合福祉・ボランティア・NPO会館についして,PFI事業であるとは言いながらも,特にインキュベート機能を持つNPOに関する部分について大きな動きが見られません。実際,だれがどんな運営をしていくのか,インキュベーションマネジャーのようなものを置くのか等々,実務的な検討を行う運営委員会準備会のようなものを立ち上げないと,17年度には間に合わないのではないでしょうか,生活環境部長のお考えをお示しください。
 また,NPOは,県が認証しますが,実際の活動は市町村であり,しばしばNPOへの認識不足のような事態が生じています。市町村職員の研修をどのように行っていくのでしょうか,生活環境部長にお伺いいたします。
 最後に,NGOについて伺います。NPO,NGOと続きますが,NGOについてお伺いいたします。
 来年2月の定例県議会への上程を目指して,現在,パブリック・コメントを募集している岡山県国際貢献活動の推進に関する条例(仮称)に関して,私は,正直なところ,なぜこの時期にこの内容なのかという感を強く持っております。都道府県レベルでは,全国初となる国際貢献活動の推進を目的とした条例ということでありますが,国際貢献のイメージが,象徴的にAMDAのようではないか,そのように感じます。私自身も,AMDAの会員として,阪神大震災のボランティアやあるいは救援物資の積み込みは何度もしたことがございますし,何よりイラン大震災では,AMDAのコーディネーターとしてイランの辺境まで行ったこともございます。ですから,AMDAの活動のすばらしさは十分に理解をさせていただいた上で,なお岡山には,さらに多くのNGOが活躍していることを私は強調させていただきたいと思います。
 NGOには,環境,医療・福祉,教育,文化・芸術,人権,スポーツ等々,国際貢献という言葉に象徴されないものも多く,国際交流まで含めてもう少し間口は広いのではないか,そのように思います。例えば,おかやま国際貢献NGOサミットも開催され,岡山ユネスコ協会,アジア教育支援の会,そして黒住教や金光教を初めとする宗教者の方々のネットワーク等々,最近では,有森裕子代表理事のハート・オブ・ゴールドなど,さまざまなNGOが動いております。そして,行政としても,既に青年海外協力隊などをおかやま国際協力大使に委嘱され,これも多分に緊急救援活動のイメージに引っ張られているのではないかなという感は否めませんが,国際救援物資などを集めて備蓄までされておられます。何より,私は,国際貢献という名目で,NGOの協働に関して,県民に義務まで課すのは非政府組織であるNGOの本旨に大きく外れるのではないか,そのように思います。NGOのいう貢献は,もっと自然発露の感情に基づくものではないでしょうか。この状況で,なぜ今義務まで課すような条例の制定が必要なのでしょうか,その理由をお知らせください。
 そもそも今回の条例案は,既存の多くのNGOに対して全く働きかけがなされておらず,唐突に出た感は否めません。どういった声が,この条例案に反映されているのかをお知らせください。
 そして,多くのNGO共通の課題は,NPOと同じであります。特に,若い世代を中心にした次代を担う人材育成,場所や活動資金が問題であって,条例のような抽象的な問題あるいは主な施策は直接の支援にはなりません。現在,約110団体に及ぶNGOが岡山県国際団体協議会というNPOを立ち上げようとしていますが,今後,既存の国際貢献トピア岡山構想を推進する会や,このような団体とどのように連携していくのかをお知らせください。
 何よりもNGOの活動拠点足り得る岡山国際交流センターを管理する岡山県の外郭団体である,岡山県国際交流協会の寄附行為には,NGOやNPOとの連携という言葉が今のところ入っておりませんが,条例制定よりも,こういったできることからまず変えていくことが必要だと思いますが,いかがお考えでしょうか。
 加えて,これが最後の質問で,本当に小さい質問ばかりというか,たくさんの質問,恐縮でございますが,今イラクに自衛隊派遣ということでございます。そういった流れの中で,国際貢献活動ということについて,やはり我々一人一人が考えていかなくてはいけない,そういった状況にある中で,この2月定例会で国際貢献活動を支援する,そういった条例をつくるということについて,タイミング的にはいろいろこれは考えていかなくてはいけない時期ではないかなあというふうに思います。具体的には,緊急救援物資を本当にイラクに送ることができるのか。私は,心情的には送りたいわけですけども,そういったことも許されるのかどうか,非常に生々しい話が出てくる,そういったタイミングにこの国際貢献条例の制定がかかってくるということでございます。こういったタイミングがどうなのか,知事の御所見をお聞かせください。
 私の質問は,以上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうござました。


(知事)  自由民主党の佐藤議員の質問にお答え申し上げます。
 まず,新税についてであります。
 新たな課税客体についてのお尋ねがありましたけれども,地方分権の時代の中にありまして,施策を推進をするために必要な独自財源を確保すること,そして経済的手法である税を活用するということ,これは極めて重要な意味を持つものであると,このように考えております。こうした課税自主権に基づきます税制度の検討は,これは多くの公共団体が行っているところでございまして,ほかにも超過課税や新たな課税対象となる客体があると考えられますが,独自税制を考える場合におきましては,他の財源調達手段の有無あるいは政策効果等につきまして検討をした上で,受益と負担の関係あるいは全体の租税負担率など,その時点での状況を勘案をしながら,県民に新たな負担を求めるべきなのかどうかと,こういったような点,熟慮を重ね,総合的に判断をしていかなければならない課題であると,このように存じております。
 課税の方向性でありますが,国,地方を通じまして,主要な税源が法定税目とされておる,そういう現状におきましては,法定外税によりまして財源調達を行うということは困難であることから,法定外目的税は,政策税制として活用すべきものであると考えております。これに対しまして,法定税の超過課税は,原則としては,必要な財源を調達するための手段であると考えております。今回,提案しております「おかやま森づくり県民税」は,県民税均等割の超過課税でありますが,すべての県民が享受しております森林の公益的機能を維持保全するための費用というものを,できる限り多くの県民の皆様方に薄く広く御負担をいただくという,当初案の考え方を変えない,そういう前提で検討いたしまして,導入可能な方式として提案したものであります。今回の場合は,今申し上げましたような経緯から,この方式を採用したものでありますが,行政目的を達成するための政策税制を考えていく場合におきましては,さまざまな角度から検討し,総合的に判断をすべきものと考えております。
 本議会に上程した理由でありますが,「おかやま森づくり県民税」は,現在の深刻な森林の荒廃の状況というものを考えたとき,可能な限り早期に実施をする必要があるということ,また県民の皆様方の理解も進んできているということから,来年度からの施行といたしまして,さまざまな広報活動を通じまして,県民の皆様へ周知する期間,これを確保する必要があると,このようにも考えまして,今議会に提案をしたものであります。
 税収で行う事業内容につきましては,これまで説明会等を通じまして,できるだけ具体的にお示しをしてきているところでありまして,個々の事業の予算額につきましては,新たな基金事業といたしまして,現在,その詳細を詰めているという状況にございまして,御理解をいただきたいと存じます。
 特定目的基金の繰りかえ運用規定でありますが,これは厳しい財政状況を踏まえまして,平成10年度に条例を整備をし,各基金事業に支障のない範囲で緊急避難的に一般会計が借り受ける事が可能となる,そういう規定整備を行ったものであります。こうした繰りかえ運用は,これまで決算上,実行したことはないとはいえ,決してこれは望ましいものではないと,認識をしているところでございますが,今回の行財政改革の取り組みによっても,なお賄えない収支不足が想定をされている中,現在のところ,条例規定を改正する予定はないところでございます。
 森林保全条例についての提案がございましたが,本県におきましては,平成12年に,岡山21世紀森林・林業ビジョンというものを策定をいたしまして,森林保全に向けた県民の果たすべき役割等を明らかにいたしますとともに,各種森林・林業施策を総合的に推進をしてきております。さらには,新たな税制度を活用いたしました水源涵養のための森づくりなどに取り組むこととしているところであります。御提案いただきました条例の制定は,こうした施策をより一層推進をいたしますとともに,県民の森林保全に関する意識のさらなる高揚を図るためにも,一定の意義があると,このように考えられます。
 一方で,森林所有者等の責務につきまして,既に,森林・林業基本法に規定がなされているということ,あるいは本県の中山間地域の振興に関する基本条例が制定をされ,その中で水源涵養の必要性につきましても触れられているという中で,どのような内容がふさわしいのか等につきまして,私といたしましても十分研究をさせていただきたいと存じます。県議会の方におかれましても,議論を深めていただきますようお願いを申し上げる次第であります。
 産学官連携であります。
 環境産業でありますが,県では,環境産業を重点育成分野の一つに位置づけまして,研究・開発への助成やあるいは地域ミニエコタウン事業によります支援,さらには本県の特性を生かしました木質バイオマス利用技術の開発支援等を行ってきております。環境関連の課題は,水質,大気,廃棄物など多岐にわたっておりまして,多様な取り組みへの支援策が必要であると考えておりますが,御提案いただきました水質浄化産業の育成は,産業振興と環境対策の両面で本県にふさわしいテーマであると考えておりまして,今後の研究課題とさせていただきたいと存じます。
 IPv6でありますが,次世代ネットワーク技術でありますIPv6導入は,身の回りのあらゆるものがネットワークにつながって,すべての県民がITの恩恵を受けることができるユビキタス社会実現のために不可欠でありまして,普及に当たりましては,その利便性を県民の皆様方にわかりやすくお伝えをすることが重要であると考えております。そのために,現在,策定を進めております次期IT戦略プログラムに掲げております生活実感戦略におきまして,IPv6技術によって生活がどのように便利になるのかを県民の皆様に体感していただくための効果的な方策の検討を進めております。
 なお,IPv6の協議会の設置でありますが,産学官によって構成されております岡山県高度情報化推進協議会を活用することも含めまして,今後,検討をしてまいりたいと存じます。
 岡山大学への働きかけでありますが,岡山大学は,本県の中核的な研究・教育機関といたしまして,本県の社会経済,文化の発展に重要な役割を担っているため,地元産業界や県の側からも,岡山大学に向けまして絶えずニーズを発信していくことが重要であると考えております。そのため,現在,岡山・産学官連携推進会議において,県内5大学との産学官の連携・協働の強化を図っているところでありまして,その中で,大学の技術の移転を促す岡山TLOの創設などにつきまして協議をしているところであります。特に,岡山大学が設置をいたしました地域貢献連絡協議会に県としても参画をし,環境対策や生涯学習,食の安全等の本県の諸課題について研究・教育がなされますように,県から働きかけをいたしますとともに,さまざまなテーマに基づきまして,共同研究の場を,現在,設定をしているものであります。今後とも,地元産業に密着した研究活動や,若者が地元で働きたくなるような教育カリキュラムの実施など,岡山大学に対する提言や要望を重点的に,また積極的に行っていきたいと存じます。
 次に,NPOとのルールづくりでありますが,行政とNPOが相互の立場を尊重しながら協働事業を推進するためには,協働のためのルールを確立することが必要であると考えております。このため,第3次岡山県行財政改革大綱でもお示しをいたしましたように,NPOなど関係者で構成する委員会を設置いたしまして,協働推進マニュアルを策定し,これに基づきまして,さらに積極的にNPOとの協働事業に取り組んでいきたいと考えているところであります。
 NGOについてであります。
 国際貢献推進条例制定の理由についてでありますが,これは,本年3月,岡山発の国際貢献を考える会から,国際貢献に関する条例の制定について提言を受け,検討を進めてきているものであります。条例の目的は,県民との協働で国際貢献活動を推進をし,もって夢づくりプランの中でうたっております「国際貢献先進県おかやま」の実現を図ろうとするものでありまして,県民の皆様方に対し,具体的な義務を課するようなものではなく,国際貢献に関する機運を醸成して,そして,県民・NGO等との協働によって国際貢献活動を推進をしていこうと,こういうものであります。現在,条例案につきまして,その骨子につきパブリック・コメントを実施中でありまして,今後,条文化に当たりましては,県議会を初め,NGO等広く県民の皆様の御意見をお聞きしながら成案を得るようにしていきたいと,このように考えております。
 NGOとの連携でありますが,国際貢献を考える会におきましては,明石元国連事務次長など有識者に加え,複数の県内NGO関係者──先ほど御紹介いただきました有森裕子さんにも委員として御審議をいただいているところでありまして,また,条例案の骨子につきましては,お話の約110のNGOが構成する連絡協議会の総会の場において説明を行ったところであります。
 また,NGOに共通する御指摘の諸課題の重要性は,県といたしましても十分認識をしております。人材の育成やNGO活動への支援につきましても,条例の中に位置づけをしたいと考えているところであります。今後とも,人材育成はもとより,岡山国際交流センター内にNGOの活動拠点を整備をいたしますとともに,国際貢献トピア岡山構想を推進する会など,NGO諸団体との連携を図ってまいりたいと存じます。
 岡山県国際交流協会の寄附行為についてのお尋ねでございますが,この寄附行為の変更の必要性につきましては,同協会において自主的に御判断されるべきものであると考えておりますが,現在,同協会におかれましては,従来よりNGO等と連携をされまして,地球市民フェスタを初めとする国際交流活動あるいは国際協力等に関する事業を実施しておられるところでございます。
 国際貢献活動についてでございますが,このたびの条例制定の趣旨は,本県の特性というものを生かしながら,外交など国家レベルの活動とは異なる人道的視点に立った,地域や個人レベルでの国際貢献活動を推進して,ひいては県民生活の質的向上と地域社会の活力の向上,これを目指そうというものでございまして,提案に当たりましては,内容等を慎重に検討いたしまして,県民の皆様の御理解を得られる,そういう条例案にいたしたいと考えているところであります。
 以上でございます。


(生活環境部長)  お答えをいたします。
 まず,NPOとの協働に関する事務事業評価についてでありますが,より効果的で質の高いサービスを提供するためには,協働の主体である行政とNPOが,それぞれの立場や視点で事業の評価を行い,その結果を次の事業に反映させることが必要であると考えております。このため,今後,策定する協働推進マニュアルの中で事務事業評価の具体的な方法を定めていきたいというふうに考えております。
 次に,県民ボランティア・NPO基金についてであります。本県が取りまとめました岡山県ボランティア・NPO活動の促進に関する基本指針におきまして,中期的に検討する施策として,県民の募金による基金創設を掲げているところでございます。募金による基金の創設につきましては,まずNPOの役割や活動に対する県民の理解を深めることが重要であると考えておりまして,このため,普及啓発に現在努めているところでございます。今後,県民の募金への機運の高まりや景気の動向などを見きわめながら,基金の創設について引き続き検討してまいりたいというふうに考えております。
 また,お話の山口県の制度を本県に導入することにつきましては,融資に当たっての保証措置などの困難な課題があると考えておりますけれども,NPOの活動を支援する方策につきましては,引き続き幅広く検討してまいりたいというふうに考えております。
 新総合福祉・ボランティア・NPO会館についてでございますが,新会館のNPO活動支援センターの運営等につきましては,平成14年1月に,専門家によって構成されます委員会で取りまとめられました「岡山県ボランティア・NPO活動支援センターに係る提言」に,基本的な考え方が示されておるところでございます。これを踏まえまして,管理運営体制や利用方法等の具体的な事項につきまして,県民・ボランティア・NPO等で構成する検討会議を来年度早々に立ち上げ,平成17年末のオープンに向けて検討を行うことといたしております。
 市町村職員の研修についてでありますが,お話のとおり,NPOの実際の活動は,市町村等の地域と深くかかわっておりまして,市町村職員もNPOに対する認識を深めることは必要であると考えております。このため,これまで市町村職員も対象にしました自治研修所での関連講座やNPOをテーマにした研究会などを開催してきているところでございますけれども,今後,策定を予定している協働推進マニュアルの普及に合わせまして,これらの取り組みをさらに充実していきたいというふうに考えております。
 以上でございます。


(保健福祉部長)  お答えいたします。
 支援費制度について,予算不足を心配する市町村の現状等についてでございますが,支援費制度への移行に伴い,県全体では,4月から9月の支払い実績は,前年度と比べ約1.3倍になっていると推計しておりますが,補正予算や予算の流用を今後検討せざるを得ない市町村もあると伺っているところでございます。現在,国におきまして,予算の確保について検討中であると聞いておりますが,県としては,国に対しまして財源確保について要望しているところでございます。
 次に,制度等の周知についてでございますが,県では,制度開始前からパンフレット作成や研修会実施によりまして,関係団体や市町村を通じて利用者への支援費制度の周知を図ってきたところでございます。
 また,お話の事業所に関する情報につきましては,市町村の窓口で提供しておりますが,県でも,福祉医療機構の運営しますホームページに掲載し,情報提供しているところでございます。今後とも,インターネットや市町村等を通じまして,支援費制度や事業所に係る情報提供の充実を図ってまいりたいと考えております。
 支給決定の基準についてでございますが,特に,ホームヘルプサービスにつきましては,支給に当たっての解釈が分かれ,市町村間での格差や混乱が生じていることから,県では,全国知事会を通じまして,国においてより具体的な判断基準を作成することを要望しているところでございます。
 障害児への対応についてでございますが,お話のように,中学校,高校年齢の児童につきましては,デイサービスの対象から外れておりますが,利用の要望が強いことから,県としては,全国知事会を通じまして,国にその拡大を要望しているところでございます。
 最後に,民間のデイサービス事業者の育成についてでございますが,土日や夏休み等の長期休暇に児童デイサービスの利用が集中すると聞いておりまして,それらに対応できますよう,デイサービスへの参入や定員の拡大につきまして,市町村とともに事業者に働きかけてまいりたいと思っておるところでございます。
 以上でございます。


(商工労働部長)  お答えいたします。
 産学官連携に関しましての「ハートフルビジネスおかやま」についてでございますが,利用者から真に求められている福祉用具の開発のためには,産学官の連携に加えまして,福祉現場の意見をお聞きすることが極めて重要でありまして,現在,20を超える保健福祉関係団体の自主的な参加をいただいておるところでございます。この取り組みから生まれますところの福祉用具の新製品につきましては,県民が気軽に立ち寄れる場所に展示いたしたいと考えております。お話の新総合福祉・ボランティア・NPO会館での展示を含めまして,今後どのような場所で展示ができますかどうか,検討をしてまいりたいと考えております。
 以上でございます。

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