平成14年6月定例会 一般質問 自由民主党 佐藤真治

1.岡山情報ハイウェイ                  [ 知  事 ]
 (1)先駆性                  (企振)
 (2)産業分野のラストワンマイル        (商労)
 (3)IPv6システムへの対応         (企振)
 (4)技術者の養成等              (企振)
 (5)国外への接続               (企振)
 (6)インキュベーションセンター        (商労)
   ア 産業の創出
   イ 人材の受け入れ
   ウ インキュベーションマネージャー
   エ 既存の支援機関等との連携
 (7)全国マルチメディア祭           (企振)
2.産学官の連携について
 (1)産業クラスター              (商労)[ 知  事 ]
 (2)中国地域発展のための産学官連携マスタープラン
                         (商労)[ 知  事 ]
 (3)産への働きかけ              (商労)[商工労働部長]
 (4)学の取組
   ア TLOの設置              (商労)[商工労働部長]
   イ 岡山情報ハイウェイの利用
                         (企振)[企画振興部長]
 (5)官の役割
   ア 生物科学総合研究所           (農水)[農林水産部長]
   イ 岡山県産業振興財団           (商労)[商工労働部長]
   ウ 官官連携                (商労)[商工労働部長]
   エ 産業育成の仕掛け            (商労)[商工労働部長]
 (6)産学官のコーディネータ          (商労)[商工労働部長]
   ア 起業支援NPOへの支援
   イ 産業戦略プロデューサー
   ウ 産学官コーディネータの育成
3.中小企業支援について             (商労)[商工労働部長]




(佐藤)  自由民主党の佐藤真治でございます。まずもって,ワールドカップサッカー決勝リーグ,日本と韓国の快進撃を心よりお祈りいたします。
 さて,先日,市町村合併の後に来るであろう道州制の議論で,知事は中四国州構想について語られました。全国の知事に先駆けた道州制への具体的な構想,特に四国まで含めた州を考えたとき,唯一の鉄道併設橋である瀬戸大橋を持ち,全国一の高速道路の延長率を誇る交通拠点としての我が県の優位性にかんがみれば,中四国州の州政府,州都はどこに来るのか,そういう議論になり,非常に夢があると思います。願わくば,例えば20年後,石井州知事誕生の暁には,今度は州議会議員として支援させていただきたいものだなどと大きな夢を語りながら,早速通告に従い夢のある質問をさせていただきます。
 平成12年度に基幹回線がすべて完成した岡山情報ハイウェイは,一般に無料開放され,しかも全国を縦横断する国のギガビットネットワークとも接続されたまさに全国に先駆けた取り組みであり,他県や民間通信事業者,さらには国のIT施策に大きな影響を与えています。
 しかし,日進月歩のITの世界で,我が県の誇る岡山情報ハイウェイがいつまで先駆的であり得るのか,端的に言えば,岡山県がITの分野で行政として日本初をどんどん連発させること,そこに生き残る道があるのではないか。換言すれば,先頭を行く者は常に世間があっと驚く新手を出さなくてはならないと考えますが,そういった観点から,知事に質問をさせていただきます。
 まず,既存の岡山情報ハイウェイが今も先駆的か。また,いつまで先駆的たり得るのか,その御認識をお知らせください。
 次に,いわゆる産業分野のラストワンマイル問題についてですが,IT関連産業の集積と発展を図るため,今年度からIT経済特区を岡山駅周辺及びリサーチパークに設け,企業向けの通信費用に対する補助制度も創設されましたが,既存の企業,特にこれまで岡山の経済を牽引してきた既存の製造業者等による情報インフラの活用が進んでいないのが現実です。そこで,既存の企業が新たな展開を行えるような施策が必要であると考えますが,この点につきどのように御認識でしょうか。
 特に,岡山の製造業を支えてきた,例えば水島を中心とした地域を対象に公募により工場へ光ファイバーを引く,そういった制度を設けてはいかがでしょうか。
 また,情報ハイウェイを陳腐化させないためには,先端の技術に対応できるようより高度化させることが必要であると考えます。御案内のように,コンベックス岡山に隣接する大内田のテレポート岡山には岡山情報ハイウェイの心臓部であるネットワーク管理センター(NOC)がありますが,そこには総務省(旧郵政省)の外郭団体である通信・放送機構(TAO)の岡山情報通信研究開発支援センター,通称ギガビット・ラボが入っています。このギガビット・ラボは,高速マルチメディア社会の早期実現を図るギガビットネットワークの拡充のために整備された共同利用型研究開発施設ですが,要するに,全国でも数少ない自設の光ファイバーネットワークである岡山情報ハイウェイの整備が進むこの岡山県全域を実験フィールド,テストベッドにしてしまおうというものです。このギガビット・ラボがあること自体が,岡山県がIT先進地である証左であると言えますが,私は,コンテンツがどうのこうのという陳腐な議論をするよりも,全国に先駆的なこうしたテストベッドを整備することにこそ情報先進県岡山の生き残りの道があると思います。そのことは結果として,人,情報,物をこの岡山に集めることにつながります。
 とりわけTAOは,列島縦断型ギガビットネットワークを国際的に通用する次世代のインターネット・プロトコル・バージョンシックス──以下,ちょっと難しいのでIPv6と言いますが──への対応を実施していますが,TAOの岡山IPv6システム検証評価センターにはIPv6対応のルータ装置についてのシステム間の相互接続検証を実施する日本の最先端の機器が設置されています。これは岡山県にとっては非常に大きいことだと思います。これを生かさない手はありません。
 そこで,以下提言をさせていただきます。
 まず,岡山情報ハイウェイをIPv6システム対応にしてはいかがでしょうか。かかるべき費用を含めて,御所見をお知らせください。
 またさらに,IT先進県として,人材を育てるために,県立大学等でIPv6システム技術者等を養成してはいかがでしょうか。
 あるいは,さらに県立のインターネット単科大学を設置されてはいかがでしょうか。
 加えて,特にOKIXでIPv6の実験を行うことで,東京大手町ではなく,将来的に岡山からも国外,例えばソウルに出られるようにしてはいかがでしょうか。
 次に,こうした先進的な環境にある岡山県で,来年度インキュベーションセンターが完成します。IPv6など先進的な情報インフラが整備されれば,IPv6システムを使った電子製品の開発企業などにとっても大変魅力的だと思いますが,そもそもこのインキュベーションセンターにおいてどのような産業を創出しようと考えておられるのでしょうか,お聞かせください。
 また,インキュベーション施設にとって最も大切なのは設備ではなく人だと思いますが,日本だけでなく,海外,特に優遇措置を伴い,韓国やインド等アジア諸国からの人材を積極的に受け入れるべきではないでしょうか,御所見をお伺いします。
 とりわけ,入居企業をサポートするインキュベーションマネジャーのよしあしでそのインキュベーション施設の価値が決まるのではないかと考えますが,中心となるインキュベーションマネジャーはどのような人物になるのでしょうか。
 また,リサーチパークには工業技術センター,産業振興財団など産業支援機関が集積していますが,それら既存の支援機関等との連携をどのように図っていくのか,お知らせください。
 この項最後に,一昨年の三重,昨年の山梨に続いて,この秋岡山県で全国マルチメディア祭が開催されます。全国自治体の地域情報化に関するものとしては最大規模のイベントであり,IT先進県を自称する岡山県にとってはチャンスであり,まさに生き残りをかけた勝負と言っても過言ではありません。残すところ半年を切りましたが,このイベントにかける知事の意気込みをどうかお聞かせください。
 次に,産・学・官の連携についてお伺いいたします。
 国策として科学技術創造立国を標榜する現在,基礎研究の充実を大学に,その研究成果の活用を企業が行い,産業を振興し,世界に貢献するため,科学技術基本法や産業技術力強化法が成立し,民間に対する大学の研究成果の技術移転促進に制度や予算面で支援体制がとられつつあります。
 また,企業の集積と,それを核とした大学や産業支援機関との交流,連携を前提にした地域経済の発展形態である産業クラスター論が盛んになってきました。要するに,ネットワーク型の産業組織を前提に,競争力強化の方向を模索し,イノベーション能力や新事業創出能力を生み出し,産業振興に結びつけることが地域の生き残り策ということです。換言すれば,この産業クラスター論は,その根本精神において,従来の国土開発の基本である均衡ある地域の発展を全面否定し,地域の特色ある発展にシフトしたことが特徴で,いわば護送船団方式から地域間競争を勝ち抜きたい,そんなやる気のあるところが早い者勝ちになる,そういった施策と言えると思います。
 ただ,この産業クラスターの定義自体が非常にあいまいで,立場によって指し示す内容が違うのではないか,そういう疑問があります。中国経済産業局,企業,財界のイメージはそれぞれでありますし,文部科学省の知的クラスターとの概念の混同,あるいは高度成長期のテクノポリス構想の焼き直しが見られます。この産業クラスターの概念のとらまえ方の違いで,例えば岡山県のとるべき施策は全く異なってきます。
 そこでまず,重厚長大の時代のコンビナートから産業クラスターに変遷していくととらえたとき,我が県の産業クラスターをどことイメージすればよろしいのでしょうか,知事にお尋ねします。
 そして,思うに,この産業クラスター構想の根幹には産・学・官の連携がある,いや,産業クラスターの成否は,まさに産・学・官連携の成否にかかっているのではないでしょうか。このことから,中国経済産業局の音頭取りで本年2月2日に行われた中国地域産学官連携サミットでは,「中国地域発展のための産学官連携マスタープラン」が採択されています。
 ちなみに,このマスタープランでは,中国地域が世界有数のイノベーション型産業基地と,世界のモデルとなる循環型社会の形成を実現するために,5つの方針と3つの目標が掲げられ,地域全体で協働して産・学・官の連携を実行していくことが確認されました。特に,この方針の中では,「社会・組織におけるチャレンジ文化の形成」,「イノベーションを担う人づくり」が掲げられ,意識改革と人づくりという観点から産・学・官の連携をとらえたのが特徴的です。まず,このマスタープランについて知事の御所見をお伺いいたします。
 ただ,大学が学術的な視点から研究し,この視点と企業の経済的な視点が融合して成果を上げる産・学・官協力の重要性はこのようにたびたび指摘され,国でもさまざまな機関や審議会がさまざまな提言や答申を行い,その提言を踏まえ,組織づくりや促進施策も実施されてきましたが,なかなか日本社会全体の意識改革に至っていないのが現実です。こうした観点から,産・学・官それぞれについて質問をさせていただきます。
 まず,産について。
 米国では大学と企業の包括提携が盛んですが,日本では,企業との関係も大学の教授など個人の努力に依存し,組織としての取り組み不足であると,産・学・官連携不振のその理由を大学に求めることが多いのですが,実際には,大学で生まれた技術の芽──シーズを可能性に,自分の問題として投資をしない,そういった産業界の責任も大きいと言われています。そのためには,制度として,学に対して産の側からニーズを伝えていく仕組みも必要ですし,例えば,学の持つパテントを事業化するための制度的な人的・情報的・金銭的支援体制が必要です。さらには,ベンチャー精神,チャレンジ精神を背景にした挑戦型社会経済システム構築のための税制面の優遇等のバックアップは当然に必要だと思います。
 まず,官として,この産・学連携につき,産の側にどのような働きかけ,刺激策,支援策をとられていくのでしょうか,商工労働部長にお尋ねいたします。
 次に,学について。
 国立大学の独立行政法人化の中で,最大の課題になる文部科学省の予算の獲得を見越して,1998年施行の大学等技術移転促進法に基づき,大学の研究成果と企業を結びつけ,経済を活性化する技術移転機関──TLOという言い方をしますが──TLOの設立が全国で相次ぎました。研究成果が移転され,実用化されてベンチャー企業など新産業の育成につながれば,大学にとってはその技術供与で得た利益を研究費に充てられますし,新たな雇用の受け皿にもなります。
 岡山大学も,日本の国公私立トップ30大学を世界最高水準に育成するといういわゆる「遠山プラン」に先立ち,2000年に「21世紀の岡山大学構想」をまとめ,大学院重点大学志向を鮮明にしました。しかし,このTLOが,大学が研究開発や学生確保で競い合うことを示す象徴的な存在であると言われ,また,山口大学がベンチャー企業創出に取り組み,実績を上げているのに比べると,残念ながら岡山大学は,TLOをつくり,県内産業界と交流促進をするのがおくれていると,そのように言われております。
 学にはすぐれた技術シーズの創出と公開が望まれますが,知を伝える学にとって,産との連携は本来的な活動ではないという,そういった意識の改革がまず必要です。かなり大胆な大学内の改革が同時並行的になされないと,大学の空洞化がもたらす地方産業の空洞化という深刻な事態になるのではないか。そんなおそれもあり,ひとりこれは大学だけの問題ではありません。まず,TLO設立につき,どのような支援をされていくのでしょうか。
 また,中国経済局は,3年で200社の大学発のベンチャーを目指しているそうですが,実際,どれだけ出てくるでしょうか。また,そのための環境整備,その支援はいかようになされていくのでしょうか。
 さらに,学科内の研究室の連携はもちろん,県立大学,私立大学との連携も含めた地域内の学学連携が重要ですが,どう後押しされるのでしょうか,あわせて商工労働部長にお尋ねいたします。
 また,こうした連携の仲立ちをするのは岡山情報ハイウェイだと思いますが,各大学でどのように利用されているのでしょうか。とりわけ,それが若い研究者の参加にどう結びついているのでしょうか,企画振興部長にお尋ねいたします。
 次に,官について。
 官は,技術開発の方向づけ,すなわち重点分野の設定,基本的な仕組みづくり,研究開発の支援の実行が望まれます。この場合の官は,研究開発施設や工業技術センターだけを意味せず,行政そのものでもあります。税金から成る予算を使うことだけではなく,チャレンジ精神で行政みずからが新ビジネスをつくっていく,こういった官の意識改革が望まれます。
 まず,行政の持つ研究開発施設,試験研究機関の計画的・戦略的形成を図るために,新たな組織を設け取り組まれていますが,今回は特に生物科学総合研究所について,産・学・官連携の流れの中で,今後どのような役割を担っていかれるのでしょうか,農林水産部長にお伺いいたします。
 また,昨年3つの財団が統合して岡山県産業振興財団ができ,産業技術支援について外部から優秀な人材が集まられていることは十分存じ上げておりますが,会社からの御出向の方はいずれ帰っていかれます。産業技術に関する自前の人材の育成についてどのような方針をお持ちなのでしょうか。
 また,官官連携も重要になります。県と市町村間はもちろん,学会等で連携する学に対して,県境を越えた官,すなわち地方自治体同士の産業に関しての連携システムも重要になりますが,この点どのようにお考えでしょうか。
 また,産と学,ベンチャーキャピタルとを結ぶためには,アイデアコンテストのような行政の仕掛けも必要ではないでしょうか。特に,児島湖の浄化,福祉機器など,環境や福祉を通しての産業育成を行政が誘導すべきだと思いますが,いかがお考えでしょうか。以上,商工労働部長にお尋ねします。
 この項最後に,産・学・官のコーディネーターについて商工労働部長にお伺いいたします。
 まず,我が党が進めているNPO法の改正が実現すれば,12分野に加えて,起業支援や科学技術の振興などが活動対象になる見通しです。NPOは,組織の性格上,過度に利益を追求せず,起業を取り巻くさまざまな関係者の中でも中立的な立場を保てるということで,利益第一目標の投資会社と異なり,大学や地域社会,行政などとベンチャーを取り持ち,地域の活性化や雇用創出のきっかけづくりにも貢献できる役割を果たし得ると思います。こうした起業支援NPOをどのように支援されていかれるのでしょうか。
 また,このたび外部から行政の枠組みを超えた自由で大胆な発想による政策立案とそれを実行するための民間人材を任期づきの産業戦略プロデューサーとして採用されています。民間企業のノウハウと人的ネットワークを生かし,現実の問題点の整理と今後の施策の方向性についての調査研究を行うということですが,その範囲は商工の全分野に及び,あたかも岡山県商工の総合プロデューサーのようですが,組織上どう位置づけられて,どう後進を育成され,どこまでの権限をお持ちなのでしょうか。
 加えて,産・学・官コーディネーターには,大きくプランするコーディネーター,プロジェクトコーディネーター,個別専門的なコーディネーターの3タイプのコーディネーターが必要であると言われていますが,産・学・官コーディネーターをどのように養成され,支援されていくのでしょうか。
 次に,中小企業総合指導センターの廃止について商工労働部長にお伺いいたします。
 今回の行革で,中小企業総合指導センターが廃止され,これで外郭団体を含めた県関係組織から中小企業という言葉が消滅いたしました。県内の産業の多くが中小企業である,言葉のあやであるといえばそうなのですが,中小企業経営者の中には,県の中小企業対策が一歩後退したのではないか,そういった印象を持っておられる方が少なくありません。この点についての御説明をお願いいたします。
 私の質問は以上でございますが,私は,産・学・官の連携が実る産業クラスターのイメージは,例えば真庭産業団地あるいは玉島ハーバーアイランドも考えられますけれども,やはりリサーチパークを中心にした岡山空港周辺の美しい高原,丘陵地帯ではないかと思います。あるいは,外国からの技術者たちが吉備高原に暮らし,岡山空港から岡山が文字どおり世界に結ばれるかもしれません。そして,この地域のことを外国のシリコンバレーやドラゴンバレーに倣って,クラスター──これはブドウの房という意味なんですけれども──がブドウの房の意味ならば,あえて岡山は岡山らしくマスカットバレーと,このように呼んでみたいと思います。
 中四国州にマスカットバレーあり,そんな大きな夢を描きながら,質問を終わらせていただきます。どうかよろしくお願いをいたします。どうもありがとうございました。


(知事)  自由民主党の佐藤議員の質問にお答えを申し上げます。
 まず,岡山情報ハイウェイでありますが,その先駆性についてのお尋ねがございましたが,基幹回線の高速性を発揮させます地域IX──インターネットエクスチェンジを構築をしているといった点とか,あるいは全市町村の光ファイバー接続が今年度中にも完了する見込みであるといったような点などを見ましても,依然として先駆的であると,このように考えております。
 しかし,議員の御質問の中にもございましたとおり,情報通信基盤の整備につきましては,急速な技術革新が進む中で,各県が競って取り組んでいるところであります。本県のこの先駆性というものを維持していくためには,時代を先取りをした機能強化が必要であると,このように考えております。このため,全県地域的なラストワンマイルの整備であるとか,あるいは中四国各県と東京,大阪との接続によります中四国IX──インターネットエクスチェンジの形成などに取り組んでいるところであります。あわせまして,こういったすぐれた情報通信基盤というものを活用いたしまして,全国に先駆けて実施をいたしました電子入札とか,あるいはIT特別経済区といったようなソフト施策にも強力に取り組んで,引き続き岡山県が先駆的たり得るように努力をしていかなければいけないと考えております。
 次に,産業分野のラストワンマイルについての御質問でございますが,既存企業のIT活用につきましては,先進的な活用事例とか,あるいは具体的な活用方法等についての研修を行っておりますし,またシステム構築のための支援制度というものもあるわけでございますので,こういった機会とか制度というものを活用いたしまして,効率的で効果的なるシステムを構築をしていただきたいと考えております。
 また,水島を中心といたしました地域を対象といたしまして,公募によって工場まで光ファイバーを引く制度を設けることはどうかというお尋ねがございましたが,ラストワンマイル対策につきましては,御案内のとおり,官と民の役割分担ということで岡山県は基盤を整備をしてきているわけでございます。そういった見地から,岡山情報ハイウェイの基幹回線というものは県や市町村が行い,そして各企業や家庭までのいわゆるアクセス回線につきましては民間通信事業者が行うということを原則としているわけでありまして,行政といたしましては,むしろ,例えば港湾EDIといったような民間事業者がこのITを活用した経済活動を展開しやすい環境の整備といったことを進めていきたいと考えております。
 次に,IPv6──インターネット・プロトコル・バージョンシックスシステムへの対応ということの御質問がございましたが,これはIPアドレスの不足への解消とか,あるいは高品質で安全性の高い次世代ネットワークの構築に大変有効な技術でございまして,将来的には,インターネット家電の普及など県民生活の利便性向上にも必要なものと認識をしておりまして,私といたしましても,技術動向等について非常に注目をしてきたところであります。
 特に,御質問にもございました通信・放送機構(TAO)によります実験が本県においては行われているわけでございまして,他県に先駆けてこういった問題に取り組むということは大変重要な課題であると思っております。技術,人材の集積というものも期待できます。岡山情報ハイウェイのIPv6への対応につきましては,今後ともそういった見地から研究をしてまいりたいと思います。
 なお,導入経費でございますが,岡山情報ハイウェイの県下14カ所にあります接続拠点の機器及び設置費を合わせますと約2億円程度と試算をしております。ただし,市町村を含めた地域情報網,いわゆるリージョナルウェブに導入をしていくためには,当然これに加えてさらにコストがかかるわけでございます。
 次に,技術者の養成でありますが,現在,県立大学を初めといたしまして県内7大学28学科におきまして情報通信技術系の講義が行われているところでありまして,こういった講義や,あるいはゼミナールにおける情報教育カリキュラムというものをより高度化することによりまして,IPv6システム技術者の養成が図られていくものと期待をいたしております。
 御提案がございましたインターネット単科大学の設置でございますが,当面は各大学におけるカリキュラムの充実にゆだねることといたしたいと存じます。
 国外への接続でありますが,全国に先駆けて構築をいたしました地域IXでありますOKIX──岡山インターネットエクスチェンジを中四国の情報の結節点へ発展をさせていくために,今年度,中四国各県やあるいは東京,大阪との接続につきまして調査研究に着手をしているところであります。お話のように,IPv6の実験等を通じまして,OKIXの魅力というものを一層高めることによりまして,海外とも結ばれたIXへ発展できる可能性もあるということでございまして,今後,御提案の趣旨も念頭に置きながら研究を進めてまいりたいと存じます。
 インキュベーションセンターにおける産業の創出についてでございますが,このセンターは,御案内のとおり,ITとものづくり分野というものの両方を対象にしているわけでありまして,ソフトウエア開発等のIT関連産業を初めといたしまして,人間型ロボットとか,あるいは情報通信機能を組み込んだ家電製品など,ITとものづくり技術との融合ということによります新たな産業の創出を目指してまいりたいと存じます。
 人材の受け入れでありますけれども,広く国内外から技術やアイデアを持った優秀な人材を岡山に集めることが大切である,議員御指摘のとおりであります。このため,入居者募集を行いますPFI事業者にも,グループ企業等のネットワークというものを最大限に活用いたしまして国内外から積極的に募集をするように依頼をいたしております。そして,海外からの入居者に対する優遇措置についてでございますが,当然具体的なケースがございました場合,それに応じまして前向きに対処してまいりたいと存じます。
 インキュベーションマネジャーについてでございますが,県といたしましても,その役割の重要性というものを十分認識をしておりまして,現在PFI事業者が,3名の常勤マネジャーにつきまして,研究開発やマネジメントの経験者等の中から慎重に人選を行っております。
 さらに,グループ企業等がそのノウハウとか,あるいはネットワークというものを生かしましてマネジャーを直接及び間接的にバックアップしていく体制,例えば本社から研究者を招致する等の計画がなされているところであります。
 既存の支援機関等との連携でありますが,PFI事業者が,工業技術センターや,あるいは中核的支援機関でございます産業振興財団と意見交換を行いながら,現在運営計画というものを煮詰めております。これら支援機関の公的支援制度というものと,それからPFI事業者のネットワークというものをうまく活用いたしまして,既存の各種研究会へ参加をしていただくとか,あるいはベンチャー交流会の共同開催を行うなどいたしまして,起業家支援のための事業の連携を深めてまいりたいと考えております。
 全国マルチメディア祭についてでございますが,情報先進県岡山を全国にアピールする絶好の機会であるととらえております。私も,実行委員会の会長といたしまして企画案に直接関与するなどいたしまして,全力を挙げて開催準備に取り組んでおります。岡山情報ハイウェイに直結をいたしました超高速ネットワークを会場内に張りめぐらせまして,県民の皆様方に来るべきブロードバンド時代における生活空間を体感をしていただくということを考えておりますし,同時に,全市町村と光ファイバーで結ばれようとしております岡山県でございますので,全市町村から送られてくる映像というものを会場内に設置されました78の画面に同時に映し出すという全国にない画期的な仕組みというものをつくるなど,岡山県が構築したこの情報通信基盤を存分に活用したイベントとなるようにこれからも工夫を凝らしてまいりたいと考えております。
 次に,産・学・官の連携であります。
 産業クラスターでございますが,議員からさまざまな見地からの御質問をいただきましたが,私は,この産業クラスターというものは,地域のすぐれた資源というものを生かしまして,産業集積を連鎖的に生み出し発展をさせるものでありまして,そういったことから,エリアを固定的にとらえる概念というものではないと,私はそのように考えております。
 県といたしましてでございますが,県南部を中心といたしまして展開をしておる機械産業の集積を生かしまして,本県が優位性を持っております精密加工技術といったものを中心といたしまして,関連する大学とか企業,産業支援機関のネットワーク化の促進等によりまして,技術革新とか,あるいは販路の開拓などの機能強化を進めてまいりまして,世界に通用する岡山版産業クラスターというものをぜひ形成をしてまいりたいと考えております。
 中国地域発展のための産・学・官連携マスタープランについてでありますが,このプランは,中国地域の産・学・官のトップが参加をしたサミットにおきまして全国に先駆けて採択をされたものであります。産・学・官連携によります技術革新とか,あるいは社会全体の意識の改革,人材の育成といったものを進めて地域の発展を目指すものでございます。当マスタープランには,大学発ベンチャー創出数などの具体的な目標数値が掲げられておりまして,中国地域というものが一丸となって達成を図るべきものと考えております。
 御案内のとおり,夢づくりプランの中でも,産・学・官の共同研究を促進する本県独自の施策を具体的にいろいろ盛り込んでおります。こういったものを通じまして,産・学・官連携の飛躍的な強化というものに取り組んでいかなければならないと,このように考えているところでございます。
 私からの答弁は以上でございます。


(企画振興部長)  お答えをいたします。
 産・学・官の連携のうち,学の取り組みに関し,岡山情報ハイウェイの利用についてでありますが,現在,県内7大学が岡山情報ハイウェイを活用し,国の学術情報ネットワークに接続することで高速な通信環境での大学間の情報交流を実現をしております。
 こうしたネットワークは,大学間連携に不可欠な情報通信基盤として多くの若手研究者に活用されておりますが,岡山理科大学,高知工科大学等の連携によるインターネットを利用した遠隔講義システム構築に向けた研究や,岡山大学医学部附属病院による遠隔医療システムを利用した内視鏡手術への応用など,さらに広範囲な連携を生み出しておりまして,今後ともこうした連携の促進に努めてまいりたいと存じます。
 以上でございます。


(商工労働部長)  お答えをいたします。
 産・学・官の連携についてのうちの産への働きかけ等についてでございますが,これまでに水島企業と地元大学との連携システムの構築,産・学・官の研究会への参加の呼びかけ,成功事例を紹介するシンポジウムの開催,合同研究発表会の開催支援等を行ってきたところでございます。
 さらに,今年度から新たに設けました企業と大学との共同研究を助成する本県独自の支援制度なども活用しながら,県内の企業がより積極的に大学との連携に取り組むよう働きかけてまいりたいと考えております。
 次に,学の取り組みのうちのTLOの設立等についてでございますが,県内においては,岡山大学で昨年4月にリエゾンオフィスを設置し,将来TLO設立も視野に入れながら活動をしていると聞いております。県といたしましても,技術移転に効果的な仕組みであると考えておりまして,大学との意見交換を図りながら,必要な支援を行ってまいりたいと考えております。
 また,大学発のベンチャーの創出につきましては,大学の若手研究者のシーズを起業へつなげる助成制度を設けておりまして,目標の達成に向け,環境整備に努めてまいりたいと思います。
 さらに,大学間の連携の動きに対応いたしまして,大学合同の研究発表会を支援するなど国公私立を含めた県内大学の連携を一層促進してまいりたいと考えております。
 次に,岡山県産業振興財団についてでございますが,当財団は,中小企業等への経営面,技術面の支援を行っておりまして,民間企業の実態を踏まえた適切な業務を実施するため,企業からの出向も受け入れているところでございます。
 しかしながら,御指摘のとおり,産業技術に関する自前の人材育成は重要と考えておりまして,企業OBの採用なども視野に入れ,技術支援の中心となり,産・学・官連携のコーディネーター役ともなる職員の育成確保を指導してまいりたいと考えております。
 次に,官官連携についてでございますが,県境を越えた広域的な官の連携といたしまして,従来から工業技術センターにおいて他県と連携した共同研究を進めてきたところでございます。今後とも,県内の各地域の産業支援組織や研究機関等との連携を強めるとともに,中国地域の広域的な情報ネットワークを構築することなどにより,行政相互の連携を一層深めてまいりたいと考えております。
 次に,産業育成の仕掛けについてでございますが,県では,起業家にビジネスプラン発表の場を提供したり,大学のシーズの公開を促進するなど,産業育成につながるさまざまな連携施策を講じております。
 また,環境や福祉等21世紀の大きな課題の解決に向け,産・学・官が協働することは重要でありまして,水島工業地帯産学官懇談会におきましても,県が提案した環境をテーマとする共同研究が行われているところでございます。引き続き,こうした観点から,産・学・官連携を通じた産業育成に努めてまいりたいと考えております。
 次に,産・学・官のコーディネーターのうち,起業支援NPOへの支援についてでございますが,多様な組織がそれぞれの立場で起業家の支援に取り組むことが必要でございまして,起業支援NPOの活動はベンチャーの育成にとって有意義なことでございます。県といたしましては,起業支援NPOに対して,県内の産・学・官により構成される産業支援プラットフォームへの参加による情報交換の機会の提供,また県内外の起業家支援組織との交流などにより,その自主的な活動を側面から支援してまいりたいと考えております。
 次に,産業戦略プロデューサーについてでございますが,商工労働部の主管課であります商工企画課の参事(スタッフ職)といたしまして,特別な権限はございませんが,民間ならではのノウハウや豊富な海外駐在経験等を生かし,産・学・官の交流による県内産業の活性化,本県経済の国際化など,商工行政の重要施策について調査・企画を行うこととしております。
 また,当プロデューサーの業務を通じ,部内に民間感覚やノウハウを浸透させ,職員の意識改革につなげていきたいと考えております。
 次に,産・学・官コーディネーターの育成についてでございますが,県内の産業支援機関や大学を中心に技術面などの専門分野のコーディネーターが配置されており,県ではこれらのコーディネーターの連絡会議を運営し,情報交換及び資質の向上を図っているところでございます。産・学・官連携の促進のためには,御指摘のとおり,プランづくりやプロジェクトチームの編成など,さまざまな役割を担う多様なタイプのコーディネーターの活動が重要でございまして,今後ともこうした人材の発掘や育成を図ってまいりたいと考えております。
 最後に,中小企業総合指導センターの廃止についてでありますが,中小企業者のニーズが多様化,高度化する中で,行政が実施する経営診断・指導よりも,幅広い知識を有した民間の専門家を活用することがより有効で効果的であるとの観点から,県中小企業支援センターと5カ所の地域中小企業支援センターを整備したところでございます。それに伴いまして,中小企業総合指導センターを廃止し,中小企業施策に総合的に対応する経営支援課を本庁に新設いたしまして中小企業対策の充実強化を図ったものでございます。県の組織という点では名前はなくなりましたが,中小企業対策に全力を挙げて取り組む姿勢に何ら変わりはございませんので,御理解を賜りたいと存じます。
 以上でございます。


(農林水産部長)  お答えをいたします。
 産・学・官連携のうち,生物科学総合研究所についてでございますが,現在,地場企業を初め全国11の大学等との積極的な共同研究にも取り組みまして,痴呆性を改善する効果のあるたんぱく質の量産技術を開発いたしまして,地場企業での工業化が図られるなど着実な成果を上げているところでございます。
 今後とも,さらに広範な分野で共同研究を推進いたしまして,先端的な技術開発成果の農業分野への応用でありますとか,特許権等のノウハウの地場企業への移転等を通じまして本県産業の活性化に結びつけ,同研究所を本県バイオ研究の拠点施設として一層その役割を高めてまいります。
 以上でございます。

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