過去の岡山県議会一般質問集 <日本国を思う>篇

<平成26年6月定例会>(2014年6月24日)

(佐藤)  自由民主党の佐藤真治でございます。
 ワールドカップサッカーですが,日本も首の皮一枚残っております。明朝午前5時にキックオフのコロンビア戦に頑張れ日本と熱いエールを送るためにも,一般質問最終日のトップバッターで元気を出してまいります。
 ところで,通常国会も閉会いたしました。集団的自衛権,TPP交渉,原発再稼働問題,新成長戦略等々,内外の問題が山積している中で,思えばこの1年半,まさに安倍政権は怒濤のごとく突き進んできた感もあり,自民党の地方議員としては本当に頼もしいなあという誇りに加えて,やや戸惑いも覚えてるのも事実でございます。集団的自衛権行使容認議論以前にも特定秘密保護法,教育への自治体の長の関与を強める改正地方教育行政法,官僚の政治任用を強める内閣人事局創設,内閣法制局長官などの人事,ここに来て財源がまだ決まっておりませんが,法人税減税,あるいは農協改革の方針等々,これだけの大仕事をこれだけ矢継ぎ早にこなしてきた政権はちょっと過去に例がないのではないかというふうに思うぐらいであります。もちろん,いささか性急じゃないかという批判もあれば,国家存亡の危機に安倍政権でなくてはできないことばかりで,誰がこれだけのことができるんだという評価もあると思います。ただ,特に私たち子育て世代の思いとして,一つには我々の子供たちの時代にこれ以上ツケを回してはいけない,少なくとも借金をふやしちゃいけんなという思いがあります。それに加えて,映画も小説も「永遠の0」がヒットいたしましたが,我々の子供たちの時代に絶対に戦争が起きないように,これはもう誰かに殺されても誰かを殺してもいけない,しかし誇り高き我が祖国日本の国民として国際社会で名誉ある地位が占められるよう,そんな願いがございます。一方で,我々の親の世代,私たちの先輩方には,この国に,この岡山に生まれてきて本当によかった,頑張ってきてよかったと安心してもらいたい,そんな思いもございます。
 そんな思いで世の中の流れを見ると,何か漠然とした不安を感じてしまうのもまた事実でございます。ただ,はっきりしていることは,間違いなく我々は激動する時代の変わり目に立っているということであり,政治にかかわる者は私心を排し,あるべき理想を高々と掲げる中で,しかし今ある厳しい現実をしっかりと見据えて一歩でも前に進む決断と実行を確実に行うことが,まさに責任ある使命だということでございます。我々に逡巡する時間はございません。まずもって,知事には,一人の政治家として今の時代をどのように見据え,今の安倍政権をどのように評価し,御自身が政治家としてこの時代に何をなすべきかとお考えかお伺いいたします。

(知事)  自由民主党の佐藤議員の質問にお答えいたします。
 政治家としての考えについての御質問でありますが,我が国は少子化による人口減少や急速な高齢化の進展,莫大な公的債務など,これまでにない困難な課題に直面しており,国を挙げてこれらの課題を克服していく必要があると認識しております。こうした中,安倍政権においては強いリーダーシップのもと,持続的経済成長と財政再建の両立という政策課題に真正面から取り組むとともに,さらなる成長を目指した改革を推し進められており,実行力のある政権であると考えております。私としては,社会の大きな変化の中にあってしっかりと将来を見据え,岡山県の明るい未来のために今なすべきことを勇気を持って果断に実行し,現在の県民はもとより,将来にわたって全ての県民が明るい笑顔に包まれ幸せに暮らすことができる岡山県を築いていくことこそが私の使命であると考えております。
 以上でございます。



<平成22年9月定例会>(2010年9月14日)

(佐藤)  本日,民主党の代表選挙が行われますが,結果はどうあれ,現下の経済状況の中で,参議院選挙以降,時間を浪費しながら,結局は税金を使ったコップの中の争いに空白の2カ月の政治状況をつくった責任は,私は極めて重いというふうに思います。民間がきょうの生き死にで日々戦っている中,景気回復の足を政治が引っ張っているようにすら見えます。まずは,いかなる結果であれ,国民の皆様の信を問う解散総選挙を行うのが,私は筋だと思います。ともあれ,年末に向けて,さらにとんでもない事態になるのではないかという恐怖感が襲いますが,もはや政治をあてにせず,先憂後楽どころか,おのれの選挙のためにきゅうきゅうとする政治家,議員が侮蔑の対象になっていること自体,だれにとってもこれは不幸な状況だと思います。だからこそ,地方は,多数党として我々自民党地方議員が何としても守り抜いていく,そんな思いを込めて,提言及び質問をさせていただきます。昨今流行の「注視する」,「推移を見守る」といった,事実上何もしないで放置するような,そんな答弁をいただかないことを切にお願いいたします。
 さて,行財政構造改革も2年目に入りましたが,基本的には,全国どの都道府県も歳出カットを中心とした行財政改革を行っておりますけれども,経費削減だけで財政再建が実現できるのか,地域経済の衰退によって税収減が予想される中で,財政の持続可能性はあるのか,超高齢化社会の社会保障関連支出にたえ得るのかという命題を抱えております。一方で,岡山県はお金がないと,金科玉条のように,それをもって結局は,もとから努力もしない言いわけにしたり,一方的に施策や施設をいじることに伴う大損害について,実際に金銭的な被害が生じても,理解と協力を強制的に求めてこられる,そうしたことへの怒りもしばしば耳にいたします。必ずしも,交付税の仕組みで丸々はプラスにはならない,そうしたことは理解しつつも,本来であれば,県民の皆様の所得が上がって,黒字の地場企業が元気に収益を上げて,そこから税収を上げていくことが行政のとるべき本筋であり,民に負担を強いる行革は,あくまで私は緊急事態だというふうに思います。だからこそ,地方経済の活性化のためには,地方自治体みずからがリーダーとなって,戦略的,組織的に攻めの行政を行っていく必要があるわけでございますが,私も昨年11月定例会で,成長戦略会議を創設すべきだと申し上げ,今月下旬に産学官の各分野で活躍されている県内外の有識者で構成する,おかやま発展戦略会議を発足させて,そこから柔軟で斬新な視点からの活発な議論を通じて,岡山の力強い発展に向けた施策の方向等について提言をいただくということには,期待させていただきたいというふうに思います。
 まずは,行革が民に負担を強いているという,そうした御認識があられるか,経費削減だけで財政再建が実現できるのか,地域経済の衰退によって税収減が予想される中で,財政の持続可能性はあるのか,超高齢化社会の社会保障関連支出にたえ得るのかという命題について,知事の御所見をお伺いいたします。また,今回提言される,おかやま発展戦略会議について,知事の思いをお知らせください。
 こうした中,国の新成長戦略に掲げられた総合特区の制度設計のための提案募集が注目されます。記憶をたどれば,平成14年12月議会でお伺いしているんですけれども,小泉構造改革の根幹をなすものの一つとして,当時,鳴り物入りで構造改革特区というものがありました。当時,本県からの提案は,IT特区や水島港国際物流・産業特区など,地域特性や,あるいは企業参入の動向等を踏まえて提案した4件にとどまって,岡山市,倉敷市がそれぞれ1件,おまけに,こうした規制緩和を求める声に対して,必ずしも各省庁の回答はいいものではなかった,興ざめした感がございました。
 知事は,今回の総合特区の制度設計のための提案募集に当たり,早々に本県の有する強みや特性を踏まえた幾つかの提案を掲げられ,関係団体等の調整を図った上で,国に提案されるとのことでございます。一方で,岡山の発展戦略については,こうしたおかやま発展戦略会議を創設して,開かれた場で,外部有識者の意見を反映していこうとされています。そこで,伺いますが,今回の提案は,どこでどのような決定過程を経て,何を根拠に選ばれたのか,非常に私には不透明に思えます。どういった議論が行われたのか,お知らせください。
 ところで,これは構造改革特区の議論の当時のことでございますが,香川経済同友会が国立公園の指定が外れている橋台の島,橋の島の与島あたりに,米国ラスベガスのような娯楽施設が集合したエンターテインメント型カジノを想定し,カジノホテル棟の宿泊客を年間500万人,関連産業も含めた経済波及効果は約1兆円と見込んだ瀬戸内海カジノ構想を提言されました。今回の議論の俎上には,いわゆるこうしたカジノ構想は上がらなかったのか,あわせてお伺いいたします。
 加えて,免税店について伺います。
 いわゆるインバウンド,外国人観光客,とりわけ中国や台湾の富裕層を呼び込むための仕組みとして,岡山に免税店をつくることが大きな武器になると思います。我々はアジアの国々で,ツアーとなれば,いや応なく連れていかれてしまう免税店でございますけれども,例えば,与島にカジノがあって,世界のエンターテインメントが楽しめたり,瀬戸内海を広島までナイトクルージングできたり,そして免税店で買い物をするというのは,これ私は世界標準ではないかと思います。そして,免税店も実はさまざまなタイプがあるんですけれども,免税店設置についてはどのようにお考えでしょうか。
 そして,この瀬戸内海に関連してでございますけれども,私は現在開催されている瀬戸内国際芸術祭2010について,岡山県の対応が全く理解できません。退任された真鍋香川県知事が実行委員会委員長として,海の復権は人間性の回復と次世代につなぐ最後の仕事として頑張られ,御案内のとおり,会期は7月19日から10月31日まででございますが,既に来場者は予想を大きく超えて約30万人,既に3年後の次期開催も報道されております。連日,海外から高松空港,高松港に観光客がおり立っておりますが,岡山サイドは余り岡山県の協力があるように見えません。今回,提案説明で,あっ晴れ!おかやま国文祭に言及されても,現在開会中の世界的な文化の祭典である瀬戸内国際芸術祭に全く言及されないのはどういうことでありましょうか。知事は,観光振興につきましては,秋の本格的な観光シーズン,あっ晴れ!おかやま国文祭の開催に向け,市町村や県観光連盟等と一体となって,本県の見どころなどを積極的に情報発信しているところであり,そして,インバウンドの振興に取り組むとおっしゃっておられますが,少なくとも,中四国州を言い,そして牛窓や笠岡に島嶼部がある岡山県においては,私はこれは希有なチャンスであり,手をこまねいている場合では全くないと思うんですけれども,今後の対応も含めて,瀬戸内国際芸術祭に対する知事の御認識をお知らせください。
 加えて,これは自公連立政権の時代のころのことなんですけれども,自公連立政権の時代に進められていたもの,この4月に総務省は,ネットワーク経由でソフトや情報サービスを利用するクラウドコンピューティングの普及に向け,特区を創設する方向を示しました。シンガポールなどでは,もう既に国策としてあるんですけれども,情報を集中管理する国内最大級のデータセンターを構築しようということで,実は日本では,コンテナ型サーバーが建築基準法や消防法の対象になって,建築運営費がアメリカの2倍に上がると言われ,こうした規制を緩和しようというものでございます。現在,日本のネット経由の通信量の半分近くが海外のデータセンターを使って,実は7,000億円以上の利用額が海外に流出したと推察されております。これで,クラウド特区でコストを下げて構築されたデータセンターができれば,日本の企業や国や地方の官公庁の機密データは,情報漏れのリスクを減らして,国内に,しかも低価格で格納することができます。問題は,税制に絡む問題や著作権法など,これをクリアするということですが,情報先進県を目指し,かつ交通の結節点でもあり,災害等の少なさで言えば,私は岡山県にも十分に芽があるというふうに思います。東京には,総床面積14万平方メートルの世界最大級のデータセンター,アット東京がありますが,国は2011年春にも,北海道か東北に特区を創設して,国内最大級のデータセンターの構築を目指しており,その投資額は最大でも500億円程度だそうであります。データセンターは情報関連投資,人材育成などの広がりも極めて大きく,岡山県の活性化の目玉になり得ると思います。イメージは,特定のエリアというよりも,岡山県全土で,吉備高原都市やリサーチパークの有効活用のイメージに合うと思いますが,岡山情報ハイウェイの次の目玉施策としてデータセンターについて,どのようにお考えでしょうか,県民生活部長にお伺いいたします。
 次に,提案説明の中で,知事は,「地域経済を下支えするため,県内製品の優先調達を初め,公共事業等における前倒し発注,県内業者への優先発注,県内資材の優先使用の徹底に取り組むなどの対策を全力で進めてまいります」とされました。まずは,県内製品の優先調達というのは,これは当然行うべきだと思いますが,まず何をもって県内製品というのか,また,物品調達に当たっては,最低制限価格を設けず,底抜けの入札を行うことが,結果として,いわゆるたたき合いを強要して,製造業あるいはディーラーの誇りを奪っているように私には見えるんですけれども,それで地場産業を守ることになるのか。さらには,民間の適正な価格形成に資して,地域経済の下支えとなるとお考えなのか,あわせて,これは出納局長にお伺いいたします。
 さらに,気になるのは,前倒し発注,県内業者への優先発注は当然として,どんな入札制度をとっても必ず批判というのは出るんですけれども,いわゆる公共事業における入札の最低制限価格について,これも結果として,積算価格により近いものが落札するのならばともかく,かえって積算から割引を強要することになると思いますが,それは,はなから民間にとっては適正価格ではないんじゃないでしょうか。しかも,民が泣いて官製不安定雇用を生むことになっているのではないか。そもそも,積算することの意味,最低制限価格を設定することの意味,その決定の根拠,さらには不安定雇用との関係,一般工事価格に与える影響,加えて,緊急経済・雇用対策でも同様の方法をとる理由について教えていただきたいと思います。
 一方で,知事は,我が党の代表質問に答えられて,歳入確保対策について,「1,県有資産の有効活用等,2,使用料等の適正化,3,県税の収入率の向上及び,4,新たな財源の創設の4つの対策を柱に据えており,全国トップクラスの98.0%以上の収入率を目指し,納税を呼びかけるコールセンターの設置や県民局の徴収体制の強化など,新たな対策を順次導入し,徴税の強化に取り組んでいる」とされました。中でも,この歳入確保対策のうち,1番の県有資産の有効活用と公の施設の見直しとの関係は,私は本来これは矛盾するものではないというふうに思います。
 特に,金銭的に換算できない,県民の皆様の共通の思い出,私はこれも県の財産であるというふうに思いますし,岡山県として,これから生まれ来る子供たちのためにも,後世に引き継いでいくものだと思います。少なくとも,岡山県の子供たちが将来幼いころを思い出したときに,例えば私の小4の子供は,倉敷チボリ公園を失っておりますけれども,財政コスト削減をもって,子供たちの共通の思い出になるような場所を奪い去ることは,私は大人の罪であるというふうに思っております。
 くどいようですが,岡山県立児童会館でありますが,6月定例会で,「今年度末に児童会館としては閉じるという財政構造改革プランの方針に変更はない」,これは明言されておられますが,「閉館後の取り扱いについては,耐震診断の結果を踏まえ,岡山市や民間に呼びかけ,県民からの要望の中で提案のあった新たな行政ニーズへの対応の可能性を探り,隣接する生涯学習センターも含め,全体としてどのような方向性が考えられるか慎重に検討する」,こうした答弁がございましたが,あれから3カ月以上たっております。改めて,岡山県立児童会館の耐震診断の結果と建物の活用策を含めた今後の方向性について,知事にお伺いいたします。
 折しも,現在,岡山県立児童会館プラネタリウムでは,連日,「はやぶさ」の上映でにぎわっております。長い孤独な宇宙での航海の後に,故郷に届けるカプセルを残して大気圏で燃え尽きた小惑星探査機「はやぶさ」,この姿を最新のコンピューターグラフィックスで見せる作品は本当にすばらしく,何よりもこれはプラネタリウムでないと味わえないものでございます。知事も鑑賞券を御購入いただいたというふうに聞いておりますけれども,岡山県立児童会館プラネタリウムで「はやぶさ」をごらんいただいたでしょうか。もし,ごらんになっていれば,御感想をお聞かせください。
 ところで,この9月1日付で,宇宙航空研究開発機構,いわゆるJAXAでございますが,JAXAが小惑星探査機「はやぶさ」の成果を広く国民と共有し,宇宙への理解増進と宇宙活動の普及啓発に資することを目的に,「はやぶさ」カプセル等の展示を公募によって各地で実施することになりました。既に,相模原市立博物館や筑波宇宙センター,丸ノ内オアゾなどで「はやぶさ」のカプセルの一部が展示されてきましたが,今回の展示は,展示が可能な国内の公益団体,法人で公益目的の展示が対象ということでありまして,再来年の3月まででございます。子供たちがもしも「はやぶさ」のカプセルを見ることができたら,ここから本当に宇宙に向けてのみずからの夢を広げていく子供たちが,岡山からも出てくるに違いありません。日ごろから宇宙に関連する活動をしている科学館,博物館,地方公共団体の応募が見込まれており,もちろん,この招致自体は無料ではないんですけれども,安定的な温度のもと,24時間体制の警備確保等々,条件がありますが,「はやぶさ」のカプセル招致は,岡山県としても,ぜひとも手を挙げるべきだと思います。御所見をお聞かせください。
 また,精神障害者社会復帰施設岡山県立内尾センター廃止後も,特定非営利活動法人岡山県精神障害者家族会連合会(NPO岡山けんかれん)に委託され,運営されている基幹型地域生活支援センター「ゆう」では,日中の相談支援や24時間電話相談,ホステル事業が行われていますが,実際に利用するかどうかではなくて,そういう施設が存在するということ自体が,精神障害者当事者や家族の支えになっております。県からは運営費の削減の方向が示されていますが,家族会だからこそできる事業でも運営でもあり,平成23年度末までに,障害者自立支援法に基づくサービス提供事業者へ円滑に移行できるようにという方向も示されておりますが,障害者自立支援法の事業では,膨大な賃料も発生し,新規委託事業等で何とか財源を捻出できないのか,その知恵を出していかなくてはいけない状況でございます。現在の「ゆう」の協議状況について,改めてお伺いいたします。
 次に,歳入確保対策のうち,2,使用料等の適正化について,総合グラウンド内は所管の違う施設があり,駐車場有料化に当たっては,関係当局も大変な努力をされています。しかしながら,例えば,Kanスタのナイター使用料や指導者の謝礼を含めた駐車代等を,トップアスリートを育てる親が払っていかなくてはいけない,これが家族にとって大変大きな荷になれば,それだけで子供たちの可能性を閉ざしていくことになります。当座のコスト削減や歳入確保の観点からだけ論じては,子供たちの未来の夢や希望を断ってしまうことになる。特に,駐車場の減免やスポーツの指導者,トレーナーに係る必要経費について,これはスポーツ振興の観点から,一定の基準を設けて支援ができないでしょうか,御所見をお聞かせください。
 次に,歳入確保対策のうち,3の県税の収入率の向上について,納税はもちろん憲法上の義務でありますし,徴税の強化に取り組むのも当然だと思います。ただ,税金滞納に伴う,いわゆる差し押さえの話というのも大変よく伺うんですけれども,死に物狂いで働いて,納めたくても納められない状況で,しかも逃げも隠れもしないのに,尊厳を傷つけられたような印象を持たれる,そんな方も多くおられます。それどころか,そうして納めた血税を債権放棄だと何十億円も無駄にして,しかも,だれも責任をとらんじゃないか,こんな人をばかにした話があるのかという,いわゆる逆ぎれの怒りの声も大変に多く伺います。恐らく,担当職員の方にとっても,大変に厳しい業務だと思いますが,いわゆる滞納者への差し押さえの状況と,そこに至る原因,また滞納者と,さらに徴税業務に当たる職員の方々への配慮について,総務部長にお伺いします。
 この項最後に,歳入確保対策のうち,4,新たな財源の創設について,他県の先行事例を検証しつつ,さまざまな観点から,新たな財源の創設について検討を進めるとされましたが,新たな財源について,具体的にはどのような財源をイメージされているのか,お知らせください。

(知事)  自由民主党の佐藤議員の質問にお答えいたします。
 まず,認識等についてでありますが,県では,県民の皆様方にも御負担をいただきながら行財政構造改革に取り組む一方,地域経済対策につきましても,昨年度の補正予算,あるいは今年度当初予算における800億円規模の経済・雇用対策予算などによりまして積極的に取り組んできたところでありまして,さらに,今後は,地域経済の発展に向けた提言をいただきまして,これを県政に生かすこととしているところであります。また,国には,一昨年以来の世界的な景気後退,あるいは,急激な円高に対する全国的な経済対策,及び景気変動に伴う税収不足への対応,少子・高齢化などの社会情勢の変化に対する的確な制度改正など,積極的な取り組みを期待しているところであります。県といたしましては,今後とも,行財政構造改革に取り組むとともに,国に対しましては,効果的な経済対策や,地方税財政制度の充実を求め,地域経済の発展と持続可能な財政構造の確立を目指してまいりたいと,このように考えております。
 次に,おかやま発展戦略会議についてであります。
 経済のグローバル化や少子・高齢化の進展等によりまして,地域間競争が激化する中で,本県が力強く発展し続けていくための中長期的な戦略を検討するということを目的に,今月22日に発足させることとしております。会議は,アジア経済の専門家や,本県の実情に詳しい方など,県内外の有識者8名の委員で構成することとしておりまして,目覚ましく拡大しているアジア経済の活力を呼び込む方策,中四国の交通結節点といたしましての優位性や,ものづくり先進県としての産業集積などのすぐれた地域資源を生かした地域振興策等につきまして,柔軟な発想に基づき,活発に意見交換を行い,本県の発展につながる提言をいただきたいと考えております。
 次に,総合特区等に関しまして,まず,提案の決定過程等についてでありますが,国の募集期間が約2カ月間と限られていたことから,まずは庁内でアイデア出しを行いまして,国の要件であります「地域独自の取組があるかどうか」,「実施主体,運営主体が見込まれるかどうか」等の観点から,水島コンビナートの国際競争力強化などの3つの特区案を取りまとめたところであります。現在,3つの特区案につきまして,具体的な規制緩和や支援措置等に関しまして,関係団体や企業,市町村等と調整を進めておりまして,締め切り期限となっております9月21日には,国にアイデア提案をしてまいりたいと存じます。
 また,いわゆるカジノ構想につきましては,瀬戸内海を舞台にした船内カジノのアイデアが検討の過程で出されたところでありますが,実現可能性が見込めないことなどから,案としての取りまとめは見送ったものでございます。
 免税店設置についてでありますが,県内には,岡山空港内免税店のほかに,消費税を免税する百貨店や家電量販店,貴金属店等がありまして,その数も次第に増加しているところであります。ショッピングは外国人観光客の訪日動機の上位にランクされることから,今後とも,外国人観光客受入協議会とも連携しながら,免税店舗のさらなる拡大に取り組み,積極的な外国人観光客の誘致を推進してまいりたいと存じます。
 瀬戸内国際芸術祭についてでありますが,これまでも,香川県等と連携いたしまして,広域的な観光ルート等を紹介する多言語パンフレットの作成のほか,外国メディア等の招請ツアーを実施したところであります。また,宇野港等に設置しております観光案内所や岡山側の交通アクセスの向上,こういった取り組みにつきましては,今後も継続することといたしております。芸術祭開幕以来,犬島への来訪者や県南の主要ホテルの宿泊者数は,前年同期を大きく上回るなど,芸術祭は本県観光に大きく寄与するイベントであると,このように考えておりまして,今後は,香川県等との連携をさらに強化し,本県への誘客につながるよう,瀬戸内海や,あるいは県内観光地の魅力,これを国内外に発信してまいりたいと存じます。
 次に,公共事業の最低制限価格についてでありますが,積算は,適正な予定価格を把握するため,全国的な取引実態の調査に基づく単価等を用いまして,工事に必要な経費を積み上げて算出するものであります。最低制限価格は,ダンピング防止と工事の品質確保を図るため,直近の工事コスト調査結果等を踏まえまして,工事原価を下回らないよう設定しておりまして,雇用の不安定化につながることはないものと,このように考えておりますが,積算や最低制限価格の設定が民間の工事価格に与える影響につきましては,その実態把握には限界があると考えております。緊急経済・雇用対策につきましても,個別工事のコスト構造が変わらないということから同様に,積算と最低制限価格の設定を行っているところであります。
 次に,県立児童会館であります。
 まず,耐震診断の結果等についてでありますが,耐震診断の診断結果は,児童会館は,補強工事を行えば耐震基準に適合するとのことでありました。今年度末に児童会館としては閉じるという,財政構造改革プランの方針に変更はありませんが,お話の県有財産の有効活用という観点からは,岡山市への呼びかけや,新しいニーズに対応した活用が考えられると存じます。その場合の意義は何なのか,耐震補強,その他の経費はどうなのか,隣接する生涯学習センターとの関連はどうなのかなど,さまざまな検討課題を勘案しながら,引き続き,慎重に検討してまいりたいと存じます。
 映画「はやぶさ」についてでありますが,この上映会を民間の有志の方々が招致されたと聞きまして,鑑賞券を購入させていただきましたが,いまだ,その時間がとれないため,鑑賞はできていないところでございます。
 「はやぶさ」カプセルの招致でありますが,カプセルの展示は,多くの人に感動を与え,子供たちが宇宙や科学技術に関心を持つ契機となることから,大変これは有意義であると考えております。県といたしましては,県内の科学展示施設の意向を確認いたしますとともに,開催可能な場所等の調査を行い,応募の可否等につきまして,関係者とともに検討してまいりたいと存じます。
 次に,基幹型地域生活支援センター「ゆう」についてでありますが,23年度末までに,障害者自立支援法に基づくサービス提供事業者に移行することを目指しております。現在,家族会等の意見も聞きつつ,入院患者の地域移行を促進する拠点的な施設としての役割も含め,必要なサービスの内容や人員,設備等の具体的な事項について検討しているところでありまして,お話の移行後の収支見通し等も含めまして,今後さらに検討を進めてまいりたいと存じます。
 次に,未来のトップアスリートを育てる支援についてでありますが,県ではこれまで,競技レベルや発育発達段階に応じた最適な指導を行うジュニア選手・育成強化事業,スポーツ少年団等へトップ選手や指導者などを派遣する晴れの国トップアスリート派遣事業などを実施してきております。さらに,今年度からは,子供たちの運動やスポーツを実践する能力や資質等を高めるとともに,多角的な支援体制を充実するため,つくろう・のばそう・育てよう!スポーツプロジェクトに取り組んでいるところでありますが,これらの事業においては,指導者等にかかわる謝礼や交通費等を支給しておりまして,今後とも,このような事業を通じて,ジュニア層の競技力の向上に努めてまいりたいと存じます。また,総合グラウンドでは,長時間の駐車が想定される大会関係者につきましては,普通車1台当たり1日200円と低廉な料金設定をし,負担の軽減を図っているところであります。
 最後に,新たな財源についてでありますが,これまで森づくり県民税及び産業廃棄物処理税にかかわる充当事業の拡大や,銀行のATMを活用した数字選択式宝くじの販売に取り組んできたところであります。今後とも,県税の収入率の向上を初めとした他の取り組みの効果を見ながら,他県における事例も検証しつつ,あらゆる観点から検討してまいりたいと存じます。

(総務部長)  歳入確保に関して,差し押さえの状況等についてでありますが,行財政構造改革大綱2008を実現するため,昨年度,滞納整理推進機構を設立するなど,税収確保に積極的に取り組んだ結果,21年度の差し押さえは6,626件と,20年度に比べ,約2.8倍に増加しておるところでございます。また,この差し押さえは,督促状発付後もなお納税催告に応じなかったり,あるいは分納の約束を守らない,こういった者などに対しまして,この差し押さえを行っているところでございます。
 次に,滞納者や税務職員に関してのお尋ねでありますが,税金は納期限内に納付いただくということが原則でございますけれども,真にやむを得ない事情で納税できない滞納者につきましては,分納を認めるなど,徴収の緩和措置を適切に講じておるところでございます。なお,職員に対しましては,研修を強化し,税務職員としての知識や誇りを持たせるとともに,徴収体制を整備するなど,組織的な対応を図っておるところでございます。

(県民生活部長)  総合特区等についてのうち,データセンターについてでありますが,ネットワークを経由して,ソフトや情報サービスを利用するクラウドコンピューティングの普及等により,データセンターへの需要が高まっており,その投資等を通じた地元経済への波及効果が期待されているところであります。このため,県では,県内市町村と連携して,クラウド利用による業務の効率化に関する検討を開始したところであり,その議論の進捗や今後,国が打ち出す支援策の動向等を踏まえながら,県内のクラウド利用の拡大やデータセンターの構築等について,研究を進めてまいりたいと存じます。

(出納局長)  地域経済の下支えのうち,県内製品の調達についてでありますが,お話の最低制限価格の設定は,地方自治法の規定により,工事または製造その他の請負に係る入札に限られており,物品調達に関しましては,必要な効用を満たす物品をより安価に購入することを基本に実施しているところであります。また,何をもって県内製品と言うかについて,入札参加資格要件におきましては,県税納付や県民雇用の観点から,県内に本店,支店,営業所がある事業者をひとしく県内事業者とし,それら事業者からの製品調達を原則としておりますが,さらに進んで,素材使用や製造過程等で,県内経済に付加価値を生み出すことも重要なことと考えております。このため,県産材を活用した製品や電気自動車など,特定の政策に基づく調達はもとより,今後,それ以外の物品につきましても,案件に応じて可能な限り,事業部局の意向を踏まえるとともに,公平性や競争性も確保した上で,地域経済の下支えに資するよう,効果的な製品調達に努めてまいりたいと存じます。



<平成21年11月定例会>(2009年12月8日)

(佐藤)  自民党の夏の大敗北を経て,民主党を中心にした新政権が動き始めて3カ月,事業仕分け等の新たな取り組みについては評価できる部分があるものの,マニフェスト予算,特に子ども手当,公立高校無償化,農家戸別所得補償制度,高速道路無料化等の圧縮の動きに加 えて,沖縄米軍基地移転問題の混乱など,不安な要素が顕在化してまいりました。さらに,直轄国道等には凍結の動きがあり,地方にも大きな影響が及びそうであります。一方で,昨年以上の経済危機の中,鳩山不況と言われる事態は,何としても避けなくてはいけません。ここは待ったなしで,地方と一体となった早急な経済対策を強力に進めていただかないといけません。まずは,こうした政権交代で地方自治体のトップとして従来と比べて素直に,よかったなあ,あるいはこれは期待できるなあという部分があったらお知らせください。
 以下,具体的に政権交代が地方に及ぼす影響への対策についてお伺いいたします。
 11月上旬に,地方分権改革推進委員会の第4次勧告で,分権改革論議は一つの節目を迎えました。地方交付税の割合を引き上げることを求めながら,新政権への配慮からか,地方消費税の拡充や6対4から5対5にする,国と地方の税源配分については,先送りされました。そもそもこの委員会自体,小泉改革の痛みを解消するために安倍政権下で発足されたものでございますけれども,国から地方への権限移譲,国の出先機関の統合,義務づけの見直しなどが提言されましたが,いずれも今の段階では勧告の受理にとどまっており,推進計画を策定し,地方分権一括法の法案の策定は,まさに新政権にゆだねられたわけでございます。11月中旬に,地域主権戦略会議の設置が閣議決定され,新政権の政権公約である国と地方の協議の場は,来年の通常国会に設置法案が提出され,総務大臣からは中長期的な地方行財政の課題を議論する新たな組織も示唆されております。三位一体改革の結果,移譲された財源よりも補助金と交付税が大きく削られた経験から,一般には地方分権化イコール財政悪化じゃないかと思われ,地方分権推進を地方から叫ぶ勢いが少しなくなっているようにも感じられますが,だからこそ国と地方の税財政関係の抜本的改革,もっと言えば,地方自治体を地方政府に高めるまでの自治財政権の確立に向けて今まで以上に国に強く訴えていくべきだと思います。まずもって,地方分権改革推進委員会の4次にわたる勧告と今後の政府の地方分権推進の取り組みへの感想と期待についてお知らせください。
 ところで,地方分権改革推進委員会の第2次勧告では,地方整備局など6つの機関を統廃合するなどにとどまりましたけれども,新政権では,総務大臣が国の出先機関の原則廃止の方向を打ち出しております。約32万人の国家公務員中6割強が政府省庁の地方の出先機関で働いておられますけれども,特に道路や河川整備など,公共事業を担う地方整備局や地域産業を支援する経済産業局などは,都道府県と重複した仕事も多く,分権委の勧告に沿っただけでも約2万3,000人の職員が自治体に移ることになります。しかし,財源の確保を含めて課題が非常に多いわけですが,出先機関の原則廃止,さらには職員引き受けについてどのようにお考えでしょうか。
 加えて,地方分権を推進するためには,財源をふやせ,仕事をふやすなということにはならないと思いますし,まさに地方の覚悟が試されていると思います。特に,一つの都道府県内で完結する一級河川の管理を原則都道府県に移管するとの勧告もございました。岡山県では,旭川が源流から海まで県内で完結しているところでございますが,地方分権の趣旨を踏まえると,高梁川や吉井川についても,場合によっちゃあ隣県と連携して管理すべきではないかと思います。
 そこで,お尋ねしますが,旭川に限らず吉井川,高梁川についても,維持管理の財源があれば,河川の管理をすべて,あるいは隣県と連携して引き受けることにやぶさかではないでしょうか,お考えをお知らせください。
 ところで,8月中旬,岡山南部農業水利事業,いわゆる足守川パイプラインの見直しが中四国農政局長から知事に伝えられました。歴史的な背景もあって,興除地域への安定的かつきれいな水の供給のための方策を国から早急に示していただくことを強く要望するところでありますが,わざわざこうして地方に出向いている国の出先機関のトップとの連携は,極めて重要だと思います。もちろん地方において政権与党を通じないと連携ができないようでは,県民の利益になりません。今後もより密に出先機関のトップとは連携をとっていくべきだと思いますが,お考えをお知らせください。

 次に,市町村合併について伺います。
 前政権のもと,6月に,政府の地方制度調査会は,平成の大合併を来年3月で一区切りする答申を出しました。合併特例債という名の強引な誘導策,逆に地方交付税削減で危機意識をあおるあめとむちで合併を余儀なくされた地域の衰退を招いた,そんな思いや地方分権の受け皿づくりという大義名分があったにもかかわらず,市町村の自立支援策が結局広域連携の推進にとどまったということで,市町村合併には確かに光と陰の部分があると思います。特に,人口の多い市に吸収合併された町村の住民の方々には,身近な役場がよそよそしい市役所になって公共投資が何やら中心部に集中して地域が衰退するんじゃないかという不満が強く,まさに中山間地域支援や過疎地域対策とかかわりますけれども,改めて人口減少が進む中,小規模で財政基盤の弱い小さな町や村の自立をいかに支えていくか,そしてそうした地方の多様な担い手をいかに育てていくかは,極めて大きな課題だと思います。特に,新政権も目標的な数字を削除はされていますけれども,過去の議論からは基本的には大合併を念頭に置かれているものと思われます。岡山県では,平成13年3月の岡山県市町村合併推進要綱における市町村の組み合わせをもとに,6年をかけて78市町村から27市町村となったわけですが,合併支援プランもつくり,主導的な役割を果たした県として,再び合併議論が起こるかどうか,これは別にしまして,まずは合併の功罪について一度総括が必要なのではないでしょうか,御見解をお知らせください。
 ところで,市町村合併が進んだからこそ,改めて県の果たすべき役割として,広域調整機能と補完機能が重要になります。先般,県が2007年に策定した新ごみ処理広域化計画の枠組みが崩れたわけでございますが,これはさまざまな事情を抱えての苦渋の判断であられたと思います。各自治体の財政状況と負担のバランスの検討が必要な中,そのほかの広域計画についても影響が避けられないんじゃないかと言われておりますけれども,今後も県はこうした場合,助言するだけなのでしょうか。まさにその調整力が問われています。特に,県境を越えて病院の広域利用などを目指す定住自立圏も生まれておりますから,近県との調整も必要になってまいります。住民の視点に立って適切な役割分担のもと,新たな視点で対等協力の関係を築きながら,住民に最も身近な基礎自治体としての市町村の自立力の向上を図る。その一方で,改めて助言以上に県の果たすべき広域調整機能と補完機能の意義についてお伺いいたします。
 次に,要望,提言についてお伺いいたします。
 公共事業費の大幅削減の方針を受け,国土交通省が来年度整備を凍結する候補に挙げた全国217区間の説明があったとのことでございますが,岡山県では,これは私はいずれも理解しかねますけれども,国道2号玉島笠岡道路のU期分,笠岡バイパス,180号総社一宮バイパス,岡山市絡みでも53号北バイパスに,いわゆる外環状道路の一部となる180号岡山環状南道路が含まれております。直轄事業負担金を見直していただくのはありがたいですが,直轄事業そのものがなくなるということを県民は望んでおりません。私は,そもそもこういう本来凍結すべきでない事業が凍結されても,地元要望をいわゆる新ルールに沿って上げていくと,復活できるんでしょうか。それで,復活するなら,本当にこれはすばらしい仕組みだなあというふうに思いますが,御所見をお聞かせください。
 加えて,大規模な県営事業の多くが国の補助金が入る仕組みになっております。特に,農業かんがい排水事業や高潮対策など,地域においては生活の安全・安心,命にかかわるものも多いわけですが,新政権になってストップするのではないかと,地元から不安の声が非常に多く上がっております。あくまで県の事業とはいえ,政府の意思がどこまで働いてくるかわかりませんが,こうした地域の課題を今後どう国に伝えていくのか,お知らせください。

 次に,事業仕分けについてお伺いいたします。
 事業仕分けの定義というのは,非常に難しいわけでございますが,今回の国の事業仕分けをコーディネートされた構想日本の冊子の言葉をかりれば,その目的は,「行政の事業を抽象的ではなく,現場の視点で洗い直すことによって個々の事業の無駄にとどまらず,その事業の背後にある制度や国と地方の関係など,行財政全体の改革に結びつけていくこと」とのことであります。これまで44自治体で61回開催され,岡山市でも2006年2月に試行しており,私も他府県で見ておりますけれども,今回の国の事業仕分けは,予算編成時期と幸か不幸かあるいはあえてかわかりませんが,かぶせたため,かなり特殊だったというふうに,私は思っております。特に,政府・与党が一体化しているのならば,仕分ける必要もないほどよくよく練られた事業が,行政サイドから予算として提案されているはずですから,不思議な面もございました。例えば,仕分け人がだれであるとか,議論は1時間で行うとかというのは,決まりがあるわけではございませんし,仕分け結果については私もかなり思うところがございます。ただ,密室の議論を公開して納税者の意識を大きく変えたということについては,非常に大きな意味があったというふうに思います。改めて,今回の国の事業仕分けについての感想についてお伺いいたします。
 ところで,この事業仕分けは,自治体では数値目標を定めた予算カットのための手法ではなくて,行政の政策形成過程でいかに市民参加を促すか,ある意味情報公開のための手段として,また,職員の説明能力のスキルアップの手段として,また,実は第三者を介在させることで初めてできる行革もあるということで使われているように,私は考えております。岡山県でいえば,例えば,公の施設のあり方を議論する,児童会館の閉館などについての議論をインターネットで流してオープンにする,そうしたことがなじむように思います。もちろん岡山県においても,大規模事業評価委員会のように,第三者の参画を求めているものもございますし,行政内部的な事業仕分けについては,PDCAサイクルの形で行政評価システムもできておりますし,何より財政危機宣言をして厳しい行財政構造改革を進める中で,内部的にもかなり厳しい事業仕分けになっていると思います。ただ,情報公開,住民参加という視点からではどうでしょうか。パブリックコメントは募集したけれども,そもそも募集されたことすら知らない。概して,新聞に発表されたらもうおしまいと決まってしまっている。県の方針はてこでも動かない,そうした評価があると思います。そういう誤解を解くためにも議論をオープンにした事業仕分けは有効だと思いますが,岡山県での実施についての御所見をお聞かせください。
 それにしても,昨年の財政危機宣言以来,非常に厳しい行財政改革を続けておるわけでございますけれども,社会保障分野など,ますます増大する地方の歳出を国から税源移譲で対処するにしても,今の国の財政状況では,もう増税がない限り,地方に移譲できる税源は存在しないような気がいたしますし,どうも新政権のマニフェストを本当に実行すれば,自治体は早晩財政破綻してしまうんじゃないか,そんな気すらいたします。国税に対する地方税の比率を高めるためには,国からの税源移譲に頼らず,地方税の増税という手段もございます。もちろん私は,反対ではございますが,御所見をお聞かせください。

(知事)  まず最初に,新政権についてのお尋ねであります。
 政治主導による国政運営や公開の場での事業仕分けなど,さまざまな新しい試みが行われているところでありますが,地方といたしましては,新政権が地域主権の確立を最重点政策に掲げ,地域のことは地域が責任を持って決めるという,このことを基本とした新たな国づくりを目指す方針を示されていることにつきましては,これは率直に歓迎いたしたいと思います。特に,事項要求ではありますけれども,概算要求に盛り込まれております1.1兆円の地方交付税の増額,このことにつきましては,ぜひとも実現していただきたいと存じます。また,我々地方と十分に意見交換を行い,地方にかかわるさまざまな重要課題に積極的に取り組んでいただきまして,地方分権改革の推進など,具体的な成果を上げていただくように強く期待しているところであります。
 次に,国の取り組みへの感想等についてでありますが,地方分権改革推進委員会では,国と地方の役割分担や義務づけ,枠づけの見直し,地方税財政制度のあり方など,多岐にわたる論点につきまして精力的な議論を重ね,各省庁の抵抗がある中で,4次に及ぶ勧告を取りまとめられたところでありまして,まずその御労苦に対しまして敬意と感謝を申し上げたいと思います。これまでの勧告内容は,おおむね我々地方側が求める内容にかなうものでありまして,新政権におかれましては,この勧告の内容はもちろん,さらに踏み込んだ内容を持つ地方分権改革推進計画を年内に策定し,これに基づく地方分権一括法を早期に制定するように強く求めてまいりたいと思います。また,これに加え,地域主権の理念やその実現に向けた工程などを早急に明らかにするとともに,その理念のもと,国と地方の協議の場の法制化や地方税財源の充実強化など,重要課題について着実な取り組みが進められるよう期待しているところでありまして,引き続きその動向を注視してまいりたいと存じます。
 次に,国の出先機関等に関し,原則廃止等についてでありますが,真の分権改革を実現するためには,内政に関する事務は基本的に地方が担う仕組みをつくることが不可欠でありまして,国と地方の二重行政を解消するためにも,国の出先機関の廃止を積極的に進めていくべきものと,このように考えております。この国の出先機関の廃止に当たりましては,必要な財源を地方に移譲すること,これは無論のこと,国の職員につきましても,専門的技術的知識の確保等の観点から,人材の移管や人事交流を含め,具体的な検討が必要であると考えております。先日,全国知事会でも国の出先機関原則廃止プロジェクトチームを発足させまして,事務・権限の調査や地方での受け入れ体制などの検討を行い,提言を取りまとめることとしておりまして,私といたしましても,こうした動きと連動しながら,地方の意見を踏まえた出先機関の廃止につき,国に対し強く働きかけしてまいりたいと存じます。
 これに関し,一級河川の移管についてでありますが,都道府県内で完結する一級河川の移管に当たりましては,維持管理財源に加え,整備財源や人員,資機材の確保等に関しまして,適切な措置が講じられることが何よりも重要であると考えておりまして,そういった前提条件が整うならば,都道府県が責任を持って受け入れることができると考えております。
 なお,隣県とまたがる一級河川につきましては,財源等について適切な措置が講じられることに加え,隣県との調整が課題となることから,今後,他都府県での取り組み事例を踏まえつつ,検討してまいりたいと存じます。
 連携についてでありますが,お話の国の出先機関トップとの連携は必要であると考えておりまして,中四国農政局のほか,先月には中国地方整備局長とも来年度予算について懇談するなど,機会をとらえて意見交換等に努めてきております。私は,国と地方とが総理を初めとする閣僚レベルはもとより,各省庁やその出先機関に至るまで,きめ細かく連携や意見交換を行って行政を進めていくことこそ,住民の利益にかなうものと考えておりまして,国におかれましては,窓口を限定することなく,さまざまな機会を通じて幅広く地方の意見に耳を傾けますとともに,地方側と十分意見交換を行っていただきたいと考えております。今後とも,幅広いレベルでの連携を密にして,地方の実情をしっかりと国に伝えてまいりたいと存じます。
 次に,市町村合併の総括についてでありますが,このたびの市町村合併により,行財政基盤が強化され,専門職員の配置や行政サービスの充実が図られる一方で,お話のように,合併が中心部以外の地域の衰退を招いているとの指摘や,三位一体の改革による地方交付税の大幅削減によって,計画どおりの財政運営ができないとの不満も聞かれるところであります。合併した市や町においては,現在,新しいまちづくりに懸命に取り組んでいる過程にありまして,引き続きそれぞれの地域の特性を生かしたまちづくりを推進することで,今後合併の成果が着実にあらわれてくるものと考えておりまして,県といたしましても,できる限りの助言や支援に努めてまいりたいと存じます。
 県の広域調整機能等でありますが,地方自治法にも基礎自治体優先の原則として規定されているとおり,まずは住民に最も身近な市町村が地域における事務を幅広く包括的に担うべきものであると考えております。しかしながら,本来市町村が担うべき事務でありましても,単独では処理することが適当でないと認められるような行政課題につきましては,隣接市町村との水平的な補完による対応も必要でありまして,その自主性自立性は尊重しつつも,適切な助言や市町村相互間の連絡,連携,合意形成に向けた調整等を通じまして,市町村を支援していくことが県の果たすべき役割であると考えております。
 国直轄事業でありますが,先般,国からは,県及び岡山市に対し,お話の道路事業について,来年度調査設計費のみを計上するとの説明がありましたが,議員御指摘のような,凍結されるとは聞いておりません。これらの事業は,いずれも本県にとって重要な事業であることから,かねてより国への重点提案等において,事業促進を働きかけてきたところでありまして,今後とも沿線市町とも連携しつつ,さまざまな機会を通じ,幅広く国に働きかけてまいりたいと存じます。
 県営事業でありますが,例えば,お話のかんがい排水事業は,農産物の生産に不可欠な農業用水の有効利用を図るために,また,高潮対策は台風等に伴う高潮等から背後地を防護するために実施するものでありまして,このような補助事業が大幅に削減されるということは,農業生産や安全・安心など,県民生活に多大な影響を及ぼすものと懸念されるところであります。これまでも,安全・安心で活力ある地域づくりの基礎となる社会資本整備につきましては,その推進が図られるよう,国に提案してきたところでありますが,こうした地域にかかわる施策の企画立案や変更につきましては,地方と十分意見交換を行っていただきたいと考えておりまして,今後ともあらゆる機会を通じ,国に対し強く働きかけしてまいりたいと存じます



<平成15年2月定例会>(2003年3月5日)

(佐藤)  それにしても,議員にならさせていただいた4年前から,個人的には結婚もし,子供もでき,その子も何事かしゃべっていることに,月日のたつことの物すごさというのをしみじみと感じるのですが,ただ政治にかかわるものとして十分な働きができないままに,日本も,日本人もよくなっている感じがしない。本当に,これから先この国は大丈夫なんかという思いばかりが募ってまいります。
 例えば,30年後,日本は,岡山はどんなことになっているのか,日本は,岡山は大丈夫なのか,そこでいつもわがままな質問をさせていただいておるんですけども,まずは,これからの時代を担うであろう,我々若い地方議員に知事が期待されることがあるとすれば何でしょうか。今後の励みにしとうございますので,ぜひ一言お願い申し上げます。
 さて,デビュー作には作者のエッセンスのすべてが出ると言いますが,平成11年6月定例会の私自身の初質問を読み返しますと,私は「中心」という言葉をキーワードに質問を進めておりました。当時は,君が代,日の丸論争の時期でもありましたが,「21世紀の日本人が寄って立つべきものは何か」という問いに対する私の答えは極めて簡単です。「日本人は日本人に返れ,そのことに尽きます」と申しております。北朝鮮に拉致された方の帰国もあって,昨年の漢字1字は「帰」でしたが,グローバリゼーションをいう一方で,日本人が本来持っていたはずの謙虚さ,潔さ,思いやりや優しさ,高い倫理観を取り戻すこと,日本は日本に返ることで,あるいは偏狭なナショナリズムではなく,日本人が日本人であるという誇り,自信を取り戻すことで政治経済のみならず,環境問題,福祉の問題も解決できることもあるはずだと,やはり私は思います。
 そして,すべては教育,すなわち人育てに尽きると思います。そのために,まずできることから始めなくてはいけません。国会で議論されている教育基本法の改正を待つ前に,まずは地方は地方で地域社会をしっかりと愛する心を養うためにも,学校の授業で地域の歴史,岡山の歴史だけを取り上げた体系的な指導が必要であると思いますが,いかがでしょうか。加えて,特に和服を着たり,つくったりするなどの日本の伝統文化の理解も,国際理解同様に重要だと考えますが,どのように考えられておられるでしょうか,教育長にお伺いいたします。
 また,私は,やはり古い家の制度ではありませんが,家庭に立ち返ることが何より重要だと思います。特に,我が子は2歳4カ月,三つ子の魂百までという言葉が身にしみるわけでございますが,幼少期の教育はその後の子供の成長に多大な影響を与えます。しかし,核家族化,少子化,都市化が進むにつれ,コミュニティーも希薄になり,最初の教育者ともいえる親が親として何をすべきかが伝承できなくなっています。ひいては,子供の自殺や家庭内暴力,親の子殺しといった現象もある中で,残念ながら親の幼少期における教育は体系化されたものとは言えず,親は親としてだれの助けもないままに自信を喪失しています。そういった状況の中で,地域の愛育委員や母親クラブの支援などが極めて重要だと思いますが,その取り組みについて保健福祉部長にお伺いいたします。
 また,他自治体のように親業のセミナーを開催するお考えはないか,教育長にお伺いいたします。
 お伺いしたいことは以上でございますが,いずれにしましても4年間の議員生活ではやり残したこと,これからやりたいことが余りにもたくさんございます。大変生意気を申し上げますが,アイ・シャル・リターンと申し残して,今期最後の質問を終わらさせていただきます。まことにありがとうございました。

(知事)  最後に,若い地方議員への期待ということのお尋ねがございましたけれども,もう当然のことでございますが,地域を愛して,地域のさらなる発展と住民の皆さんの幸せを願うと,そういう意味におきましての郷土愛を持っていただくことはもう当然のことでございますし,そして積極的に政策提言をしていただきたいと思います。そのためには,日ごろより研さんを積まれ,いろんなことも学習をしていただければと願っておりますが,このことは議員,自分は当然やっていると,このように思ってらっしゃる。私もそのように評価をさせていただいているわけでございますが,特に,若いということで御質問ございましたので,何事にもチャレンジ精神でという意味での「挑戦する」そういう姿勢を持っていただければと,既存のシステムとか,従来からの慣例とかについても,そのチャレンジ精神を持って取り組んでいただくと,積極果敢に改革にも取り組んでいただくと,このようなことを期待をしておりまして,郷土愛,政策提言,そして挑戦ということを申し上げたいと存じます。こういったことを期待をいたしますとともに,地方から日本を変えていくと,岡山から日本を変えていくんだと,こういう思いを若い議員の皆様を初めすべての議員の皆様と共有をいたしまして,力を合わせて県政を推進していきたいものだと,このように願っているところでございます。佐藤議員のますますの御活躍を心から期待をしているところでございます。

(保健福祉部長)  小さな子供を持つ親への支援についてでございますが,現在,保健所や市町村,保育所などによる相談支援等を行っているところでございますが,子育て経験のあるボランティアによる支援や同じような立場にある母親等の集まりを通じた支援も重要であると考えているところであります。このような観点から,愛育委員活動,母親クラブ活動,地域子育て支援センター,つどいの広場等の事業を重点的に推進しているところでございます。
 さらに,来年度は新たに愛育委員と栄養委員による地域のお母さんがすすめる健康支援事業を創設するなどして,子育て中の親への一層の支援に努めてまいりたいと考えております。

(教育長)  まず,地域の歴史教育等についてでございますが,学校での歴史教育は主として小学校で先人の業績など人物中心の歴史を,中学校では日本の歴史を,高等学校では世界の歴史をと,発達段階に応じて体系的に学習することになっております。そうした中で,御指摘の身近な地域の歴史につきましても折に触れて学習し,歴史への興味や地域への関心を高める工夫をしております。例えば,先人の業績として吉備真備や池田光政を取り上げたり,ある歴史上の事件をオペレッタにして発表したり,郷土の歴史をCD−ROMに収録し教材として活用するなど,身近な歴史をさまざまな形で学習をしております。高等学校では,学校独自に科目を設定できますので,例えば吉備の国風土記などの科目を開設し,体系的に学習している学校もございます。
 また,伝統文化につきましては,お茶やお花などの生活文化や和楽器に親しむことなどを通しまして理解を深めているところでございます。
 次に,親業セミナーについてでございますが,本県では教育の原点は家庭にあり,すべての親が参加する機会をとらえ,節目,節目で講座を実施することが最も効果的であると考えてまして,妊娠期,3歳児,就学時の健康診断等の機会を活用した講座や思春期の子供を持つ親を対象に,子供の心理や親のかかわり方についての講座を市町村主催で実施し,県や国がこれを支援しているところであります。お話のセミナーを開催しておりますのは,親子の好ましい人間関係づくりを支援するための有料講座を開いている民間団体の一つでありまして,その団体のインストラクターの方が県内の子育て講座の講師の一人として招かれている例がございます。県教育委員会といたしましては,よりきめ細かな支援ができる,住民に身近な市町村主催という形での子育て講座が好ましいと考えておりまして,今後とも,その充実が図られますよう実践事例集を作成するなど,市町村の支援に努めてまいりたいと存じます。



<平成14年9月定例会>(2002年9月19日)

(佐藤)  日朝国交正常化交渉について,拉致被害者が殺されていたことは,日本人としてまことに無念です。国民の生命,自由,財産を守ってこその国であり,自国民を守れない,自国民が殺害されて黙っているようでは,主権国家の体をなしていないと言わざるを得ません。あくまで凛とした態度で絶対に妥協はしてほしくないと思いますが,究極の目標は世界平和であり,そもそも南北の分断の歴史を思うとき,日本人の立場で北朝鮮許すまじと感情的になることだけは避けたいところです。
 アメリカの対イラク戦略を含めても,こうした何か第三次世界大戦がリアルに感じられる中,戦後57年がたちました。私は,ことし38歳でございますが,春季慰霊大祭,終戦の日,秋季慰霊大祭には,できる限り護国神社にお参りさせていただき,また東京に行けば,まずは靖国神社にお参りさせていただきたい,そういう意識は働くのでございます。自民党議員としては当然でも,同世代の感覚としては,ある意味珍しいと言われるわけですが,祖国の礎を築いてくださった方々に感謝の誠が捧げられない,あれこれと理屈が先に立ち,まずはそういう感覚が当然であると感じられない,あるいはその感情を発露できないところに現代日本の悲劇があるように思います。とはいうものの,諸先輩方には大変失礼かと存じますが,昭和39年生まれで高度成長期の恩恵をまともに受けて,かように丸々と太りました私には,戦地に行かれた方や遺族の方のお話を伺っても,あるいは地域を歩き,そこに草むした地域の慰霊塔があっても,正直に申し上げてどうしても実感としてわからない部分があるのです。
 また,57年前の6月29日,岡山を大空襲が襲い,私が住む,当時は桶屋町──今は平和を祈り,平和町ですが,もう火の海になり,私の曾祖母や祖父の兄弟も防空壕で焼け死んだと言います。しかしながら,10年以上前に亡くなった祖父からも,先日84歳でなくなった祖母からも,結局その詳細は聞かずじまいでした。
 また,7月14日には,岡山でも平和祈念事業特別基金の平和祈念フォーラムが開催されましたが,岡山大空襲についてはまだしも,シベリア抑留についてそもそも語られること自体が少ないため,私自身認識が非常に不十分なことを恥じ入りました。そして,このような形で,何か語り継がれることがないままに,当時の物や,当時を生きた方々や,何より大切な日本人の心が消えていく,そんな気がしてならないのです。
 世界唯一の,天下泰平の平和ぼけの中で,日本がアメリカと戦争したことなど想像もつかない世代が,これから社会の中枢を占めていきます。私は,偏狭なナショナリズムを叫ぶ気も,昨今はやりのアメリカを批判する気もありません。しかし,アメリカ仕込みのグローバリゼーションの名のもとに,日本人の顔をした何やらわけのわからんよその世界の人間がこれからますますふえていくことには,大変な危機感を覚えています。日本人の潔さ,謙虚さ,優しさや思いやり,自然と共生してかつ厳かに勤勉に生きる,何より,自分の,他人のすべての「命」に対して畏敬と畏怖の念を持つ,それが今の日本のどこにあるでしょうか。
 しかし,そんな中で,希望がないわけではありません。先日の日韓共催のワールドカップサッカーで,多くの若者が日本を感じました。もっとも,今まで見向きもしなかった日の丸を振り,しかも顔にペイントできる感覚,さらには,ワールドカップサッカーという国対国のスポーツに狂喜した若者が,原爆投下や戦争をつなげて考えることはできない。そのことは大いに不満ではあります。ただ,間違いなく,世界の中における日本という視点を,このワールドカップサッカーで新しい日本人は構築したと思います。今回の小泉総理の訪朝も,また違った感覚でとらえることができる。そういったワールドワイドな物の見方をだれもが普通にできるようになったように思います。
 そして,1周忌を迎えましたが,昨年9月11日の米国同時多発テロ事件,向こうがくしゃみをすればこちらが風邪を引くアメリカのこととなると,対岸の火事ではなく,隣の火事であり,こういうことは起きるんだ,戦争はごく身近にあるんだという事実が,日本人,とりわけ若い世代に大変なショックを与えたことは間違いありません。そして,彼らは,戦争というものについて,平和について,我が事として考え始めたのです。そして,それは,日本という国を考えるスタートでもあります。思うに,戦後57年,戦争が風化していく中で,世界が,戦争が,再び身近なものになっている現在,ある意味で,改めて日本のことについて考える,世界平和について考える絶好の時期が来ていると思います。逆に,ここを外すと,日本国内で,時代が分断される中で,歴史を見据えることもなく,国を思うこともなく,再び,知らず知らずのうちに,世界でどこのだれが争おうが平気な,あるいはみずから戦争の惨禍に見舞われる道を,我々日本は歩んでいくことになりかねないと思います。今必要なのは,日本の時代と時代をつなぐことです。今,戦争と平和,日本と世界を語らねば,聞かなければ,日本がつながりません。
 そこで,私は,ピース・ミュージアムの構築を提言させていただきます。過去の出来事については,イデオロギーの対立があるのは百も承知の上で,大切なのは,そういった争いを超えて,未来,あしたに向かって,次の世代が,若者たちが,世界の中の日本人として,世界平和に対して何をなすかということです。そのためにも,私は,過去と未来を現在でつなげる「場」が必要だと思うのです。
 まず,知事が考えられる平和とは何ぞや,戦争とは何ぞや,また,岡山県が,世界平和に対して果たす役割についてお知らせください。
 次に,岡山大空襲については,岡山市内の旧出石小学校の校舎内にできた岡山空襲出石資料館などが収集,展示をされておられますが,太平洋戦争のみならず,戦争に関して,岡山県内の戦争資料等は散逸の危機にあると思いますが,どのように把握され,今後どのように対応されるのでしょうか。他県では,さまざまな形,名称で,こういった資料を収集,展示している機関がありますが,遊休施設の活用等を含めて整備することは考えられないでしょうか。
 また,新設になる文書館や県立図書館にこういった資料の収集,管理機能はあるのでしょうか。
 これに関連して,結果的に訴訟にはなりましたが,岡山には個人が所蔵するには膨大な量のさまざまな健康被害や公害等の資料があります。これもまた同様に散逸の危機にあります。こういった資料を,行政としても保存することを検討されますよう要望いたします。
 また,地域によっては,慰霊塔などは高齢化した遺族会の皆様が交代で清掃,管理されているのが実情だと思いますが,年々維持が難しくなっています。こういった状況に対して,どのような支援が考えられるのでしょうか。
 さらに,必ずしも箱物でなくても,こういった資料をデジタルで残すことは考えられないでしょうか。特に,さまざまな立場で戦争を体験された方々のさまざまな声をデジタル録画,デジタル録音し,ホームページ等でデジタル・ピース・ミュージアムを開設し,生きた資料として永久保存するのです。特に,IT先進県岡山県が,そのコンテンツにおいても世界に発信できるものと考えますが,いかがでしょうか。
 加えて,戦争体験者と若者との交流の場づくり等,積極的に行っていくべきだと思いますが,そういった施策は考えられないでしょうか。
 以上,保健福祉部長にお伺いいたします。
 さらに,教育長にお伺いいたします。
 教育長の考えられる平和とは何ぞや,戦争とは何ぞや,また岡山県教育界が世界平和に対して果たす役割についてお知らせください。
 さて,先般,アメリカの同時多発テロ事件から1年たった9月11日,「岡山こども平和の声」の高校生たちが,みずから考えた平和宣言を教育長に渡されました。こうした高校生たちの頼もしい自発的な動きについて,また平和宣言についてどういう御所見を持たれたでしょうか。
 また,今後高校生たちに平和という観点から何を望まれるでしょうか。
 また,国際理解教育の一環としての総合的な学習の時間等で,平和学習についてはどのような取り組みがなされているのでしょうか。
 また,高校生会議等で,学校や地域を超えて平和について考える機会を設けることはできないでしょうか

(知事)  平和と戦争についての考えということでございますが,人類共通の明るい未来の創造というものを目指しまして,人種・宗教などさまざまな違いというものを認め合って,友愛と協和の精神に満ちた,争いのない安穏なる状態,これが平和であり,そうした状態でない場合に起こる国家間等の武力闘争,これが戦争であると,このように思っております。
 県といたしましての平和への果たす役割ということでございますが,市町村,県民,NPO・ボランティア等々と協力連携をしながら,本県が持っております医療とか福祉とかITといった,そういうすぐれた技術資源を活用する中で,開発途上国の発展に協力をしていくなど,国際貢献活動に取り組んでいって,平和に寄与していきたいものだと,このように願っております。

(保健福祉部長)  戦争資料等の把握,収集,展示についてでございますが,戦争資料を保存し,後世に伝えていくことは意義のあることと考えておりまして,総合文化センター等で当時を物語る刊行物等を収集,保存し,閲覧に供しておりますほか,平成8年に発刊した戦後50周年記念誌の「援護の歩み」に,県民の方々の戦時体験記録や写真を収録したところでございます。今後とも,岡山県遺族連盟などと協力しながら,戦争資料等の収集,保存に努めることにしておりますが,展示施設につきましては,今後の研究課題とさせていただきたいと思います。
 なお,文書館や県立図書館についても,戦争関連記録資料の収集,管理については,今後とも続けていく予定であると伺っております。
 次に,慰霊塔等の管理についてでございますが,地域によっては,遺族の方々のほか,町内会,老人会などが清掃活動を行っているところがあると伺っております。こうした活動が広がり,慰霊塔等の適切な維持管理が行われるよう,県としても,岡山県遺族連盟等関係団体を通じて働きかけてまいりたいと考えております。
 次に,戦争資料等のデジタル化等についてでございますが,ピース・ミュージアムや若者との交流の場づくり等の御提案をいただきましたが,戦争の悲惨さ体験談等を保存し,次代を担う若者を初め多くの県民の方々に伝えるため,インターネットを含めどのような手段が活用できるのか,関係団体とともに検討してまいりたいと考えております。

(教育長)  まず,平和と戦争に関する私の考えについてでございますが,平和と戦争は言葉の意味としては表裏の関係にあると思いますが,私大切だと思っておりますことは,単に武力紛争がないというような状態をつくるということではなくて,恒久平和に向かって一人一人が努力すると,そうした努力する姿勢が大切ではないかと,このように考えております。
 国際貢献先進県を目指しております岡山県に生きる私たち教育関係者が,世界の人々と協力しながら,世界平和の実現と維持に向けた不断の努力をするとともに,国際社会の中で日本人としての自覚を持ち,進んで世界平和に貢献できる人材を育成することが私たちにとっては大切であると考えております。
 次に,高校生たちによる平和宣言等についてでございます。先日,この平和宣言を持って私のところへ高校生が訪ねて来られまして,久しぶりに若い者と直接楽しいひとときを過ごすことができました。この戦争への記憶が薄れつつある我が国におきまして,高校生が,自発的に過去や現在の戦争を見つめ,恒久平和を実現するために自分たちに何ができるかを考え,取り組むことは大変意義あることだと考えております。この高校生の平和宣言には,一人一人が戦争や紛争について学習し,理解を深めるとともに,日々思いやりを持って行動することが平和につながると書いてありました。その考えやこうした姿勢に大変共感を覚えたところでございます。
 私といたしましては,高校生が広く社会に目を向け,自分の意見を持つとともに,他人の意見にも十分に耳を傾け,平和の実現のため考え,行動する力を身につけてくれるよう大いに期待をしているところでございます。
 最後に,平和学習についてでございますが,学校では,社会科などでの学習とあわせまして,総合的学習の時間におきまして,外国の留学生との交流会を持つなど,国際理解教育の視点に立ちまして,平和についての理解を深めております。
 また,高校生会議では,昨年開催しました岡山県高校生議会での宣言を初め,学校や地域を超えて国際貢献の講演会や募金活動に取り組んでおりまして,今後も,こうした取り組みが充実されることを期待しているところでございます。



<平成13年9月定例会>(2001年9月19日)

(佐藤)  先輩方の御厚情をいただきまして,私のわがままで,毎回毎回一般質問を続けさせていただいてまいりましたが,いよいよ10回目になりまして,ここはひとつ趣向をというわけではございませんが,これからさせていただきます質問は,あるいは,今までで一番過激な質問になるかもしれません。ただ,その根底にあるのは,あくまで職員の方であれ議員であれ,公職にある者の責任と誇り,それを回復したいという願いであり,尊敬する石井正弘知事に対して,いたずらに攻撃しようとか生意気を言ってみようとかというわけではございません。しかし,若い者が何を言うんならという部分がございましたら,これが俗に言う若げの至りでございます。どうか,そこのところをおおらかな気持ちで受けとめていただきますよう,心よりお願い申し上げます。
 さて,私は,この神聖なる本会議の議場で,愚痴を申し上げる気はさらさらございませんが,県議会議員に当選させていただいて2年半,先輩方や執行部,職員の皆様方のお力添えをいただき,自分なりに頑張らせていただいてきたつもりですが,なかなか成果が出ません。それどころか,周りを見渡せば,事態はますます悪化しております。景気は悪化の一方,毎日倒産のニュースが入り,完全失業率は5%突破,たび重なる想像を絶するような,信じられない事件の数々,崩壊する倫理,社会不安,環境の悪化,さらにはアメリカの連続テロ事件を契機にした国際的な戦争の兆し,一体この国はどうなってしまうのか。私は,議員として何をしているのか。何か日本はおかしいぞ。前代未聞の経済危機,社会的危機だとだれもが感じています。小泉総理への一時の圧倒的な支持も,このままでは本当にすべてがだめになる,その前に,根本的な手を打ってほしい,そういった国民の声でした。もはや右肩上がりの経済,豊かな未来,そんな夢にいつまでも酔い続けることはできないのかもしれません。高度経済成長がいつか戻ってくるというのは幻想にすぎないかもしれません。だれもが,本当に大きな不安を抱えています。ここから始まるのは,生き残りをかけた戦いです。今この瞬間に,どれだけ多くの岡山県民が歯を食いしばって頑張っておられるでしょう。どれだけ多くの方が,あしたの,いやきょうを乗り切るために汗と涙を流しておられるでしょう。家族のため,従業員のため,迫りくる倒産,失業,リストラの恐怖と戦いながら生きておられる方が,どれだけ多くいらっしゃるでしょう。
 10カ月になった子供の寝顔を見ながら思います。彼に何を残せるのか。こいつは将来,何もよいことがないかもしれない。既に,彼は,多くの借金を背負っている。また,これからも平気でツケを回されるでしょう。少子・高齢化が進み,さらに,国際的な緊張の中で,ずっと今よりも不安な社会で,ずっと借金を背負い,彼らは生きていかなくてはならないのです。また,どれだけ多くの子育て世代が今を耐えているかおわかりでしょうか。自分たちの受けてきた以上の幸せは,子供たちに与えられないかもしれない。親として,どれだけ情けないか。今をやり過ごしても,将来の経済的不安,社会的不安がどんなに大きいか。
 私は,彼らの声を代弁したいのです。政治は,未来の子供たちのためにあります。今声が出せる,意見が言える人たちのためだけではないのです。しょせん人間は死にます。人類という流れの中では,バトンランナーにすぎない。何を引き渡したか,それがその時代の人間の評価です。岡山県が,未来永劫続くとは思いませんが,我々の価値は,何を手渡したかで後世がすぐに判断してくれるでしょう。
 そんな不安の中で,それでも岡山県民は,岡山県に税金を払ってくださっています。納税の義務を果たすといえばそれまでですが,それは,決して岡山県職員の皆様を初め公職にある者の安定的な生活を願ってのことではもちろんありません。私を県議会議員に推してくださった方は,私が特別職公務員になる就職活動を手伝ってくださったわけでもなければ,先生と呼ばれて偉くなれと祈っておられたわけでもありません。公職にある人間に,全体の奉仕者である公務員に,しっかりと生命,自由,財産を守ってほしい。みずからの命をかけても,岡山県のために,岡山県民のために尽くしてほしい。それが,岡山県民の願いです。そのために,血税を納めてくださっている。代表に選んでくださっている。逆に,それにこたえるのが公職にある者の使命であり,誇りです。岡山県民が,みずからの血税を託した我々をどう見ておられるかは想像にかたくありません。私は,本当に使命感に燃えて,一生懸命働かれている職員の方の姿を身近で見ております。しかしながら,県民は,そうは見ないのです。これだけ民間が死に物狂いで頑張っているのに,我々の血税を使って,公務員は何をしているのか。繰り返される血税がむだにされる姿,しかも民間ではとても考えられない公務員の責任のとり方。民間は生き死にです。「ごめんなさい」では済まないのです。民間では失敗すれば,まさに命がなくなるのです。行政サービスの価値を税金の対価という観点から厳しく監視するということであれば,当然,岡山県に効率的な行政サービスが期待できない場合は,県民が税金を払わないという納税拒否の発想も出てくるでしょう。いつ税金不払い運動が起きても,県庁にデモ隊が来ても不思議ではないかもしれません。そのぐらい岡山県民は怒っておられるのです。今,私たち公職にある者は,一番大切な信頼を失っています。今再び我々公職にある者が,責任と誇り,信頼を取り戻さないといけません。
 まず,知事に,そういう血税を払ってくださっている県民,倒産や失業の恐怖と戦っている方,子育て世代,未来の子供たちに対して,首長として,今,目の前におられると仮定して,メッセージを送っていただきたいと思います。

(知事)  いつものことながら,早口で大変たくさんの質問をいただきまして,まことにありがとうございました。
 順次お答えを申し上げたいと思います。
 まず,県民へのメッセージということでございますけれども,御質問の中にもございましたが,大変厳しさを増しております経済,そして雇用の情勢の中にあります。そしてまた,地球規模でさまざまな環境問題も発生をしております。そういった中で,また同時に,今議会でも少子・高齢化の問題がいろいろ言われておりますけれども,そういった中で,多くの困難に直面をしておられる県民の方々がいらっしゃるわけでございます。しかし,岡山県は,考えてみますと,これまでも多くの先人の方々の努力によります,幾多のさまざまなそういった困難を乗り越えて,今日の発展を築いてきたところでございます。県民の皆様方の英知と,そして努力というものを結集をしていけば,これらの幾多の困難を必ずや乗り越えていくことはできると私は確信をいたしております。
 御案内のとおり,さまざまなそういった問題,これを解決していくためには,やはり生活者の視点に立って,今いろんな困難を抱えてらっしゃいますが,そういう方々の立場に立った行政というものが大変重要かなと思っております。そういった方々とともに手を携えまして,私自身先頭に立ち,岡山県の可能な限りの発展,それを目指しまして,これからも全力を尽くしてまいりたいと,このように考えております。佐藤議員におかれましても,ぜひ県政におきましての,ひとつ御支援と,また御協力をお願いを申し上げたいと存じます。



<平成11年12月定例会>(1999年12月10日)

(佐藤)  まずは,私ごとで大変恐縮でございますが,ことしは皆様に大変お世話になり,選挙で当選させていただけるわ,嫁さんはもらえるわで,よいことずくめではないかなどとおっしゃってくださる方も多く,大変にありがたいことでございます。どうもありがとうございます。がしかし,1999年がよ過ぎただけに,これは何か不吉なことの前ぶれではないか,いよいよ世紀末の2000年,覚悟していかにゃおえんと気を引き締めておる次第でございます。
 ところで,このごろ若い者なりに考えますに,要するに人生はゼロサムゲームで,100点があればどこかにマイナス100点があり,山があろうが谷があろうが,収支決算すれば全部ゼロではないか。逆に言えば,よいことも悪いことも大して続かない,うらやましがろうが得意になろうが,平均すればゼロになる,しょせん最後がゼロならば有頂天にも卑屈にもならず淡々とやってまいりましょうという気分になっております。これを地球規模で考えるならば,どこかの国がよかろうが,その分どこかの国が思い切り悪い,奴隷も,侵略も,戦争も,結局本来負うべきマイナス部分を何かやだれかに肩がわりさせているだけではないか,もし人類すべてがよくても鳥やけものや虫たちには最悪かもしれない,地球的規模でトータルすれば結局ゼロである。そう考えると,何物の見返りも要求せず,無尽蔵に降り注ぐ太陽の光やあるいは母親の愛情といったものが改めて本当にありがたく,とうとく思えるのでございます。
 そして,政治とは何かをおセンチに考えますと,こういったゼロサムゲームの中で,本来ならほうっておけばばらばらに偏ってしまう愛や夢をあえて公平に分かち合う作業ではないか,また,その作業をするのが政治家ではないかと思うに至りました。こうなると政治家はもはや神様の領域に入っていくかもしれませんが。書生くさい話で恐縮でございましたが,最近大変悩んでおりますので,どうか知事に,一言で知事の考えられる政治とは何か,政治家とは何か,御教示ください。

(知事)  佐藤議員におかれましては,ことしは初当選及び結婚ということで,まことにいい年でおめでとうございました。来年も,これ以上いい年ということを望むのはなかなか難しいかとは思いますけども,しかし同等の幸せが来年めぐってまいりますように御祈念を申し上げたいと思います。
 さて最初は,政治,政治家についてというお尋ねでございます。初当選されました佐藤議員におかれては,もうここに大先輩の諸先生方が多くお見えでございますから,皆様方から御薫陶をいただければと思いますけども,あえて私に対するお尋ねでございますので,お答えを申し上げたいと思うわけでございますが,政治の理念ということになりまして考えてみますと,私はやはり地方政治を今あずかっているという立場から考えてみたいと思うわけですが,やはり今の世の中は大変変革期の時代でございますから,こういった激動の時代にありましては何よりも先々を正確に見通していくという,そういう前向きな姿勢というものが何よりも大事だと思うわけです。その時代の流れを的確に把握をしながら,結局はそこに住んでおられる皆様方の福祉の向上,そして快適で豊かな生活,そしてまた地域全体を大きく発展をさせていくと,こういったことを目指していかなきゃいけないと,このように考えておりますが,これにはやはり多くの皆様方,とりわけ県議会の皆様方としっかりこれは連携をして取り組んでいかなきゃいけないと思っております。
 地方自治に携わる者といたしましては,そういう姿勢の中で,やはりこれからのキーワードは前向きに取り組んでいくという意欲ということだろうと思うんですね。そして,その意欲を持って,そして前向きに進む中で先々の出来事を受けとめる新しい新鮮な感覚,こういう気持ちも大切ではないかというふうに思っておりますが,こういった新しい感覚というもの,新しい動きというものに向かって前向きに,積極的にチャレンジをしていくという,こういう姿勢がこれからないと,いわゆる地方分権の時代でございます,地域間の競争とも言われておりますけれども,こういった時代に勝ち抜いていくためにも,そういった姿勢が何よりも大切かなと私はこのように考えておりますが,同時にそれは私自身に対しましても,皆様方とともに一緒に携わっていくわけでございますから,当然のことでございますが,私心は捨てまして,そして県民のためと,あくまでも県民の皆様に軸足を置くと,こういう姿勢が何よりも大切かなと,そして誠実な姿勢で政治というものに携わっていかなきゃいけないと,このように自分自身を戒めているわけでございますが,これは私自身の考えでございますので御参考にしていただきまして,あとはここにおられる多くの諸先輩の方々と御議論,また御薫陶いただければと,このように思っているわけでございます。



<平成11年6月定例会>(1999年6月24日)

(佐藤)  さて,今我々若い世代はもとより,多くの日本人が価値観が多様化し混沌とした時代の中で,自分自身を見失い,よって立つべきものを探しているように感じられます。日本人の一人一人が,岡山県民の一人一人が自分探しをしている,そんな時代であります。政治のなすべき役割はさまざまあるのでしょうが,こういった時代に,これからよって立つべきものを指し示すことは極めて重要であると思います。一体,我々はどこへ向かうのか,日本人は,岡山県民は,どこへ向かっていくべきなのか,少なくとも21世紀の政治家は恐れずにそれを語れなくてはいけない,国の姿,国のあり方がタブー視されることなく議論されないといけない,地方分権,地方主権の時代は,日本という国を明確にしないとやってこない,地方に暮らす我々が地方を語るために,まず国を語らないといけない,私はそう思います。
 21世紀の日本人が,よって立つべきものは何かという問いに対する私の答えは,極めて簡単です。日本人は日本人に返れ,そのことに尽きます。このことは,何も武器を抱えて戦争をおっ始めなさいということではありません。日本人が本来持っていたはずの謙虚さ,潔さ,思いやりや優しさを取り戻そうと言いたいのです。政治経済のみならず,環境問題,福祉の問題も,昔の日本人ならどうしていたろうと考えることで解決できることもあるはずです。そして,この国際化された時代だからこそ,日本人が日本人であることが重要であると思います。
 我々が外国に行って恥ずかしいのは,英語がしゃべれないからだけではない,我々が誇りや愛情を持って自分の国を語れないことが何よりも恥ずかしい。およそ自分自身を愛せずして,本当に他人を愛せるでしょうか。自分の住む地域を知らずして,愛せずして,よその地域のことを,そこに暮らす人々のことを本当に愛したり理解したりできるでしょうか。日本人が,はたから見て気色悪いのは,要するにおのれのことも,自分の国のことも,地域のことも知らずとも,愛さずとも平気でいられるところです。自分自身を理解していない者を相手に,相互理解はあり得ないと思います。
 思うに,21世紀の日本人が根幹に据えるべきものは,中心に来るべきものは,日本人が日本人であるという誇り,自信ではないでしょうか。そして,日本人が日本人であるためには,もっともっと我々日本人が日本を知らなくてはいけない。日本人よ,日本人たれ。そのことは,今後も,私は強く訴えていきたいと思います。
 ところで,御案内のとおり,現在,国会でいわゆる国旗・国歌法案が議論されています。まさに,これは日本の根幹についての話であります。お隣広島県では,国旗掲揚,国歌斉唱をめぐり高等学校校長が自殺するという大変痛ましい事件があったわけですが,あるマスコミの世論調査では,国民の約7割が,国旗・国歌の法制化を望むという結果が出ているようです。
 そこで,端的に知事にお伺いさせていただきます。
 法律がなくとも,いわゆる日の丸(日章旗)は国旗でしょうか。君が代は国歌ですか。

 また,国旗・国歌法が通過した場合,県としては何がどう変わりますか,お教えください。
 また,21世紀の日本人がよって立つべきものは何だとお考えですか,ぜひ国家観を交えてお答えください。
 また,教育長にお伺いいたします。
 端的に,入学式,卒業式といった学校行事に際し,小中学校を含めた公立学校で日の丸の掲揚,君が代の斉唱がどの程度行われているのか,また今後どのように指導されていく御予定ですか,お教えください。
 あわせて,私立学校についても,総務部長にお伺いいたします。
 さらに,私は,世界史,日本史という授業科目があって,岡山地方史がないことを甚だ疑問に思います。教育の目的の中に,地域社会に役立つ人材を育てることがあるとするならば,岡山県民が岡山地方史を学ぶのは当然ではないか。我々は,長い歴史の中では,しょせんは過去から未来へつなぐバトンランナーの一人にすぎません。未来の子供たちへしっかりとバトンを手渡す前に,預かったバトンの意味を過去から教えてもらわないといけない。バトンはどう受け継がれてきて,どう手渡すべきなのかを考えることは極めて重要だと思います。そして,岡山県民が岡山を知ることで,地域を,国を愛する心や誇りが生まれ,そのことこそが岡山の個性になると思います。


(知事)  日の丸・君が代につきましては,長年の慣行によりまして,日の丸が国旗,そして君が代が国歌であるとの認識が広く国民の間に定着をしていると考えられておりますが,私もそのように認識を持っております。
 また,法案が通過,成立をした場合でございますが,法案に義務づけ規定等が置かれておりませんで,直ちに国旗・国歌にかかわる運用が変わるものではないと承知をいたしておりますけれども,国旗・国歌の意義に対する県民の理解がさらに深まる契機になるのではないだろうかと,このように考えているところでございます。
 次に,日本人のよって立つべきものについてでございますが,21世紀に向けまして,我が国は人と人がお互いに支え合って,そして快適で豊かな地域社会を形成をしていく,そしてその上で,世界の平和と繁栄に貢献をしていくということを通じまして,世界から信頼される国家,それを目指していかなければならないと私は考えております。そして,こうした社会を築く中心というものは,あくまでも我々自身でございまして,日本人一人一人が,地域づくりあるいは国づくりというものに積極的に参加をして,努力をしていくということ,これが何よりも大切なことではないかと,このように考えているところでございます。

(総務部長)  国旗・国歌についての御質問でございますが,直近の全国調査でございます平成6年度卒業式及び平成7年度入学式におきます私立学校の実施状況でございますが,国旗掲揚率が94.1%,国歌斉唱率が82.4%となっております。
 国旗掲揚,国歌斉唱につきましては,今後とも,学習指導要領に基づき,適切に実施されるよう指導してまいりたいと考えております。

(教育長)  お答えいたします。
 まず,公立学校の入学式,卒業式での国旗・国歌についてでございますが,国旗の掲揚につきましては,すべての学校で実施されております。国歌の斉唱につきましては,この春の卒業式では,小学校99.8%,中学校98.2%,また,入学式では,小学校99.3%,中学校98.2%,これらの学校で実施されておりまして,高等学校,特殊教育小学校におきましては,いずれもすべての学校で実施しております。
 これまで,学習指導要領に沿いまして,入学式や卒業式などにおいて国旗を掲揚し,国歌を斉唱するよう指導してきたところでございまして,今後とも,学習指導要領にのっとり,適切に実施されるよう指導してまいりたいと存じます。
 次に,岡山地方史についてでございますが,学校の授業で,岡山の歴史だけを取り上げた体系的な指導はしておりませんが,小中学校では,県教育委員会の作成いたしました郷土資料集や,教師みずからが研究,作成した教材などを活用いたしまして,地域の文化や開発に尽くした津田永忠やあるいは大原孫三郎などの先人について調べたり,地域の文化財や博物館,郷土資料館などを見学,調査したりするなどの学習活動を行っております。
 また,高校におきましては,平成8年度から,地理歴史科の選択科目といたしまして,「岡山の歴史と文化」を県独自に設けております。一部の高校におきまして,岡山の人物や政治,産業などの地方史を学習しております。
 お話のように,児童生徒が岡山の歴史に接して,先人の努力を知るとともに,郷土を愛する心を培うことは,人間形成の上でも大変有意義なことであります。今後とも,発達段階に応じて,地域に根差した歴史の学習が一層充実するように指導してまいりたいと存じます。

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