2002年6月25日(火)【「ピースおかやま」構想】

 本日は、日帰りで、大阪に調査に出掛けました。私個人のひとり企画です。目的は、今春開設したNPOの拠点施設「大阪NPOプラザ」と「大阪国際平和センター(通称「ピースおおさか」)」の調査でした。

 「大阪NPOプラザ」については、「その879」に触れた通りで、そんなに言うなら見に行こうか、という程度のことで、岡山のNPOだって決して負けていないぞ、という感想を持ったのですが、「ピースおおさか」については、かねてより、非常に行ってみたい施設で、衝撃と刺激を受けました。


 おりしも、50数年前のその日、当時は、桶屋町と言われたこの地の防空壕の中で、私の曾祖母なども亡くなくなった6月29日には、岡山市の戦没者追悼式が行われます。
 すなわち、岡山大空襲の日であり、後述しますが、様々な催しも企画されています。
 有事法制をめぐる議論は、ご案内の通りです。

 そういった中で、市民団体の方が、2年間の暫定期間ですが、旧出石小学校で、岡山空襲出石資料館を開かれ、さらに、岡山市に対して、平和館建設を求められています。

 一方で、県内に、ハンセン病の資料館の整備をという行政の思いもあり、さらには、森永ひ素ミルク中毒訴訟の貴重な資料があると聞いています。行政や企業、社会が及ぼす人権侵害が、岡山で、なかったわけではありません。

 平和、人権、こういったテーマは、なにかとイデオロギーの対立の象徴になってきたわけですが、「世界平和」という世界人類の理想の前には、過去の経緯を十分踏まえた上で、その実現のためには、政治も、宗教も、民族も、やがて越えていかなくてはいけません。

 なにか、岡山にも、平和や人権を考える象徴的な施設が欲しいところです。



 さて、「ピースおおさか」は、大阪府・大阪市が共同で1991年(平成3年)に開設した施設で、戦争の悲惨さを後世に伝え、平和の尊さを訴えることを基本とする設置理念に基づき、展示、調査研究、講演会の開催などの事業を行っています。

 運営は、財団法人大阪国際平和センターで、基本財産2億円については、大阪府・大阪市が、それぞれ1億円ずつ出捐しています。

 常設展Aには、大阪空襲と人々の生活、常設展Bには、15年戦争、常設展Cには、平和の希求 というテーマで、非常に分かり易く資料が展示され、例えば、「総合的な学習の時間」などで利用するには、極めて有用な造りになっています。


 館の方に、開設までのご苦労を伺ったのですが、実は、常設展Aについては、1981年(昭和56年)にできた「大阪府平和祈念戦争資料室」をもとにしています。

 この資料室の設立懇談会は、研究者や報道機関はもちろんのこと、それぞれの立場から、資料室開設を要望していた、遺族会、軍恩連盟、傷痍軍人会、解放同盟、原水爆禁止全面軍縮大阪府協議会、新日本婦人の会などの代表が、名を連ねていたそうで、設置理念(加害被害問題)でも大激論になり、それでも、平和の一点にまとまって、それが、常設展Aに繋がっているとのことです。
 この時の各団体の方のご努力がなければ、到底、「ピースおおさか」は、できていません。

 問題は常設展Bです。常設展Bのテーマが、15年戦争と書きましたが、太平洋戦争とも大東亜戦争とも表記されていないところに、歴史認識の違いの難しさが象徴されています。ここは、相当な議論があったと聞きます。

 とりわけ、「中国」「満州開拓団・シベリア抑留」「朝鮮」「東南アジア」「太平洋地域」「沖縄」「広島」「長崎」と分けられた展示は、いわゆる物議をかもしたことの想像は難くありません。
 特に、児童には、受け止めるのが、かなり厳しいようにも思います。

 ただ、公設の館として、ことさら問題にすべきかどうかの判断は、つきかねます。おそらく、左右から攻撃があったと推察しますが、いずれにせよ、館としては、細心の注意を払われ、かなりご努力されていると思います。

 ちなみに、常設展Cは、全世界的な視点であり、やはり一番難しいのは、Bであり、しかし、一番後世に伝えなくてはいけないのも、また、Bの部分です。



 こういった設立の難しさを踏まえた上でなお、世界平和、あるいは、平和、人権をテーマにした施設は、岡山にも、必要であると思います。

 子どもたちにとって、過去にあった事実について、理解させる「機会」が必要です。評価は彼らがすべきですし、それをもって、どう動くか、それは、彼らの世代の判断であり、彼らの人生です。
 真摯な中・高校生なら、我々の価値や評価がどうというよりも、彼らの感性を信じるべきかもしれません。

 少なくとも、資料や史料は、散逸、消失の危機に晒されています。とりわけ、戦争については、ある意味で、風化させてしまう、時間との戦いです。我々は、それを次に、つなぐ責務があると思います。

 願わくば、それをもっと広く、「人権」も含めて考える場が、必要だと思います。国家がなしうる最大の人権侵害が、戦争なのですから。

 ちなみに、大阪は、「人権を守り平和を愛するまち大阪」として、この「大阪国際平和センター(ピースおおさか)」、さらに、世界を人権で結ぶミュージアムとして、「大阪人権博物館(リバティーおおさか)」、国際人権情報の交流拠点としての「アジア太平洋人権情報センター(ヒューライツおおさか)」を持っています。


 こういった観点から、「ピースおかやま(仮称)」の創設を提言させて頂きたく思います。平和と人権をテーマにした資料館であり、啓蒙施設であり、生涯学習施設でもあります。

 早くも、9月議会を考えていますが、世界を震撼させた9・11連続テロ事件から1年、できれば、総合福祉・ボランティア・NPO会館への移転で空になる現在の石関町の総合福祉会館「跡」に、整備できないか、この案を提言したく思います。

 ただ、言うは容易いですが、団体間の調整は、半端な作業ではないでしょう。敢えて言えば、平和に一点に、右も左もないわけですが。
 提言するにせよ、そこまでに平和の声を集めなくては・・。



  さて、平和の声と言えば、「岡山こども平和の声」です。
 昨年の9・11以降に平和への具体的な活動ができないかと、大人が集まったわけですが、そこから、ことが動いて、今は、あくまで高校生が主体で、大人が協力するという形になっています。

 そして、その高校生達の企画で、6月29日(土)10時から4時まで、絵図町のまつもとコーポレーション・デヴィットホールで、「What's Peace−岡山の57年前と今日− 」と題して、パネル展示、講演、平和会議が予定されています。

 公募した岡山空襲の体験文も集まってきており、それを読み上げたり、当時の食べ物を食べたりと、高校生が、戦争の時代にアプローチして、平和について考える素晴らしい企画です。
 どうかご家族連れで、覗いてみて下さい。


 こうした声にも、「ピースおかやま」は、応えられるかもしれません。



 あぁ〜、韓国負けました。残念ですが、大健闘です!

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