2006年8月2日(水) 【富山ライトレールについて】

=======================================
 産業労働警察委員会の県外調査で、富山ライトレールを訪ねました。10日前には、岡山商工会議所を中心にした視察団が、行かれたばかりというタイミングでありました。
 もちろん、JR吉備線のLRT化の実現可能性を模索する調査であったわけですが、ただ、我々の調査は、問題点や課題も発見する事を目的としていたため、手放しに、ノープロブレムとは言えないものがあったのも事実です。
=======================================

      ↓ 詳しくは

 富山ライトレールは、平成15年春に構想が発表され、この4月29日に運行が開始されました。富山市富山駅周辺整備課の方からお話を伺い、試乗もしました。
 JRの既存路線(JR富山港線)を改良して、LRT(次世代型路面電車)を運行する方式は、全国初で、吉備線がLRT化できないかという構想があるのはご案内の通りです。


 岡山市との共通性と言えば、低密度市街地の拡散化が進行しているということで、人口密度は、全国の県庁所在地の中で、最も低い水準にあり、したがって、自動車交通への依存度が極めて高くなっています。その結果、「コンパクトなまちづくり」を標榜し、交通体系を基軸とした将来都市構想が描かれています。

 一方、岡山市との大きな違いは、北陸新幹線(東京ー長野ー富山ー金沢ー福井ー敦賀ー大阪の700km。東京ー高崎間は、上越新幹線と共用、高崎ー長野間を長野新幹線としています。)の開通を控えて、駅周辺整備が不可避になっていることです。
 平成17年4月に、富山ー金沢間の及び福井駅部の実施計画が認可され、概ね10年後に、富山駅に新幹線が入るため、在来線を高架にする富山駅付近連続立体交差事業が進んで行く中で、利用者の減少が進むJR富山港線をバス路線に転換もせず、高架化もせず、路面電車化して、乗り場を駅舎外に出すというのは、ある意味、費用対効果から来る苦肉の策でもありました。
 また、将来、北口(在来線駅・富山ライトレール乗り換え口側)から、表口とも言える南口(新幹線口)に乗り入れ、さらに、富山駅前のメインストリートに伸びて、中心市街地の路面電車環状化構想が進んでいます。

 正直に書いて、市長の強力なリーダーシップに加えて、確かに北陸新幹線開通が大きく街を動かしたにせよ、街のグランドビジョンの描き方からして、岡山が、えらく後れをとったという感は否めません。


 ちなみに、全体事業費は、約58億円であり、連続立体交差事業からの負担金が約33億円、改築工事、LRTシステム整備費などの補助金が約12億円、残りの約13億円が富山市の負担で、市の持ち出しが、やはり少ないというのは、ある意味、うまいやり方です。
 もっとも、ここからの延伸、環状化には、大きな課題が残ります。

 また、運行会社の第3セクター富山ライトレールは、運行のみを行い、線路など施設の維持、修繕は富山市が費用負担する公設民営方式で運営されているため、今後も多くの費用はかかります。


 しかし、従来の運行本数を約4倍に増便し、終電車時間も繰り下げたほか、新たな駅を設置するなど、利用者の便宜のために、最大限の配慮を行っており、乗車客が、2倍に増え、特に、高齢者の利用が増えて、市民には好評のようです。
 踏切の増加、駅数の増加により、運行時間は若干伸びましたが、運行回数を大幅に増やし、待ち時間が少なくなり、便利になっているという体感はあるようです。
 ただ、後述しますが、遮断時間を短くするなどの努力もしていますが、踏切については、意外に乗降に時間がかかり、予想通りには、遮断時間が短くならず、また、運行本数の増加により、新たに交通渋滞は起きてはいないものの、自動車側のイライラ感はあり、そのせいか、軽微な踏切事故も多発しているようです。


  なお、鉄道法については、警察、軌道法については道路管理者と関連が生じてきますが、両方の手続とも協議の上、了承を得ているものの、新駅の設置で新たにできた踏切には、鉄道法を適用しているとのことです。もちろん、軌道法でもできますが、手続きが非常に複雑なので前の資格をそのまま引き継いだ形にしているとのことで、これは、かなり大きな課題であると思います。
 換言すれば、JR吉備線がLRT化されることイコール踏切が無くなることではないということで、私の中で、根本的な勘違いがありました。
 総量としての渋滞緩和、環境問題の改善にもつながりますが、新たな踏切の設置による問題があるということは、冷徹な事実として、クリアしなくてはいけない大きな壁です。



 さらに、富山県警で、富山ライトレール開業に伴う交通対策について伺いました。
 富山ライトレールが開通のためには、新駅設置、運行本数の増加等、道路交通環境に影響があるため、富山市、運行事業者、道路管理者と連携し、警察が主体となって、問題解決に当たったというのがよく分かりました。
 特に、新設した路面電車区間(1.1km)は、従来片側2車線であったものを軌道敷設により、片側1車線としたことにより、交通渋滞を招くことを非常に危惧し、新たに電車接近を知らせる信号制御方式等も、採用しています。
 また、道路管理者である市には、新駅設置に伴う衝突防止対策等の安全指導を行い、3セクの運行事業者には、途中の駅で交互通行できるように指導するとともに、渋滞緩和策として、前述の踏切遮断時間の短縮等の協議を行ったとのことです。

 県、市、警察が連携して知恵を絞る中で、縦割り行政を排除できたのは、北陸新幹線を優先すると決めている以上、ベストの方策を追求し、予算の問題は、原因者負担で進めたとのことで、例えば、JR吉備線でのLRTの導入に当たっても、新駅の設置に伴う新たな踏切対策、踏切遮断時間の短縮等、あらかじめ導入後の交通対策をよほど十分に研究しておく必要性を強く感じました。


 いずれにせよ、北陸新幹線開通という「外因」がない岡山市において、同様の事を行うためには、政治のリーダーシップとなによりも、市民の盛り上がりといたものが欠かせないと思います。

Copyright (c) 2006 SHINJI SATO Inc. All rights reserved.satoshin.jp