2001年6月29日(金)
【選択と集中 なぜ中心市街地の活性化なのか?】

 本日は、朝一番の新幹線で、京都に。財団法人区画整理促進機構が音頭を取る(?)中心市街地活性化推進支援協議会が主催の「中心市街地活性化講習会2001」に、終日出席しました。
 この財団ですが、今回の講習会の後援には、なんとか公団や国土交通省が、入っていますが、ちょっと正体不明、関係が分かりません。
 私は、インターネットで開催を知りました。


 本日の講習会のテーマは、ずばり、「街なか再生と交通」。
 7月3日(火)午後1時から、三丁目劇場での「中心市街地活性化セミナー」のなにかヒントはないか?と、まさにすがるような思いで、京都に行きましたが、どうも役所の担当者向けのものだったようで、200人程度、いかにも公務員の方が、おられました。

 特に、金沢市や新長田まちづくり株式会社の事例紹介も含めて、極めて濃い内容のものでした。
 参加費は、三丁目のセミナー(500円)の20倍でしたが。

 前回のNPOセミナーも、大阪まで民主党のセミナーを聞きにいったわけですが、正直言って、何度やっても、コーディネーターは恐いし、セミナーは、不安です。自分で、企画しながら。
 今となっては、なんで自ら好んで苦しむのかわかりませんが。


 前回は、最初から方向をガチガチに決めておらず、ぶっつけ本番。パネラーの方の力量にお助け頂きましたが、今回は、パネラーの中に逢沢代議士がおられます。(ちなみに、来賓に、萩原岡山市長、片山総務大臣夫人)

 シナリオまでとは、言わなくても、流れは事前にお示ししないと、これまた、たいへんな失礼になってしまいます。しかし、この段階で、私が、迷っていようとは。
 要するに、強く語られるものや、知識があれば、恐くないわけですが。


 それでも、今回、幾つかの言葉を得、また確認しました。京都くんだりまでいった甲斐がありました。そして、それは、私自身の主張になります。
 ちなみに、全体的な流れとしては、「中心市街地」と言う言葉は、今後「街なか」という言い方になるのかな、という感じがします。

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 さて、前回のNPOのキーワードが、「選択的納税制」ならば、今回の中心市街地活性化のキーワードは、すなわち、「選択と集中」です。


 我が国の高度成長は、結果として、所得水準、生活水準を上げていきましたが、地価が高く、利害関係が錯綜した街なかよりも、郊外の安い住宅地を求めて、人は、中心市街地を離れていきました。
 さらに、耐久消費財としての自動車の普及は、必ずしも公共交通が整備されていない郊外でも、生活の不便を感じさせないものにしました。

 加えて、行政も郊外の声に応えて、自動車に対応した社会基盤の整備を進め、公共公益施設をはじめとする大規模施設が、郊外に建ち並ぶようになりました。
 しかし、その拡大は、公共交通機関の拡大と呼応したものではなかったため、郊外から都心部への移動は、しばしば困難を伴い、そのことがまた、都心部より郊外へ、という流れを助長しました。

 これは、高度成長期のピークを迎えて、30年かけて起きた出来事です。

 ここから、私たちは、ひとつの判断を迫られます。
 このまま、郊外へ郊外へ拡張していくのか、あるいは、再び都心部に集中させるのか。今、その「選択」の段階に来ているのです。


 なぜなら、ここから先にあるのは、間違いなく人口減で、それは、すなわち、経済活動の縮小を意味します。すなわち、それだけ、都市全域は衰退、税収も減り、従来の行政サービスも維持できなくなってきます。
 ここから先、拡大を続けて、その社会基盤を整備、維持し続けられるのか、大きな疑問があります。福祉、教育、治安、全ての面で、維持できなくなるかもしれません。
 どちらの道を選ぶのか、まさに「選択」の時期なのです。

 そこで、都市経営という経営の観点から、相対的に社会資本のストックが多い都心部を高密度にし、都市の力を強める必要があります。効率的な資源利用が、今こそ必要です。
 そのことは、また、歴史と伝統に裏打ちされた街の魅力の再評価を意味します。街の個性は、均一化された全国ブランド店が立ち並ぶ、郊外からは、なかなか生まれてきません。

 ここに必要なのは、「集中」です。都市のエネルギーを一点に「集中」させないと、逆に広がった郊外の社会基盤を維持することも不可能になります。
 これは、商売にも相通ずるものがある気がします。


 ただ、このことは、時として、郊外の住民からは、中心部のエゴに見られがちです。小泉総理の「地方切り捨て路線」と揶揄される方向とダブるかもしれません。
 しかし、この地方分権の時代に、都市間競争の時代に、地方は地方で生き残らないといけないのです。中心部にエネルギーを集中投下し、起爆させる。これは、その515の「倉岡市(岡山市・倉敷市合併構想)」も同じです。岡山県の中心を定め、集中投下する。
 切り捨てではなく、強い一点に、集中させるのです。

 漫然とのんべんだらりんと広がれば良いというものではありません。
 コンパクトで、機能的なまちづくり、いわゆる「サスティナブル・シティ」の実現のためにも、中心部への再集中、各施設の集中整備は、どうしても必要だと考えます。


 そのためにも、街なかの交通体系の見直しが、必要です。錯綜した交通体系は、それ自体が、大きなロスです。
 交通施策のキーワードは、3つ。

 @つなぐ:街なかへのアクセス性の向上。
 Aめぐる:街なかでの移動性、回遊性の向上。
 Bたまる:街なかで集い憩える快適な空間の形成。

 これらに関する交通施策を連携・連鎖的に取り組むことにより、街なかが再生していく構造を備えるのです。

 例えば、市内循環コミュニティバスは?環状道路の整備は?LRT、路面電車の延伸は?トランジットモールは?バスターミナルは?自転車は、パーク&バスライドは?タウンモビリティは?低床バスは?ハートビル法は?交通バリアフリー法は?道路空間のユニバーサルデザインは?ITSは?都市計画制度改正は?・・・・どこに位置し、どう絡み合っているのか?



 そのためにも、必要なのは、TDM(Transportation Demzand Management:交通需要マネジメント)という、考え方です。あるいは、TOD(TransitOriented Deveropment)と呼ばれる公共交通機関を重視した開発の考え方です。


 実は、本年3月9日現在までに提出された365市町村(372地区)の中心市街地活性化計画は、街並みや景観、幹線道路の整備が多く、国土交通省の支援メニューも、せいぜい交通結節点改善、あるいは道路環境改善事業というハード面です。
 コミュニティバスや駐車場整備の事例は、枚挙に暇はないですが、交通体系を抜本的に見直し、成功した、という事例は、全国的にまだ出ていないようです。

 あるいは、中心市街地活性化のために、ハード面でなく、交通体系に特化した、TMOまたは、NPOが、岡山に登場しても、不思議はありません。
 差し障りは、極めて多いですが、市民の賛同は、得られるかもしれません。
 「岡山市の交通基本計画」が、敢えて濁している部分が、問題の本質です。

 しかし、急いではいけません。30年かかって起きた出来事です。あるいは、倍する時間が、かかるかもしれません。
 それでも、私にもできることはあると思います。


 ともあれ、今回の三丁目劇場のセミナーで、全ての答は出ないでしょう。しかし、自民党青年局が、中心市街地活性化のために、都市交通体系を考えましょう、という呼びかけは、全国初と自負していますし、意味があることだと思います。なにより、これが、レジデント、市民の市民による市民のための意志形成の端緒になれば、と思います。

 願わくば、一人でも多くの方にご来場頂きたいのですが、なにしろ敢えて平日の開催です。むしろ、人数よりも、密度や真剣さで、勝負したい、そんなセミナーになればと思います。
 是非ご来場下さいませ。

 明日の岡山のために。

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