2003年11月30日(日)【国立大学法人化について】

 イラクで日本の外交官2名が殺害をされました。詳細はよく分かりませんが、心から、哀悼の意を表します。
 派遣される自衛隊の安全はもちろん、国民の生命・自由・財産が、危険に晒される状況が迫っています。

 国会を閉会している場合ではないと思います。いったい何のために選挙をしたのか?
 この間選挙したばかりですが、解散して信を問うべきぐらいの重大な状況ではないでしょうか。


 ところで、産学官の連携を考えるうちに、そもそも、なんで、産学官の連携のような当然のことが、いまさらに議論されているのかな?逆に、今まで、なんで連携してないんだよ、と、だんだんと疑問が生じてきました。
 正直わけがわからなくなってきました。

 だいたい「学」ってどこのこと?「産」って、産業界、突き詰めれば、ものづくりのこと?それとも、サービス業や教育等も含めて、要するに、「民間企業」のこと?


 そう考えていくと、産学官の連携という議論は、非常に抽象的だなぁ、と思います。
 以下かなり主観的な記述になります。おそらく大きな誤解もあると思います。

 昨今の不景気で、産の側からすれば、要は、新産業創出の切り札のためのシーズを「学」に、求めているわけですし、「学」からすれば、来年4月から、全ての国立大学が法人化し、文部科学省の一機関から独立する中で、我が学部こそが存続するに相応しいと、なにか生き残りをかけた理解をと訴えるべく、「産」との連携を強めたいようでもあります。

 しかし、産学官の連携など、TLOを待つまでもなく、とっくの昔にやっている企業も、大学人も多いと思います。
 少なくとも、医学部や歯学部や薬学部では、あまり使う言葉ではないように思います。


 ところで、国立大学は、法人化後も、国の財政措置によって運営され、授業料等の値上げもないという意味では、大学の「民営」化と本質的に異なります。

 一方で、私学であれば、企業との共同研究は、自由でしょうし、民間から大学の講師人に加わることは普通にあることですし、経営努力を重ねてきています。

 そういった意味では、法人化という大学改革の本来の意味は、既存の国立大学、とりわけ、地方の国公立大学が、民間的発想の経営手法を入れ、学外者も加わり、様々な意味で、社会へ開かれたものにすることにあるようです。

 例えば、文部科学省ではなく、経済産業省が、産業クラスターを唱える中で、産学官の連携を言ってみたりする中で、省庁の縦割りから少しずつ開放されていくということは、保護もなくなるということではないか。

 もっと言えば、かなり自由度が増した地方の国公立大学法人に、資金獲得まで含めた私立大学同様の競争原理も働かせるということではないか、と思うのです。


 それならばなおのこと、地方の岡山大学が、岡山の産業界等に果たす役割を明確に示して頂かなくてはいけませんし、逆に、産業界や、岡山県サイドからも、岡山大学に要望を出していくべきではないでしょうか。
 そういう連絡協議会的な仕組みを作ることには、大きな意味があると思います。

 いつまでも、国の財政措置で、守っていけるかどうかはわかりませんから、地方の大学は、地方への働き掛け、連携も必要になるはずです。特に、地方固有の問題に、どう対処するのか。
 それが大学の個性であり、地方の個性になるのではないか。

 もちろん、憲法に保障された大学の自治を冒してはなりませんが、私学よりも手厚い補助は、当然、公に還元されること、端的には、地方に人材を供給すること、地方の課題を率先して解決していくことを期待しているからです。

 つまりは、基礎的研究について、門外漢が、とやかく言うものではありませんが、多くの学生は、研究職として大学には残ることはないわけで、岡山県に、いかような人材を輩出するのか、大学は、方向は示すべきですし、産業界も、行政も、地方の未来のために、地域間競争に勝ち抜くために、お互いがどういう責任を負うのか、まずは、議論し、要求すべきではないか。

 大学のシーズを探すには、大学へのニーズを伝えなくてはいけません。
 それもまた、産学官の連携ではないでしょうか。


 そして、言うまでもなく、大学の研究には、「時間」も「金」も必要であり、本来は、教養をつけるためのカルチャースクールでも、いわんや、レジャーランドでもなく、研究者を養成する最高学府でしょうが、実際は、社会人の即戦力も求められています。
 大学は、ある意味で、自己矛盾を内包しています。

 その割合は、非常に難しいとは思いますが、専門学校の大躍進に見られるよう、これからの大学にも、そういう意識は必要ではないでしょうか。
 例えば、法科の争いには、どれだけ実戦で、たちまち具体的に役に立つかの意識が芽生えています。

 いずれにせよ、少なくとも、県立大学の議論同様に、もっと身近に、岡山県民は、岡山大学を感じられても良いように思います。


 産学官の連携を考える時、理系と文系、国公立と私立で、学へのイメージの違いが、極めて大きいと思いますが、ただ、優秀な私学に加えて、岡山大学が、岡山県の未来の鍵を握っていることは、間違いありません。

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