2002年6月7日(金) 【中心市街地活性化のために】

 本当にすみません。非常識な長さになってしまいました。
 世界一かもしれません。

 これだけ大量のものをどなたが読むことができるのか、と自分でも疑問ですし、本当に申し訳ないことだと思ってはおるのですが、重要であり、特に関心の高い分野に、議員が熱くなるのは、いた仕方ない、これも、税金からなる佐藤の歳費のうちかと、どうか、お許し下さい。


 昨夜、中心部の幼稚園・小学校統合について、地域の緊急総会が開催されました。本当に真摯な議論を経て、非常に大きな方向づけがなされつつあります。

 私も、この度は、議員として、あるいは、子育て世代の人間として、極めて大胆な「提言」をさせて頂きました。もったいぶるわけではないのですが、現段階では、不確定要素も多く、読者の皆様にすら、発言内容をお知らせできませんが、いずれにせよ、中心市街地が大きく動く話です。
 早晩、時機になれば、はっきりとお伝えさせて頂きます。



 さて、本日は、昨年に引き続き、キャンパスプラザ京都で、「中心市街地活性化講習会〜官民連携による活性化事業の紹介〜」に出席して参りました。京都日帰りは、たいして、愉快ではありませんが。

 この講演会は、どちらかといえば、行政の担当者向けのもので、(財)区画整理促進機構(街なか再生全国支援センター事務局)を中心にした協議会が主催する内容の濃いものです。事例発表も豊富で、資料等もかなり充実したものがあり、刺激を受けに、わざわざ京都に行くわけです。



              中心市街地活性化のために

[客観的状況]

 高度成長期に、急激な人口・産業の大都市集中が進み、基礎的生活基盤である道路、鉄道、公園、下水道、住宅・宅地の供給促進等の施策が推進されました。

 しかし、所得水準、生活水準の向上とモータリゼーションの進展による行動圏の拡大により、安価で広い宅地を求めて都市住民は郊外に流出。それに伴い、公共公益施設や商業業務施設などの都市機能も流出しました。

 結果として、木造の密集市街地が残り、残された世帯の高齢化が進み、しかも、郊外に比して地価も高いため新規参入も難しく、また、バブル崩壊の傷痕は、低未利用地として残り、結果として、空き店舗や空きオフィス、青空駐車場が増加し、都市活力が衰え、市街地環境も悪化しています。

 敢えて言えば、中心市街地から民意を代表する議員も、極めて選出され難い状況になっています。

 この状態を放置しておれば、都市中心部は、ますます空洞化し、郊外や田園地域は、土地利用が虫食い的に進行し、国土は、荒れていきます。


 とりわけ、2006年の1億2800万人をピークに、人口は減少に転じ、2050年には、生産年齢人口(14歳から65歳)が40%を下回り、高齢化率は、30%を突破。幼令人口を加えて、いわば社会に扶養される人口が、6割を越えるという、未曾有の成熟社会になります。

 この点、経済の生産性を向上させるためには、女性と高齢者の就業率の向上を前提とした社会参加機会、労働環境の整備が必要になりますし、タブーとされた外国人労働者の受け入れ態勢整備の議論も必要になると思われます。



[私の認識]

 以下は、昨年の「こころ552」を引用します。

『 ここから、私たちは、ひとつの判断を迫られます。 このまま、郊外へ郊外へ拡張していくのか、あるいは、再び都心部に集中させるのか。今、その「選択」の段階に来ているのです。

 なぜなら、ここから先にあるのは、間違いなく人口減で、それは、すなわち、経済活動の縮小を意味します。すなわち、それだけ、都市全域は衰退、税収も減り、従来の行政サービスも維持できなくなってきます。

 ここから先、拡大を続けて、その社会基盤を整備、維持し続けられるのか、大きな疑問があります。福祉、教育、治安、全ての面で、維持できなくなるかもしれません。
 どちらの道を選ぶのか、まさに「選択」の時期なのです。


 そこで、都市経営という経営の観点から、相対的に社会資本のストックが多い都心部を高密度にし、都市の力を強める必要があります。効率的な資源利用が、今こそ必要です。

 そのことは、また、歴史と伝統に裏打ちされた街の魅力の再評価を意味します。街の個性は、均一化された全国ブランド店が立ち並ぶ、郊外からは、なかなか生まれてきません。

 ここに必要なのは、「集中」です。都市のエネルギーを一点に「集中」させないと、逆に広がった郊外の社会基盤を維持することも不可能になります。
 これは、商売にも相通ずるものがある気がします。

 ただ、このことは、時として、郊外の住民からは、中心部のエゴに見られがちです。小泉総理の「地方切り捨て路線」と揶揄される方向とダブるかもしれません。

 しかし、この地方分権の時代に、都市間競争の時代に、地方は地方で生き残らないといけないのです。中心部にエネルギーを集中投下し、起爆させる。これは、その515の「倉岡市(岡山市・倉敷市合併構想)」も同じです。岡山県の中心を定め、集中投下する。

 切り捨てではなく、強い一点に、集中させるのです。
 漫然とのんべんだらりんと広がれば良いというものではありません。
 コンパクトで、機能的なまちづくり、いわゆる「サスティナブル・シティ」
の実現のためにも、中心部への再集中、各施設の集中整備は、どうしても必要だと考えます。 』



[問題点]

 しかし、こうした中心市街地の活性化のためには、行政の財政状況や景気状況を反映して、事業資金の確保が困難ですし、TMO設立に関する資金や人材の確保、設立に向けた合意形成の難しさ、なにより、商業者や地域住民等の意識の問題等、障壁が多いのもまた事実です。

 実は、中心市街地活性化計画は、平成13年度末までに、全国465市町村で提出されていますが、プロジェクトの展開には、どこも苦慮しています。

 ちなみに、本県では、津山市、岡山市、和気町、倉敷市から提出されていますが、岡山市の中心市街地を614haとしたのは、全国に例がないほど広く、さらに、岡山市は、複数、すなわち、西大寺地区の中心市街地についても提出している、これまた稀有な例です。

 それだけ、岡山市の中心市街地活性化の問題は、難しいものがあるという証左でしょう。市の施策は、西にシフトしているようでもあり、いったい岡山市には、幾つのコアがあるのか、確かに、都心のグラウンドデザインが描き難い街です。

 結果として、残念ながら、RACDA以外は、街づくりの成功事例として、全国に発信された例は、少ないように思います。なんで、彦根や長浜に、岡山が負けてしまうのでしょう。非常に悔しいです。


 また、さらに、郊外の大規模小売店舗の競合を考えた場合、かっての物販主体の商業機能を完全に回復することは、難しい側面もあるのは、冷徹な事実でもあり、さすれば、地域の活性化とはなにか、というパラダイム転換もされる時期かもしれません。

 すなわち、商店街の活性化に加えて、健康・福祉機能など地域に密着した生活・サービス機能の充実化、都市型観光による交流人口の増加、さらには、高齢者や子どもなどの移動にハンディがある人々が、自立的に移動できる交通環境の実現、さらには、ホーム・オフィスやコミュニティ・オフィスなど職住近接型のワーク・スタイルあるいは高齢者も含めて、単身者世帯の増加に伴うライフスタイルの多様化に対応した住環境の提供等、いかに、「ミックス」させるかが、ポイントのように思います。



[具体化のために]

 実は、今回の講習で一番感じたのは、この「ミックス」でした。ちなみに、冒頭の昨日の私の「提言」も、まさに、この「ミックス」の発想です。

 すなわち、都市構造を作り変えていく中で、いわゆるゾーニングや、用途地域、ひいては、市街化調整区域という考え方がどうなのか、ということです。

 ひとつには、ITの発達をはじめとして、技術革新で、必ずしも工場等が環境に負荷をかけるような状況ではなく、さらには、建築技術の向上により、高度化(高層化)することと、オープンスペースの確保は、二律背反ではないということもあります。

 なにより、個別利用ではなく、敷地の共有化、共同利用(あるいは、定期借地によるコーポラティブハウス)等、土地利用の複合化の発想で、混ぜていく(結局は、「無目的」になる「多目的なにがし」という意味ではなく)ことで、中心市街地が、息を吹き返す道があるのではないかと思います。


 近年の大規模な都市開発では、住宅系、商業業務系等の個別開発から、商業業務、文化、居住等の各種機能を組み合わせた複合的開発が主流となっていますし、さらに、研究・教育、文化・芸術、医療・福祉等の都市サービスを加えて、開発していくのが望まれます。


 たとえば、観光ゾーンの窓口にありながら、教育委員会生涯学習課が所管だから、新県立図書館は、新県立図書館にしかならないのです。こういった行政の縦割りや規制を排していくことは極めて重要です。

 換言すれば、旧来通りの行政の縦割りで、街づくりに絡まれると、中心市街地活性化の阻害要因になりかねません。

 加えて、行政の行う都市計画というのは、様々な制限があったり、逆にあらぬ期待を抱かせたりと、大変に迷惑な場合があります。この点、暫定的な土地利用の都市計画を立て、状況によっては、柔軟に変更しうるようにしないと、行政の規制のために、物事が硬直化する事態になります。


 とすれば、こういった行政の枠組みと離れて機動的に動くことができるNPOの活動が多いに期待されます。

 特に、コミュニティビジネス等、地域に密着した地域特有の経済活動が急増するとも言われ、将来的に、NPOの経済規模は、GDPの10%に達するという予測もあるようです。
 行政よりもNPOに補助金を出す方が、遥かに経済波及効果があるかもしれません。


 また、1400兆円あるといわれる国民貯蓄を活用して、民間セクターが、資本として参加する仕組みが必要です。端的には、国債のように、機関投資家ではなく、個人向けの公募型の地方債を発行し、民間セクターを参入させることが考えられます。
 議員や職員には、報酬代わりに割り当てても良いかもしれません。(ただの紙切れになるかも?)

 また、本来のPFI型プロジェクトの推進や、不動産証券化で、公共セクター以外のお金を動かすことが重要です。


 さらには、思い切った税制優遇措置が必要です。
 商店主の相続税、低賃料で土地・建物を提供するオーナー、さらには、特定区域に新規に進出する企業・商店に対しての優遇措置は、効果的です。こういった税制優遇措置は、めぐりめぐって、別の税収で返って来ると考えるべきです。


 そして、大切なのは、やはり情報公開です。
 実は、この講習会の主催団体にしても、中心市街地活性化施策にしても、普通の市民では理解できるものではありません。
 市民との連携のためには、街づくりについては、常に行政の側から、市民にアプローチし、さらには、市民の側も、積極的に提言していく姿勢がなにより肝要だと思います。



 ここまで読んで下さった方に、敬意と感謝の誠を捧げさせて頂きます。

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