2001年6月1日(金) 【タロー 畜犬処分場】

 本日は、畜犬処分場を訪ねました。御津町にあるこの施設は、おそらく地図には、「小動物研究所」という名で、出ているはずです。


 10年以上前に、我が家には、極度に水を怖がる「タロー」という名の汚い犬が、おりました。ゴンタ顔の垢抜けない、あまり大きくない茶色い犬でした。
 私が、小学校6年生の運動会の秋の日に、当時の当新田の我が家に、タローは来ました。連島で、造り酒屋を営む親戚の蔵の裏山、みかん畑の中で生まれた山犬で、どこから見ても、見事な雑種でした。

 我が家が陶器屋を辞め、当新田から平和町に戻り、託児所を始めた時、街中では犬は飼えないと、保健所に連れて行こうという案もありましたが、殺すのもかわいそうと飼い続けました。

 しかし、なにしろ痩せこけた見かけの悪い犬だったこともあり、気が向いた時にしか散歩に連れて行かず、今なら立派な動物虐待だったと思います。当新田時代から比べると、平和町は彼には地獄だったかもしれません。

 そこから記憶は飛び、大学時代に帰省しても、駄犬は駄犬で、気にとめることもなく、適当にやっていました。

 それでも大学を卒業して、司法試験の勉強をしていた頃、今から思うと私には地獄のような日々でしたが、そこには確実にタローがいました。新聞配達に出かける早朝4時前にもいました。

 12年経ったタローは、人間で言えば眉のあたりに白髪が目立つ老犬になっていました。恐ろしくて、じっくり見ないようにしていました。
 誰からも見放されたような気分でいた頃、手前勝手にも、やっとタローは、とても大切になっていました。ずっと、そこにいたのに。

 毎晩、自転車で、裁判所のあたりをゼーゼー言わせながら、散歩に連れて行きました。我が家は、元倉庫だったので、シャッターをしめてタローを離すと私の部屋のガラスをがりがり掻きました。今の友紀のように、無邪気に。
 タローの影が、ぴょんぴょん跳ねていました。

 ある日、鎖をつなごうとした私の手をタローが噛みました。なぜか、それがひどくショックでした。
 そして、それからしばらく経ったある日、タローは、いなくなりました。
 結びが揺るかったのでしょうか。鎖をひきずりながら、タローと呼ぶ母の声に振り向いた後、喜んで飛び跳ねるように走っていったそうです。

 しばらくずいぶん探しましたが、結局見つからず、そのうち探すのを辞めてしまいました。多分、どこかを駆けているのでしょう。

 タローに似た犬を見ると今でも瞬間的に思い出します。いまどこにいるんだろう?最期を見ていないので、信じられるのです。24年も生きる犬なんていないだろうに。本当に悪いことをした・・・・・・。

 私は、生涯、私の意志では、犬を飼いません。



 小動物研究所、正式には、県畜犬処分場は、昭和43年に作られました。従来は、民間の化製業者や岡山市長に委託処理していたところ、運営・施設面で、環境汚染の問題が生じ、地域住民ともトラブル発生、県で処理場を建設することになったのです。

 管理運営、処分犬の輸送、処理は、岡山県獣医畜産事業局組合に全面委託されています。

 山間の本当に小さな施設で、横を通過してもまずそれとわからないでしょう。そこで、全県の保健所から輸送された犬・猫が早朝に、年間約1万頭処分されています。
 安楽死とされる炭酸ガスを送られ、大量処分されます。特に、犬は、輸送自動車ごと 入れる処分施設の中で、処分されます。

 後は、一頭一頭焼却炉に入れられ、焼却処分されます。午前10時過ぎ現在まだ焼却炉は暖かく、麻袋の中に灰は入れられていました。

 委託費は、年間3800万円。私は、本当に、このお仕事をされる方の尊さを思います。本当にありがたいことです。
 同時に、憤懣やるかたない、怒りの気持ちに襲われます。あるいは、タローも最期はここだったかも、と思うと申し訳ない気持ちでいっぱいになります。誰のせいなんか?

 ゆえに、ここにペット税を提唱します。捕獲される野良犬の処分は、これはまだ仕方ないですが、少なくとも、野良猫を捕獲し不妊治療を施すために、あるいは、飼い犬、飼い猫の不妊治療に助成するために、なにより、処分費用を捻出するための目的税です。しかも、処分は、全て有料です。
 飼い主に、安易に命を扱うことをゆるさない警告です。

 さらに、動物虐待の防止の啓蒙・啓発、さらには、『きれいな環境の創造に関する条例』に、犬のフンの処理を盛り込むことも、提言します。



 ところで、昨年の大規模事業評価委員会で、事業を縮小して行うべきとされた「動物愛護センター」の計画地も訪ねました。
 処分場と動物愛護啓蒙施設を併合するというのですが・・・。

 その規模8ha!!既に、犬猫をモチーフにした立派な橋が架かっていました。何と極端なのでしょうか。前知事が、シェパードを飼っていて、バブル時期の計画であるというのも関係しているのでしょうか。
 さすがに、これはマズイだろうという規模です。ある種のテーマパーク?

 小動物研究所と動物愛護センターのギャップが、私にはどうしても埋まりませんでした。
 雰囲気が明るくなるのも、問題意識を啓発するのも、良いことですが・・・。


 それにしても、帰る途中、王将で、から揚げがついた天津飯セットを食べました。鳥や玉子、エビ、ましてや牛やブタや魚は、気の毒がっても貰えないのです。やっぱりモンゴルではないですが、身近に家畜がいて、しめるところを見ないと、動物に感謝しないのかもしれません。

 ひでーなぁ、人間って。モグモグ・・・・。

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